震災補正

先週17日夕、熊本地震の復旧・復興に対応する総額7,780億円の平成28年度補正予算が成立した。衆参とも全会一致で可決している。
過去の震災直後の復旧補正予算は成立までに、阪神淡路大震災で42日、東日本大震災では52日要しているが、今回は33日目の “スピード成立”だ。

予算は、当面の被災者支援に要する費用として「災害救助等関係経費」を780億円計上。その内訳は15,000戸分の仮設住宅費573億円、自宅が全壊した方々に最大300万円を支給する生活再建支援金に201億円、災害弔慰金などに6億円である。
残りの7000億円は「熊本地震復旧等予備費」。使い道を限定せず、被災者の方々の事業再建、特に中小企業や農林漁業者、観光業などの産業基盤の復興を後押しするとともに、道路・施設などのインフラ(社会基盤)復旧やがれき処理等を迅速かつ十二分に進めていくための経費に充てる。

野党は「7,000億円の中身が決まってない」と批判していたが、被災地の早期復旧のため、被災者の方々の不安を緩和するためには行政の迅速な対処が第一だ。まして、今回の地震は、余震が続き被害が確定しない。将来の産業基盤の復興まで配慮して機動的に対応する今回の補正予算は、むしろ適切である。

発災直後の支援物資の輸送などに一部混乱もなかったとは言えないが、今回の初動対応は総じて素早かったと思う。5月の連休には全国からボランティアも被災地に入り、がれき処理などに尽力した。なかんずく、自衛隊の出動、ならびに米軍との協同による救助活動は日米の力強い同盟関係を観た気がした。

さて、発生から1ヶ月が経過し、被災地は救助から復旧の段階に入ってきた。何よりも優先すべきは“生活再建”だ。まずは住まいの確保。車で寝泊りする方々のエコノミークラス症候群も発生している中、仮設住宅の整備が急がれる。

ただ、仮設住宅入居や生活再建支援金の給付を含め、速やかな公的支援を受けるにためには“罹災証明書”が必要であるが、その発行作業が遅れている。5つの自治体で役場が被災し庁舎機能を失っていることに加え、家屋被害の調査認定を担当する調査員が不足しているからだ。

すでに、全国の自治体から応援員が現地に駆け付け、判定作業を急いでいるが、今後の大震災、大水害への対応として、事前の応援体制の強化が望まれる。民間建築業界の協力も含め、調査員の登録、研修の充実や派遣協定の構築も必要ではないだろうか。
この31日に私が幹事長を務める自民党建築設計議員連盟の総会が開かれるが、緊急議案として提案しようかと考えている。

これから被災地は、梅雨の季節を迎える。九州は元々多雨地域である。地震で緩んだ地盤が土砂災害を招くことも懸念されるなか、補正で措置した予算を有効に活用し、復旧作業を急がなくてはならない。
安倍総理は衆院本会議で、今後被害状況が拡大していけば更なる財政支援を検討する意向も表明した。

東日本大震災、熊本地震とも、被災地の創造的復興を実現し、そしてその教訓を後世に活かし、我が国の安全・安心、公共の利便性をスムーズに確保するためには、中長期の観点から息の長い支援が必要である。

地域おこし

今年のゴールデンウィークは、「2日(月)と6日(金)の両日に休みをとれば、10連休の超大型連休となる」という方が多かったのではないか。どちらか一方でも休めれば、7連休や6連休だ。JTBによると今年のGWは「海外旅行人数は昨年より2.8%増の54.6万人。国内旅行人数と海外を含めた総旅行人数はともに過去最高で、2,395.6万人」ということらしい。

巷間、景気の動向に関して、あるいはアベノミクスの成否について様々な意見が交錯しているが、この旅行動向は明るい指標を提示している。
この大型連休はふるさとへの帰省の時節でもある。懐かしい山河の初夏を味わい、ご両親、祖父母との語らいを楽しまれた方も多いだろう。

私のふるさと東播磨ではGWの時期に「国恩祭」という祭事が行われる。地域の22の神社が、毎年輪番で郷土の繁栄と安泰を祈念する春の大祭だ。今年の当番は、加古川市の平之荘神社と明石市の御厨神社。私は4日に平之荘神社のお祭りに出席させていただいた。

この国恩祭は江戸時代の天保年間(1830年代)に起こった大飢饉に由来する。飢饉による人心荒廃を憂いた加古郡と印南郡の神職が集い、「祓講」という神社組合組織を結成して臨時の大祭を行ったのが始まりといわれている。180年以上の歴史を有し地域に根差した財産ともいえる文化行事となっている。

このような地域の伝統文化を「地域おこし」に活用しようとするのが“日本遺産”(Japan Heritage)の認定制度だ。平成27年度からスタートし、この2年間で37件が認定されている。兵庫県内では、「丹波篠山 デカンショ節 -民謡に乗せて歌い継ぐふるさとの記憶」「『古事記』の冒頭を飾る「国生みの島・淡路」~古代国家を支えた海人の営み~」の2件だ。今後、平成32年までに100件程度まで増やす予定という。

文化庁も保護一辺倒の文化財行政から転換を図ろうとしている。地域に点在する歴史的魅力や特色ある有形・無形の文化財をパッケージ化し、物語性を付加して観光資源として積極的に国内外へ発信し活用しようとしているのだ。

いにしえより神社は「鎮守の森」と称され、地域を守ってくださる村のシンボルであり街づくりの中心であった。そしてそれは地域の核であり人々の心の拠りどころ、絆となってきた。
日本各地で様々な祭りが継承されているが、我がふるさとの「国恩祭」のように、「複数の神社が地域貢献のために連合して行う祭事」というのは全国的にも極めて珍しいのではないだろうか。自治体も含めた地域の合意形成が必要であるが、日本遺産の認定に一度チャレンジしてみる価値がある。

大地震に襲われた熊本県でも1件、南部地域の10市町村による「相良700年が生んだ保守と進取の文化 ~日本でもっとも豊かな隠れ里―人吉球磨~」が認定されている。

熊本では大地震発生以来3週間が経過したものの、未だに大きな余震が断続的に続いている。まだまだ収束が近いとは言えない状況だが、活動を一時停止していたご当地人気キャラクター「くまモン」が、最近活動を再開したと報道されている。是非、地域おこしの主役として被災者のみなさんに元気を届けて欲しいと切望している。

改めて、この度の地震で被災された皆様に心からお見舞い申し上げるとともに、不幸にもお亡くなりになられた方々のご冥福をお祈り申し上げます。

熊本地震

金本新監督率いる我が阪神タイガースは、対戦相手が一巡した4月10日までに通算8勝6敗1分けと、例年にもまして好スタートを切った。

今週のDeNA3連戦は水曜の雨天中止を挟んで2連勝、広島カープと同率で再び首位に躍り出た。快調である。

 

14日はTV放映がなかったので、夜のスポーツニュースを楽しみにしていたのだが、

その矢先、9時のNHKニュースの途中、9時26分頃に緊急地震速報が飛び込んできた。速報が画面に表示が出され『緊急地震速報です』、『熊本で震度7、マグニチュード6.4』と、女性キャスターが繰り返し何度も呼び掛ける。

 

阪神淡路大震災を経験している家内はテレビ画面に釘付けになって、余震の報道の度に『震度7というと神戸と同じよ。怖い~大丈夫かなぁ?熊本の同僚議員に連絡したら…』等々、完全に冷静さを失って心配している。

 

TV画面からは熊本市内中心部の情景は刻々と伝わるものの、肝心の震源地近くの被害情報は夜なので良くわからなかった。

震源の益城町では避難場所の体育館に400人の被災者が駆けつけたらしいが、天井の一部と照明器具が落下したので、野外の広場に多くの方が毛布にくるまって不安な夜を過ごされたと、朝のニュースで報道されていた。

熊本県災害対策本部がまとめた15日午前9時時点の被害状況は、死亡者9人、重軽傷者は886人。倒壊家屋多数で、火災4件。強い余震が続くなか熊本県内では一時約4万4千人が避難所に身を寄せたという。

 

災害は忘れた頃にやってくるといわれる。

私が本部長をつとめる党の教育再生実行本部は、4月4日に第6次提言をとりまとめ安倍首相に提出した。

その中には『学校は地域の災害時の避難場所であり、構造上の耐震化はもとより吊り天井などの非構造部材も含めた老朽化対策を万全に施し、更には地域コミュニティの拠点として、バリアフリー化や空調の整備も含めた総合的な安全性の確保が重要』と提言したばかりだが…。

 

今日から再開が予定されていたTPP特別委員会は、総理の震災についての報告のみで、今日は取り止めとなり政府は震災対策に最優先で取り組むことになった。

最近、東日本大震災の政府の初動対応についての議論がスタートしたが、とにかくス

ピード感が求められる。

 

補欠選挙や国会審議も重要ではあるが、今は与野党とも一致結束して震災対応に当たらなければならない時である。

 

東日本大震災の時に一部でみられた、政治的パフォーマンスや現場が混乱するような被災地訪問は、嚴に慎むべきである。とにかく初動が大事である。政府は党派を越えて協力して貰えるように情報提供する。各党がバラバラに現地に入るのではなくて、超党派の現地調査団を編成するなどして、被災地の負担軽減に心掛けるべきである。

 

そうでなければ、過去の教訓を生かした事にはならない。

一日も早い復旧を、その為に何ができるか、政治の真価が問われている。

民進党

民主党と維新の党は昨年末に統一会派を結成し、今年になって合流に向けた話し合いが行われていた。交渉は紆余曲折を経てようやく合意に達し、3月27日(日)、新たな党名を「民進党」として結党大会を開催した。これにより、国会議員156人(衆院96人、参院60人)の野党第1党が誕生したことになる。

 

政党の結成に際しては、本来どの様な政治理念の実現を目指すのかを明確に示し、活動の基本となる綱領の作成についての議論に力が注がれるが、それを後回しにして合流の方法論や党名に関する協議に多くの時間が費やされた感は否めない。

 

合流方法を巡っては維新の“吸収合併”を主張する民主党と、双方解党による“対等合併”に固執する維新との間で平行線が続いたが、最終的には民主党を存続させて、党名を変更した上で維新を吸収する形となった。

また、党名は「国民とともに進む政党」と思いを込め、「野党勢力を結集して、政権を担うことができる新たな新党を作る」とするが、結党大会の会場では国旗は片隅に掲示され、国歌は斉唱されなかったという。政権を担おうとする政党の姿かと疑問が湧く。

 

何よりも、政策の方向性が不明で、どの様な日本を作ろうとしているのかが見えてこない点が最大の問題点だろう。単に与党との対立軸としての合流新党では、価値観が多様化している我が国において魅力ある選択肢になるとは思えない。イデオロギー論争が終わった現在、保守とかリベラルと言った単純な言葉では政党カラーを表現することは難しいだろうが、国民の心に響くメッセージがなければ「選挙目当ての理念なき看板の掛け替え」、野合と言われても仕方がない。

 

執行部人事では、代わり映えのしない名が連なる中で、衆院当選2回の山尾志桜里氏が政調会長に抜擢された。山尾氏は、子供を保育園に入れられない不満を「日本死ね」と表現した匿名ブログを取り上げて首相を追求し、一躍脚光を浴びたのは記憶に新しい。

カウンターパートナーである自民党の政調会長は稲田朋美氏。与党と野党第1党の政策責任者が奇しくも女性というのは、安倍政権の看板政策“女性活躍時代”に配慮したキャストとの感がしないでもない。

 

また、両氏とも法曹一家で山尾氏は元検事、稲田氏は元弁護士である。最初の法廷対決(?)はNHKの日曜討論になるのだと思うが、政府与党の政策を追求する山尾検事、反論する稲田弁護士という構図を思い描くのは私だけではあるまい。相手の失策を攻撃する誹謗中傷合戦ではなく、具体的な法案制定につながる政策形成議論を期待したい。

 

一方、最近、我が党議員による不用意な発言が続いている。1強多弱と言われ、圧倒的な議員の数による政権与党の運営について、党内外から緊張感が欠如しているのではないか指摘されているのも事実だ。民進党の発足により、与野党間の良い意味での緊張感が高まり、我が国の政治に吉となることを望みたい。

 

29日には平成28年度予算案も成立する見通しだ。国会審議の重点は、TPP関連法案に移り、さらには伊勢志摩サミットに向けて外交政策、世界の景気浮揚に向けた経済対策等が後半国会の重要課題となるが…。

 

民進党の発足を契機に政局は一気に夏の参院選挙(衆参同時選?)に向けて走り出すことも間違いないだろう。岡田代表は「選挙戦で結果がでなければ9月の代表選には出馬しない」と、退路を絶って覚悟を示している。

迎え撃つ我々与党もより緊張感を持って、日々の活動に専念しなければならない。

あの日から5年

東日本大震災から5回目の3月11日を迎えた。

大震災当時は民主党政権下で、私は議席を失い充電中(浪人中)であった。その日は地元での”新世紀政経フォーラム”に出席するため、自宅で準備をしながら国会中継を見ていたのだが、突然画面の中の予算委員会室がガタガタと大きく揺れだし、東北地方で巨大地震が発生したことを知ることになった。

 

30分もたたないうちに、テレビに信じられない光景が映し出された。海面の水位が上昇し始めたと思う間もなく、どす黒い海水が濁流となって押し寄せ、漁船も車も、家も人も呑み込んでいった。地震と巨大津波による死者・行方不明者は1万8千人を超える大災害となった。

ただ、その時点では福島第一原発にシビアアクシデント(過酷事故)が起こっているとは知る由もなかった。

 

フォーラムが終わって帰宅後は、次々に報道される震災情報を明け方まで見入った。

翌日、フォーラムの講師をお願いした青山繁晴氏(独立総合研究所所長)にお礼の電話をした際、「渡海さん、福島第一原発が大変なことになっている、政府の発表は甘い。私の見立てでは原発の炉は間違いなくメルトダウンしていると思う」と言明された。青山氏は、政府から原子力委員会の専門委員(原子力防護専門部会所属)を委嘱されている方だ。福島第一原発1号機で水素爆発が起こったのは、12日の午後3時半すぎだった。その後に一連のシビアアクシデントを目の当たりにするが、氏の予想どおりの結果となった。

 

あれから5年。未だに原発事故による放射能汚染で避難生活を余儀なくされている方々は10万人以上を数える。

平成23年12月、事故の原因を探るため、憲政史上初めて国政調査権を背景に国会内に、民間人からなる“東京電力福島原子力発電所事故調査会”(通称:事故調、委員長は黒川清氏)が設置された。

 

半年後、事故調は「事故の直接原因は地震とそれに伴う津波によるものであるが、3.11以前の東電や規制当局の不作為による人災である」と結論づけると同時に、検証のために「国会に原子力に係る問題に関する常設の委員会などを設置する」提言もなした。

この提言を受けて、自公が政権に復帰した第183回国会(平成25年1月召集)から衆参両院に原子力問題に関する特別委員会が設置されているが、・・・。

 

今、自民党では事故当時を振り返って、「原発事故だけでなく、津波の対応なども含め震災当時の初動対応などを検証しなおし、経験を蓄積する組織を立ち上げようとする動きがある。節目の5年を迎え、もう一度検証を深めることに異論はないが、この種の作業は客観性をより高めるためにも超党派で行った方が良いだろう。

 

去る11日には被災した各地で追悼式が行われた。東京でも国立劇場で天皇皇后両陛下をお迎えしての政府主催追悼式が開催された。陛下は犠牲者へ深く哀悼を表され、「これからも国民が心一つに寄り添っていくことが大切」と述べられた。

 

安倍総理は「復興は確実に前進している。多くの犠牲の下に得られた教訓を、最新の英知を得ながら防災対策を不断に見直し、強靭な国づくりを進める」と表明した。

被災地・避難先の一日も早い生活再建に努力することが政治に求められている。この大惨事を風化させないように、しっかりと後世に伝え、次なる大震災に備えることも。

続・「選挙制度改革に想う」

予算委員会での野田前総理との議論を前にした18日。安倍総理は定数削減法案の今国会成立を目指す意向を表明し、谷垣幹事長に「アダムズ方式(※1)にもいろいろ問題があるが、それが基本だ」と伝え、衆議院選挙制度に関する調査会答申に沿った改革案をまとめるよう指示した。私の前号コラムの主張と相容れるものだった。

これを受けて、24日に示された新しい案は、①2015年度の簡易国勢調査結果に基づき、小選挙区定数を「0増6減」、比例4減とあわせ定数を10削減(アダムズ方式による都道府県間定数配分調整は不採用)。②定数配分の見直し時期は2020年の本格的国勢調査後とする。ただ、削減方法についての具体的な記述はなかった。

これでは、最高裁が違憲状態と判断し、廃止を求めた「1人別枠方式(※2)」を当分温存することになり、都道府県間調整を行わない分、当然、格差是正効果は小さい。

それでも党の会議では、「削減対象県の決定方法が不明解だ。恣意的に決められれば不満が出る」「被災地の声が小さくなる」など、不満が数多く出されたが、最終的に原案で連立与党の公明党と折衝を開始することは了承された。

安倍総理もこの案に基づき、26日の衆院総務委員会で、今回の改正は「0増6減」とし、アダムズ方式による都道府県の議席定数配分は、本格的調査となる2020年の国勢調査後にすべきとの考えを表明した。事実上、衆院定数の抜本的改革の先送りを容認した発言と言える。

このような中、2015年国勢調査速報値が発表された。格差2倍を超える選挙区は37となり、アダムズ方式で算定した場合の要調整選挙区は2010年調査の7増13減から9増15減に拡大した。

果たして「0増6減」の自民案でスムーズな協議に入れるのだろうか。このままでは折衝が暗礁に乗り上げることは、火を見るより明らかだ。

すでに、公明党の山口代表から「自公だけで協議するのはそぐわない。議長の指導のもとで合意形成を図るべきだ」。また別の幹部からは「2020年にアダムズを採用しても、それまでに行われる総選挙が最高裁判決に耐えられるのか」等々、自民案を牽制する声も上がっている。公明党幹部が言うように、このままの状態で衆院選が実施されれば、今度は「違憲」の判決が出るとも指摘されている。

どんな制度でもメリットとデメリットがある。選挙制度も同じだ。全国一区にすれば一票の格差問題は無くなるが、地域代表性が無視される。政党名の比例代表制も格差解消効果はあるが、人格を審査する機能がない。中選挙区も緩和策としては有効だが、一方で政党内での競争が生じる。様々な制度論の中から現行の衆議院選挙は小選挙区とブロック単位の比例代表の組み合わせを選択している。

そして、今直面しているのはその小選挙区制度につきものの一票の格差をいかにして解消するかという課題だ。最高裁は衆院選について3回連続で「違憲状態」にあるとの判決を出している。まさに「制度改正待ったなし」の状況にある。

調査会が提案したアダムズ方式は、一人別枠方式よりも格差を緩和しつつ、端数を切り上げることで人口が少ない県にも最低2議席を配分できる案であり、地域性にも考慮されている。今、現行憲法下で考えられる選択肢としては最善のものではないだろうか。

各党の思惑が複雑に絡み合い3年以上も先送りされてきた選挙制度改革。

これ以上の先送りは許されない。政治の信頼回復のためにも、選挙制度改革は今国会でやり遂げなければならない。

国会議員の役割は…

去る1月14日、”衆議院選挙制度に関する調査会”の答申が大島議長に手渡された。答申では、議員定数について「国際比較からすると多いとは言えない」としつつ、「削減案を求められるとすれば、10人削減して465人とする。」と提案している。また、一票の較差については「2倍以上の較差が生じた場合は直ちに最小限の是正を行う、ただし、都道府県を超える見直しは10年ごとの大規模国勢調査に基づく」とされている。

今般の改革議論の発端は、平成24年11月14日の党首討論だ。当時の野田総理から「国民に消費増税の負担を求める以上、国会も身を削る必要がある。次期通常国会で定数削減と較差是正を行う“選挙制度改革”を約束するなら解散してもよい」との提案があり、安倍総裁がそれを受け入れ総選挙となった。この討論をもとに、自民党、民主党はもちろん、多くの政党が選挙制度改革を公約に掲げた。

本来ならば、もっと早く、25年度にも改革の成案を得ていなくてはならないはずだ。

しかし、各党間、議員同士の議論をいくら繰り返しても改革案の取りまとめには至らず、26年に議長の諮問機関を設置し、議論を有識者の手に委ねることとなった。そして、佐々木毅氏(元東大総長)を座長とする有識者会議による17回に及ぶ審議を経て今回の答申に至った。

自民党として、この答申への対応を決定する会議が、先週10日に開催された。細田選挙制度改革問題統括本部長が取りまとめた執行部原案は、①まず、較差是正については(答申のとおり)2倍以内となるように選挙区定数の見直しを行う、②定数削減については平成32年の大規模国勢調査の際に実現するというものだ。10議席の定数削減は「都道府県を超える見直し」に該当すると解釈し、先送りする内容である。

私は、「この案では、野党はおろか公明党からも問題先送りとのそしりを受け、法案成立の見通しが立つのか疑問である。法案が成立しなければ、較差是正も実現せず、次の総選挙は違憲状態ではなく違憲判決が出るかもしれない。国民の眼には改革に後ろ向きの自民党と映る。」と主張した。

会議では答申そのものに反対する声から、私と同じく答申に沿った制度改正を急ぐべきだという意見まで、様々な意見が表明されたが、最後は執行部一任となり細田原案のとおり取りまとめられた。

閉会後、細田本部長を訪ね再度意見交換を行った。ここでの議論は最後まで平行線であったが、細田氏に「平成22年の国勢調査を基に直ちに10名削減と較差2倍以内の改正を行うとすれば、全国13県で小選挙区の数を減らす必要がある。62の選挙区が関わり、比例復活組も含めると59名の議員に影響が及ぶ。彼らにとっては死活問題である。今日の会議でも言いたくても言わないでじっと我慢していた者もいる。その気持ちを暖かく包み込む、自民党は血の通った政党でなければならないと思う」と言われた時には、返す言葉がなかった。

細田氏の選挙区は島根県。参議院の話ではあるが、この夏の選挙から鳥取県と合区される。高知県と徳島県も一つの選挙区になる。この4県の方々は「故郷の声が国政に届かなくなるのではないか?」との不安をもたれている。衆議院の小選挙区も一票の較差を重視して区割り変更を重ねれば、郡部ではとてつもなく広い選挙区が生まれ、総体的に都市部への議席集中が生じる。(それを避けるためにも、東京一極集中是正、人口の地方分散を進める地方創生が必要なのだが…)

今回の議論を通じて、私は「答申を尊重すべき」との考えから、早期改革実行を主張してきた。一方で較差是正の課題については、国会議員は憲法43条に定めるように「全国民の代表者」のみであるべきだろうか。むしろ「地域の代表者」としての性質も有するべきではないか、との問題意識もある。

ただし、14条の「法の下の平等」への抵触を避け、地域代表としての国会議員を創設するためには、憲法43条を改正しなくてはならない。

ここにも憲法改正に於いて議論すべき論点がある。

 

※衆議院選挙制度に関する調査会答申全文は、
http://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_annai.nsf/html/statics/shiryo/senkyoseido_toshin.html
をご参照ください。

東日本大震災から3年

世界中を震撼させた大津波の日から早くも3年が経過した。改めて1万9千余の犠牲者の方々のご冥福をお祈りするとともに、被災地の一日も早い復興を期待したい。

しかしながら、被災地からは、未だに原野のような旧市街の映像や高台移転計画をめぐる課題が伝えられてくる。被災地の復興は遅々として進んでいないのではないか?というのが実感だ。
事実、世論調査によると77%の方々が「復興は進んでいない」と答えている。被災地の方々に限定すれば、この比率はもっと高くなるのではないだろうか。

このような遅れの要因の一つは、「復興庁」という大きすぎる政府組織と国主導の復興施策にあるのかもしれない。(政権与党の議員という立場を考えると私にも責任の一端があると言えるが・・・)

原子力災害の問題はともかくとして、地震動と津波により破壊された“まち”“むら”の復旧復興は地域づくりの課題である。もちろん中央政府の財政支援や制度的特例措置の必要性を否定するつもりはないが、どのような地域を再興していくかは自治の問題として取り組むべきではないだろうか。

私がかつて関わった阪神・淡路大震災の際にも、当初、復興院といった巨大な政府組織を設ける案も出されたが、結局、主役は兵庫県、神戸市をはじめとする被災自治体となった。国は省庁の連絡調整役としての復興本部組織と諮問会議としての有識者委員会を設けたのみだ。そのなかで結果的に現場主義が徹底され、地元から出てくる課題やアイデアに対して、各省庁が資金提供や新制度で支援するという手法が比較的うまく機能したと思う。(もちろん解決できなかった課題もあったが・・・)

例えば、①県と市が連携して9000億円規模の基金を造成し、その運用益で臨機応変に必要な対策を展開する「復興基金制度」、②迅速なまちの再生のために幹線道路等の主要施設を決定したのちに、住民参加でまちづくりを検討する「二段階の都市計画決定」、③早期の住宅提供のために自治体がUR等の住宅を転貸する「借り上げ復興公営住宅」など、前例のない制度運営が編み出され、後に全国的な制度として取り入れられたものも多い。

とにかく、スピードを重視して住まいの復興を進めなければ、仮設住宅の方々が被災地に戻ってこない。産業の再生を急がなければ若者たちは被災地から流出してしまう。阪神淡路の復興基金は被災後3ヶ月で設立、都市計画は2ヶ月で決定した。そして、柔軟に運用を変更し課題に答えてきた。

山を造成する高台移転に時間がかかりすぎるなら、既存の市街地を活用したまちづくりも再考してはどうか、リスクは避難手順の確立でカバーすることもできる。漁師町にとって高すぎる防潮堤が問題なら、地域住民の責任で切り下げを認めればよい。一度国が決めたこと、認めたことは変更できないような画一的な制度運用では、被災地のきめ細かい課題に機動的に対応することはできない。
既に支援制度メニューの数という点では施策は出そろっていると思われる。その制度運用を住民と自治体に大胆に委ねてはどうだろうか? 少なくとも機動性は高まるだろうし、自己責任の下で新たな課題解決策が生み出されてくるかもしれない。

来年3月には、第3回国連防災世界会議が仙台で開催される。平成17年に神戸で開催された第2回会議では「兵庫行動枠組」が決定され、その後の災害リスク軽減に向けた世界的な取組の行動指針となってきた。
一年後の会議までには、しっかりとした復旧復興の道筋を取りまとめ、新たな「行動枠組」に貴重な経験と教訓を盛り込むこと。それが私たち日本人に課せられた責務であり、犠牲になられた方々への何よりの追悼でもある。

舌戦?

衆議院解散から半月、日替わりで離合集散を繰り返す第三極の動きもあり、総選挙への注目は日々高まっている。天下分け目の衆院選。公示日が近づくにつれ、自ずと舌戦も激しさを増してきた。

ただ、私は今回の舌戦の中身にいささか違和感を覚えている。各党党首、各陣営とも、相手を攻撃することで自らを正当化する場面が目につきすぎるからだ。
先のアメリカ大統領選でもあきれるほどのネガティブキャンペーンが繰り広げられたが、いくら民主主義の先輩と言っても、こんな様をまねることはない。

有権者が一票を投じる先を選択するのが選挙である以上、政党や候補者が他者との差別化、区別化を図ることは必要だろう。
しかし、それは自らが目指す国家像、その実現に向けた具体的な政策論で示すべきだ。
政策と言っても空虚なスローガンや理念のみでは困る。実現への具体的な道筋、財源や工程を示すことも、求められる。

国民は、これからの日本の舵取り役に、どの政党が、どの候補者が適しているかを選ぶのだ。候補者は相手を批判するよりも、自ら信じる政策を訴え、その具体的な実現方策を示さなくてはならない。

4日から本番を迎える選挙戦。この国の歩むべき道筋を、子どもたちの未来を、建設的な政策を提案しあう選挙にしたいものだ。

私の政策、国政への想いは、3年間にわたりこのコラムで語り続けてきた。HPでバックナンバーもご覧いただきたい。

*公職選挙法の関係で公示後のHPの更新はできないので、このコラムはしばらくお休みです。