ウクライナ2

ロシアがウクライナに侵攻を開始してから既に半月以上が経過した。圧倒的な戦力を有するロシア軍であるが、ウクライナ国民の強い祖国愛の前に、まだ首都キエフを落とすことはできない。

日本政府は今回のロシアの軍事侵攻について、「ウクライナの主権と領土を侵害し、力による一方的な現状変更は国際法に明確に違反する許されない暴挙である」「国際社会は結束してロシアに対して断固たる対応をすべきである」と主張している。また、「プーチン大統領はすぐにでも姿勢を改め、停戦に応じ軍を撤収するべきである」とも唱えている。G7諸国をはじめ、世界の大半の国々が同様のスタンスでロシアの暴挙をたしなめようとしている。が、プーチン大統領はそんな国際世論に耳を傾ける気は全くなさそうだ。むしろ欧米の軍事介入を警戒し、ポーランド国境付近への攻撃を強めている感もある。であれば、耳を傾けるように圧力をかけるしかない。

圧力といっても軍事力の行使は難しい(もちろん我が国にはできない)。仮にNATO軍とロシア軍が一戦交えれば、それは第三次世界大戦の始まりとなってしまうからだ。現にNATOは、自ら軍事力を行使することを明確に否定している。ウクライナはNATO加盟国ではないので、当然といえばそれまでだが、これからも自制力を維持してもらいたい。(「戦争疲れ」でアフガニスタンやイラクから撤退したばかりの米国が世界大戦を始めるとは考えにくいが…)

一方で、経済的な攻撃は強化しなくてはならない。既にG7諸国はロシアの最恵国待遇取り消しへと動いている。金融取引の停止に続き、主要国との貿易コストの増大はロシア産業に大きな打撃を与えるだろう。ロシアに立地している工場の操業停止を宣言する企業も続々と出ている。就労の場を失うロシア国民の蜂起、国内世論の喚起によるプーチン政権の政策転換は期待できないだろうか?

長期戦に対応できるようにウクライナへの支援拡充も大切だ。食糧や生活物資の提供はもちろん、継戦に必要な武器の補給は欠かせない。我が国もできる範囲内の取り組みということで、防弾チョッキやヘルメットを提供した。避難民の受け入れを宣言する自治体も数多い。

この戦争の行方については予断を許さないが、戦争終結までウクライナの人々の大きな犠牲が続くことを考えれば、我々はあらゆる手段を講じて、できる限りの支援をしなければならない。

強力な経済制裁には報復措置も避けられないだろう。交流が途絶えることによる損失も計り知れない。しかし、我々は勇気をもって行動しなくてはならない。日本が国際社会で存在感を示すためにも。

ウクライナ

国際社会の厳しい非難にもかかわらず、ロシアは2月24日、ついにウクライナに軍の侵攻を開始した。ここに至る経緯を見ると、今回のロシアのウクライナ侵攻は事前から周到に準備されていたと思わざるを得ない。国際社会に向けての一方的な情報発信により口実づくりをした上で、まずはサイバー攻撃でウクライナの情報網とインフラを機能不全にするとともに軍事施設に攻撃をかけて制空権を掌握、その上で地上部隊が国境線を超えてウクライナへ侵攻するという手順だ。

プーチン大統領は「ほかに選択肢はなかった」と述べ、軍事侵攻を正当化しているが、いったい何をそんなに恐れているのか。ウクライナがNATO入りを志向しているのは、強大なロシアの圧力から身を守るためであって、決してロシアを攻撃しようとしている訳ではない。NATOの意図もそこにない。

ロシアは本来世界の安全に責任を持つべき国連安保理の常任理事国であるが、白昼堂々と独立国の主権を力づくで侵す蛮行に及んだことは、断じて看過できない。3月1日、我が国としても強く抗議する意味で衆院で非難決議が行われた。

国際社会は一致結束してこの事態に臨まなければならない。これまでにないレベルの経済制裁等によって、今回の蛮行の代価が如何に高くつくかをロシアに知らしめる必要がある。

EUと米国は26日、ウクライナ侵攻の資金源を遮断するため追加制裁措置として、ロシアの一部銀行を国際間銀行間の送金・決済システムのSWIFT(国際銀行間通信協会)から排除することに合意した声明を出した。この措置は“金融核兵器”とも言われ、排除されるとドル建てでの送金・決済ができなくなり、ロシアは国際的な金融システムから切り離され、世界での事業展開ができなくなる。

我が国においても円決済停止となるだろう。すでに、ルーブルとロシア株式市場は暴落の様相を呈している。

ただし、副作用も生じる。エネルギー自給率の低いドイツをはじめ、欧州各国はロシアの天然ガス供給に大きく依存している。ロシア経済との長期絶縁は欧州エネルギー危機を招き、ひいては全世界的なエネルギー価格の高騰につながる可能性もある。それはあらゆる物価の上昇も招くだろう。我が国としても、こういう事態を想定した対処策も準備しなくてはならない。

領土問題は世界各地に存在する。万が一、今回のような蛮行がまかり通ることになり、各地で同様の事象が発生すれば、国際秩序に極めて大きな影響を与える。

例えばアジアにおいて、台湾や南沙諸島をめぐる情勢が急変すれば、我が国の安全保障にも大きく関わってくることになる。ウクライナ問題への対処は、遠い東ヨーロッパの紛争、対岸の火事扱いでは済まされないのだ。

日ロ間には北方領土問題など幾多の懸案があり対話は続けている必要はあるが、ここは毅然たる対応が求められている。国際社会と連携し事態の収拾を図るべくロシアに働きかけていくことが求められる。

今回の出来事を対岸の火事とせず、改めて我が国の安全保障について問い直すとともに、国民的議論を行わなければならない。今はそんな時だ。

 

*国連の動き=安全保障理事会は2月25日、ウクライナに侵攻したロシアを非難し、武力行使の即時停止と撤退を求める決議案を採択したが、ロシアの拒否権行使で否決された。日本時間1日零時、全193か国が参加する国連総会で、米国などはロシア非難決議を採択することで国際的にロシアを孤立させ圧力を強めたい考えだが、加盟国の半数以上が演説する見込みで採択までに数日間かかる見込みだ。

*停戦協議開始=2月28日、ベラルーシ・ゴメリで協議が始まった。ウクライナ側は即時停戦とロシア軍の完全撤退を求めたようだが、ロシア側は軍事力を背景に全面降伏とウクライナの非武装中立化を迫る。また、プーチン大統領は核部隊に戦闘態勢を指示して威嚇するなど、双方の妥協点を見いだせるかは不明だ。

 

国会レポート

1月17日と早めに召集となった第208回通常国会。24日から質疑がスタートした予算委員会審議も順調に進み、7日の理事会で、令和4年度予算案の衆院採決の前提となる中央公聴会を15日に実施することを決定した。

 

その予算委員会審議で最も時間が割かれたのはやはり新型コロナ対策、異変株「オミクロン株」が感染急拡大する中で、野党は検査キット不足や3回目のワクチン接種の遅れなどに言及し、政府の対応を「後手」などと批判。

これに対し、岸田首相はワクチン3回目接種の更なる前倒しを表明するなど、守勢に徹しながらも持ち前の「聞く力」で応戦、野党の追及をかわしている。

 

昨年12月15日、朝日新聞の報道で発覚した国土交通省の“建設工事受注動態統計”不正計上問題。衆院予算委員会では1月31日にこの問題を中心に集中審議がおこなわれたが、国民の関心も薄く、野党でも質問に立った7人のうち同問題を取り上げたのは立憲民主党の1人のみ。

オミクロン株の感染急拡大を受けてコロナ対策が審議の大半を占め、この問題をめぐる議論は深まらなかった。ただ、先進国にとって統計を改ざんするなどはあってはならない恥ずべき行為である。政府はより緊張感をもって対処しなければならない。

 

首相の看板政策「新しい資本主義」や「敵基地攻撃能力の保有」などについても多くの質疑が行われたが、首相は「成長も分配も、が基本的な方針だ」と、また「敵基地攻撃能力具体的な議論はこれから始める。だから、いま申し上げることはできない」との答弁を繰り返し、具体策には踏み込まず野党の追及をかわした。

論戦が嚙み合ってない状況で些か盛り上がりに欠けた感はあるが、いずれにしても最重要課題である予算の年度内成立の見通しは立ったと言えよう。

 

今年は7月に参議院選挙を控えているため、会期の延長が見込めないので提出法案も58本と少ない。主な法案は、「こども家庭庁設置法」「経済安全保障推進法」「地球温暖化対策推進法改正」など。

新型コロナウイルス患者が確実に入院できる病床を確保するため、国や自治体の行政権限を強化する「感染症法改正」は見送られた。

私は国民の安全安心を確保するために、一日も早く必要な法案審議を行うべきだと考えるが、一方で夏の参議院選挙前に医療関係者を敵に回しかねない論争は避けるべきと考える者もいるようだ。

 

私の関係する分野では、政府の10兆円支援対象校となり、“世界と伍する研究大学”を目指す「国際卓越研究大学〈仮称〉」に関する法案を予定しており、現在、閣議決定にむけて最後の詰めの作業を行っている。科学技術・イノベーション政策は岸田内閣の成長戦略の大きな柱で、その意味で目玉法案である。

 

国会対応も重要であるが、岸田内閣としては新型コロナウイルス対策の抜本策をはじめとして、デフレ脱却に向けた経済対策、社会保障と少子化、外交・防衛、脱炭素・エネルギー、異常気象と多発する災害等々、国内外に山積する諸課題に対して具体的な解決策を示していかなくてはならない。それが国会終了後に予定されている参議院選への最優先すべき選挙対策である。

 

まずは、昨年の総選挙で国民に約束した公約を具体的に実現することで、政治責任を果たすことが求められる。

年頭所感2022

明けましておめでとうございます。健やかな新春をお迎えのことと、お慶び申しあげます。

昨秋の第49回衆院選において10回目の当選を果たすことができました。これもふるさと東播磨の皆様の支えがあったればこそと、改めて御礼申し上げます。

 9月に発足した岸田政権は、アフターコロナの我が国経済の成長戦略のど真ん中に、科学技術・イノベーションの推進を据えました。科学技術に大胆に投資し、大いに振興することによって、日本の成長力、国際競争力を高めようとするものです。

 私のライフワークも科学技術政策の充実です。昨年は10兆円規模の大学ファンドを創設し、研究開発や人材育成に対する支援を飛躍的に向上させる取組を立ち上げました。岸田政権の戦略を加速するためにも、さらに各種政策の立案と実行に力を注ぎ、「人材教育とイノベーションの力で日本の未来を創る」という私の夢の実現をめざします。

 我が国の現行憲法は制定から70年余り、一度も改正されていません。国際情勢や社会規範の変化に応じて、新たな法を定め、古くなった制度を改めていくのが立法府の責務です。国家の基本法といえども法律の一つ、必要に応じて時代に適合した姿に改めていくべきものでしょう。憲法改正は、我が党の党是です。改正国民投票法も成立し、手続きは整いました。安全保障や緊急事態への対処方策、新たな権利や義務の導入等々、いよいよ本格的な議論を始動する時。各党との議論も進め国民の広い理解を喚起していきます。

 今年こそは、新型コロナウィルスとの闘いに終止符を打ち、数十年後の未来を見据えた「日本の在り方」を定める節目の年になると考えています。再び”ジャパン・アズ・ナンバーワン”と呼ばれる日をめざすべく、日々努力を重ねてまいります。

 年頭にあたり皆様のより一層のご健勝とより一層のご活躍を祈念致しますとともに、本年も引き続いてのご支援、ご指導の程よろしくお願いいたします。

年の瀬2021

先週末24日には令和4年度予算案が閣議決定され、永田町も霞が関界隈もすっかり静かになりつつある。来年度の一般会計予算の総額は107兆5964億円、今年度の当初予算を9867憶円上回って過去最大となった。

 

思えば、私が初めて当選した頃の閣議決定は、もっと暮れも押し詰まった時期だった。まず、20日頃に財務省(当時は大蔵省)から内示があり、それを契機に政務調査会の部会を中心に議員が一斉に動き出す。霞が関の各省庁政務次官(当時)室には夜食や飲み物が用意され、関係者や多くの議員が激励に訪れていた。新人議員の頃は、夜になると省庁を片っ端からハシゴしていたものだったが、今はそのような風景は全く見られない。

 

現在では、シーリング(概算要求基準)の徹底などで実質的な予算折衝はかなり早い時期に決着しており、大臣折衝は単にセレモニーとして行われることが多い。今年も21日に臨時国会閉幕とともに、まだ予算編成中にもかかわらず党本部は閑散とした状況になった。「霞が関マフィア」と呼ばれ、省庁をハシゴしていた頃が少しばかり懐かしい。

 

年末恒例の今年の漢字は「金」。振り返れば、東京オリンピック・パラリンピック、総裁選、総選挙と非常に中身の濃い1年であった。また、昨年に引き続きコロナ対応に追われた1年でもあった。

 

ワクチン接種も進み一時は終息に向かうかに思えた新型コロナウイルス感染症だが、新種の変異株であるオミクロン株の出現により、海外では再び感染が拡大している。水際対策の強化で新株の侵入を防止しようとした我が国だが、徐々に市中感染が広がってきてしまった。ある程度の感染拡大は覚悟し、医療体制の充実を急ぐ必要がある。

 

そんな2021年もあと1週間を残すのみ。平年であれば、我々にとって年末年始は忘年会や新年会と繁忙期であるはずだが、昨年に続き今年も、案内は極めて少なくなっている。この機会に溜まっている資料に目を通したり読書に勤しんだりしながら、この国の行く末について改めてじっくり考えてみるのもわるくない・・・などと思う年の瀬である。

論戦スタート

このところ急激に感染が広がっている新たな変異ウイルス、オミクロン株。11日時点でのまとめでは、57の国と地域で確認されていると、報じられている。我が国では空港検疫などで10日までに13人の感染者が確認されたものの、今のところ市中感染はない。

オミクロン株については、「感染力は強いものの、重症化する様子はあまり見られていない」との情報もあるが、最終的な毒性の判断にはもう少し時間が必要だろう。

新型コロナ第5波の猛威は漸く収束してきたが、間もなく年末年始の人流が増える季節となる。オミクロン株の侵入やデルタ株の再興に対する十分な備えを取らなくてはならない。

その対策の一つがワクチン接種だ。

すでにわが国では人口1億2,622万人のうち接種者は1億人(79.0%)を超え、2回目の接種者も97,941万人(77.3%)を数えている。だが、ファイザーワクチンの接種効果が半年後に半減したというデータがあり、オミクロン株の拡大懸念からも3回目の接種が必要と言われている。

政府は当初、3回目の接種間隔はおおむね8か月以上とする方針であったが11日、高齢者や重症化リスクの高い人などをはじめ地域の実情に応じて6か月以上とし、前倒し接種を可能とした。

ここに至る過程で厚労省は6か月だと供給が間に合わないと逡巡していたが、党からの強い要請により方針が変更された。前二代の政権では「政高党低」(党より政府の力が強)とよく言われたが、“人の話をよく聞く”「政高党高」の岸田内閣となり、バランスの良い

政党政治へと着実に変化しつつある。

18歳以下への10万円給付についても、現金とクーポン併用支給を原則としている政府に対しても、各地の自治体から全額現金にすべきだとの声が相次ぎ混乱が続いている。

岸田総理は代表質問の答弁で柔軟対応を示唆してはいるが、条件付きで分かりにくく歯切れが悪い。事務処理の簡便さから、ほとんどの市町村が現金支給を希望している模様だ。条件をつけずに市町村の選択に任せるべきである。国家の命運を左右するような問題ではない。方針変更をためらうべきではない。

国会では各党の代表質問に続き、13日から衆院予算委員会で令和3年度の補正予算案の実質的な審議が始まる。岸田政権にとっては初めての予算委員会、代表質問とは異なる一問一答の本格論戦である。

与党側は、新型コロナ対策の強化や経済の立て直しに向けて、審議を着実に進めて来週半

ばには補正予算案の衆院通過を図りたい考えだ。対する野党側は、10万円給付をめぐる政府方針の混乱を質すと言われているが、議論すべきはそれだけではあるまい。

今の日本には解決すべき課題が国内外に山積している。総選挙を経て野党の構成も大きく変わった。野党第一党・立憲民主党にとっても泉健太新体制で臨む初の委員会審議である。これまでとは違った、実りある論戦が行われることを期待したい。

それが政治改革の第一歩となると私は確信する。

近況報告

政府は19日、臨時閣議を開き、1.新型コロナの感染拡大の防止 2.「ウィズコロナ」下での経済社会活動の再開と次なる危機への備え 3.未来社会を切り開く「新しい資本主義」の起動 4.防災・減災、国土強じん化の推進など安全・安心の確保、を柱に据えた新たな経済対策を正式に決定した。財政支出は過去最大の55.7兆円で、民間資金も入れた事業規模は78.9兆円となる。

4本の柱の中で今後の日本経済の針路を示すのは、「新しい資本主義」への起動である。賃上げを行う企業への税制支援、看護・保育・介護の現場で働く人々の給与引き上げ、最低賃金引上げ助成など経済的弱者を支える分配戦略に意を用いつつ、分配すべき糧を拡大する成長戦略にも力点を置いている。

なかでも、注目すべきは成長戦略のど真ん中に科学技術イノベーション政策が据えられていることだ。その核となる大学の研究レベルを高めるため、10兆円規模で“大学ファンド”を年度内に設置、世界に伍する研究大学を実現するため来年度から運用を始める。

さらに経済安全保障の強化として、先端的な重要技術の研究開発や実用化の支援のため、5,000億円規模となる基金の創設も盛り込まれた。念頭に置く分野は人工知能(AI)や量子技術、宇宙開発などである。政府は今年中に関連するシンクタンクを創設する予定で、大学など研究機関を支援する。

国産のワクチン開発や治療薬開発も含め、今回の補正予算における科学技術関係予算の総額は2.2兆円余りとなる。科学技術・イノベーション調査会からの提案はほぼ盛り込まれており、私としては満足できる結果となっている。

総選挙後、党や国会で一連の人事が行われた。自民党においては、私は引き続き「科学技術•イノベーション戦略調査会会長」を務めることになった。

世界を見渡すと、ポストコロナの国家間の技術覇権争いの動きが益々激化している。AIや量子などの新興技術や、先端半導体製造といった先進基盤技術について、その経済安全保障上の重要性が強く認識され、各国で多額の投資が行われている。また、カーボン・ニュートラルの実現など地球規模の課題解決のため、イノベーションへの抜本的投資強化を打ち出す必要もある。これまで以上に調査会の役割が増え、より闊達な議論が求められると予想される。しっかりと責任を果たしていきたい。

一方の衆議院では、「国家基本政策委員会委員長」に就任することになった。「国家基本政策委員会」とは何の審議をするのか分かりにくいと思うが、「党首討論」と言えば分かり易いだろう。このところ存在感が低下していると言われているが、国家の在り方、方向を探るべく、党首間による活発な議論が実現するよう努力したい。

11月も後半となり、コロナ対策や東京オリンピック・パラリンピック、自民党総裁選や総選挙と様々な出来事があった2021年も残すところ40日余り。年末に向けて臨時国会はもちろん恒例の税制改正議論や来年度予算編成引き続き慌ただしい日々が続くが、緊張感を持って国政に臨んで行きたい。

国民の審判

10月14日午後1時から開かれた本会議で衆議院は解散され、19日公示、31日投開票に向けて事実上の選挙戦に突入した。

解散によって議員らは立候補者となって議席を争うことになる。いわば、解散は議員らへの「リストラ宣言」でもある。「クビ」になったのに、なぜ目出度いことを祝うかのように万歳をするのだろうか?

解散後の「万歳」が初めて記録されたのは、1897年(明治30年)のこと。12月25日の「第11回帝国議会」の会議録を確認すると、当時の鳩山和夫議長(鳩山由紀夫氏の曽祖父)が解散詔書を読み上げ解散を宣言した後、「拍手起リ『萬歳』ト呼フ者アリ」と記載されている。その由来については、「景気づけ」「やけっぱち」「内閣への降伏の意」「天皇陛下への万歳」など…。諸説あり、理由は定かではない。

「ばんざーい、ばんざーい、ばんざーい」。衆院解散でおなじみの光景だが、14日の解散時、万歳しなかった小泉進次郎氏は「みなさん、万歳三唱をみましたか。解散のときにみんな、万歳を言うんです。なんで言うんですか?国民のみなさんに大声を出すのをやめましょうと言っているじゃないですか。本会議場でなぜ、大声でばんざーいって言っているんですか」とぴしゃりと言い放ったという。

私も同じような理由で万歳をしなかったことがあるのだが、その時の選挙で落選してしまった。万歳をしなかったから落選した落選したわけではないと思うが、それ以来私は何も考えずに万歳することにしている。

今回も日本維新の会のみなさんが同じ理由により万歳しなかったと報道されていた。それも一理あると思うが、事前にそんな話があっても、おそらく私は万歳をしていただろう。ただし、大声はださないで。

今回の衆議院選挙に立候補せず、今期限りでの引退を表明している議員がおよそ30名いる。

自民党では、12回連続で当選し、今回の解散詔書を朗読した大島理森議長や、衆議院議長や閣僚、党の幹事長などを歴任した伊吹文明氏、運輸大臣や厚生労働大臣などを務めた川崎二郎氏らである。

立憲民主党では、農林水産大臣、衆議院副議長などを歴任した赤松広隆氏や国家戦戦略担当大臣などを務めた荒井聰氏ら。公明党では党の代表などを務めた太田昭宏氏、幹事長などを務めた井上義久氏らが引退。また、社民党のベテラン照屋寛徳氏も。

振り返れば私が初当選したのが1986年、同期性は確か67人いたと記憶している。

35年が経過して今回も立候補を予定しているのは、私を含めてわずか5人となった。些か複雑な気持ちにさせられる。私もそろそろ身の処し方について考えなければならないかもしれないが、今回の出馬には全く迷いは無い。

岸田文雄新総理は、成長戦略のど真ん中に「科学技術・イノベーション戦略」を謳っている。

私がライフワークとして取り組んできた仕事だ。これまで温めてきた政策がいよいよ結実する時がきた。

私にはやりたいことがある。まだやれることがある。その為にはこの選挙で国民の審判を受け、信託を得なければならない。そして、日本の未来を切り拓く為に再度国政の場で働きたい。それが今の私にとって「未来への責任」を果たすことと、確信している。

コロナ対策を優先すべし

17日にスタートを切った自民党総裁選も、残すところ1日。メディア各社は

各候補の獲得票予想と解説に忙しい。永田町では派閥所属議員の投票行動予想を

カラーで色分けした一覧表まで出回っている。今回は前回、前々回と違い、派閥

の締め付けがきつくないので、投票行動の予想が難しい。



 現時点では国民の人気の高い河野太郎候補が4割強の党員票を獲得して、リー

ドしている。しかし、一回目の投票で議員票と合わせて総得票数の過半数382

票を獲得するには至らず、1、2位による決選投票になることが確実視されてい

る。決戦投票では地方票が47票に減るため、382票の議員票の行方が結果を

大きく左右することになる。



 過去の総裁選では、最初の投票で1位だった候補が決戦投票で逆転されるケー

スが2回あったが、今回は直後に衆議院総選挙が控えている。比較的国民世論と

近い傾向にある党員票の結果を永田町の論理で逆転することは、総選挙にマイナ

スに働くことは間違いない。議員心理は自ずと党員票を尊重する方向に流される

だろう。



 私は5割の党員票獲得が判断基準の目安になると考えている。自民党員のみと

は言え、全国100万人余りの民意を反映する票数である。その過半数を占める

支持を得た候補を382人の国会議員の意思で覆すのはいかがなものだろうか。

現に河野氏陣営では「党員票の多数を得た候補を決戦投票で逆転すれば、批判さ

れて衆院選で痛い目に合う」とけん制する。これに対し閣僚経験者は「河野氏の

党員票が5割以上なら逆転は許されない雰囲気になるが、5割未満なら『反河

野』が半数以上いることになり、逆転は許される」と話す。


 
 決戦投票では派閥の論理も強くなると言われているが、そんな自民党の体質が

問われていることを忘れてはいけない。当選3回以下の集まりで、派閥中心の総

裁選びに異議を唱える「党風一新の会」の動きに期待したい。



 新しく選出された自由民主党総裁は、10月4日に召集される臨時国会で首班

指名を受け、第100代内閣総理大臣に就任し、組閣作業を経て新しい内閣が誕

生する。

その後本会議で新しい内閣の所信表明演説を行い、各党の代表質問を経て新政権

の基本姿勢が確認された後、衆議院は解散総選挙に突入する。



 総選挙はコロナ対策が大きな争点となりそうだ。しかし、私はこの問題は選挙

で争うべきではないと考える。パンデミックと言う国家的危機に際しては、与党

も野党も関係ない。必要があれば総選挙を少々遅らせても、医療体制の整備や経

済支援策等、当面のコロナ対策について党派を超えて臨時国会で議論し、できる

だけ多くの意見を集約して解決策を見出し克服すべきである。



 そして来るべき総選挙では、残った問題のみを争点にすれば良い、それが今、

政治が果たすべき責任だ。

自由民主党総裁選挙に臨んでの私の選択

長い政治生活の中で、自民党総裁選を戦うのは今回で9回目となるが、今回ほ

ど支持候補の選択に悩まされたことはない。

 過去2回は駆け出し議員の頃からの盟友である石破茂氏の推薦人として、選挙

戦の最前線に立っていた。今回も石破氏が出馬していれば推薦人に名を連ねてい

ただろう。しかし、彼は長考の末15日に出馬を断念、河野太郎氏支援を表明し

た。この時点で、私は支持すべき候補をゼロベースで再考せざるを得なくなった。



 私は前回のコラムで「国民の関心事に応える意味のある政策論争が行われるこ

とを、切に願っている。」と言及た。総裁選は日頃の党内での政策議論を党員・

党友の皆様に、さらには国民の皆様に披露する絶好の機会だ。

 自民党は責任与党として多様な国民のニーズに応える現実的な政策を推進しな

くてはならない。その立案のために、常に幅広い視点で議論を積み重ね、政府に

提言、提案を繰り返している。そして多分野にわたる議論を支えるのは、全国各

地から選出された多彩な人材である。総裁選での政策論争は、この日々の議論の

集大成でなくでならない。



 こういった視点で、改めて15日までに出馬を表明していた3氏の主要政策を

見渡してみた。確かに、コロナ対策を皮切りに外交、防衛、経済、エネルギーな

ど幅広い分野で政策論が競われているが、一人ひとりの個性を重んじるリベラル

な主張、相互に違いを認め合い社会の絆を再生する、やさしさにあふれる日本を

創るといった観点での政策諭が弱いのではないかと感じた。



 一方で、立候補に向けて活動を続けていた野田聖子氏からは、かねてより「石

破さんが出ない時は推薦人なって欲しい」旨、繰り返し要請を受けていた。野田

氏の主要政策は、子ども・女性・障がい者・介護・貧困問題など、社会的弱者に

重点を置いたものだ。

 本格的な人口減少時代を迎える今、少子化対策はもとより、女性や高齢者、障

がい者の活躍を牽引する政策が不可欠である。野田氏の “人口減少は国家有事”

との認識、少子化対策を国家の最重要課題と位置づけ、子どもへの投資をあらゆ

る課題解決のカギとする理論は、永年、教育政策に取り組んできた私の政策論と

も軌を一にするところがある。



 岸田文雄、高市早苗、河野太郎の3氏に加えて、野田氏が出馬することで、重

要な政策論点である人口減少社会を展望する議論が期待できる。政策論争の幅が

広がり、自民党国会議員の層の厚さを示すことができる。このように判断し、告

示日前日の16日に野田氏の推薦人になることを決意した。



 今回の総裁選、コロナ禍のため全国遊説は控えることとなる。一方で、29日

の投開票まで様々な形でのオンライン討論会が予定されており、YouTubeでも配

信されるだろう。党員・党友の皆様には、4人の候補者の主張を十分吟味のうえ、

一票を投じていただきたい。