「警告」に思う

 文芸春秋の四月号に掲載された与謝野馨元財務大臣の寄稿、(さらには鳩山前総務大臣の新党設立発言)が大きな波紋を呼んでいる。

 ヘッドラインが「新党結成へ腹はくくった」、サブタイトル「谷垣総裁には失望した。私が決断を下す時が来た。」となっているのだから、波紋を呼ぶのは当然である。

 ただヘッドライン、サブタイトルとも必ずしも真意を正確に伝えていると私は思わない。

 与謝野氏は、日本が直面している状況の深刻さ、そして政治の危機感のなさを訴えるべく、警告を発したのである。

 少なくとも先日の有志の勉強会で、与謝野氏の口から直に話を聞いた同志は、その主張に共鳴し、危機感を再認識した。

 鳩山内閣の支持率は30%を切る直前、危険水域近くまで下落している。原因は、政治と金、総理の発言のぶれやリーダーシップの欠如、一向に見えてこない成長戦略など、色々考えられるが、一言でいえば、国民が政権交代に託した期待に応えていないからだ。

 いやむしろ、旧来型の金権誘導政治に後退している感さえある。

 しかし半面、本来なら新たな受け皿となるべき自民党への支持も盛り上がらない。党再生、そして現政権に対抗する政策方針の具体像が一向に見えて来ないからだ。

 与謝野氏の危機感はその様な現状認識に起因するものである。

 何よりも自民党が一致結束すべき時であるとの執行部の主張は正しいが、結束の為にも解党的出直しに再手しなければならない。厳しい議論を重ね、すべての党員が合意できる新しいビジョンを一日も早く示さなくてはならない。

 政策論を競い合うことをおそれてはならない。自民党の強みは、自由闊達な党風のもと、多彩な人材が主張をぶつけ合い、合意を得てきたことにある。

 谷垣総裁のリーダーシップのもと直ちに人心の一新を含め、新しい自民党の姿を明確に打ち出すべきである。

 参議院選挙を目前にして我が党に与えられた時間的余裕はない。そして、今の日本にもそれ程時間的余裕があるとは思えない。

仕分けの前に

 雪不足で開催準備が間に合うのかとの懸念もあったバンクーバー冬季オリンピックも大盛況のうちに閉幕した。

 人口約60万人(カナダ第3)の都市で開催されたということもあるだろうが、どの競技会場も多くの観衆で溢れていたのが印象的だった。

 日本の選手団は銀3銅2の計5個のメダルを獲得した。日の丸を背負って全力を尽くして頑張った選手の皆さんに心から拍手を贈りたい。

 今回の獲得メダル数が多いとみるのか少ないとみるのかは意見の分かれるところだ。しかし「参加することに意義がある…」と言いつつも、お隣の韓国選手団の大活躍を見て、競技スポーツ強化の必要性を感じた方も多いのではないだろうか。

 日本の選手強化費は国費ベースで27億円。対して14個のメダルを獲得した韓国は100億円、30個のメダルを獲得したスポーツ大国ドイツは275億である。

公務員制度改革

 今国会で私が注目している法案の一つが国家公務員法改正法案である。

 私がこの法案に特別な思いを持つのには理由がある。

 昨年の通常国会で、同法案の与野党協議の窓口役を担っていたからだ。4月の提案から3ヶ月の協議を経て、残る課題は労働基本権(スト権・団体交渉権)の記述方法のみ、あとは民主党内の調整を待つのみとなっていた。

 にもかかわらず、結局、野党の不信任決議案の提出で全ての審議はストップ、3ヶ月の労苦は水泡に帰した。 既に解散総選挙の日程が決まっていたにも関わらず、何故不信任案を提出されたのか…。北朝鮮の船舶検査法も成立見込みとなっている情況で、何故審議拒否する必要があったのか、私は非常に腹立しい思いだった。

 今、政府与党となった民主党は、「政治とカネの議論よりも、政策議論が優先」という主張を繰り広げている。その説を否定はしない。しかし、声高に叫ぶのは、自らの過去の行いを深く反省してからにしてもらいたい。

 さて、今回提出された国家公務員法改正法案では、中央省庁の人事を内閣人事局に一元化し、降格も含め幹部人事を政治主導で行なえる内容となっている。

 基本的な理念は昨年の修正案と同じであるが、人事局が扱う対象者が事務次官から部長級までと広がった結果、約600人の人事を扱うことになる。

 各省庁の幅広い行政分野、様々な職種にわたる約600人もの人物評価、業績評価が一括して公平に行えるのか?はなはだ疑問である。

 それ以前に、このような人事システムに一気に移行することが可能なのだろうか?アメリカやイギリスのような猟官制度は、その人材供給源となる政策シンクタンクが多数存在するからこそ成り立っている。

 ある意味で、政策立案を霞ヶ関の官僚の能力に(少なくとも当分の間は)依存せざるを得ないわが国には、ちょっと不適合、機能不全を生じるのではないか。

 将来的には、政党の政策立案能力に磨きをかける必要があることは言うまでもない。
 
 しかし、民主党新人議員は言うまでもなく、ベテラン議員と言えども(官僚OBはさておき)、法律案を自ら作成し、複雑な税制を自ら動かせる人材は希である。

 今は、政治主導にこだわるよりも、官僚が誇りを失う事なく省益を超えて、国家のために仕事ができるシステムを構築すべきではないだろうか。

 政治家に必要な資質は、有能なスタッフの能力を十分に惹きだし、有効な政策を立案、実行させることである。

 原案どおり可決されるのであれば、恣意的な人事を防ぎ、公平な評価で、官僚のモチベーションを高める制度運用を国会の議論で明らかにするべきである。

消費税の議論を先送りするな

 14日のテレビ番組で管財務大臣が「消費税の議論は2011年度以降」との方針を軌道修正して、3月からの議論開始を打ち出した。

 これに対して鳩山総理は「議論を行うことは結構だ」と言いつつ、「議論は早過ぎる」とも発言し、相変わらず国民を混迷させている。
 与党内も混乱し、「4年間引き上げないものを議論しても仕方ない」、「参議院選前に消費税の議論を行うのは自殺行為」といった声もあがっている。

 菅大臣は消費税について「逆立ちしても鼻血も出ないという位の歳出削減をしてからでないと国民の理解は得られない」と言っていた。

 なぜこの時期に方針を転換したのか…。疑問は残るが、私は、管氏の豹変を歓迎したい。

 増税論議の前にムダを削減というのは、小泉政権の方針でもあった。しかし、ムダ撲滅は永遠の課題でもあり、これ以上悠長にムダ探しだけをしている余裕はない。

 財政収支の均衡とそのための収入拡大は、それほど重要な課題だ。

 これまで鳩山政権が実施してきたマニフェストに基づく政策には、2011年度以降はさらに大きな歳出増が見込まれる。

 政府の長期債務残高は650兆円、国民一人あたりで割ると500万円(赤ん坊まで含めて)となる。しかも、現状を放置すれば、人口減少と高齢化により、税収の減少と社会保障費の増嵩は不可避である。

 金融危機は小康状態にあるとはいえ、ギリシアやドバイのように国家の巨大債務が経済危機を招くと言う現象も起こっている。わが国の財政赤字はこれらの国より悲惨な状況にあるのだ。

 また、将来の財政不安は、社会保障制度への不信となって、消費を冷え込ませる。これがデフレの一因となっていることも否定できないだろう。

 もちろん財政がこのような状況に陥った責任は過去の自民党政権にもある。
しかし、今、過去の政権を批難していても始まらない。現政権がなすべきは、将来に向かって、国家財政の立て直しを急ぐことだ。今すぐに。

 今年は参議院選挙の年、選挙を前にして増税議論はタブーと言われるが、選挙を理由に消費税の議論を先送りする余裕は、今の日本にはない。
 むしろ、参議院選で税制の在り方を問うべきではないのだろうか。そのためには、6月までに与野党ともあるべき税制の姿を(せめて骨格を)描き上げ、国民に提示しなくてはならない。

マニフェストより大切なことは

 衆議院予算委員会の審議で民主党のマニフェスト違反が焦点になっている。

 私は、現実の政策立案、予算編成に当たっては、必ずしもマニフェストを厳守する必要はないと考えている。ガソリン税等の暫定税率維持などはマニュフェスト違反であっても、厳しい財源不足に対応した正しい選択と考える。

 ただし、国民と約束した以上、それを変更せざるを得なくなった場合は、理由を明確に説明し、国民の理解を求めなければならないのは当然である。内容の重要性によっては、改めて信を問うことも必要だろう。

 22年度政府予算には、子ども手当、農家の戸別所得補償、高校授業料の無償化、高速道路の無料化(社会実験)など新規政策が盛り込まれた。

 これらの個々の政策の是非についてはここでは言及しないが、制度導入にあたって財政規律が無視されていることが最も大きな問題ではないか。国民は、「子ども手当や高速無料化のためなら、いくら借金をしても良い」とは言っていない。

 昨年の夏、我々自民党が民主党の諸施策の財源手当について問い質した際、彼等は「無駄をなくして予算を組み換えれば財源はある」と断言したはずではなかったか。マニュフェストの工程表でも、初年度である平成22年予算では、7.1兆円の新規財源を捻出できると明示していた。

 しかし、ムダの掘り起こしのため盛大に行われた事業仕分けにおいても、発掘された金額は1兆円に満たない。百歩譲って時間が限られているから仕方なかったとの言い訳を認めるとしても、財源の見通しなしに制度改正を行うことはあまりにも無責任ではないか。

 「無駄づかいをなくすことで借金を減らし、未来の子供達に負担を残さない」と言っていた主張とは明らかに矛盾する。

 昨年の夏、「皆さん、財源はあるんです」と街頭で絶叫していた鳩山総理のあの演説は何だったのか…と、腹立たしく思う。

 自民党政権時にも確かに多額の国債を発行していたが、一方で経済財政諮問会議による財政再建目標も維持していた。

 今や財政立て直しの指標を失った日本。6月に策定予定の中期財政計画には、借金削減の明確な数値目標が盛り込まれ、これ以上わが国の信用力失墜を食い止められることを願う。

政治とカネ

 民主党小沢幹事長の資金管理団体の土地購入を巡る事件への検察の判断が下った。小沢氏は嫌疑不十分で不起訴、元秘書の石川衆議院議員ら3人が起訴というものだ。

 これを受けて新聞各社は緊急世論調査を実施し、その結果が先週日曜日の朝刊のヘッドラインを飾った。
国民の声は、小沢幹事長の説明には納得できないとするものが9割、幹事長を辞任すべきとするものが7割と、各社ともほぼ横並びだ。

 この結果をよそに、小沢氏はすでに幹事長続投を宣言、鳩山総理もそれを了としている。世論調査をどの様に受け止めているのか…、今後も幹事長の職に留まるのであれば、自ら進んで身の潔白を証明すべきではないのか。

 「私は潔白だ、やましい事は何にもない」と言われているのだから、国会への招致に応じない理由は無い筈だ。
 民主党も「国民生活を守る為に一日も早い予算の成立を」と主張するのなら、まず国民の疑問に答える必要がある。まして、連立与党の社民党からも小沢氏の説明を求める声がでているのだから。

 我が自民党にとって、内閣支持率や民主党支持率が低落することは歓迎すべきかも知れない。しかし一方で、灰色に包まれた政治とカネの問題が、国民の政治不信を一層加速してしまうのではないかとの懸念が脳裏をよぎる。

 民主党の各位には、政治に向けられた厳しい国民目線をしっかり受け止め、迅速かつ適切な問題解決を図られることを望む。小沢独裁体制との批判を払拭する為にも、国民の信頼を損ねることなきよう、自らの良心に従って行動される事を期待したい。

責任政党のあり方は

 今年も早や一ヵ月が過ぎました。

 通常国会では補正予算案が可決され、審議の中心は22年度予算案をめぐる議論へと移ります。

 それに先立つ施政方針演説で、鳩山総理は「いのち」と言う言葉を24回も使いました。

 これを聞いて思い出したのは、今から15年前の代表質問の光景です。当時新党さきがけの代表幹事鳩山氏が、本会議壇上から「皆さん。政治は愛です。」と語りかけられました。

 演説内容については、与野党から賛否様々なコメントが出されていますが、私の感想は「善し悪しはともかく、鳩山さんらしい新スタイルの演説だった」ということにしておきたいと思います。

 いよいよ予算委員会で、92兆円の政府予算案の審議が始まります。野党となっても自民党は責任政党です。政府案を批判するのみではなく、具体的な対案を作成し、考え方の違いを明確に示していく方針です。

 まず、大きな論点とすべきは、短期的な細かな施策よりも、中長期的な成長戦略や財政規律・安全保障でしょう。政策面で与野党の対立軸を際立たせ、国民の皆さんにわかりやすく選択肢を提示しなくてはなりません。

 メディアの報道は、政治と金の問題を追求している様子に集中しがちです。予算委員会の実況中継をご覧いただき、政策についての地道な議論も行なわれていることを分かって戴ければ幸いです。

 そうは言っても政治と金の問題も避けては通れない問題です。政治への信頼を回復するには、まず、政治家自らが清廉潔白でなくてはなりません。
 
 国会審議のスムーズな運営のため、国会が本来の政策議論の場となるためにも、疑惑を持たれた政治家は、倫理綱領に基づき自ら進んで国民に対し説明責任を果たすべきでしょう。渦中の方々の潔い対応を期待しています。

論戦の前に

 第174回通常国会での予算委員会の論戦が始まった。

  「国民生活を守る為に一日も早い予算の成立を」と主張する与党。対して「信頼回復の為に政治と金の集中審議を」求める野党と、見慣れた光景が広がっている。政権交代により攻守は入れ代わったものの、これまでとほとんど変わらない国会の風景。国民の目にはどの様に映っているのだろうか‥‥。

  「予算の早期成立」に「政治と金の問題」。いずれも重要な課題ではある。しかし、相変わらず野次と罵声が飛び交う国会審議が国民の政治不信を深化させなければ良いのだが、と気にかかる。私はかねてから、国民生活の安定を図る政策論議と政治家の姿勢を質す政治倫理の議論は、切り離して論ずべきものであると考えてきた。政権交代を契機に国会審議のあり方について与野党が十分に話し合い、新しいルールを確立する必要があるのではないだろうか。今、永田町に両者の橋渡しができる人材もいるとは思うので彼等の活躍に期待したい。

  24日(日)には第77回自由民主党大会が開催された。党再生に向けて新綱領や運動方針が発表されたが、メディアからは概して厳しい論調が聞こえてくる。7月の参議院選挙に向け、我らが自由民主党には更なる再生への努力が求められている。皆さんにも、綱領、運動方針に対する叱正をお願いしたい。

本当の国家像を求めて

 2010年の幕開けから2週間が過ぎ、3連休をピークに新年会も一段落しました。

 新年になっても、挨拶で度々耳にする言葉は、昨年の流行語大賞にもなった政権交代の四文字です。しかし、鳩山政権発足から4ヶ月にして、内閣支持率は50%前後と、発足時からは20ポイントも下落。新政権の政策運営が、国民の期待に応えられていない証でしょう。

 それにもかかわらず政党支持率の差は縮まらず、自由民主党の支持には大きな回復が見られません。我が党が政府案に代わる政策の選択肢を提示できていないからではないでしょうか。

 自由民主党は一日も早く、分かりやすい国家像、目指すべきビジョンを国民に示し、国会論戦を通じて政府の政策との優劣を競わなくてはなりません。

 今日から始まった通常国会での同士の活躍に期待しながら、私は日々現場の声に耳を傾け、日本再生のシナリオづくりに役立てていきたいと思います。

あけましておめでとうございます

デフレと円高の厳しい経済状況のなか、新年が幕を開けました。今年こそ不況に打ち勝つ年としなくてはなりません。
 さて、鳩山内閣の発足から3カ月半。ハネムーン期間の経過とともに、支持率も徐々に低下してきたように見受けられます。
 今月後半には、いよいよ補正予算と22年度当初予算を審議する通常国会が始まります。野党自民党にとって国会論戦は存在感を示す絶好の機会。この場に参加できないのは無念ですが、その分も我が党の再起をかけた政権構想の構築に心を砕く所存です。
 総選挙の敗北の反省のうえに、我が党は立党の原点に戻り、自由と民主の下に正しい保守の旗を立て再生に向けスタートを切りました。
 一人の判断より多数の判断を、一時期の熱情より時代を超えて積みあげられてきた良き伝統・規範・秩序を大切にする。それが私たちのめざす保守主義です。時代に適さぬものは改め、秩序の中に進歩を求めていきます。
 一人ひとりの豊かな生活の実現のためには、何よりも国富を拡大する成長戦略が重要です。中央政府の役割は、持続可能な財政規律のもと国民の安全で安心な生活基盤を構築すること、そして、政府の過剰な介入を避け、民間セクターが個性と多様性を発揮できる自由で活力ある社会を構築することでしょう。
 今年は寅年。阪神タイガースの大活躍とともに、再生自民党が政権奪還に向けて大いに咆哮したいと思います。
 今年も変わらぬご指導ご鞭撻をお願いします。