終盤国会

6月7日、「経済財政運営と改革の基本方針2022(骨太方針2022)」が閣議決定された。

骨太方針2022では、日本のマクロ経済運営について、2段階のアプローチを提示。まず第1段階で、総合緊急対策により厳しい状況にある人々を全力で支援、そして第2段階で、新しい資本主義に向けたグランドデザイン・実行計画をスタートさせるための総合的な方策を実行していくとしている。

岸田総理は、新しい資本主義について「市場や競争任せにせず、資本主義が本来もたらす便益を最大化、最適配置する」と基本方針を示し、「気候変動問題やSDGs(持続可能な開発目標)など、社会的課題をエネルギー源と捉え、新たな成長を図る」とも述べている。

 

具体的な政策としては、①人への投資と分配、②科学技術・イノベーションへの投資、③新ビジネスや市場開拓をおこなうスタートアップへの投資、④グリーントラスストインフォメーションとデジタルトランスインフォメーションの4分野に重点を置くとした。

 

人への投資については、2024年度までの3年間で、一般から募集したアイデアを踏まえた4000億円規模の施策パッケージを講じる。労働者が自らの意志でスキルアップし、ITなどの成長分野で働けるよう支援することなどが盛り込まれた。

 

また、グリーントラストインフォメーションについては、2050年の脱炭素社会実現に向けた経済・社会、産業構造変革への道筋の大枠を示したロードマップを年内に取りまとめる。

 

今年度の骨太方針の特色は、昨今の国際環境の変化に対応すべく、防衛力の抜本的強化が明示されたことだろう。その内容については、党政調会での議論の段階で、予算額や期限について、多くの議員が発言、長時間に及ぶ会議を経ても決着がつかず高市早苗政調会長預かりとなった。最終的にはNATO=北大西洋条約機構の加盟国がGDP=国内総生産の2%以上目標としていることを例示したうえで、防衛力を抜本的に強化する期限を「5年以内」とすることで決着した。

 

防衛力強化以上に激しい党内論戦が交わされたのが、歳出改革に関する表現方法についてだ。積極財政派から「政府原案の「骨太方針2021に基づき」という文言を削除すべきだ」(=2025年度という財政健全化目標時期を先送りせよ)という多くの主張が行われ、会議が紛糾、一時は怒号が飛び交う状況となり、取りまとめが難航した。“積極財政派”と“財政再建派”の全面対決は、岸田総理も巻き込んだ調整の結果、「骨太方針2021に基づき」との表現は維持する一方、「重要な政策の選択肢をせばめることがあってはならない」という一文を追加する玉虫色の表現で決着した。参議院選挙を目前にして党内の分裂を避けなけなければという求心力が働いたもの、野党の現状とは正反対だ。

 

骨太方針決定の二日後、9日には会期末恒例の内閣不信任案が出されたが、野党の足並みの乱れもあり圧倒的多数で否決。15日には今国会も閉幕となり、22日からは参議院選挙がスタートする。岸田内閣として評価が問われる初めての国政選挙だ。現状では与党に有利と報道はされているが、選挙は一瞬にして風向きが変わることがある。勝利が確定するときまで、気を緩めることなく臨まなければならない。今年も暑い夏になりそうだ。

格別の配慮

沖縄の本土復帰50年にあたる5月15日、天皇皇后両陛下のご臨席の下、政府と沖縄県の共同主催による記念式典が宜野湾市と東京都港区の2つの会場をオンラインで結んで開催された。私も国家基本政策委員会委員長として出席した。

戦後27年間、アメリカの占領下にあった沖縄が本土に復帰したのは、1972年5月15日のこと。復帰に先立つ1965年年8月19日、現職の首相として初めて米国統治下にあった沖縄を訪問した佐藤栄作氏は、「沖縄の祖国復帰が実現せずには、わが国の戦後は終わらない」と述べ、沖縄返還に強い意欲を表明した。

私が初めて沖縄の土を踏んだのは今から約20年前。先輩議員に誘われ、世界初の海水による揚水発電所「沖縄やんばる海水揚水発電所」を視察した際のことだ。

国政に参画して以来、「一度は沖縄戦の戦跡をこの目で見なければ」と考えていたので、視察と併せて“平和の礎(いしじ)”や“ひめゆりの塔”など数か所の戦跡を訪れた。その中でも最も印象に残ったのは旧海軍司令部壕だ。

この壕は、日本海軍沖縄方面根拠地隊司令部のあった所で、その一部が現在公開されている。約4000名の将兵が壮絶な最期を遂げた壕内は、司令官室、作戦室などが当時のまま残され、戦争の悲惨さ残酷さを訴え、平和を願う場所となっている。

大田実海軍司令官の※「糧食六月一杯ヲ支フルノミナリト謂(い)フ 沖縄県民斯ク戦ヘリ 県民ニ対シ後世特別ノ御高配ヲ 賜ランコトヲ」と云う大本営に宛てた最終電は、自決直前にこの海軍壕の指令室で書かれたという。日本で唯一、地上戦に住民が巻き込まれてしまった沖縄戦。当時この電文を見て胸に期するものがあったと記憶している。以来、沖縄問題に関わる機会も少なく、思い出すこともなかったのだが…。

その後、文部科学大臣就任直後に教科書検定問題で沖縄に深く関わることになり、海軍壕の記憶も自ずと蘇ることになった。08年度から使われる高校教科書の検定で、「沖縄戦を巡る住民の集団自決に旧日本軍が関与した」という記述の修正を求める意見が付き、担当大臣として対応を求められたのだ。

軍の関与の有無について見解が真っ二つにわかれ、沖縄県民による大規模な抗議集会が開かれたのが就任直後。その約3ケ月間は予算委員会や文科委員会の答弁や記者会見で対応に追われた。当時、文科省は建て替えのため丸の内の仮庁舎に移転していたが、ビルの前では毎日のように様に激しいデモが行われていた。

最終的には「学説が軍命令の有無よりも集団自決に至った精神状態に着目して論じたものが多い」とし、「軍の直接的な命令は確認できないとしながらも、集団自決の背景には当時の教育や訓練があり、集団自決が起きた状況をつくり出した」との検定意見がつけられた。そして、各出版社が軍の強制に触れない形に自主的に修正することで決着した。

復帰50年記念式典の一週間後、22日(日)には、世界レベルの研究拠点の形成を推進するOIST(沖縄科学技術大学院大学)設立10周年記念式典に出席した。

観光業と建設業以外にこれといった経済資源がないと言われる沖縄だが、OIST発のスタートアップ企業が大きく羽ばたき、地域振興の一翼を担うことができれば、少しは「格別の配慮」に貢献できるかもしれない。東ヨーロッパの戦場の市民生活にも思いをはせつつ、そういう思いを新たにした今回の沖縄訪問であった。

 

※「沖縄県民はこのように戦いました。県民に対して後世特別のご配慮をして下さいますように」

国家の基本は”人づくり”

ゴールデンウイークが始まった。新型コロナによる行動制限がない大型連休は3年ぶりで、交通機関も行楽地やふるさとに向かう人たちで久々に混雑している。

連休直前の4月27日、立憲民主党の泉健太代表は記者会見を開き、夏の参議院選挙にむけての重点政策を発表した。代表は国民生活を守る「生活安全保障」をキャッチコピーに、“物価高と闘う”“教育の無償化”“着実な安全保障”を3本柱と位置づけ、5月中にも公約を策定する考えを表明している。

3本柱はいずれも重要課題だが、そのうち教育無償化についてである。

そもそも義務教育(小中学校)については憲法26条により無償と定められている。高校については2010年の「高等学校等就学支援金制度」スタートとともに国公立高校が無償となり、さらに同制度の上限が年間39万6000円に引き上げられたことにより、私立高校についても実質無償化された。残るは高等教育(大学、短大、高専、専門学校)である。

2017年には消費税増税による増加財源の一部を用いて、 “生産性革命”と“人づくり革命”を実現しようという「新しい政策パッケージ(2兆円)」が策定された。

人づくり革命の柱は、授業料減免や給付型奨学金を中核とする高等教育の修学支援新制度と幼児教育・保育の無償化で、2020年からスタートしている。ただ、修学支援新制度の対象者は、ごく一部の低所得者層に限定された偏ったものとなっており、中間所得層への支援拡大が大きな課題となっている。

このため、自民党内では修学支援新制度の見直しに向けて検討を進めてきた。この見直しの一環として、教育・人材力強化調査会では、大学の授業料や入学金の支払いを国が立て替え、学生本人が卒業後に支払い能力に応じて所得の一定割合を返済していく「卒業後拠出金制度(J-HFCS)」構想の検討を重ねてきた。これは、1989年にオーストラリアが導入したHECSの日本版である。

家庭の経済力が、高等教育の格差の要因となってはならない。J-HECS構想は“出世払い奨学金”とも言われ、高等教育をこれまでの「親の負担」から「本人と社会の共同負担」に転換する制度だ。今年4月に施行された「成年年齢の引き下げ」の理念※にも添う。

岸田文雄総理は、所信表明演説や国会審議の答弁でこの出世払い奨学金について再三言及しているし、自身が提唱する「新しい資本主義実現会議」の緊急提言の中にも具体策として盛り込んでいる。先頃開催された教育未来再生会議では、改めて末松信介文科大臣に新奨学金制度の創設検討を指示している。

冒頭に述べたように、立憲民主党も教育無償化をめざしている。日本維新の会もかつて、「教育無償化法案」を提出している。国民民主党や共産党も基本的な方向性に異論はないだろう。その意味では、次回の参議院選挙で各党がこの問題について、それぞれの考え方と具体的手法をまとめ、公約として政策提言することが望まれる。

人づくりは国家の基本。日本の未来は教育政策の内容にかかっていると言っても過言ではない。各種世論調査では、景気対策や社会保障、またコロナ対策と比べて関心が高いと言えないが、各党が公約に掲げ、議論を展開することで、国民の関心が高まることを期待している。

※18歳、19歳の若者の自己決定権の尊重により、積極的な社会参加を促す。

東播磨の祭り、国恩祭

私の地元である東播磨地区では、五穀豊穣に感謝する秋まつりが非常に盛んで、地域コミュニティーの一大イベントとなっている。が、それ以外にも「国恩祭」というお祭りが春に行なわれる。このお祭りは、兵庫県の東播磨地域、加古(旧加古郡)と伊奈美(旧印南郡)において、3月末から5月初頭に行われる臨時の祭りである。

現在は22社(加古支部11社・伊奈美支部11社)の神社が参加し、それぞれの支部内で輪番で行なわれるので、11年に一度当番が回ってくることになる。

今年の輪番は、加古支部の尾上神社と伊奈美支部の生石神社(おおしこ・日本三奇の石乃寶殿がある)。17日の日曜、再興された尾上神社の国恩祭神事に来賓として出席した。コロナ禍で2年間秋祭りもなかったので本当に久しぶりの参拝である。

国恩祭の起源は天保4年(1833年)まで遡る。天保4年から10年まで続いた江戸時代の三大飢饉の一つと言われる“天保の大飢饉”は、全国各地で百姓一揆や打ちこわしが頻発し、大坂の大塩平八郎の乱の原因にもなった。

ふるさと東播磨も大飢饉により人心が荒廃し、それを憂いた地域の神職たちが集い、郷土の繁栄と安泰を願うための「祓講」という神社の組合組織を結成し、臨時大祭を行ったのが始まりと言われる。実に来年で190周年を迎える。

当初からの習わしではないだろうが、今ではこの国恩祭に照準をあわせて氏子から寄付を募り、神社の整備を行うことが恒例となっている。

古来より神社は地域社会の中核をなす施設、地域住民の心の拠り所でもあった。その神社を定期的に改修修繕するシステムとして国恩祭が機能していることは、まことに興味深い。似たような祭りは他にもあるかも知れないが、神社の施設改修制度はここだけではないだろうか。

ならば、「日本遺産」に手を挙げようと、話を出してみたこともあったが、関係者間の意見集約が整わないまま立ち切れになっていたのだが…。

尾上神社の神事後の式典挨拶で神社総代が日本遺産に言及し、来賓として出席していた他の神社総代に呼びかけていた。これを契機に今後関係者の意見調整が整い、地域住民の間で盛り上がりを見せれば、再度「日本遺産登録」に向け、再度汗をかいていきたい。

尾上神社では午後から”お稚児さん行列“も行われるとのことで、露天商が並び人出も結構あり賑わっていた。連休の5月4日には伊奈美支部の輪番である生石神社でも国恩祭が挙行される。

コロナの減衰とともに、地元のイベント案内の数も少し戻りつつある。一方、沖縄などでは感染拡大が再燃しつつあるようだ。ただ、世界の主要国がウイズコロナ政策に転換し、日常生活を取り戻しつつある今日、我が国のみが再度行動制限を強化する選択は取りにくい。日本民族の大移動が予想されるゴールデンウイークを目前に、政府には難しい舵取りが求められている。

いずれにしても、今年の秋祭りが3年ぶりに盛大に執り行われるよう、心から願っている。

高等教育無償化…出世払い

改正民法が4月1日に施行され、民法制定(1876年)以来初めて成年年齢が20歳から18歳に引き下げられた。今回の改正の目的は、「自己決定権を尊重し積極的な社会参画を促す」ためだ。例えば、携帯電話を契約する、一人暮らしの部屋を借りる、クレジットカードをつくる、といった行為が親の同意なしに自分一人でできるようになる。

親権に服さなくなるという意味では、住む場所、進学や就職などの進路なども自分の意思で決定できるようになる。この「親の考えに関わらず自分の意思で進路を決定する」との考え方は、我々がこれまで党内で進めてきた“出世払い方式による高等教育の支援策(J-HECS)”の考え方のベースにもなっている。

現在、日本の大学生の大半は、親に学費や生活費を負担してもらわざるを得ない。それ故に、自分の意向に沿った進路選択ができないケースも多い。

「出世払い」方式はオーストラリアなどが採用している制度で、授業料や入学金を政府が立て替え払いし、学生は在学中の学費支払いが不要となる。卒業後、一定の年収を得られるようになった段階で、所得に応じた額を分割納入する仕組みだ。この方式であれば、親の経済力に左右されず、自らが望む学びの場にチャレンジすることができる。

一方で親の立場から見ると、教育費をはじめとする子育て経費の負担が、子どもをつくる際の最大のハードルとなっている。少子化を克服し、急速な人口減少速度を緩和するためにも、教育費の軽減は重要な政策課題である。高校まではすでに無償化されており、大学等の高等教育対策が急がれる。

私はここ数年来、党・教育再生実行調査会で「恒久的な教育財源確保に関する調査会チーム」の主査として、高等教育無償化のスキームづくりに取り組んできた。J-HECSはその解決策の有力な選択肢である。財源負担も小さく、私は最も現実的かつ公平な解決策であると考えている。が、党内では賛否両論がある…。

反対意見の主なものが、「教育費は本来親が負担すべきもの、親世代の負担を子世代に先送りすべきでない」というもの。世論調査では「親が負担すべき」との回答が5割を超えているが、世代間で意見が分かれる問題である。

「新しい資本主義」を掲げる岸田文雄総理の目玉政策の一つが中間層への再配分強化であり、具体的には子育て世代への住居費や教育費の支援である。3月30日の教育未来創造会議で総理は、「教育人材育成、人への投資は成長の源泉だ」と言及し、「出世払い」方式の奨学金制度の創設検討を指示、5月中に制度設計を含めた提言をまとめるよう、末松信介文部科学大臣に求めた。

今後、「成長、教育・人材力強化調査会」で議論が深められるが、人への投資として「新しい資本主義実行本部」の提言でも取り上げられる予定である。様々な論点があり、2か月で意見集約するのはかなり難しい作業になると思うが、今回がラストチャンスと考え、実現に向けて最大の努力を傾注したい。

※J-HECS= Japan-Higher Education Contribution Schemeの略

ウクライナ2

ロシアがウクライナに侵攻を開始してから既に半月以上が経過した。圧倒的な戦力を有するロシア軍であるが、ウクライナ国民の強い祖国愛の前に、まだ首都キエフを落とすことはできない。

日本政府は今回のロシアの軍事侵攻について、「ウクライナの主権と領土を侵害し、力による一方的な現状変更は国際法に明確に違反する許されない暴挙である」「国際社会は結束してロシアに対して断固たる対応をすべきである」と主張している。また、「プーチン大統領はすぐにでも姿勢を改め、停戦に応じ軍を撤収するべきである」とも唱えている。G7諸国をはじめ、世界の大半の国々が同様のスタンスでロシアの暴挙をたしなめようとしている。が、プーチン大統領はそんな国際世論に耳を傾ける気は全くなさそうだ。むしろ欧米の軍事介入を警戒し、ポーランド国境付近への攻撃を強めている感もある。であれば、耳を傾けるように圧力をかけるしかない。

圧力といっても軍事力の行使は難しい(もちろん我が国にはできない)。仮にNATO軍とロシア軍が一戦交えれば、それは第三次世界大戦の始まりとなってしまうからだ。現にNATOは、自ら軍事力を行使することを明確に否定している。ウクライナはNATO加盟国ではないので、当然といえばそれまでだが、これからも自制力を維持してもらいたい。(「戦争疲れ」でアフガニスタンやイラクから撤退したばかりの米国が世界大戦を始めるとは考えにくいが…)

一方で、経済的な攻撃は強化しなくてはならない。既にG7諸国はロシアの最恵国待遇取り消しへと動いている。金融取引の停止に続き、主要国との貿易コストの増大はロシア産業に大きな打撃を与えるだろう。ロシアに立地している工場の操業停止を宣言する企業も続々と出ている。就労の場を失うロシア国民の蜂起、国内世論の喚起によるプーチン政権の政策転換は期待できないだろうか?

長期戦に対応できるようにウクライナへの支援拡充も大切だ。食糧や生活物資の提供はもちろん、継戦に必要な武器の補給は欠かせない。我が国もできる範囲内の取り組みということで、防弾チョッキやヘルメットを提供した。避難民の受け入れを宣言する自治体も数多い。

この戦争の行方については予断を許さないが、戦争終結までウクライナの人々の大きな犠牲が続くことを考えれば、我々はあらゆる手段を講じて、できる限りの支援をしなければならない。

強力な経済制裁には報復措置も避けられないだろう。交流が途絶えることによる損失も計り知れない。しかし、我々は勇気をもって行動しなくてはならない。日本が国際社会で存在感を示すためにも。

ウクライナ

国際社会の厳しい非難にもかかわらず、ロシアは2月24日、ついにウクライナに軍の侵攻を開始した。ここに至る経緯を見ると、今回のロシアのウクライナ侵攻は事前から周到に準備されていたと思わざるを得ない。国際社会に向けての一方的な情報発信により口実づくりをした上で、まずはサイバー攻撃でウクライナの情報網とインフラを機能不全にするとともに軍事施設に攻撃をかけて制空権を掌握、その上で地上部隊が国境線を超えてウクライナへ侵攻するという手順だ。

プーチン大統領は「ほかに選択肢はなかった」と述べ、軍事侵攻を正当化しているが、いったい何をそんなに恐れているのか。ウクライナがNATO入りを志向しているのは、強大なロシアの圧力から身を守るためであって、決してロシアを攻撃しようとしている訳ではない。NATOの意図もそこにない。

ロシアは本来世界の安全に責任を持つべき国連安保理の常任理事国であるが、白昼堂々と独立国の主権を力づくで侵す蛮行に及んだことは、断じて看過できない。3月1日、我が国としても強く抗議する意味で衆院で非難決議が行われた。

国際社会は一致結束してこの事態に臨まなければならない。これまでにないレベルの経済制裁等によって、今回の蛮行の代価が如何に高くつくかをロシアに知らしめる必要がある。

EUと米国は26日、ウクライナ侵攻の資金源を遮断するため追加制裁措置として、ロシアの一部銀行を国際間銀行間の送金・決済システムのSWIFT(国際銀行間通信協会)から排除することに合意した声明を出した。この措置は“金融核兵器”とも言われ、排除されるとドル建てでの送金・決済ができなくなり、ロシアは国際的な金融システムから切り離され、世界での事業展開ができなくなる。

我が国においても円決済停止となるだろう。すでに、ルーブルとロシア株式市場は暴落の様相を呈している。

ただし、副作用も生じる。エネルギー自給率の低いドイツをはじめ、欧州各国はロシアの天然ガス供給に大きく依存している。ロシア経済との長期絶縁は欧州エネルギー危機を招き、ひいては全世界的なエネルギー価格の高騰につながる可能性もある。それはあらゆる物価の上昇も招くだろう。我が国としても、こういう事態を想定した対処策も準備しなくてはならない。

領土問題は世界各地に存在する。万が一、今回のような蛮行がまかり通ることになり、各地で同様の事象が発生すれば、国際秩序に極めて大きな影響を与える。

例えばアジアにおいて、台湾や南沙諸島をめぐる情勢が急変すれば、我が国の安全保障にも大きく関わってくることになる。ウクライナ問題への対処は、遠い東ヨーロッパの紛争、対岸の火事扱いでは済まされないのだ。

日ロ間には北方領土問題など幾多の懸案があり対話は続けている必要はあるが、ここは毅然たる対応が求められている。国際社会と連携し事態の収拾を図るべくロシアに働きかけていくことが求められる。

今回の出来事を対岸の火事とせず、改めて我が国の安全保障について問い直すとともに、国民的議論を行わなければならない。今はそんな時だ。

 

*国連の動き=安全保障理事会は2月25日、ウクライナに侵攻したロシアを非難し、武力行使の即時停止と撤退を求める決議案を採択したが、ロシアの拒否権行使で否決された。日本時間1日零時、全193か国が参加する国連総会で、米国などはロシア非難決議を採択することで国際的にロシアを孤立させ圧力を強めたい考えだが、加盟国の半数以上が演説する見込みで採択までに数日間かかる見込みだ。

*停戦協議開始=2月28日、ベラルーシ・ゴメリで協議が始まった。ウクライナ側は即時停戦とロシア軍の完全撤退を求めたようだが、ロシア側は軍事力を背景に全面降伏とウクライナの非武装中立化を迫る。また、プーチン大統領は核部隊に戦闘態勢を指示して威嚇するなど、双方の妥協点を見いだせるかは不明だ。

 

国会レポート

1月17日と早めに召集となった第208回通常国会。24日から質疑がスタートした予算委員会審議も順調に進み、7日の理事会で、令和4年度予算案の衆院採決の前提となる中央公聴会を15日に実施することを決定した。

 

その予算委員会審議で最も時間が割かれたのはやはり新型コロナ対策、異変株「オミクロン株」が感染急拡大する中で、野党は検査キット不足や3回目のワクチン接種の遅れなどに言及し、政府の対応を「後手」などと批判。

これに対し、岸田首相はワクチン3回目接種の更なる前倒しを表明するなど、守勢に徹しながらも持ち前の「聞く力」で応戦、野党の追及をかわしている。

 

昨年12月15日、朝日新聞の報道で発覚した国土交通省の“建設工事受注動態統計”不正計上問題。衆院予算委員会では1月31日にこの問題を中心に集中審議がおこなわれたが、国民の関心も薄く、野党でも質問に立った7人のうち同問題を取り上げたのは立憲民主党の1人のみ。

オミクロン株の感染急拡大を受けてコロナ対策が審議の大半を占め、この問題をめぐる議論は深まらなかった。ただ、先進国にとって統計を改ざんするなどはあってはならない恥ずべき行為である。政府はより緊張感をもって対処しなければならない。

 

首相の看板政策「新しい資本主義」や「敵基地攻撃能力の保有」などについても多くの質疑が行われたが、首相は「成長も分配も、が基本的な方針だ」と、また「敵基地攻撃能力具体的な議論はこれから始める。だから、いま申し上げることはできない」との答弁を繰り返し、具体策には踏み込まず野党の追及をかわした。

論戦が嚙み合ってない状況で些か盛り上がりに欠けた感はあるが、いずれにしても最重要課題である予算の年度内成立の見通しは立ったと言えよう。

 

今年は7月に参議院選挙を控えているため、会期の延長が見込めないので提出法案も58本と少ない。主な法案は、「こども家庭庁設置法」「経済安全保障推進法」「地球温暖化対策推進法改正」など。

新型コロナウイルス患者が確実に入院できる病床を確保するため、国や自治体の行政権限を強化する「感染症法改正」は見送られた。

私は国民の安全安心を確保するために、一日も早く必要な法案審議を行うべきだと考えるが、一方で夏の参議院選挙前に医療関係者を敵に回しかねない論争は避けるべきと考える者もいるようだ。

 

私の関係する分野では、政府の10兆円支援対象校となり、“世界と伍する研究大学”を目指す「国際卓越研究大学〈仮称〉」に関する法案を予定しており、現在、閣議決定にむけて最後の詰めの作業を行っている。科学技術・イノベーション政策は岸田内閣の成長戦略の大きな柱で、その意味で目玉法案である。

 

国会対応も重要であるが、岸田内閣としては新型コロナウイルス対策の抜本策をはじめとして、デフレ脱却に向けた経済対策、社会保障と少子化、外交・防衛、脱炭素・エネルギー、異常気象と多発する災害等々、国内外に山積する諸課題に対して具体的な解決策を示していかなくてはならない。それが国会終了後に予定されている参議院選への最優先すべき選挙対策である。

 

まずは、昨年の総選挙で国民に約束した公約を具体的に実現することで、政治責任を果たすことが求められる。

年頭所感2022

明けましておめでとうございます。健やかな新春をお迎えのことと、お慶び申しあげます。

昨秋の第49回衆院選において10回目の当選を果たすことができました。これもふるさと東播磨の皆様の支えがあったればこそと、改めて御礼申し上げます。

 9月に発足した岸田政権は、アフターコロナの我が国経済の成長戦略のど真ん中に、科学技術・イノベーションの推進を据えました。科学技術に大胆に投資し、大いに振興することによって、日本の成長力、国際競争力を高めようとするものです。

 私のライフワークも科学技術政策の充実です。昨年は10兆円規模の大学ファンドを創設し、研究開発や人材育成に対する支援を飛躍的に向上させる取組を立ち上げました。岸田政権の戦略を加速するためにも、さらに各種政策の立案と実行に力を注ぎ、「人材教育とイノベーションの力で日本の未来を創る」という私の夢の実現をめざします。

 我が国の現行憲法は制定から70年余り、一度も改正されていません。国際情勢や社会規範の変化に応じて、新たな法を定め、古くなった制度を改めていくのが立法府の責務です。国家の基本法といえども法律の一つ、必要に応じて時代に適合した姿に改めていくべきものでしょう。憲法改正は、我が党の党是です。改正国民投票法も成立し、手続きは整いました。安全保障や緊急事態への対処方策、新たな権利や義務の導入等々、いよいよ本格的な議論を始動する時。各党との議論も進め国民の広い理解を喚起していきます。

 今年こそは、新型コロナウィルスとの闘いに終止符を打ち、数十年後の未来を見据えた「日本の在り方」を定める節目の年になると考えています。再び”ジャパン・アズ・ナンバーワン”と呼ばれる日をめざすべく、日々努力を重ねてまいります。

 年頭にあたり皆様のより一層のご健勝とより一層のご活躍を祈念致しますとともに、本年も引き続いてのご支援、ご指導の程よろしくお願いいたします。

年の瀬2021

先週末24日には令和4年度予算案が閣議決定され、永田町も霞が関界隈もすっかり静かになりつつある。来年度の一般会計予算の総額は107兆5964億円、今年度の当初予算を9867憶円上回って過去最大となった。

 

思えば、私が初めて当選した頃の閣議決定は、もっと暮れも押し詰まった時期だった。まず、20日頃に財務省(当時は大蔵省)から内示があり、それを契機に政務調査会の部会を中心に議員が一斉に動き出す。霞が関の各省庁政務次官(当時)室には夜食や飲み物が用意され、関係者や多くの議員が激励に訪れていた。新人議員の頃は、夜になると省庁を片っ端からハシゴしていたものだったが、今はそのような風景は全く見られない。

 

現在では、シーリング(概算要求基準)の徹底などで実質的な予算折衝はかなり早い時期に決着しており、大臣折衝は単にセレモニーとして行われることが多い。今年も21日に臨時国会閉幕とともに、まだ予算編成中にもかかわらず党本部は閑散とした状況になった。「霞が関マフィア」と呼ばれ、省庁をハシゴしていた頃が少しばかり懐かしい。

 

年末恒例の今年の漢字は「金」。振り返れば、東京オリンピック・パラリンピック、総裁選、総選挙と非常に中身の濃い1年であった。また、昨年に引き続きコロナ対応に追われた1年でもあった。

 

ワクチン接種も進み一時は終息に向かうかに思えた新型コロナウイルス感染症だが、新種の変異株であるオミクロン株の出現により、海外では再び感染が拡大している。水際対策の強化で新株の侵入を防止しようとした我が国だが、徐々に市中感染が広がってきてしまった。ある程度の感染拡大は覚悟し、医療体制の充実を急ぐ必要がある。

 

そんな2021年もあと1週間を残すのみ。平年であれば、我々にとって年末年始は忘年会や新年会と繁忙期であるはずだが、昨年に続き今年も、案内は極めて少なくなっている。この機会に溜まっている資料に目を通したり読書に勤しんだりしながら、この国の行く末について改めてじっくり考えてみるのもわるくない・・・などと思う年の瀬である。