自由民主党総裁選挙に臨んでの私の選択

長い政治生活の中で、自民党総裁選を戦うのは今回で9回目となるが、今回ほ

ど支持候補の選択に悩まされたことはない。

 過去2回は駆け出し議員の頃からの盟友である石破茂氏の推薦人として、選挙

戦の最前線に立っていた。今回も石破氏が出馬していれば推薦人に名を連ねてい

ただろう。しかし、彼は長考の末15日に出馬を断念、河野太郎氏支援を表明し

た。この時点で、私は支持すべき候補をゼロベースで再考せざるを得なくなった。



 私は前回のコラムで「国民の関心事に応える意味のある政策論争が行われるこ

とを、切に願っている。」と言及た。総裁選は日頃の党内での政策議論を党員・

党友の皆様に、さらには国民の皆様に披露する絶好の機会だ。

 自民党は責任与党として多様な国民のニーズに応える現実的な政策を推進しな

くてはならない。その立案のために、常に幅広い視点で議論を積み重ね、政府に

提言、提案を繰り返している。そして多分野にわたる議論を支えるのは、全国各

地から選出された多彩な人材である。総裁選での政策論争は、この日々の議論の

集大成でなくでならない。



 こういった視点で、改めて15日までに出馬を表明していた3氏の主要政策を

見渡してみた。確かに、コロナ対策を皮切りに外交、防衛、経済、エネルギーな

ど幅広い分野で政策論が競われているが、一人ひとりの個性を重んじるリベラル

な主張、相互に違いを認め合い社会の絆を再生する、やさしさにあふれる日本を

創るといった観点での政策諭が弱いのではないかと感じた。



 一方で、立候補に向けて活動を続けていた野田聖子氏からは、かねてより「石

破さんが出ない時は推薦人なって欲しい」旨、繰り返し要請を受けていた。野田

氏の主要政策は、子ども・女性・障がい者・介護・貧困問題など、社会的弱者に

重点を置いたものだ。

 本格的な人口減少時代を迎える今、少子化対策はもとより、女性や高齢者、障

がい者の活躍を牽引する政策が不可欠である。野田氏の “人口減少は国家有事”

との認識、少子化対策を国家の最重要課題と位置づけ、子どもへの投資をあらゆ

る課題解決のカギとする理論は、永年、教育政策に取り組んできた私の政策論と

も軌を一にするところがある。



 岸田文雄、高市早苗、河野太郎の3氏に加えて、野田氏が出馬することで、重

要な政策論点である人口減少社会を展望する議論が期待できる。政策論争の幅が

広がり、自民党国会議員の層の厚さを示すことができる。このように判断し、告

示日前日の16日に野田氏の推薦人になることを決意した。



 今回の総裁選、コロナ禍のため全国遊説は控えることとなる。一方で、29日

の投開票まで様々な形でのオンライン討論会が予定されており、YouTubeでも配

信されるだろう。党員・党友の皆様には、4人の候補者の主張を十分吟味のうえ、

一票を投じていただきたい。