未来への責任

3年ぶりに行動制限のない新年を迎えてから早や半月、人々の間にも日常生活が戻りつつある。年末年始の人の移動によるコロナウイルスの感染拡大はピークを迎えた感もあるが、死亡者数は14日に過去最高の503人を記録した。病床もひっ迫しており、引き続き警戒が必要だ。感染力がより高まった派生型“XBB.1.5”の日本上陸も懸念材料である。

そんな中、23日に令和5年度通常国会召集される。当初、岸田総理のダボス会議(16~20日)出席をめざし、27日召集案も検討されたようだが、来年度予算の年度内成立を期すために早まったらしい。毎度の内政重視だが、G7議長国として岸田外交と経済政策の方針をダボスで披露しても良かったのではないだろうか?

当面の国会運営は、4月に統一地方選挙が待ち受けていることもあり、予算案の議論が最優先となるだろう。ただ、安全保障政策や原子力政策の見直しに基づく、中長期の事業計画など、議論すべき重要課題は山積している。

その一つが「少子化対策」である。

岸田総理は年頭の記者会見で「異次元の少子化対策に挑戦する」と言及した。また、東京都の小池知事も年頭挨拶で0~18歳の都民に月5千円を給付する方針を表明した。

言うまでもなく少子化と人口減少はここ十数年来の政策課題である。地方創生の名のもとに全国の自治体が人口ビジョンを策定し、様々な対策を実施してきた。にもかかわらず、首相と都知事が期せずして年頭にこの問題を取り上げた要因は、2022年の出生数が77万人台になるという衝撃的な発表だ。

我が国の出生数は第2次ベビーブームの1973年に209万人を記録して以降、ほぼ一貫して減少傾向にある。ただ、77万人台は政府の従来の予測より11年も早い。コロナ禍による影響もあろうが、ここにきて明らかに少子化は加速している。

これまでの政府の推計では、日本の人口は2053年に1億人を割り込むとされてきたが、実際にはもっと早まりそうだ。現在のペースで減少が進めば2060年に8000万人を割り込む可能性もある。1950年頃の人口規模に戻るということである。

英独仏などヨーロッパの主要国の人口は数千万人であり、少々の人口減は恐れる必要はないとの考え方もあるだろう。しかし、急速な減少は経済力の急減を招き、国民生活に様々な悪影響をもたらすことは確実である。

一刻も早く対策を講じなければならない。これは、誰の目にも明らかである。

ただ、人口を上昇傾向に転換させるのは容易ではない。人口を維持するだけでも合計特殊出生率(※)2.07が必要だ。G7先進国でこの値をクリアしている国はない。最も高いフランスでも1.82だ。我が国の現状は1.33である。

もちろん可能性ゼロではない。私が生まれた第一次ベビーブームのころ、4~5人の兄弟姉妹は珍しくなかった。将来の教育費の心配など、考えることもなかった時代だ。考えなくてもよいシステムを導入するのも一案だ。

フランスでは、家族が多い(子どもをたくさん産む)ほど税金が軽減される制度で、急速に出生数を改善させた。課税単位を「家族」に切り替えるだけで効果があるという例だ。

人口減少対策を急ぐのであれば、移民政策の見直しにも踏み込む必要がある。事実ヨーロッパの出生数改善に寄与したのは移民である。米国の人口拡大を支えているのも移民である。

政府は新たな会議を立上げ、3月末までに少子化対策のたたき台をまとめる方向だ。更に、6月に策定される「骨太方針2023」までに子ども予算倍増にむけた大枠を示す考えも表明している。党内においても、少子化対策調査会で、これまで以上に議論が活発になると予想される。

この種の議論は決して政争の材料にすべきではない。自民党内や与党内の議論に終始することなく、党派を超えた議論が行われるべきである。

国家存亡の危機にあって、党派を超えて議論し解決策を実現する。それが国民の代表として国政に席を持つ我々国会議員の「未来への責任」だ。

※一人の女性が一生の間に産む子どもの数

2023年頭に思う

明けましておめでとうございます。皆様におかれましては、健やかな新春を迎えられましたことと、お慶び申し上げます。

3年にわたり世界中で猛威を奮ったコロナ禍は、ワクチンの普及や治療薬の開発、そしてウィルスの弱毒化により、ようやく収束の兆しが見えてきました。

一方で昨年2月に勃発したロシアによるウクライナ侵攻は未だ和平への道筋が開けず、更には台湾海峡をめぐる情勢も緊迫の度を強めています。世界平和は今、危機に瀕していると言っても過言ではないでしょう。我が国も経済を含めた安全保障システムの再構築を急がなくてはなりません。昨年5月に公布された経済安全保障推進法、12月に閣議決定された国家安全保障戦略等に基づき、体制の強化を着実に進めていきます。

このうち経済安全保障の一つの柱となるのが、「官民による先端技術の開発」です。宇宙・海洋・量子・AI・健康医療など重要先端技術は自国で育成、研究開発していかなければなりません。私のライフワークである「科学技術政策」に新たな視点が加わりました。

科学技術創造の基盤である大学を支援する「10兆円大学ファンド」も、公募手続きに入り先進的な研究大学への資金提供が始まります。最先端の設備投資と高度人材の育成により、次々と新たな課題への挑戦がスタートします。教育とイノベーションの力で「日本の未来を創る!」という、科学技術創造立国の実現に一歩近づく思いです。

ふるさと播磨では、水素社会を切り開くエネルギー拠点整備の取組が進んでいます。国内有数のLNG発電所を活用した水素発電がスタートすれば、水素消費量が飛躍的に増大し、大幅な価格低減が進むでしょう。地元企業で開発された水素ガスタービンにより、まさにカーボンニュートラルを先導する地域として飛躍すると期待できます。

今年は、国際秩序や世界経済において、歴史的な転換点となるかもしれません。その中で、我が国が正しい針路を歩めるよう、緊張感をもって日々努力を重ねていきます。本年も引き続いてのご支援・ご指導を、よろしくお願いいたします。

年の瀬(2022)

2月4日から開催された北京冬季オリンピック。日本選手の活躍もあり大いに盛り上がった大会であった。

その平和の祭典の閉幕を待っていたかのように、ロシアによるウクライナ侵攻が始まった。ロシアとウクライナの軍事力には圧倒的な差があり、侵攻当初は戦闘は早期に終結するとも言われていた。しかし、ウクライナ軍の奮闘と西側諸国の支援により戦いは長期化、既に10カ月を超えている。

21日にはウクライナのゼレンスキー大統領がワシントンを訪問。バイデン大統領との会談後、連邦議会の上下両院議員を前に演説し、アメリカのこれまでの支援に感謝するとともに、支援の継続を訴えた。

未だにこの紛争の帰趨は見通せない。来年も国際社会において最大の課題であり続けるだろう。5月に広島で開催されるG7サミットでは、議長国として日本のリーダーシップが求められるだろう。

 

一方、国内に目をむけると、何と言っても今年最大の出来事は、参議院選挙での安倍晋三元総理の襲撃事件である。

7月8日の昼前、奈良市で参院選最終盤の街頭演説中だった安倍元総理は、背後から銃撃され、帰らぬ人となった。銃規制が厳しい日本でこのような事件が白昼に起きるとは、誰も予想だにしなかった。多くの国民が元総理の死を悼み、各地の献花場には長蛇の列が続いた。

ただ、その後の国葬を巡っては賛否両論が飛び交い、世論が大きく二分、岸田文雄内閣支持率急落に繋がることとなる。また、この事件が引き金となって旧統一教会と政治の関係に耳目が集まり、自民党議員を中心に幅広く浸透していたことが顕在化。先の臨時国会で、信者救済に関する法律が制定された半面、教会と縁があった閣僚が辞任に追い込まれるなど大きな政治問題へと発展することとなった。

 

11月20日からカタールで開催された2022サッカーワールドカップ。日本代表サムライブルーは死の組と言われた予選リーグで、強豪ドイツ、スペインに勝利し、一位で決勝トーナメント進出を果たす快進撃を見せた。老いも若きも深夜早朝のテレビ中継に熱中し、国中が歓喜の渦に包まれた。

3年越しのコロナ禍も含め、内外とも明るい話題が少ない一年であったが、最初と最後に国際舞台での若人の活躍が日本に感動を届けた。スポーツの持つ力を改めて実感した。

 

私にとって、この一年は、ライフワークとしている科学技術分野で大きな成果が得られた年であった。新規事業の創出、創業・成長促進のためのスタートアップ支援政策や我が国の科学研究再生にむけた大学改革政策などが大きく前進した。

 

そんな2022年もあとわずか数日を残すのみ。

ここ2年間、開催が見送られていた新年会も、来年はかなり戻ってくるようだ。一方で、恒例の年末警戒巡視や地元神社での新年の挨拶は見送られることになった。今年も静かな年越しになりそうだ。

 

皆様にはこの1年間、何かとお世話になり本当にありがとうございました。来年も引き続きご支援ご支援の程、宜しくお願い致します。

来るべき年が皆様にとって輝かしい年でありますように、祈念いたします。

新しい景色

現地の気候を考慮して11月開催となったワールドカップ2022カタール大会。大会前には盛り上がりに欠けるともいわれていたが、予選リーグでの日本代表の大活躍で、ここへきて異常な盛り上がりを見せている。

 

日本が入った1次リーグE組は「死の組」と呼ばれる厳しい組み合わせのグループ。世界ランキングではスペインが7位、ドイツは11位でコスタリカが31位、日本は24位だ。

そのE組で、日本がドイツに続いてスペインからも逆転勝利を収め、勝ち点6で決勝トーナメントに駒を進めた。下馬評を覆し、優勝経験のある欧州の強豪2カ国(ドイツ4回、スペイン1回)から奪った白星は、日本のサッカー史にしっかりと刻まれる快挙だ。

 

日本代表メンバー26人のうち19人は欧州クラブに在籍し、常に世界レベルの環境に身を置いている。もちろん長い歴史を誇る欧州サッカーからまだまだ学ぶべき点は多いが、今大会を通じて、日本のレベルは着実に上がっていることが証明されたと言えるのではないか。

 

スペイン戦での決勝ゴールとなった日本の2点目は、ビデオ・アシスタント・レフェリー(VAR)で得点が認められた。TVの映像では、MF三苫選手がクロスを上げる前にゴールラインを割っているように見えたが、VARが2分半かけて確認し、ゴールが認められた。

近年は様々なスポーツ競技でVARが導入されている。サッカーの競技規則では、ボールがラインを越えているかどうかについて、ボールの接地面がラインに触れていなくても、ラインの上空にボールの一部がかかっていれば(ラインから上空に引いた線の上にボールの端がかかっていれば)、インプレーとなるとのことだ。

 

今大会使用のボールにはドイツ製のセンサーチップが組み込まれていて、ミリ単位でボールの位置が確認できるとのこと。このシステムがなく審判の目視による判断だったら、結果が変わっていたかもしれない。テクノロジーの進歩がスポーツの勝敗を分けたともいえる。その結果、日本の勝利によりドイツは予選リーグ敗退となったのだから、何ともドラマチックな展開だ。

 

近年スポーツの世界では、テクノロジーの進歩により、様々な新しい試みが行われている。VARによる判定もその1つであるが、データサイエンスを駆使した練習方法やAIによる戦力の分析等は、競技レベルをさらなる高みに引き上げる可能性を持っている。

しかし、どんなにテクノロジーが進歩しても、スポーツの主役は人である。練習によって鍛えられたアスリートの体力や技術、精神力によるパフォーマンスが不可欠だ。そして、そんなアスリートの姿が、観る人の心に感動を届けるのだ。

 

空前のラグビーブームを巻き起こした2019ラグビーW杯から、2020東京オリンピック・パラリンピック、2021ワールドマスターズゲームズへとゴールデン・スポーツイヤーズが続くと期待されていた。残念ながらコロナウィルスのまん延により、オリパラは無観客開催となり、マスターズは2027へ延期されたが、サッカーW杯の日本代表の活躍によって、スポーツの興奮が再び戻ってきた。

 

日本代表は初のベスト8進出を目指しているが、その目標達成まであと1勝。決勝トーナメントの1回戦の相手は前回準優勝で世界ランキング12位のクロアチアだ。日本代表の歴史を更に塗り替える戦いとなることを期待したい。森保監督のいう「新しい景色」、明るい話題が少ない今の日本には、それが最大の景気浮揚策となるかもしれない。

 

黄金の3年間

夏まで、「7月の参院選が終われば衆議院を解散しない限り三年先の参院選まで大型の国政選挙はない。選挙を意識することなく、党派を超えて国政の重要課題の議論ができる、いわゆる『黄金の3年間』になる」と言われていた。

政権発足直後の衆院選で勝利し、以降の内閣支持率も比較的高位で安定していた岸田政権。参院選に勝利すれば、「黄金の3年間」を獲得し、安定政権の下で政策実現に専念できる筈だった…。

それがここに来て、政治情勢は全く違った展開、様相を呈してきている。安定して推移してきた支持率は下落の一途を辿り、調査によっては政権維持が困難な危険水域と言われる3割を割り込んでいる。

 

安倍晋三元総理の国葬や旧統一教会問題への対処で躓き、この1カ月の間には3人の閣僚が相次いで辞任するという失態が生じた。このような状況を招いた岸田総理の政権運営には党内からも疑問が投げかけられている。

政権浮揚のために、総理が人事を刷新する内閣再改造を検討しているとの説が流れているが、8月に改造したばかりで現実的ではなかろう。また、党内には野党の選挙態勢が十分でない内に、解散総選挙に打って出て国民の信を得て政権を強化すべきとの意見もあるそうだが、私はそうは思わない。

 

世論調査を見る限りでは、自民党は若干支持率を下げているものの、各党ともそれほど大きな変化も見られない。今はまだ政権与党が国民に信を問わなければならないという状況ではない。このような時期の解散は、いたずらに政治空白を作るだけであり、日本のためにはならない。

 

今議論すべき政策課題は山積している。なかでも急激に進展した円安と物価高騰対策、コロナの先を見据えた経済政策は一刻も早く実行に移さなくてはならない。社会保障改革や少子化対策、防衛力強化など、国民に新たな負担を求めなければならない課題もある。長年の懸案である憲法改正の議論を進める上でも、この3年間は貴重な時間だ。

 

この前の「黄金の3年間」は、2013年参院選から2016年の参院選までの3年間であった。この間、アベノミクスによる異次元の金融緩和が進み、消費税率の引き上げにより社会保障財源が拡大した。自衛隊法の改正をはじめとする平和安全法制も整った。

今回の3か年の年月も有意に活用し、大きな政策の変革期としなくてはならない。目の前の課題への対応はもとより、与野党の垣根を越えて日本の未来について大いに議論をする、そんな「黄金の3年間」にできないものだろうか。

この機会を逃したら、当分の間、同じような政治的安定は得られないのだから。

補正予算

岸田文雄総理は28日夕刻記者会見を開き、総合経済対策の裏付けとなる2022年度第2次補正予算を発表した。一般会計の予算規模は29兆円、地方の歳出や財政投融資も加えた財政支出の規模は39兆円程度となる。

経済対策は4本柱で構成され、▽電気代などの負担軽減や企業の賃上げの後押し12.2兆円程度、▽円安を生かした観光振興や企業の輸出拡大に4.8兆円程度、▽学び直しなど人への投資や少子化対策、脱酸素など新しい資本主義の加速に6.7兆円程度、▽防災や公共事業、経済・食料安保に10.6兆円程度、▽今後の備えに4.7兆円程度、となっている。

今回の補正予算の編成過程では、当初25兆円台であった政府案が、一夜にして4兆円増額された点が物議をかもしている。自民党内から「総額を30兆円規模とすべき」との声が数多く出ていたため、「ウクライナ情勢経済緊急対応予備費(仮称)」を創設するなどして金額を積み増したものだ。

そもそも、補正予算の編成は、「予算作成後に生じた事由に基づき特に緊要となった経費の支出」(財政法第29条)等を行う場合に限り認められている。本来は予算編成後に発生した突発的な災害や事故への対応を想定したものだろう。

しかし実際の運用では、経済対策としての需要拡大=予算規模拡大の手法として、恒例行事のように毎年補正予算編成が行われている。もちろん経済の需給ギャップを埋めるための緊急的な財政出動を否定するものではないが、多額の補正予算編成が常態化することは、財政規律上いささか問題であろう。

ただ、現実として、当初予算要求時に課せられる厳しい概算要求基準(シーリング)の枠内では、大胆な新規政策の展開は難しいことも事実である。このため、多額の予算が必要な新政策については、補正予算で打ち出すことが多くなっている。私が担当している科学技術・イノベーション政策についても、大学ファンドや博士課程支援などの資金は何れも補正予算で確保している。

今回の補正予算でも、▽地域中核特色ある研究大学総合振興、▽大学の文理バランス、▽スタートアップ支援、▽創薬ベンチャーエコシステムの拡充強化など、多くの新しい政策を実現することができた。ちょっと複雑な思いもあるが、いまは補正予算無しでは科学技術政策は成り立たない、と言っても過言ではない。

これらの科学技術予算は中長期の成長戦略の中心となるものだが、岸田内閣の目玉政策である「新しい資本主義」に通じる“人への投資”に資するものでもある。今後さらに詳細の検討を進め、この国の未来を切り拓く原動力になるよう、施状況を逐一チェックしフォローアップしていきたい。そして、これらの新規政策が、ここ数年の国際社会における日本の競争力の低下に歯止めをかけ、反転攻勢に繋がることを期待したい。

地域の絆(秋季例大祭)

13、14日の二日間、このコラムで何度も言及した地元最大のイベントである曽根天満宮の秋季例大祭が盛大に催行された。

コロナウイルス感染拡大の影響でこの2年間は神事のみだったが、今年は屋台(やっさ)の町内巡行や“一ツ物神事”なども加わり、3年ぶりにフルスペックで行われた。

コロナが収束してないとの判断から、今年も神事のみとした神社も多いようだが、曽根天満宮では5月に早々と催行が決定されていたと言う。神社総代の話によると、「総代会でも全く異論はなく、何の迷いもなかった」とのこと。

3年間待ちに待った秋祭り!に地域の入れ込み方も尋常ではなく、各町の清書元(せいしょもと、祭りの責任者)をはじめ、屋台部、青年団は準備段階から例年以上に気合が入っていたような気がする。

私は13日の神事に出席するため、前日の夜8時に姫路駅に着いた。自宅に帰る車中から見た屋台蔵では、本番に備えて太鼓に乗せて声合わせの真っ最中で、道路の反対側まで大勢の見物客が押しかけていた。

また、別の屋台蔵では通りに面した広場に屋台を運び出して、周りを町内会の面々が取り囲みやはり声合わせの稽古をしていた。いつもの祭り前の風景ではあるが、2年のブランクが参加者を増やしているようにも思えた。

心配された天候は両日とも雲一つない好天に恵まれたが、そのおかげで気温が上昇、25度を超える夏日となり、屋台を担ぐには些かキツイ気候だったかもしれない…。

屋台は2トン近くあるので事故が起きやすい。13日の宵宮には救急車のサイレン音が何度も聞こえてきてケガを心配していた。しかし、後で聞いたら熱中症患者の救急搬送が続出したとのこと。温暖化の影響かもしれないが、季節外れの猛暑にも困ったものだ。

天満宮の秋祭りを彩る屋台は近隣の神輿屋台と異なり、それぞれの町内独自の色(白、赤、緑等々)を配する三層の布団屋根に特色がある。境内に一同が揃うと非常にカラフルなのがウリである。今年は本屋台10台、子供屋台3台が勢揃いした。

夜になると布団屋根を中心に色とりどりのLED電球で飾られ、夜陰に浮かぶ屋台の華やかさは一段とヒートアップする。

そして、境内での屋台の練り合わせのあと、竿先につけた提灯に囲まれてそれぞれの屋台蔵に帰ることになる。その道すがら、名残を惜しむかのように数台の屋台が練り合わせ、深夜まで続けられる。そして時間の経過とともに担ぎ手の体力も尽き、屋台は蔵に収められ、祭りの幕が閉じられる。

祭りの次の日から来年の祭りに向けた一年が始まるのが、我がふるさとの暦だ。元旦には、氏子青年会が初詣客に祭りのハイライトをまとめたカレンダーを配る。“一年を二十日で暮らすいい男”とは、江戸相撲の力士のことを言うが、播州浜手にもそれに近い気風がある。

改めて地域社会の“絆”を実感した3年ぶりの秋祭りだった。今年は揃いの法被と鉢巻きに加え、揃いのマスクも配られていたが、来年はマスクなしの祭りを迎えたいものだ。

秋本番

9月下旬の2度の台風襲来とともに厳しい残暑も去りつつあり、ようやく秋の気配を感じる今日この頃である。

ふる里播磨の秋と言えば、祭り。

しかし、新型コロナ感染症の影響で、ここ2年はほぼ全地域の神社が秋の例大祭を自粛していた。今年も神事のみで済ませる地域もあるようだが、浜手エリアの大半の神社では勇壮な屋台を繰り出す、本来の姿の秋祭りが開催されそうだ。

私の自宅のある曽根天満宮の秋季大礼祭も今年は開催することになった。以来、10月13日の祭り当日に向けて、着々と準備が進んでいる。既に屋台巡行が行われる道筋は早や紙垂(しで)で飾られ、各町の屋台の飾り付けも進んでいる、街は秋祭り一色に染め上げられていく。夜になると聞こえてくる屋台の太鼓の稽古の音は、祭りのモードを盛り上げるのに欠かせないこの季節の風物詩だ。播磨路を彩る秋祭りの太鼓の音が3年ぶりにふる里に戻ってきた。

地元事務所のスタッフの話では、2年間のブランクの影響で、本屋台はともかく子供屋台の方は、屋台をかいた(担いだ)ことのある者が少なく、練習に一段と力が入っているとのこと。江戸中期頃からの歴史と伝統が子供たちに引き継がれ、同時に地域の絆が形成されていくのが秋祭り、まさに地方創生の核となるイベントと言える。

3年間溜まりに溜まったエネルギーが一気に解き放たれる今年の祭り、さぞかし盛り上がるであろう。

ところで、先週27日には安倍晋三元総理の国葬儀が行われた。本来であれば静かな環境のもとで故人にお別れしたかった。国葬の是非を巡り世論が二分されてしまったことは非常に残念である。今から思えばもう少し丁寧な説明や手続きが必要だったと思う。

それでも会場までの道中、献花のために道路の両側に並ばれている方々の長い列を目にして、救われたような気持ちになった。

また、海外からは国際機関を含む218の代表団約700人が参列された。故人が「地球儀を俯瞰する積極的な外交」を展開し、在任中80カ国・地域を訪ね、朗らかな人柄で幅広い人脈を築いたことが、多数の出席につながったのだろう。

今日10月3日から69日間の会期で、内閣改造後初めての論戦の舞台となる臨時国会が始まる。

統一教会の問題、物価高騰問題をはじめ経済対策に向けた今年度第2次補正予算も提出が予定されている。また、衆議院選挙の1票の格差を是正する為のいわゆる「10増10減法案」も提出される予定だが、これについての党内調整は難航が予想される。

高い内閣支持率をキープして参議院選挙に勝利し黄金の3年間を得と言われた岸田文雄総理ではあったが、このところ支持率は急降下している。課題は山積しているが、岸田総理には真摯な態度で誠実に国民の疑問に答え、信頼回復に努めて欲しい。

国葬に思う

8日夕(日本時間9日未明)、英国エリザベス二世女王陛下崩御の報が世界を駆け巡った。

女王は6日、滞在先のバルモラル城でトラス新首相を任命されたばかりだった。7日からは医師の勧告に従って休養をとられていたが、8日に英国王室から女王が専属医師の管理下にあるとの発表があり、その後、王室メンバーが続々とバルモレラ城に参集されていると報道されていた。1952年から70年に及んだ在任期間は英国君主としては最長で、共に激動の20世紀を歩まれた昭和天皇の63年をはるかにしのぎ、世界史でも十指に数えられる長期在位である。心からご冥福をお祈りしたい。

女王の「国葬」は、19日11時(日本時間午後7時)からロンドンのウエストミンスター寺院で執り行われる。我が国からも天皇皇后両陛下並びに岸田文雄総理の参列が検討されているほか、各国の君主・元首が参列し弔意を示すことになろう。

英国では慣習法の国であり、実体法上は国葬の定めはない。しかし、歴史的に国家元首を国葬とすることが慣例となっている。元首以外にも例外的に際立った功績を残した人物を国葬にすることもある。直近では第二次世界大戦を指導したャーチル元首相、古くはナポレオンのフランス・スペイン連合艦隊を撃破したネルソン提督、同じくワーテルローの戦いでナポレオン軍を破ったウエリントン公爵などである。

英国で国葬を実施する上でのポイントは、議会の承認だ。英国議会は「議会の動議によってそれ(国葬)は認められる」と説明している。国費が使われる以上、予算の議決権を持つ議会の承認を得る必要があるとの考えと思われる。

日本でも27日(火)に安倍晋三元総理の“国葬儀”が執り行われる。我が国にはかつて国葬令という法制度が存在した。しかし戦後まもなく廃止され、現在は英国と同じく法律の定めはない。それどころか、何のルールも確立していないため、安倍元総理の国葬の是非を巡って世論が大きく割れている。

総理は、内閣府設置法(4条3項33条)に則った国の儀式として、閣議決定を法的根拠としている旨説明し、多くの国民の理解を得ることを期待した。しかし、議論は平行線に終わり、残念ながら理解が進んだとは言えない。

27日の国葬実施は、既に世界に発信していることもあり、今更方針撤回はあり得ないだろう。しかし、国葬の実施が国民の意見を二分するようなこともあってはならないことだ。今回のような事態を二度と招かないように、静謐な環境下でしっかり議論し、できれば法制度の形でルールを定めておくべきである。

 

余談になるが、私には8月30日に亡くなられたゴルバチョフ元ソ連大統領の葬儀がロシア国葬ではなかったことが意外だった。彼がいなければロシアをはじめ旧東側諸国の経済発展はありえず、東西冷戦も終結していない。その後の世界史は大きく変わっていただろう。 20世紀を代表する政治家として彼を評価する声は世界中から寄せられている。ただ、ロシア国内の評価は必ずしもそうではないようだ。

「国葬」に値する人物か否かの判断は同国民が行うこととなる。その判断基準の集大成が法律である。ロシア国民は、本当に「ソ連を崩壊させたゴルバチョフ氏は国葬に当たらない」と考えられているのだろうか? それとも、正しい情報が流通していないのだろうか?

国立大学再編

少し前の話になるが、創立100年以上の歴史と伝統を有する2つの国立大学、東京工業大学と東京医科歯科大学が研究力強化のため、統合に向けた協議を始めるとの発表があった。

2004年の国立大学の独立法人化を契機として、多くの大学統合が行われてきたが、研究力が国内最高水準に指定されている「指定国立大学*」同士としては初めてのこと。今後、合同の会議を設けて議論を重ね、運営法人の傘下に2つの大学を置くか、1大学とするかなど、具体的な方針を決めるとされている。異分野融合により幅広い先端研究を展開し、社会の課題解決に貢献する大学が誕生することを期待したい。

さらに私見を加えさせていただければ、イノベーションを次々と引き起こすには「文理融合の思考力」が必須の時代が訪れている。理科系の両大学に、社会科学分野で強みを持つ一橋大学が加われば、さらに強力かつ存在感のある大学になるのではないかとも思う。

今回の動きは、昨年創設した「大学ファンド」の影響だろう。10兆円規模のこのファンドの支援を受け、革新的研究開発に取り組むためには、大学間競争に打ち勝ち「国際卓越研究大学」の資格獲得が有力な手段となる。両大学はこの認定を受けるために統合への道を選択したと考えられる。

大学ファンドの議論の中で、大学再編が起こることは想定していたが、今回の統合はインパクトも大きく、心から歓迎したい。これを契機に、今後、次々と統合連携が進み、各大学の研究開発力が充実強化していくことを期待している。

我が国の人口は、今後、数十年にわたり減少を続ける。よほど留学生が増大しない限り、リカレント学習需要が急拡大しない限り、学生数の減少に応じた大学の再編は避けられない。国・公・私の垣根を越えた再編・統合も望まれるが、それぞれの法人の成り立ちからして極めてハードルは高い。国による助成制度が大きく違うことも障害となっている。容易ではないだろうが、一つひとつ課題を解決し、統合促進策を生み出していきたい。

26日の党・科学技術イノベーション戦略調査会では、前述の大学ファンドの「公募に向けての基本方針」の策定について、出席議員から多くの意見が出された。過去の実績よりも未来のビジョンや可能性を重要視するとの主旨が大半で、政府案の承認は見送り再検討となった。大学ファンドは当調査会からの発案であり、これからもしっかり議論してより良いものに仕上げていきたい。

猛暑に見舞われた今年の夏も、ここへ来て少しは凌ぎやすくなってきた。政府与党内では来年度予算の概算要求のとりまとめ作業が大詰めを迎えている。昨年10月に誕生した岸田内閣としては、自ら手がける初めての概算要求となる。しっかりと岸田カラーを打ち出すべくメリハリの効いたものとしなければならない。

私が会長の任にある科学技術・イノベーション戦略調査会でも、新しい資本主義の中心テーマである「人への投資」を充実すべく諸課題に取り組んでいる。今年は特に「国際頭脳循環」をテーマに、国際共同研究や国際的な人事交流に力を注ぎたいと考えている。概算要求でもその方向性をしっかりと打ち出したい。

※指定国立大学法人:平成29年4月、国立大学法の改正により、我が国の大学における教育研究水準の著しい向上とイノベーション創出を図るため、文部科学大臣が世界最高水準の教育研究活動の展開が相当程度見込まれる国立大学法人を「指定国立大学法人」として指定することが出来る制度を創設。