拝啓 内閣総理大臣殿

 先週6日、臨時国会が閉幕した。

 わずか8日間の会期とは言え、菅内閣が誕生して初めての予算委員会、そして参院選後の新ねじれ国会初の論戦だ。

 与野党協調の政策形成の方向が提示されるのか? どのような国会運営の工夫が見られるか? 私は議論の行方に大いに注目していた。

 しかし衆参2日ずつ開催された予算委員会でのやり取りには、正直がっかりさせられた。

 政府の答弁では具体的な政策の方向は語られず、野党への協力要請の繰り返しだ。特に総理は9月の民主党代表選を意識しての党内配慮か、低姿勢の安全運転ばかりが目についた。

 本来ならば今回のような予算委員会の質疑は新内閣誕生直後、参議院選の前に行なわれるべきだった。しかし、民主党は選挙日程を優先して論戦を避けてしまった。

 憲政史上類を見ないこの国会運営を、我々は「暴走」と激しく非難もしたが‥‥

 もし選挙前に予算委員会が開催されていたら、どんな議論になっていたのだろう?

 発足直後の高い内閣支持率に支えられ、菅総理はもっと力強く自分の考えを語れたのではないだろうか。

 消費税の引き上げについても充分に必要性を説明することができ、唐突な印象とはならずに済んだだろう。

 参院選挙での論戦も違った形となり、結果も変わっていたかも知れない。

 民主主義の手順を無視し、人気投票コンテストですませようとしたことが、民主党の敗戦に繋がったとも言える。

 その結果、菅総理は党内外への低姿勢を余儀なくされ、自分のカラーを出せなくなっている。

 今の総理は私の知る菅直人とはまるで違う。

 菅総理、今、貴方が一番に目を向けなければならないのは、野党でも民主党内でもない。

 どうして国民に向けてもっと強いメッセージを出さないのか‥‥
 
 自らの信念に基づいてこの国のあるべき姿を訴えないのか‥‥

 低姿勢や守り一辺到の姿は貴方には似合わない。

 「自分らしさを取り戻すこと」それが今の貴方に最も必要なことだ。

この国を何処へ

 7月29日、民主党は参議院選を総括する両院議員総会を開いた。
 報道によると、菅総理は消費税を巡る自らの発言について謝罪した上で、枝野幹事長が「(消費税増税は、)唐突感と疑心をもって受け止められた」などと分析した総括案を説明したという。

 しかし、出席議員からは総理や幹事長ら執行部の退陣を求める意見が続出し、2時間を超える議論の末に、ようやく、現執行部体制を継続することが了承された。
 厳しい執行部批判を展開したのは、小沢前幹事長に近いと言われる議員。民主党内の主導権争い、派閥抗争の構図がふたたび鮮明になった。

 翌30日、菅総理は国会召集日としては異例の記者会見を開き、(消費税増税問題は)「だれが首相になっても避けて通れない」と、引き続き財政再建に取り組む決意を表明した。ただ一方で、9月の党代表選では消費税問題は公約に掲げないとも発言した。

 これは、いかにも無責任な対応ではないか?
 このタイミングでの総理記者会見は、ある意味で再出発の所信表明である。
 にもかかわらず、総理の言葉は、党代表再選に向け、ひたすら低姿勢で風が去るのを待っているようにしか見えない。政策実現に向けた誠意と決意が感じられないのだ。

 先の党大会での「新しい政治の地平を開いたと評されるよう死力を尽くしたい」との続投宣言に偽りがないのであれば、この国を何処へ引っ張っていこうとしているのか、自ら描く日本の未来像をはっきりと提示して欲しい。

 そして、本気で財政再建に取り組むのであれば、消費税引き上げの立場を後退させることなく、社会保障と税制の党内議論に早急に着手しなくてはならない。
同時に、財政不足で行き詰まった昨年の衆議院選マニュフェストがどうなるのか?の議論も不可避だ。できないものはできないと、はっきり国民に示すべきだ。

 いずれにしても、まずは予算委員会での議論をじっくり聞いてみたい。

暑中見舞い

 ある友人が今年の梅雨は男性型だと言った。

 梅雨に男性型と女性型の区別があるか否かは定かではないが‥‥、確かに今年の梅雨は異常だった。「しとしと」の時期が無く、梅雨入りとともにいきなり集中豪雨が続いた。しかも特定の地域が繰り返し襲われ、列島各地で大きな災害が発生した。

 豪雨による土砂崩落や浸水といった災害は毎年の様に起きているのに、防ぐことはできないのだろうか?

 確かに、どこで発生するかわからない予防対策より、壊れたところを復旧する方が予算は確保し易い。だが、それは甚大な犠牲を伴う。

 災害への備えは、いずれ必要な社会資本整備なのだから、将来への投資として前倒し実施することも検討すべきだろう。特に山林の崩壊を防ぐ、治山、砂防事業は、その効果が実証されており、小規模で数が多い事業は経済対策としても効果が期待される。

 国の調査では、福祉施設のうち1万3千を超す施設が土砂災害に巻き込まれる危険性がある地域に立地している。せめて、こういう地域だけでも前倒しで万全の対策を講じてはどうか。
この際、思い切った補正予算で災害対策を加速すべきではないだろうか。民主党も、まさか、「いのちを守る」工事を無駄とは言わないと思うが‥‥

 列島に大きな被害をもたらした梅雨が明けたら、今度は猛暑の到来だ。

 35度を超える毎日がもう10日以上も続いている。夜になってもあまり気温が下がらず、寝苦しい日々となっている。気温の上昇に比例するように、熱中症で倒れる方や、海や川の事故が毎日のように報道される。例年のことと言えばそうなのだが、この種のニュースを見るにつけても、「分かっている筈なのに、毎年同じことがくり返されるのは何故なのか? 防ぐ方法はないのか?」とつい考えてしまう。

 話は変わるが、地球の反対側(南半球)のアルゼンチンでは異常寒波が押し寄せ、マイナス14度(平年は8度だとか)にもなり多くの死者もでているらしい。

 北半球の熱波は偏西風の蛇行が原因だそうだが‥‥。CO2濃度(による魔法瓶効果)を気にしているうちに、太陽の活動が異常化しつつあるのかではないか?地球の自転軸がブレ始めているのではないのか?‥‥などと考えてしまうのも暑さのせいなのか‥‥。

 皆様も猛暑にはくれぐれもご注意を。

さて、

 この度の参議院選挙の結果をどの様に分析するか‥‥

 まず、改選議席を大きく減らした民主党。議席ゼロの国民新党。この与党両党が国民の批判を浴び、敗北したことは明らかだ。

 かと言って、自民党が勝利したと言えるだろうか?確かに谷垣総裁が掲げた与党の過半数阻止を達成し、改選第一党にはなった‥‥しかし、一方で比例区での得票数、獲得議席は過去最低である。一人区での大勝は各候補者の頑張りと公明党の協力であり、自民党への支持が高まったわけではない。

 そのほか、社民・共産は凋落傾向に歯止めがかからず、新しく船出した たちあがれ日本、新党改革も何とか1議席を確保したのみだ。

 唯一、誰が見ても勝者と言えるのは「みんなの党」だ。民主党に対する批判票を集め、東京・神奈川・千葉の3選挙区で議席を獲得し、比例区でも794万票と公明党を上回る得票で、7議席を獲得した。

 「消費税を上げる前にやることがあるだろう~無駄撲滅、国会議員の半減、公務員給与カット‥‥、経済成長を成し遂げれば消費税を上げなくても財政は破綻しない。」そんなストレートな主張が有権者には分かり易く共感を呼んだのだ。

 国会議員数の削減や、行政改革は否定しない。無駄撲滅の努力も継続しなければならない。
経済成長政策を戦略的に進めることにも異論はない。

 ただ、それだけで明るい未来が展望できるほどには、この国が置かれた状況は容易くない。歳出予算額の半分もまかなえない税収、GDPの1.8倍にも上る債務残高。毎年1兆円ずつ自然増加する社会保障費。この現実に立ち向かうには、節約と経済成長のみでは不可能だ。(もっとも、小さな政府を目指す「みんなの党」は、社会保障費の大幅削減に踏み切るのかもしれないが‥‥)

 国民は消費税増税を全面拒否しているわけではない。菅総理が党内議論も無く、思いつきのように10%引き上げを持ち出したが故に、子ども手当てや高速無料化のバラマキ財源のために増税するような誤解を与えたのではないか?

 加えて総理の発言のブレも影響したのだろう。

 民主党は参院選の総括で揺れており、国会での本格的な政策議論は9月の総裁選後になるようだ。しかし、菅総理が確信をもって提案した税制改革(というよりも社会保障税源への対応策)についてだけでも、早急に民主党内意見の集約をなすべきではないのか。

 自由競争を基調とする小さな政府をめざす「みんなの党の政策」をめざすべきか?、当面の社会保障財源として消費税5%引き上げを訴えた責任政党「自民党の政策」を選ぶのか?、それとも党内議論も終わっていない与党民主党の政策か?

 今すぐ、日本の針路を定める議論を始めなくてはならない。前回の繰り返しになるが、残された時間はほとんどないのだ。

国民の声は。

 国民の審判が下った。民主党 44議席、国民新党 0議席、与党は参議院で過半数割れとなった。衆議院でも3分の2を押さえているわけではないから、法案の再議決権も行使できない。これで民主党政権の暴走はストップできる。完全な衆参ねじれ状態の出現だ。

 ここで、自民党がかつての民主党のような理不尽な戦術(=与党案へのなりふり構わぬ反対)をとれば、すべての法案審議はストップし、民主党政権を窮地に追い込むことができるのかもしれない。しかし、それが日本の政治としてふさわしい姿なのか?それが国民の利益になるのだろうか?

 政治家の第一の責務は、政権を取ることではない。国民のために政策を議論し、実現することだ。政権獲得はそのための手段にすぎない。(ところが、ここ数年の政治は、政争に明け暮れ、まともな政策は実現していない。急激な少子高齢化による社会保障の危機が唱えられたのは、1980年代。財政の持続可能性が問題視され始めたのは1990年代。しかし、何の策も実現できないまま、20年がむなしく過ぎ去っている。策を講じても、国民が痛みの声を発すると、諭して継続する努力をせず、即時撤退する愚を何度も繰り返している。これでは改革はできない…)ねじれ国会であっても、しっかりと政策を議論し、成立させるべき法案は成立させる仕組みを確立しなくてはならない。それが政治の責任だ。さもなければ、二院制のあり方を根底から議論すべきだ。

 菅総理は、選挙に先立ち、消費税率引き上げをはじめ財政健全化のあり方を議論する与野党協議会の設置を呼びかけた。もちろん今回の選挙直前の唐突な呼びかけは、野党にも消費税引き上げの責任を負わせようという作戦だろうが、動機はどうであれ、この種の協議会はぜひ実現して欲しい。

 社会保障や外交方針など政権が交代しても継続性が重要な政策は多々ある。もちろん財政や経済政策は、小さな政府をめざすか、大きな政府をめざすか、によって大きく異なるだろう。しかし、国民生活や我が国の安全を左右する基本政策は簡単に変えてはならない。ゆえに、与野党が共同して、共有すべき政策を協議する場が必要なのである。

 そのなかで、議論すべき最優先課題は、まず社会保障のあるべき姿だ。50兆円に迫る年金、30兆円台半ばの医療保険、10兆円が見えてきた介護保険。(加えて5兆円の子ども手当て?)これらの支出にどう対処すべきか。つまり、給付を削るのか、保険料を上げるのか、増税により税を投入するのか。まず、それを議論し、設計図を示すことが必要だ。税制の議論はその後で良い。

 しかし、この結論は半ば見えている。(平成10年から始まった社会福祉基礎構造改革の議論で増税と保険料引き上げは必然となっている)毎年、1兆円ずつ拡大する財政負担を眼前にして、悠長に将来像を議論する暇はないとも言える。まず、当面の措置として、3%程度の消費税引き上げが必要という「たちあがれ日本」の主張は、この点で妥当だ。

 もちろん、より一層の歳出削減は断行しなければならない。だが、公共事業への政府支出をゼロにしても、6兆円しか浮かない。防衛費をゼロにしても5兆円。教育費をゼロにしても5兆円だ。これに対して現在の社会保障の政府支出は既に27兆円で、これから毎年1兆円ずつ増えていく。

 競争を基調とする経済成長を優先する「みんなの党」の主張も、ある意味で理解できる。経済が拡大すれば自ずと税収も拡大するだろう。しかし、それは不確実で格差拡大を伴う、さらに、実現しても数年先の話だ。加えて持続可能な社会保障の安定には安定財源が必要である。今は、続々と定年退職を迎える団魂の世代が社会のお荷物にならないように早急に議論を始めなければならない。

 各党は早急に議論のテーブルに着くべきだ。戦いは終わったのだから‥‥

政治活動の目的は政党の勢力拡大ではない

 非小沢の組閣、党内体制が功を奏したか、60%を超える高支持率のもと管内閣が船出した。そして、この人気が国会論戦で損なわれることを回避し、国会は16日で閉会。参議院選挙態勢に移行してしまった。新党さきがけで苦労を共にした私の知る菅直人氏は、決して論戦から逃げない、むしろ自ら論戦を挑む政治家だったはずだ。

 しかし、結局、国民に政権選択の判断材料を提供することなく、追い風が吹くうちに選挙がしたいとの参議院選候補者の都合が優先されてしまった。小沢氏が辞めても民主党の選挙至上主義は変わらないのか…、と残念である。

 民主党の参院選マニフェストの主題は、「強い経済」、「強い財政」、「強い社会保障」の一体的建て直しである。そのための手法として、公共事業でもなく、自由競争でもない、「第三の道」をめざすという。
 この「第三の道」とやらの正否はともかく(まさに「言うは易く行うは難し」であろう…)、管氏の揚げた三つの政策目標は、「たちあがれ日本」の与謝野氏の従来からの主張と全く同じだ。安定した社会保障制度、成長を目指すマクロ経済戦略、持続可能な行財政構造、これらは政権が代わっても維持しなければならない国家の基本戦略である。

 そういう意味で、総理が呼びかけた超党派の国会議員による協議の場=「財政健全化検討会議」の設置も重要になる。会議名が“財政健全化”とされているところに、「消費税率引き上げの責任を野党にも負わせよう」という姿勢が見え隠れはするが、国家の基本政策については、党派を超えて、冷静な議論を行わなくてはならないのも事実だ。

 社会保障制度や税財政などの基本政策は、数十年単位の長期安定が必要であり、数年の短期間で揺れ動いてはならない。これは、私も従来から強く主張してきたことであり、今後、各党が協議のテーブルに着くという点だけでも、選挙前になんとか合意して欲しかった。

 子ども手当のような愚策であっても、政府として始めてしまった以上、しばらくは継続せざるを得ない。スタートするまでに、しっかりとその正否を議論すべきなのだ。
野党自民党も、「我々から呼びかけたときには応じなかったのに‥‥」とか、「まず昨年のマニュフェストの誤りを認めろ」とか、議論の入り口でケチをつけるのではなく、政策の中身で堂々と論陣を張るべきではないだろうか。

 政治活動の目的は政党の勢力拡大ではないはずだ。政治の目指すところは国家の繁栄・国民生活の向上であり、政党の勢力拡大は目的を達成する為の手段でしかない。手段が目的化することは断じてあってはならない。

※参議院選挙の間(6/24~7/11)は公職選挙法によりHPでの意見表明は禁止されておるので、「日々思うこと」はお休みです。

帰ってきた「はやぶさ」

「はやぶさ」が大宇宙の旅から帰ってきてくれた!
この小惑星探査船が日本を発ったのは、2003年5月のこと。7年前、ちょうど私が2度目の文部科学副大臣を務めていた時期である。

 機体開発費約200億円のこのプロジェクトは、かつてアポロ計画や、この春、野口さん山崎さんが滞在した国際宇宙ステーションISSなど有人宇宙飛行に比べると確かに地味ではある。従ってこれまでメディアの扱いも小さかった。

 が、「はやぶさ」が残した功績は甚大だ。この機体には、日本の科学技術の粋、世界に先んじる最新の技術が詰め込まれている。その一つがイオンエンジン。従来型の燃焼型ロケットとは異なり、イオンレベルの粒子による作用反作用を活用したもので、格段に優れた省エネ航行を可能にする。火星や金星を巡る惑星間飛行には無くてはならない技術だ。

 もう一つは、自律型航行機能。ハヤブサが着陸した惑星「イトカワ」は地球から3億㎞の彼方。地球と火星の中間点で、電波による交信には十数分を要する。このため、地球からの指示に依存することなく、宇宙船が自律的に判断できる着陸制御装置が組み込まれた。

 このような我が国の最先端技術を実証した「はやぶさ」の航海ではあるが、その足取りは決して順風満帆ではなかった。姿勢制御装置の故障、イトカワ着陸時の転倒、電池枯渇による音信不通=行方不明状態、等々の苦難をその都度克服し、当初計画した飛行期間を3年あまりも超過しながらも、その目的を見事に達成したのだ。

 あとはオーストラリアの沙漠に着地したカプセルの中から、太陽系45億年の歴史の謎解きに繋がる「イトカワの砂」が見つかることを願うのみである。

 カプセルは日本に持ち帰られ、間もなく分析が始まる。世紀の大発見の際には、「世界一の技術は必要ない」かのごとき発言をなさった某大臣にも、この「はやぶさ」の偉業、日本の科学技術の実力を世界にアピールして欲しいものだ。

選挙は人気投票ではない。

 先週水曜日(2日)の朝、永田町に激震が走った。
「続投の意志は固い」という前日までの報道に反し、意表を突く形で鳩山前総理が辞意を表明したからだ。

 鳩山氏が辞意を固める過程で何があったのかは次第に明らかになるだろう。だが辞任理由はともかく、問題は、1年交替の短命内閣が4代も続いている我が国政の体たらくである。このような状況では、多極化する世界政治のなかで、日本の地位が益々低下することは必至だ…。

 唯一とも言える鳩山氏のお手柄は、政権末期に社民党と袂を分かったこと、そして小沢氏を道連れに退陣したことだろう。これで、「政策不一致には目をつぶり、数の力を優先する」という与党の姿勢が多少ましになるのではないか。(そもそも民主党自体が異質な政策論者の集合体で、小沢氏が強引に束ねていただけとも言えるが…)

 辞意表明から2日後の金曜日、民主党は所属国会議員の投票により新代表に菅直人氏を選出、午後には国会で94代内閣総理大臣の指名を受けた。菅総理は(もう十数年も前のことになってしまったが)新党さきがけで苦楽を共にした旧友である。今は立場を異にしているが、まずは永年の努力に敬意を表し、総理就任をお祝いしたい。

 一連の人事で脱小沢を強調し、クリーンな民主党をアピールしたのが効を奏したのか、民主政権への支持率は前週の2割前後から6割前後へと大きく上昇した。

 この世論調査の結果は、国民が民主党に託した政権交代(=政治改革)の期待が根強く残っている証であるということを肝に銘じなくてはならない。確かに「誰がやるかより、何をやるのかが重要だ」という小泉進次郎氏の発言は的を射ている。しかし、国民の目線が自民党に戻って来ていないのも事実だ。

 今日(8日)発足した新内閣の政策方針と実力は、11日から来週にかけての所信表明・代表質問で明らかになる。外交力の安定は回復できるか?経済成長戦略に説得力はあるか?財源無視のバラマキ政策に歯止めがかかるか?社会保障制度改革の道筋は示されるか?破綻状況の国家財政をどう立て直すか?等々
 我が党同志には、堂々とした政策論戦を挑んで新政権の問題点を浮き彫りにして欲しい。

 余談だが、安倍・福田両氏の突然の辞任も、多忙な国会開会中の出来事だった。しかし、我が党はタイトなスケジュールのなか、あえて全党員参加の総裁選を行なった。

 開かれた政党である筈の民主党が、今、何故国会議員の投票だけで新代表を決めたのか…、考えてみると昨年の小沢から鳩山への代表交代も国会議員のみの選挙であった。

 それなのに地方議員や党員から不満や批判の声は聞こえてこない。これは民主党には確たる地方組織と支持者が存在しない証であり、逆に言えば、世論の風なしには戦えない民主党の姿を象徴している。

 選挙は人気投票ではない。来る参議院選挙こそは、党首の人気を競うのではなく、政党が掲げる政策の中身を競う選挙にしなくてはならない。

言い訳の果てに

 普天間基地の移設候補地は、大方の予想どおり、名護市辺野古に戻ってきた。辺野古案への回帰自体は、アジアにおける米海兵隊の役割と市街地にある普天間基地の危険性を考えると最善の選択である。

 しかし、8ヶ月に及ぶ鳩山政権の迷走が沖縄県民の心をかき乱し、亀井大臣をして「どうせ実現しない案なのだから…」と発言させるほどに、実現へのハードルを高くしてしまった。しかも、米国政府との信頼関係も完全に失墜している。

 外務大臣や防衛大臣は、昨年末から辺野古案での決着をほのめかす発言を繰り返していたと記憶している。混乱を8ヶ月に引き延ばしたのは、正に鳩山総理自身の不見識、政治家としての資質に欠ける言動である。

 未だに「現行計画とは違う」「工法などを含め具体案は8月末までに詰める」と言い訳をされているが、北朝鮮を巡る昨今の情勢を鑑みると、さっさと米国政府と合意できる埋立案に戻し、早期決着を図りなさいと言いたくなる。

 誰にでも気を遣い、優しい言葉を返す鳩山総理をして、“いい人だ”と言う評価もあるようだ。しかしそのような、八方美人の対応しかできない人物に日本の舵取りを任せていて良いのだろうか。

 政治家の資質とは何か? かつてドイツの社会学者マックス・ウェーバーは、「職業としての政治」のなかでこう語っている。「政治家の行動については『善からは善だけが生まれる』というのは正しくなく、その反対に『善からは悪が生まれる』ことが多い…。これを知らない人は政治の世界では幼児のようなものだ。」

 普天間問題だけではない、高速道路料金でも、消費税引き上げでも…、政権交代後、我々の目前で展開される数々の迷走劇の原因は、真に鳩山総理の幼児性に起因する。

 ウェーバーは、「(政治家の責任は)自分の行為の責任を自分一人で負うところにあり、この責任を拒否したり転嫁したりすることはできないし、また許されない」とも述べている。

 28日の記者会見で「命がけでこの問題の解決に取り組む」と決意を語った総理だが…。つい先日まで、5月末の解決に「職を賭す」とまで言っていたことをまさか忘れたのではないだろう。

 今、総理がとるべき選択は、自ら総理の職を辞任するか、解散総選挙で国民の信を問うか‥‥そのいずれかでしかあり得ない。

失政追及を

 今国会の会期も残すところ一ヵ月を切った。
 しかし、現政権の目玉政策として閣議決定されたはずの多くの法案が、未だに成立の目処も立っていない。

 普通の発想であれば、会期を延長し審議時間の確保を図るべきだが、政策より選挙を重視する政府与党は、早々と“会期延長せず”との方針を決めたようだ。

 そのうえ6月16日までの会期中に少しでも多くの法案成立を図りたいのか、ここに来て与党の国会運営がかなり荒っぽい。

 衆議院の内閣委員会では国家公務員法改正案、環境委員会では地球温暖化対策基本法案が、委員長判断による質疑打ち切りにより強行採決され、両案とも衆議院を通過した。

 特に、2020年までに温暖化ガスを25%削減するという国際公約を盛り込んだ温暖化対策法案は日本の経済活動や国民生活に多大な影響を及ぼす。にもかかわらず、新エネルギーや原子力の活用、排出量取引、環境税などの具体策について何の議論もないまま、たった18時間の審議で力任せに押し切った形だ。

 小沢幹事長が特定団体に成立を確約してしまった郵政改革法案(実質は郵政国有・肥大化法案)の方は、全野党が欠席の中、深夜に衆議院本会議で提案趣旨説明と質疑が強行された。

 一方で、多くの国民が求めている〝政治と金〟についての首相と幹事長の説明責任の方は、全く無視されている。

 かつて自民党政権も強行採決を行ったことは否定しない。しかし、それは万策が尽きた後のやむを得ざる選択であり、これほど自己中心的な国会運営は私の記憶にはない。

 しかも、あれほど自民党の強行採決を批判していた民主党が、自民党幹部の政治資金問題を追求してきた鳩山首相が、ここまで豹変するとは信じがたい? 

 仮に参議院選挙の日程を7月25日とすれば、少なくとも2週間の会期延長は可能だ。それで十分かどうかはともかく、かなりの法案審議時間が確保できる。さらに言えば、北朝鮮を巡る安全保障問題や口蹄疫のまん延対策も、国会で審議すべき緊急課題ではないのか。

 新聞報道では「論戦回避」「法案処理より追及回避」とのヘッドラインが踊る。参院選は小沢幹事長の2回目の検察審査会の議決前がよいとか、第三極の支持が広がる前にとか言われている。

 確かに選挙は民主主義の原点ではあるが、それは議員を選ぶ手法にすぎないとも言える。国会審議よりも選挙準備を優先するという本末転倒はあってはならない。

 それが自らの失政追及を恐れるが故の論戦回避であれば言語道断だ。