あたりまえの話し

東日本大震災発災後、官邸記者クラブからの会見要請はおろか、ぶらさがり取材にすら応じなかった菅首相が、先週13日の夕刻、自ら進んで記者会見を開いた。
その中身は、ご承知のとおり「脱・原発依存」宣言だ。

いつもの菅発言と同じく、代替エネルギーの確保の見直しや実現に向けての道筋や時期など、具体的な目標については示されておらず、政策の体はなしていない。単なる思いつきの、場当たり的なパフォーマンスだ。

最近では「浜岡原発停止要請」「原発再稼動時のストレステスト導入」に続いての唐突発言だが、振り返ってみると昨年の参議院選に於ける「消費税10%」や「平成の開国(TPP)」、「社会保障と税の一体改革」も同類だ。どの宣言も言いっぱなしで、何も具体化していない。私以外にも「またか?」と思われた方々も多いだろう。

民主党内や閣内でも一切議論されていないまま行われたこの宣言は、与野党のみならず閣内からも異論が噴出した。経済界でも批判が続出している。
谷垣自民党総裁は会見で「論評に値せず」と切り捨てたが、私も全く同感だ。

結局、首相の女房役である枝野官房長官も非難に耐えきれず、「遠い将来の希望という首相の思いを語った」と釈明し、首相も15日の本会議で「政府見解ではなく私自身の考え、私的な思い」と発言を後退させた。

ただ、首相には記者会見で“私的な想い”を発言する権利があるのだろうか?
ましてや、自らが記者クラブに要請して開催した会見である。通常は内閣で方針決定した“政府の思い”を表明する場ではないのか? この私的発言問題一つをとっても、菅直人という人物は一国の宰相に値しない。

今や孤独の暴君となった感のある首相の発言はともかくとして、福島原発事故を受けて、我が国のエネルギー政策を「白紙で見直す」ことは必然である。
この問題は、日本経済・国民生活・環境問題などを総合的に判断し、科学的かつ客観的に議論しなければならない。冷静にエネルギー政策のあり方を考えてみよう。

まず超短期的課題、この夏と冬、来年の夏をどう乗り切るか。
これは政策論としては手遅れの領域である。ストレステスト発言により、点検中の原発の即時起動は不可能になった。関西では間もなく11分の7の原子炉が停止状態となり、電力供給量が激減するが、この事態を乗り切る術は国民の節電努力しかない。

次に数年から10年後を視野に入れた短期的課題。
老朽化した原発は廃炉していかざるを得ないだろう。問題はその代替エネルギー源だ。
自然エネルギーはまだ間に合わない。選択肢は新型原発で担うか、化石燃料(前号で紹介したコンバインドサイクルLNG発電等)で担うかになる。後者の場合は当然温暖化ガスが増加する。一方、無理に自然エネルギー導入を加速すると電気料金の高額化や電力不足により、産業の空洞化=海外移転が進む可能性もある。

そして、20~30年後の姿。これくらいのスパンの計画であれば、電力供給バランスの再編を論じることができる。現在、原子30%、化石60%、自然10%(自然のうち9%は水力)。これをどう変えるか? 昨年民主党政権が定めた計画では原子50%、化石30%、自然20%にすると言う内容だった。脱原発ということは、化石と自然の発電量を倍増(50%→100%)させるということだ。

人口減少や産業構造の転換により、電力消費量が減少することも考えられる。技術革新により、自然エネルギーを30~50%にすることは不可能ではないだろう。しかし、化石と自然で100%というのはどうだろうか? せっかく蓄積してきた原子力の技術を捨て去ることにも疑問を感じる。原子力プラントの輸出は、数少ない成長産業でもあるのだ。

政治はこの課題について、より一層スピードアップして議論を深め、解決策を見出さなければならない。
それが震災復興とともに今、日本に求められている国家的課題であり、現在を生きる我々の「未来への責任」だと、私は考える。

エネルギー政策

自民党内の「総合エネルギー政策特命委員会」の本格意的な議論がスタートした。
「福島原発の事故を受けての今後のエネルギー政策について8月中に取りまとめる」と報道されているが、その関連で今私が注目している一つのプロジェクトについて言及したい。

今から10年前だと記憶しているが、文部科学省のスタッフの一人が私の事務所に、「官民連携開発プロジェクトの推進を政治の側から応援してほしい」と言って、やって来た。
その中身は、新素材(超耐熱材)を使った1700℃級発電用ガスタービンだ。

従来の発電用のLNGガスタービンの燃焼温度は1500℃まで。羽(タービンブレード)に使う超耐熱材の開発(独立行政法人 物質・材料研究機構で開発)に成功すれば、これを1700℃まで高めることができるという。
たった200℃と思われるかもしれないが、この燃焼温度の上昇はエネルギー効率(発電端熱効率)を改善し、燃料コストとCO2排出量の大幅な削減につながる。

直感的に悪い話ではないと思ったのだが、良く聞いてみると私の地元の三菱重工業高砂製作所が開発パートナーだという。

それを聞いて私の腰が引けた。
「先生の地元でもありますから」と言われたことにいささか抵抗があったのと、選挙で労組に苦しめられている(私の思い込みかも知れないが…)との不純な思いがあった。
余談ではあるが、ロケットの開発をめぐり「渡海は三菱の廻し者」と覚えのない陰口も流されたこともある。(政治の世界ではありがちだが…)

一度は断ったのだが、「これは国益の賭かった勝負なのです。米国との開発競争に勝たなければ、この分野での日本の未来はありません」と食い下がられた。
私は「国益」と言う言葉に弱い。環境保護に貢献できるという点にも心をくすぐられた。
結局、私はこのプロジェクトの予算獲得に積極的に肩入れすることになった。

以来、一貫してこの新タービンの開発動向を見守ってきたが、要素技術開発(2004~07)、実用化技術開発(2008~11)と順調に進行し、既に1600℃級に導入する実機の試運転に成功している。
2013年にはこのタービンを組み込んだ高効率コンバインドサイクル発電設備(※)が関西電力姫路第二発電所で運用開始するほか、東京電力川崎発電所(2016年度)、五井発電所(2020年度以降)でも採用計画が進んでいる。

ちなみに前述の姫路第二発電所では、設備更新によって発電効率が42%→60%へと向上し、発電電力量あたりの燃料費とCO2排出量を共に約30%低減することが可能になる。

現在は次のステップである1700℃級の実証機関発設計が行なわれているが、2015年には実証運転が計画され、更なる効率化が実現するものと期待している。

福島第一原発の事故を受けて、エネルギー政策の見直しは緊急かつ必須の課題であることは言うまでもない。そして、確かに菅総理が唱える再生可能エネルギーの研究開発・利用促進は大切だろう。
だが、政策は単線的に考えると取り返しが付かない失策を招く。エネルギー政策のあり方については、経済、国民生活、環境問題など、あらゆる視点を考慮しながら総合的な判断をする必要がある。

そもそも、再生可能エネルギーをどんなに急いでも数年で全電力をまかなうことは不可能だし、莫大な費用(電気料金の上昇)もかかる。
当面のエネルギー需要を確保する上で、比較的環境負担の少ないLNGコンバインドサイクルによる発電システムの導入と、それを支える1700℃級ガスタービンの開発は、時代の要請に応えた時宜を得たものだ。

一日も早い実現に向け、関係者のより一層の努力を期待している。

※コンバインドサイクル発電方式:ガスタービンの廃熱を回収し、蒸気タービンを回す方式。二重に発電機を回すため熱効率が高い。

社会保障改革

先週30日(木)、政府・与党の税と社会保障一体改革案が決定された。

「自助・公助・共助のバランスに留意」や「徹底した給付の重点化」「給付・負担両面での世代間・世代内での公平を重視」など基本的な考え方は、もっともな言葉が並んでいる。
しかし、具体的改革の方向となると、消費税の目的税化とその段階的引き上げ以外は見るべき内容はない。
本来、この改革に求められる重要な視点の一つは歳出抑制策であり、年金や医療費の給付をいかに適正化するかなのだが、これらについては検討方針が並ぶのみだ。

ただ、この案がこれから与野党協議を始めるための「たたき台」であるのなら、あまりガチガチに固めない方が良いかも知れない。自民党にしても、年金や医療費削減の妙案を持っている訳ではないのだから…。

今回の案で、民主党マニフェストの一部(増税無き年金改革)は破綻していることを自ら示された。後は先送りされているマニフェスト全体の検証・修正も急いで党内調整を終えて欲しい。
そうすれば、様々な政策課題に関する与野党協議も可能になるだろう。(与野党から信頼失墜状態にある菅総理の退場も、よりスムースな協議をもたらすだろう…)

自民党も、この国家的危機に直面している時期に「マニフェストを修正するなら解散しろ」とは言えるものではないし、言うべきではない。
石破政調会長は今回の案が閣議決定されていないことを理由に「協議のテーブルにはつけない」と発言しているが、私はそうは思わない。(石破氏の発言は、多分に菅総理に対する不信感に由来するのだろうが…)

そもそも、社会保障政策や外交政策(安全保障政策)は、短期的な視野で決定すべき事項ではない。たとえ政権交代があったとしても、揺らいではならない政策なのだ。
逆に言えば、これらの政策は、常日頃から党派の主張を超えた国策として、議論しなくてはならない。(今回の政権交代ではこのルールを破ってしまった故に日米関係にひびが入り、子ども手当等をめぐる混乱を来してしまった。)

ここ数年間、私は一貫して社会保障問題について「超党派の協議が必要」と主張してきた。前回の総選挙や昨年の参議院選挙での我が党のマニフェストに「超党派協議機関」について言及することにも汗をかいてきた。

あと1年で団塊の世代(1947~49年生まれ)が65歳となり、年金の受給側=支えられる側になる。加齢とともに医療の世話になる機会が増大することも避けられない。
昨年秋の国勢調査が示すとおり、我が国は人口減少社会に突入した。

急激な少子高齢化に見舞われるこの社会が持続可能であるための条件は、社会保障の給付を抑制するか、さもなければ、負担を上乗せするか、この二者択一だ。
税と社会保障の一体改革は待ったなし。もう先送りすることできない。

ところで会議の席で、「今回の決定は歴史的な決定だ。皆さんの努力を含めて誇りに思う」と言った菅首相だが、かつて「(この問題に)政治生命を賭ける」とまで言っていたのに、今回の取りまとめに汗をかいた姿は一向に見えなかった。
「平成の開国」とかかっこよく叫んでいたTPPは、全く耳にしなくなってしまった。
浜岡原発を止めた時の勢いはどこへ行ったのか、原発再起動問題は海江田経済産業大臣に任せっきりだ。

場当たり的に次々と国民受けを狙った新しい課題を見つけては延命を図って来た菅総理だが、特例公債法・第2次補正予算に加えて、今は再生可能エネルギー全量固定価格買取法案の成立が退陣の条件(一定のメド)と言われている。
「与野党協議を呼び掛ける」とのことだが、貴方の退陣がその実現への最短コースであり、それこそが「政治生命を賭ける」ということだと、私は言いたい。

次世代スパコン

先週の月曜日(20日)、自他共に認める科学技術族である私に、ビッグニュースが届けられた。
既に大きく報道されているのでご存じかと思うが、神戸で整備が進められている次世代スーパーコンピュータ「京(けい)(※1)」が世界最高性能の8.162ペタプロップス(毎秒8,162兆回の演算)を達成したのだ。日本のスパコンが世界一となったのは横浜の「地球シミュレータ」以来で、7年ぶりのことになる。

理化学研究所のかつての部下から、「「京」が国際ランキング「TOP500(※2)」で世界一になりました」と聞いたとき、私は思わず「やった」と心の中で叫んだ。
小惑星探査機「はやぶさ」の苦難の旅路ではないが、「京」の開発にも幾度かの試練があったからだ。

最初の危機は、共同開発メーカーの脱落。
このプロジェクトは、理化学研究所と民間企業3社の協力体制の下でスタートしたのだが、平成21年春、リーマンショック後の不況のためか、2社が離脱し大幅なシステム変更を余儀なくされたのだ。
製造スケジュールやコストにも大きな影響があったが、残された富士通をはじめ、開発研究者の努力で何とか乗り越えてきた。

次に一昨年秋の第一次「事業仕分け」による受難。
民主党のパフォーマンス政治のはしりだが、蓮舫参議院議員(現、行革担当相)の手にかかり、「どうして一番じゃなきゃダメなんですか? 2番じゃダメなんですか?」と一方的に仕分けられ、事実上の「予算凍結」と判定されてしまった。
が、その後、野依先生をはじめとする科学者の皆さん、経済界の方々による「未来への投資」を求める大合唱により、予算を再獲得することに成功したのだが…。

そして3つめが、完成目前に襲来した東日本大震災によるサプライチェーンの破壊だ。
スパコン本体の製作は、富士通のグループ企業により、主として三重、福島・宮城、石川の3地域で分担して行っている。それが、3月の大震災により、福島・宮城の被災地では、設備が被災した工場はもちろん、被害はなくとも停電や水の不足等で稼働できない工場、物流の混乱による部品不足で操業できない工場が続出した。

この結果、ラック(※3)の最終組立を行う石川工場でも部品の在庫が尽き、一時期、計算機の生産を停止せざるをえなくなる状況に追い込まれたのだ。
関係業者の方々は、この状況下にも拘らず「何としてもやり遂げたい。やり遂げなければならない」との強い想いから、不眠不休で復旧作業に取り組み、3月の下旬から順次操業を再開し、震災前よりもペースアップし生産を続けられたそうだ。
世界一の快挙を達成された関係者の方々に心より敬意を表したい。

原発事故で日本の地位が揺らいでいる時だけに、日本の科学技術レベルの高さを証明した「京」の開発は、極めて大きな意味を持つ。
次なる課題は、「京」をどう使いこなすかだ。もちろん、津波をはじめとする気象シミュレーションも「京」の使命の一つになる。未曾有の自然災害への備えを確実にするためにも、一日も早い日本の計算科学の成果が求められる。

理化学研究所の野依理事長は、先日の記者会見で「科学や技術ではトップを目指さないといけない」と述べられた。
お言葉のとおり、「世界一」を目指さなくては、二位も三位も得られなかっただろう。「未来への投資」をケチる、志無き者に与えられるのは、周回遅れの挫折だけだ。
野依先生のような大科学者の存在が、日本の今日を築いたのである。

ただ、「京」の世界一には、もう一人の重要な貢献者がいるのかもしれない…。
親しい研究者の言によると「事業仕分けが、(早期開発への)闘争心に火をつけた」とのことなのだ…。
蓮舫大臣に感謝を申しあげるとともに、改めて「世界一ではダメですか?」と聞いてみたい。

※1 京:数値の単位、兆の1万倍。1京=10ペタ。神戸に整備中のスパコンの愛称。完成時には、10ペタ(1京)の能力を発揮する予定。
※2 TOP500:スーパーコンピュータの計算性能の世界ランキング
※3 多数のCPUが詰まったユニット。「京」は最終的に864個のラックで構成される。

四畳半の家庭菜園から

もう15年前になるが、平成8年10月、4回目の選挙で私は苦杯を喫した。

結果的に地元で過ごす時間が増えた私は、事務所と自宅の間の四畳半ほどの土地で初めての畑作にチャレンジした。

まず、雑草に埋れていた空地を備中鍬で耕し、四条の畝を作り、キャベツ、白菜、ジャガイモ、ピーマン、トマトなど、多くの種類の野菜を数本ずつ植えた。多品種少量生産だ。

生ゴミ減量作戦を奨励していた婦人会のお陰で、わが家にも2つのコンポストに堆肥が余るほど貯えられており、肥料に不自由することはなかった。

だが、農薬は一切使わない有機栽培だから、日々の手入れは結構大変だった。

キャベツなど葉物野菜は、葉が巻き始めると、どこからともなく蝶が飛んで来て卵を生みつけ、そのうち幼虫が旺盛な食欲を発揮してくれる。

日中は挨拶廻りなどがあるから、日々の害虫退治は夜の仕事になった。懐中電燈の灯りを頼りに割り箸でアオムシを駆除するのだが、殺すのは何となく可愛そうでアジサイなどの違う葉っぱに移してやっていた。

毎晩ムシ取りをして育てたキャベツのデキは格別。市販のモノとは葉の厚みが違うし、鉄板の上で左右に分けて焼き比べてみると味も明らかに違う(と思った)。

それまでの苦労が喜びに変わる瞬間だったと記憶している。

同じ頃、レモンの苗木をブロック塀の傍に植えると、キャベツ目当てのモンシロチョウに加えて、大アゲハや黄アゲハなど、最近はめったに見られなくなった大物も飛来するようになった。

ただ、このレモンの木はアゲハのせいか、日照不足のせいか、5年ほどは苗木の大きさのままだった。塀から離して植え替えた数年前から、ようやく実を結ぶようになり、今年も既に40個以上の小さな実をつけている。秋の収穫が楽しみだ。

自然の中で育んだ恵みの品を収穫するのは最高に楽しい。

東北で農業を営んでおられる方々も、収穫期には同じ想いを感じておられていたのだろう。しかも、わが家の趣味の菜園とは異なり、日本の食料供給基地である東北では、ほとんどの農家が販売農家であり、営農は現金収入を得る重要な手段なのだ。

手塩にかけて育てた大量のホウレン草やかき菜を廃棄せざるを得なかった方々の悔しさを思うと、本当に胸が痛む。瓦礫の残る農地、塩をかぶった水田を前に、今年の田植えを見送らざるを得なかった方々の無念はいかほどだろう。

政治は一日も早く、その思いに応えなければならない。

四季の移ろいと歩調を合わせる一次産業にとって、いつまでに何ができるかというスケジュール管理は特に大切だ。植え付けの時期、収穫の時期を逃すと一年を棒に振ることになってしまう。

一方で、時間感覚のない菅首相は、辞めると宣言したように見せかけながら、メドがたたない政策課題を次々と、かつ唐突に繰り出し、「“メド”がつくまで、私の責任として、やらせて欲しい」と、総理の椅子にしがみついている。

「自己満足のために軽々しく『責任』という言葉を使わないでくれ」と言いたい。

昨夜(19日)の政府・民主党首脳会談でも、退陣時期の明示を求める執行部に対し、首相は一人開き直り、3次補正予算や自然エネルギー利用促進法の成立を持ち出し、年末までの超大幅な会期延長を求めたようだ。結果、退陣時期はおろか、会期延長の幅も示すことができない状態が続いている。

3ヶ月以上の会期延長、通年国会が必要と思っていたのなら、内閣不信任案提出前の5月からそう主張すべきだろう。当時は国会での責任追及が継続することに怯え、会期延長はしないと言っていたではないか。

今になって小規模2次補正の編成を命じているが、その中身である二重ローンや液状化の問題は、震災直後からわかっていたことだ。規模も2兆円程度なら、もっと早く指示していれば会期中に編成できていただろう。

貴方が唐突に思いついた課題群は、心配しなくても次の総理が、与野党の“熟議”のうえで、必要に応じて実現する。

そのプロセスをスピーディにこなすためにも、今や障害物でしかない貴方は、一日も早く総理の座を降りるべきだ。

それができないなら、貴方は、国家の危機に際し、自尊心のために政治を大混乱させた『平成の暴君』として歴史に名を残すことになるだろう。

【号外】たちあがれ民主党の議員諸君!

私の顔を見たくないのですか? 本当に見たくないのですか…? なら、この法案を通してください」と、満面に笑みを浮かべながら問いかけ、最後はVサインまでした菅首相。その姿を目にして、心の底から怒りが込み上げて来たのは、私一人ではないだろう。

次から次へと新しい課題を「自らの責任でやりたい」と繰り出し、居座りを図る菅首相。「永年議員をやって来たけど、こんな人は見たことない。恥ずかしいなぁ~」との渡部恒三民主党最高顧問の言葉のとおり、見苦しいを通り越し、政治家として見るに堪えない姿だ。

内閣不信任案を詭弁と奇策で切り抜けられてしまった以上、野党には打つ手はない。

まさに制御不能の有様で、政治の恥をさらし続け、国民の政治不信を高め続ける菅直人。
「こうなったら民主党の中でケジメをつけてもらうしかない」と、自民党の伊吹文明氏が言っておられたが…、私も全く同感だ。

今、問われるべきは、民主党の政党としてのガバナンス能力だろう。
党内は百家争鳴状態で、代表と執行部の意思すら乖離していては、もはや政党とは言えないのではないだろうか。

民主党の皆さんは、官邸の瓦礫と化した菅代表を一日も早く処理して欲しい。
それが貴方達の、今果たすべき「未来への責任」だ。

悩ましき日々

朝日28%、毎日24%、読売31%、共同33%。
各社の最新の世論調査による内閣支持率だ。低いことは低いのだが、意外にも前回調査から若干上昇の傾向が見られる。
内閣不信任案を巡って、民主党内であれほどの茶番劇が繰り返されたというのにどういうことか? 総理がかわいそうという、判官贔屓だろうか?? それとも菅内閣終焉へのご祝儀相場か?? 

アンケート結果への疑問はさておき、「一定のメド」を呪文のように唱え、総理の椅子にしがみ着く菅首相におかまいなく、永田町はポスト菅に向けに走り出した。

誰が日本の新しいリーダーになるのかはあえて予想しないが、私は、これからの指導者には3条件が必要だと考える。
第一に「与野党を問わず、幅広く信頼を得られること」
第二に「私利(党利)私欲を捨て公に尽くせること」(個人的な人気取りを狙った、場あたり的パフォーマンスはもってのほかである。)
第三に「政策に通じ、官僚機構を使いこなせること」
もっとも、民主党が解党しない限り、新しい代表が首相になるのだろうから、まずは「民主党内を掌握する力量があること」が第一か?(これが最も難しいのかもしれない…)

新総理選出後の与野党協力のあり方についても、大連立か、閣外協力か、という議論が展開されている。
大連立ということなら、例え、震災復興に限定すると言っても、最低限、外交や安全保障に関する政策合意が無くては対外的に説明できないだろう。
閣外協力にしても、膨大な復興財源確保のために、せめて“ばらまき4K政策”は放棄してもらわねばなるまい。

しかし、大連立か閣外協力かはともかくとして、大事なことは、今回の政策協議が成立すれば、「衆参ねじれ国会の下での政策合意の枠組み」が形作られるということだ。
安倍政権以降のねじれ国会は、日本の政策運営を大きく停滞させてきた。福田政権時の日銀総裁人事、道路財源の暫定税率に関する民主党の理不尽な対応は、その最たるものだ。
二院制を採用する国家は多々あり、必ずしも両院の多数派が同一とは限らない。現在のアメリカのように、大統領の支持母体と議会の与党が異なることもある。しかし、各国とも知恵を出して着実に政策を取りまとめ、実行している。

今、我が国の政治が為すべきは、新しい時代の政策合意形成システムを構築することだ。
政策課題は震災復興のみではない。社会保障制度と税制の一体改革、沖縄の基地問題をはじめとする安全保障問題、TPP加盟をめぐる通商政策、原子力のあり方を含むエネルギー政策等々、あらゆる政策議論を進めるためにも、与野党協議の枠組みが必要だ。

昨年の参議院選挙後から、私は一貫して社会保障制度の見直しをテーマとした「与野党協議」とその前提として民主党マニフェストの凍結を主張してきた。
それが安心社会を実現し、次世代へ負担を先送りしないための「未来への責任」と考えたからだ。

「遅すぎる!」と言いたいところだが、日本の将来を左右する政策課題について、与野党が同じ席に着き、前向きの議論を繰り広げることは、大いに歓迎したい。
もっとも、与野党協調が進むほど遅くなるのは総選挙。ベンチで出番を待っている私としてはいささか悩ましいことではある‥‥。
しかし、それは昨今の永田町の姿にいらだつ日本国民の政治不信を思えば、小さな悩みなのかもしれない。

永田町劇場

ご承知のとおり、先週、内閣不信任決議案をめぐる政治ドラマが演じられた。

「小沢氏、不信任案賛成。新党結成も視野」「鳩山氏、賛成を表明」
これらが採決当日、2日の朝刊のヘッドラインだ。民主党が分裂し、不信任案が可決される可能性も大きいと予想される展開となっていた。

ところが、その午前中に菅・鳩山会談が行われ、「総理の早期退陣」を条件に両氏は党分裂を回避することで合意? 事態は急転、不信任案は大差で否決された。

ところがところが、否決されるやいなや、少しでも長く居座りたい菅総理と少しでも早く引きずり下ろしたい鳩山氏が、退陣時期について議論を始め、民主党内で「言った」「言わない」の茶番劇が繰り広げられた。

「一定のメドとは?」をテーマとする数日の論争を経て、総理退陣までの幅はかなり縮まり、今のところ「今月中から遅くとも8月まで」となったようだ…。

今回の不信任騒ぎには国民から非常に厳しい意見が寄せられている。残念ながら、国民の政治に対する不信感はピークに達してしまった。

「早期退陣を条件とした、不信任否決」という一応の結果が出たからには、これ以上、政局を長引かせてはならない。
退くと決めたのなら、菅総理は一日も早く退陣すべきだ。
そして、与野党が心を一にして国政に励める体制を築かなくてはならない。

ただ、鳩山・菅両氏の合意事項のうち、①復興基本法の早期成立(=既に修正案が与野党ほぼ合意済み)、②復興の基本方針提案と第2次補正予算の作成への道筋(=マニフェスト政策の検証が前提)、くらいは総理退陣の花道にしても良いだろう。
なぜなら、これらの手続きの間に菅総理辞任後の政治体制を考えなくてはならないからだ。

そもそも私はこの時期の展望無き不信任案提出には反対だった。
可決されたとしても、被災地の状況を考えると解散総選挙という手法はあり得ない。とすれば、不信任案提出前に、内閣総辞職後にどういう枠組みが必要かを思い描いておく必要があった。
共産党に指摘されてしまったが、「菅総理ではなければ誰でもいい」では無責任の謗りを免れないだろう。

たとえ民主党が分裂したとしても、「マニフェスト厳守」を主張している小沢グループとの協力体制はあり得ない。
であれば、誰となら組めるのか? 

国難打開への挙国一致体制が、今、日本の政治に与えられた命題であるなら、まず、自民党が、震災復興、社会保障、安全保障、外交通商等についてのビジョンを提示し、志を同じくする他党議員を募るべきだろう。
民主党に政策立案能力、政治理念が無いのであれば、我々、自民党が具体的政策を描き、それを実現する政治体制をも国民に明確に示さなくてはならない。

ところで一連の動きの中で、改めて気になったのが菅総理の総理としての責任感だ。
まず、不信任案提案前に菅総理の周辺から「可決されたら総理は解散をすると言っている」との情報が流れたこと。
選挙基盤が弱い新人議員に対する脅しだろうが。(事実、民主党の新人議員は「総理は解散されますかねえ?」と心配気に私に聞いていた。)「解散」という言葉を自党の議員への脅しに使うということは、選挙を行えば自らの党が敗れるということ=政権が国民の信を得ていないことを自覚しているということだ。
まさに政権の延命しか考えていないと言われても当然だ。

メディアがどう言おうと「国難の時にあって、政党の垣根を取り払い、挙国一致で臨まなければいけない」と、ほとんどの国会議員が考えていると私は思う。
そして、「菅総理が辞めれば、障害は払拭され、一応の体制は整うのではないか」と、自民党や公明党議員の親しい友人のほとんどがそう考えている。

菅総理自身がこれまでの政権運営で作りあげた不信感こそが、与野党協力が整わない最大の原因なのだ。
それを総理が自覚していなければ、いくら言葉で反省の弁を述べてもこの先も同じ間違いをくり返すだろう。
今すぐ総理が辞任されることが、被災地のため、そして日本のためにもなる。

総理の発言

先週フランスでG8首脳会議(ドービル・サミット)が開催された。
今回のサミットでは、緊急的に原子力の安全問題が議題に追加され、菅首相は異例の取り扱いと言える冒頭スピーチの機会を与えられた。
原子力政策のあり方、世界のエネルギー政策を語り、首脳会議の議論をリードするチャンスを得たのだ。

世界のエネルギー情勢を考えてみよう。
経済成長を続ける新興国は、旺盛なエネルギー消費国でもあり、成長に不可欠なエネルギーの確保は喫緊の課題だ。一方で、チュニジアの革命活動に端を発する中東、北アフリカ産油国の政情不安(今回のサミットの本命議題)もあり、化石燃料の価格は高騰している。
電力不足で苦しんでいるのは、東電、日本だけではない。目覚ましい経済成長を続けているお隣の中国でも電力不足に陥っているのだ。そして、その解決方法の最右翼は原子力だ。

100基以上の原発を有するアメリカ、発電量の約8割を原子力で担うフランスのみでなく、世界各国が原子力の利用無くしてはエネルギー需要をまかなえない状況にある。ドイツが原発撤廃を宣言できたのも、いざとなればフランスから電気を購入できるという環境にあるからだ。もちろん長期的には再生可能エネルギーの利用拡大は必要だろう、しかし今必要なのは原子力発電の安全性確保だ。

という状況の中、先進各国が日本に期待したのは、「フクシマ事故によって失われた原子力の安全性の回復」。すぐには回復できないとしても、事故原因の究明、検証を通じて、「将来に向けた安全技術確立」を強く語ることだろう。

さて、菅首相のスピーチはどのような内容だったか?
報道によると、事故情報の提供と検証結果の公開など、通り一遍の言葉のあと、「日本は2020年代の早期に自然エネルギーの割合を20%にする」との内政方針を打ち出してしまい、長々と太陽電池の発電コストの引き下げについて力説したとのこと。
これは、「日本は危険な原子力から逃げる」と受け止められても仕方があい。

各国にとって、数十年先の日本の自然エネルギー比率がどうなろうと関係ない。しかも、裏付けのない思いつきの数値目標では、議論のしようもない。
結果、サミットの討議の中心は、欧州における債務超過国の問題となった。当然のことながら、超債務大国への道を突き進みつつある我が国の総理は、この話題に関して一言も発言できなかったようだ。

首脳宣言には、原子力安全について「IAEA(国際原子力機関)を中心に安全性を確保するための新基準を策定すること」が盛り込まれたものの、日本はサミットをリードする機会を逸してしまったと言えるだろう。いや、足を引っ張ってしまったのかもしれない。

しかも、原子力プラントの輸出は、我が国の経済成長を牽引する分野の一つであったはずだ。今回の発言は、日本がフランスやロシアとの国際受注獲得競争から撤退することを宣言したようなものだ。

何も自然エネルギー20%を目指すことを否定しているのではない。「太陽電池パネルを1000万戸の住宅に設置」できたら素晴らしい。しかし、あの場で発言する内容ではない。
そして、一国の総理が発言する国策であれば、しっかりと議論を尽くして、実現への手法を確立した上で、表明するのが筋だろう。
ところが、今回の発言案の作業は一部のスタッフだけで検討され、事前に与党内や政府内の調整は一切行われなかったらしい。エネルギー政策を所管する経済産業大臣との協議もなしで、政策目標を国際会議で表明するような行為は、国政を私物化するものだ。

そう言えば、鳩山前首相も就任直後の国連演説で、国内で議論が熟さない「CO2の25%削減」を宣言してしまった。そのつじつま合わせのために、原子力発電比率を50%に引き上げた計画もあったように記憶しているが、これはどうするのだろう???

政権交代から既に1年9ヶ月が過ぎようとしている。民主党がこれからも政権を維持したいのであれば、せめて、首相の発言の重みくらいは学んでもらいたいものだ。

最近の永田町

今国会の会期末は6月22日、あと1ヵ月の審議期間が残されているというのに、早や会期延長の話題で永田町が騒がしい。
菅総理周辺に「(自己防衛のために)国会を早く閉じたい」という空気が漂っているからだ。議論すべき課題は山積しているのに、何故、通常国会を会期末で閉じようとするか…。全く理解できない。

23年度の赤字国債発行を認める特例公債法案をはじめ、多数の重要法案の審議が震災対応のため先送りされてきた。1ヶ月ですべての法案審議が尽くされるとはとても思えない。

被災地支援にしても、当面の生活支援や復旧に対応する第1次補正予算こそ成立したが、一日も早い復興に向けてさらなる予算措置や特例制度の創設が必要だ。
日々刻々と変化する被災地の実情に迅速かつ的確に対応するためにも、国会は臨戦態勢を維持しておくべきだろう。先行きの見えない避難所生活を強いられている方々に、「6月で国会を閉じる」などという論は通用しない。

被災地の復興のみならず、原発事故の検証や今後のエネルギー政策のあり方についても、早急に議論しなくてはならない。
デフレ対策や経済成長戦略の構築も必要だ。本来であれば、6月中にはTPPへの対応も決定するはずだった。

間もなく取りまとめられる社会保障制度と税制の一体改革案についても、二次補正も含め復興財源の根幹とも関わるのであれば、即座にその是非について審議をスタートさせるのが筋だろう。
震災前に行われていた度重なる総理の協力要請は、言葉だけのパフォーマンスだったのか?

そういえば昨年の今頃も、鳩山→菅と内閣が代わったにもかかわらず、参議院選挙を有利に戦うためか、予算委員会も開催することなく一方的に国会を閉じてしまった。
一部で報道されているように、政権延命のために会期延長はしないということなら、言語道断、無責任極まりないと言わざるを得ない。

大震災の発災以来、鳴りをひそめていた菅総理の退陣論も、再び顕在化し始めている。
先週には西岡参議院議長までもが「菅総理をG8サミットに出席させるわけにはいかない」と激しい退陣論を表明した。

普通であれば、このような国家非常事態の折りに、誰も政局騒ぎで時を費やすことは望まないだろう。にもかかわらず、与野党を問わず多方面から退陣を迫られる理由を、総理はどの様に受け止めているのだろうか?

「一生懸命やっている」と総理は言うが、先週各メディアが行った世論調査でも、内閣支持率は低迷を続けている。言葉だけで「野党の皆さんにも協力をお願いしたい」とくり返すだけでは何事も進展しない。

総理は、寄せられる批判をもっと謙虚に受け止め、自らにもその原因があると反省し、誠意のある協力要請をなすべきである。
どうしてもその発想に立てないのなら、貴方は「歩く風評被害」と言われても仕方ない。貴方が一刻も早く退陣を決意することが、救国への第一歩となるだろう。