六甲おろしをもう一度

阪神タイガースが2005年以来18年ぶり6回目のリーグ優勝を決めたのは9月14日のこと。阪神ファンは歓喜の渦に包まれた。岡田監督が宙に舞い、“六甲おろし”が甲子園の夜空に響き続けた。それから36日後の10月20日、セ・リーグのクライマックスシリーズ(CS)のファイナルステージ第3戦で広島カープに4対2で競り勝ち、9年ぶりの日本シリーズ進出を決め、再び“六甲おろし”の大合唱が甲子園の夜空を覆った。

21日には、オリックスもパ・リーグのCSファイナルステージを突破、3年連続で日本シリーズ進出を決めた。この結果、今年の日本シリーズは、阪神タイガースとオリックスバファローズの戦いとなり、1964年以来59年ぶりに関西対決(※)、いわゆる「関西ダービー」が実現した。

 

経済効果測定の専門家宮本勝浩・関西大学名誉教授の試算では、関西ダービーによる経済効果は全国で約1449億円という。その内訳は、阪神優勝が約969億円、オリックスは約359億円。さらに、日本シリーズで25万人あまりの観客が見込まれ、121億円の上積みが期待される。これらの効果額のうち9割近い1304億円が関西エリアのものということだ。

宮本名誉教授は「物価高の世の中ではあるが、スポーツなどへの消費にはあまり影響は出ないとみている。関西のスポーツファンは、特に盛り上がりが激しく消費に繋がるので、関西経済に大きなプラスになる」と解説している。

 

いよいよ今週土曜日、28日から日本シリーズが開幕する。まずオリックスのホーム・京セラドーム大阪で2試合行い、31日からは甲子園での3連戦が予定されている。我らが阪神タイガースにはCSを全勝で勝ち抜いた勢いで、連戦連勝で日本一を勝ち取って欲しいものだ。もう一度、甲子園に“六甲おろし”の大合唱が響き渡ることを願いつつ、今年のプロ野球の総決算を楽しみたい。

 

その決戦の前に、先週末には第212回臨時国会が召集され、24日から岸田文雄総理の所信表明を受けた各党代表質疑がスタートする。先の内閣改造後初めての本格的な論戦である。当面の政策課題は物価高騰であり、早急に経済対策をとりまとめ、その裏付けとなる補正予算の成立を目指すことになる。

 

景気の“気”は、気分の“気”と言われる。先行きに明るい気持ちを持っていれば、自ずと消費や投資も拡大し、経済が活性化するものだ。関西ではタイガースとバファローズが上昇気流をもたらしてくれた。この流れを持続、拡大させるためにも、将来の不安を払拭し、日本全体が夢を描ける成長戦略を立案しなくてはならない。引き続き緊張感をもって国会審議に臨みたい。

 

 

※関西対決:阪神タイガースVS南海ホークス。阪神の主力選手は、村山実、ジーン・バッキー、吉田義男、山内一弘、遠井吾郎ら。南海は野村克也、杉浦忠、ジョー・スタンカ、広瀬叔功ら。タイガースは3勝2敗と王手をかけたが、6・7戦ともスタンカに完封され大魚を逸した。因みに、59年前は10月10日から東京オリンピックが開催されたため、シリーズは盛り上げに欠けた。