さて、

 この度の参議院選挙の結果をどの様に分析するか‥‥

 まず、改選議席を大きく減らした民主党。議席ゼロの国民新党。この与党両党が国民の批判を浴び、敗北したことは明らかだ。

 かと言って、自民党が勝利したと言えるだろうか?確かに谷垣総裁が掲げた与党の過半数阻止を達成し、改選第一党にはなった‥‥しかし、一方で比例区での得票数、獲得議席は過去最低である。一人区での大勝は各候補者の頑張りと公明党の協力であり、自民党への支持が高まったわけではない。

 そのほか、社民・共産は凋落傾向に歯止めがかからず、新しく船出した たちあがれ日本、新党改革も何とか1議席を確保したのみだ。

 唯一、誰が見ても勝者と言えるのは「みんなの党」だ。民主党に対する批判票を集め、東京・神奈川・千葉の3選挙区で議席を獲得し、比例区でも794万票と公明党を上回る得票で、7議席を獲得した。

 「消費税を上げる前にやることがあるだろう~無駄撲滅、国会議員の半減、公務員給与カット‥‥、経済成長を成し遂げれば消費税を上げなくても財政は破綻しない。」そんなストレートな主張が有権者には分かり易く共感を呼んだのだ。

 国会議員数の削減や、行政改革は否定しない。無駄撲滅の努力も継続しなければならない。
経済成長政策を戦略的に進めることにも異論はない。

 ただ、それだけで明るい未来が展望できるほどには、この国が置かれた状況は容易くない。歳出予算額の半分もまかなえない税収、GDPの1.8倍にも上る債務残高。毎年1兆円ずつ自然増加する社会保障費。この現実に立ち向かうには、節約と経済成長のみでは不可能だ。(もっとも、小さな政府を目指す「みんなの党」は、社会保障費の大幅削減に踏み切るのかもしれないが‥‥)

 国民は消費税増税を全面拒否しているわけではない。菅総理が党内議論も無く、思いつきのように10%引き上げを持ち出したが故に、子ども手当てや高速無料化のバラマキ財源のために増税するような誤解を与えたのではないか?

 加えて総理の発言のブレも影響したのだろう。

 民主党は参院選の総括で揺れており、国会での本格的な政策議論は9月の総裁選後になるようだ。しかし、菅総理が確信をもって提案した税制改革(というよりも社会保障税源への対応策)についてだけでも、早急に民主党内意見の集約をなすべきではないのか。

 自由競争を基調とする小さな政府をめざす「みんなの党の政策」をめざすべきか?、当面の社会保障財源として消費税5%引き上げを訴えた責任政党「自民党の政策」を選ぶのか?、それとも党内議論も終わっていない与党民主党の政策か?

 今すぐ、日本の針路を定める議論を始めなくてはならない。前回の繰り返しになるが、残された時間はほとんどないのだ。