近況報告

政府は19日、臨時閣議を開き、1.新型コロナの感染拡大の防止 2.「ウィズコロナ」下での経済社会活動の再開と次なる危機への備え 3.未来社会を切り開く「新しい資本主義」の起動 4.防災・減災、国土強じん化の推進など安全・安心の確保、を柱に据えた新たな経済対策を正式に決定した。財政支出は過去最大の55.7兆円で、民間資金も入れた事業規模は78.9兆円となる。

4本の柱の中で今後の日本経済の針路を示すのは、「新しい資本主義」への起動である。賃上げを行う企業への税制支援、看護・保育・介護の現場で働く人々の給与引き上げ、最低賃金引上げ助成など経済的弱者を支える分配戦略に意を用いつつ、分配すべき糧を拡大する成長戦略にも力点を置いている。

なかでも、注目すべきは成長戦略のど真ん中に科学技術イノベーション政策が据えられていることだ。その核となる大学の研究レベルを高めるため、10兆円規模で“大学ファンド”を年度内に設置、世界に伍する研究大学を実現するため来年度から運用を始める。

さらに経済安全保障の強化として、先端的な重要技術の研究開発や実用化の支援のため、5,000億円規模となる基金の創設も盛り込まれた。念頭に置く分野は人工知能(AI)や量子技術、宇宙開発などである。政府は今年中に関連するシンクタンクを創設する予定で、大学など研究機関を支援する。

国産のワクチン開発や治療薬開発も含め、今回の補正予算における科学技術関係予算の総額は2.2兆円余りとなる。科学技術・イノベーション調査会からの提案はほぼ盛り込まれており、私としては満足できる結果となっている。

総選挙後、党や国会で一連の人事が行われた。自民党においては、私は引き続き「科学技術•イノベーション戦略調査会会長」を務めることになった。

世界を見渡すと、ポストコロナの国家間の技術覇権争いの動きが益々激化している。AIや量子などの新興技術や、先端半導体製造といった先進基盤技術について、その経済安全保障上の重要性が強く認識され、各国で多額の投資が行われている。また、カーボン・ニュートラルの実現など地球規模の課題解決のため、イノベーションへの抜本的投資強化を打ち出す必要もある。これまで以上に調査会の役割が増え、より闊達な議論が求められると予想される。しっかりと責任を果たしていきたい。

一方の衆議院では、「国家基本政策委員会委員長」に就任することになった。「国家基本政策委員会」とは何の審議をするのか分かりにくいと思うが、「党首討論」と言えば分かり易いだろう。このところ存在感が低下していると言われているが、国家の在り方、方向を探るべく、党首間による活発な議論が実現するよう努力したい。

11月も後半となり、コロナ対策や東京オリンピック・パラリンピック、自民党総裁選や総選挙と様々な出来事があった2021年も残すところ40日余り。年末に向けて臨時国会はもちろん恒例の税制改正議論や来年度予算編成引き続き慌ただしい日々が続くが、緊張感を持って国政に臨んで行きたい。