年の瀬に思う

平成28年(2016年)の申年もあと数日。恒例の今年の世相を表す漢字は、オリンピックの年らしく「金」が選ばれた。「金」は2000年のシドニー五輪、2012年のロンドン五輪の年に続き3度目となる。

 

オリンピックの舞台となったリオは、日本から見ると地球の真裏で時差は12時間。朝と夜が逆転する。日本中を睡眠不足に陥れた17日間、日本は金12個に銀8個と銅21個の計42個という過去最高のメダルを獲得した。その期間(8月5日~21日)はちょうど国会が夏休み、地元スケジュールの調整も比較的容易で、私も思う存分TV観戦することができた。

勝利して感極まって流す涙もあれば、敗れて流す悔し涙もあった。日の丸を背負って大活躍し、私たちに大きな感動を届けてくれた選手たちに改めて拍手を送りたい。

 

オリンピックと言えば、2020年の東京大会の施設整備や運営方法について国、東京都、組織委員会の間で協議が行われている。費用負担を巡って議論が紛糾しているようだが、一日も早く問題を解決し、大会成功に向けて力を結集して頑張って欲しい。

 

私は今年もライフワークである科学技術政策を中心に活動をしてきた。

党科学技術・イノベーション戦略調査会長として、4月には一億総活躍社会実現の旗印の下、科学技術振興をアベノミクスの大きな柱の一つと位置づけた。予算編成の季節は、「科学技術は未来への先行投資」と訴え、新規・拡充予算の獲得に奔走した。その成果として、歳出抑制の基調のなか、科学技術振興費はかろうじて0.9%の伸びを確保できた。

 

秋の日本人のノーベル賞受賞ニュースも年中行事となってきた。今年は大隅良典先生が昨年の大村智先生に続き、生理学・医学賞を受賞された。受賞決定後の早い段階に科学技術・イノベーション戦略調査会に出席いただく機会に恵まれたが、先生からは「若手研究者が十分に研究に取り組める環境の実現」を求める言葉が繰り返された。

そう言えば2012年に、iPS細胞で生理学・医学賞を受賞された山中伸弥先生も「日本は科学が国を支える柱、ぜひ多くの若者たちに科学者になって欲しい」と言っておられた。

 

日本の未来を切り拓く上で、人材の育成は大きな課題である。

その意味でもこの3カ月間、与党のプロジェクトリーダーとして、大学生を対象とする「給付型奨学金」の制度設計に取り組んできた。

学ぶ意欲と能力があるのに、経済的事情で大学進学を諦めざるを得ない子どもたちの一助になればと願っている。今後もこの課題に全力で取り組む所存である。

 

今年は世界が大きく揺れ動いた一年でもあった。

英国では6月にEU離脱の是非を問う国民投票が行われた。その結果は、予想に反するEU離脱派の勝利に終わり、キャメロン英首相が辞任に追い込まれた。

米大統領選挙でも大半の予想を覆し、共和党のドナルド・トランプ候補が民主党のヒラリー・クリントン候補に勝利。トランプ氏は来年1月20日には合衆国大統領に就任する。

米英両国とも既存秩序体制(エスタブリッシュメント)に対する大衆の不平・不満が底流にある。全世界の経済活動が一体化し、(移民も含め)人の移動も容易となる一方で、移民排斥をはじめとする排外主義的思想の拡大は気にかかるところである。

 

今年から来年にかけて、昨春伊勢志摩に集ったG7メンバーが相次いで、その座を退くことになる。すでにキャメロン英首相が去り、レンティ伊首相も退陣。オバマ米大統領は間もなく任期を終える。オランド仏大統領も来春の再選に不出馬を表明した。以上で7人中4人が交代。さらにドイツでは、秋に連邦議会総選挙が予定されているが、メルケル独首相の支持率は難民施策を巡って低迷している。

 

サミットにおいて古参となる安倍総理の地位は当然高まるだろう。そして、その言動はG7の動きを左右するのではないだろうか。日本が国際社会でリーダーシップを発揮するためにも、国内政治の安定が求められる一年になりそうだ。

 

今年も私どもの政治活動に対してご理解ご協力を賜り、有難うございました。

来年も引き続きご支援ご鞭撻をお願いします。良い年をお迎え下さい。

給付型奨学金

OECD(経済開発協力機構)加盟34か国の中で、大学生に対して返済不要の公的な給付型奨学金制度が無いのは日本とアイスランドの2か国だけなのは、ご存知だろうか。
そのアイスランドも国立大学の授業料は無料で、大学院研究コースには給付金制度がある。
日本は大学の授業料がかなり高額にもかかわらず、卒業後に返済する貸与型(有利子・無利子)の奨学金のみ。実質的に国が大学教育を無償で提供する制度を持たないのは、我が国だけだ。

昨年の秋以降、自民党教育再生実行本部では「社会的格差が広がる中、学ぶ意欲と能力があるのに、経済的事情で大学進学を断念せざるを得ない子供たちを救えないものか。日本の未来のために放っておけない。教育費負担の軽減のために、新たな奨学金制度の創設について検討する」との認識のもと議論を重ねてきた。

当時私は議論を取りまとめる本部長の任にあり、44日には自公両党で策定した「教育再生の提案」の中で、大学生らを対象にした返済不要の“給付型奨学金”創設を安倍総理に提言した。

7月の参院選に際しては、党の公約検討チームのメンバーとして、「教育投資は未来への先行投資」と位置づけ、公の財政支出の抜本的拡充と財源確保を政権公約集「Jファイル」に明記した。それら一連の経緯もあって、82日に閣議決定された“一億総活躍プラン”の中で「給付型奨学金については、平成29年度予算編成の過程を通じて制度内容の結論を得、実現する」旨、明記されるに至った。

そして9月中旬、下村博文幹事長代行から「文部科学部会に設置する給付型奨学金のプロジェクトチームの座長を引き受けて欲しい」旨の連絡があった。

経緯からすれば引き受けるべきなのだろうが、ライフワークの科学技術政策の拡充に奔走していたため、最初は逡巡した。何度かのやり取りの後、それでも「どうしても引き受けてほしい。しっかりとサポートするから。貴方しか適任者がいない!」とも。
実はわたしはこの言葉に弱い。最終的に引き受けることになったが、下村氏は言葉とおり文科大臣経験者5人を含む強力なメンバーを揃えてくれた。

キックオフは926日。
まず、現況についての認識を共有した上で論点整理からスタート。主な論点は、①制度の主旨、②給付対象、③給付額、④給付方法、⑤開始時期、⑥財源に整理された。
プロジェクトチームの議論が白熱したのは②給付対象、③給付額、⑥財源についてで、結論を得るまで熟議は8回に及んだ。その後、公明党との与党間調整を経て11月末に方針を決定し、安倍総理に申し入れを行った。

決定された給付型奨学金制度の原案の概要は次のとおり。
・対象者は、住民税非課税世帯の若者。学習成績が十分に満足のできる高い成績を収めた生徒、科外活動で優れた成果を上げ概ね満足できる学習成績を収めた生徒。
・給付対象者数は2万人程度。
・対象学校は、国公立大、私立大、国公立短大・専門学校、私立短大・専門学校。
・給付額は、国公立は自宅2万円で自宅外3万円。私立はそれぞれ3万円と4万円。
・実施時期は、平成30年度。ただし経済的負担が特に厳しい学生を対象に限定して来年度から先行実施。
・児童養護施設出身者ら、社会的養護を必要とする学生らへの特段の配慮をするためにイニシャルコストコストを支援(入学金24万円支給)。

この制度骨子をもとに政府・与党は来年の通常国会での法制化を目指している。
が、社会保障費が毎年5000億円規模で増嵩する厳しい財政事情下にあって、財源確保が最大の難関である。
新制度の給付規模は、本格実施初年度の平成30年でも70億円強、4学年が出そろう平成33年度からは毎年220億円程度となると試算している。将来は実態に応じた見直しと制度の拡充も必要になると考える。

200億円を超える金額を少額とは言わない。
しかし、資源に恵まれない我が国にあっては人材が資源そのものである。その人材を育成する未来への投資を実現するために、この程度の財源をねん出することは政府の責任ではないだろうか。
一億層活躍社会の実現に一歩近づくためにも、制度設計に関わった責任者として、政府の英断を切に願っている。

冬将軍

真冬並みの強い寒気の影響で、24日(木曜)は関東甲信の各地で雪が降った。11月に都心で初雪を観測するのは54年ぶり、しかも1875年(明治8年)の気象統計開始以降初めての積雪となった。

 

11月はともかく冬に雪が降るのは毎年のことで、雪対策の経験も積んでいるはずなのだが、相変わらず都会は雪に弱い。

今年1月の大雪では公共交通機関のダイヤが大幅に乱れ、鉄道やバスは本数を減らして運行したほか、空の便の欠航も数多く発生した。降雪が朝のラッシュの時間帯と重なったこともあり、都内の鉄道各駅には乗客がホームにあふれ駅構内への入場制限するところが相次いだ。積雪が多かった地域では路面が凍結するなど、雪が止んだあとも混乱が続いた。

 

今回は1月ほどではなかったが、昼間も気温が4°Cまでしか上がらず、街行く人は足元の悪い中コートの襟を立てて足早に行き交う姿が印象的であった。関東を中心にスリップ事故や転倒で怪我をした人は350人に及んだという。

週末にかけて寒さは少し緩んだものの最高気温は15°Cに至らず、予報では今週も寒い日が続くらしい。いよいよ冬将軍来襲かと思われる。

 

一方、国会では参議院でのTPP承認案の審議、また衆議院では年金改革法案の本会議での採決を巡って激しく衝突している。

萩生田光一官房副長官が23日都内の会合で、TPPを巡る民進党の国会対応を『田舎のプロレス。ある意味、茶番だ』と言ったとかで、不適切だったと謝罪することとなったが、表現は不適切だったかもしれないが、言いたくなる気持ちも分からないでもない。

 

発言に抗議した野党も委員長席に詰め寄っていながら、「年金カット反対!」とか「強行採決反対!」のビラを、TVカメラに向けて掲げて叫んでいるのは何故か?

与党が提出する法案に野党が抵抗し審議をボイコットしたりするのに、採決しようとすると阻止しようと委員長席に詰め寄る。毎回繰り返される光景は、与党の横暴による強行採決に見えるよう演出しているとしか、私には思えない。

 

今国会の会期は月末30日まで。TPPや年金改革法案を成立させるためには会期延長は避けられない。延長を巡っての与野党の対決は不可避だ。寒い空模様とは反対に国会では与野党の熱い(?)攻防が続いている。

 

今年も早や師走を迎えようとしている。

税制改正、予算編成と与党にとっては1年の中でも最も忙しいシーズンを迎える。

私がプロジェクトチームの委員長として取りまとめを進めてきた“給付型奨学金”も、29年度?からの導入も視野に入れ、与党内で大筋合意がほぼ整った。いずれこのコラムでも詳報したい。

「未来への責任」を果たすために、臨時国会の終盤戦と来年度新政策のとりまとめ、ともに最後まで緊張感を持って臨みたい。

アメリカの選択

世界の行く末に大きな影響を与える4年に一度のビッグイベント“アメリカ大統領選”。

全米で1年に渡り繰広げられた選挙戦は、ご承知のとおり、去る8日劇的な幕切れを迎えた。

 

メディアの事前予想は僅差ながらクリントン候補の優勢を報じていたが、最終的に戦いを制したのは序盤では泡沫候補扱いであったトランプ候補。党の内外を問わず、既成勢力を敵視し、歯に衣着せぬ物言いで打ちのめす手法には猛烈な抵抗もあったが、結果的にトランプ旋風を巻き起こし栄冠を勝ち得た。

結果を受け私の脳裏に浮かんだことは、6月に行われた英国のEU離脱に関する国民投票だった。この投票も事前予測と真逆の結果となった。

 

英国のEU離脱は、移民の増大により現国民の雇用が奪われ、犯罪が拡大するのではないかという漠然とした社会不安が底辺にある。これが、極右集団による移民排斥運動によって助長され、欧州統合によるメリット、現在得られている経済繁栄の利点を忘れさせてしまった。

 

米国でもリーマンショック後の不況に、有効な対策を打てない政府や経済界に対する不満は根強いものがある。上位1%の持てる者が346%の富を有し、次位19%の者が505%の富を有すると言われる格差社会に問題があるのは事実。これに対する米国民の怨嗟の声は止めることはできない。

自動車産業で栄えた旧工業地帯がグローバリズムに取り残され、これによって“プアーホワイト”と呼ばれる集団に脱落した中産階級労働者が、改革の希望の星をトランプに求めた。社会の閉塞感の蔓延とともに、この動きが全米に広がったのは自然の流れとも言える。

 

米英双方とも、既存体制側(エスタブリッシュメント層)に対する大衆の不平が予想以上に大きかったということだ。

クリントン候補はファーストレディ、上院議員、国務長官を歴任するなど、政治エリートの道を歩んできた。片やトランプ候補はビジネスエリートとは言え、行政経験も政治経験も軍歴も無い。

変化を求める国民の声は、長らく政治の舵取り側にいたクリントン候補より、ビジネス社会での成功者であるトランプ候補への期待となり投票行動に結びついたということだろう。

 

英米国民どちらの行動も理解はできる。しかし、移民排斥やアメリカファーストと言った排他主義、自分たちさえよければ良いとする内向きの思考が全世界に広まるのは阻止しなければならない。

最早、全世界の人、物、金、情報の流れは一体化し、その分断は何らかの歪み、デメリットを生み出すに違いない。世界は協調と共栄への道を探るべきであり、先進国にはその推進役を担う責務がある。

 

古い話になるが、1992113日、私はアーカンソン州リトルロックでビル・クリントン政権の誕生祝賀会場にいた。当時アメリカで行われていた「電子投票」を視察するための訪米中、大統領誕生の瞬間に臨場するために急遽予定を変更したのだ。

当地はクリントン氏の地元であるにもかかわらず、祝賀会にもかかわらず、「俺はクリントンが大嫌い」とか「私はブッシュ支持だ」と堂々と表明する人たちが少なからずいた。あの時私は、お互いが堂々と自らの考えを表明しつつも、互いに相手の主義主張も受け入れている姿を目のあたりにし、アメリカンデモクラシーの懐の深さを垣間見た気がした。

 

今回の選挙戦では候補者同士が聴くに耐えない中傷非難合戦を繰り返し、支援者間でも激しい対立が見られた。今なお、全米各地で選挙結果に不満を持つ集団が反トランプデモを展開している。

しかし、私はアメリカンデモクラシーの力に期待したい。非難合戦はまもなく収束し、米国民は一本化するはずだ。客観的に見れば今回の選挙の結果、オバマ政権一期目から続いているねじれが解消され、大統領も共和党、上下両院とも共和党が多数という、極めて安定した体制が生まれる。党内方針さえ定まれば政権運営はずっと楽になるはずだ。

 

超大国アメリカが内向きの自国中心主義に陥り、世界秩序の安定維持や経済発展を牽引する役割を放棄することは、あり得ない、と言うよりも許されない。

トランプ氏もそれを理解しているのか、選挙後は従来の過激さが影を潜め、一変して穏便な発言に終始している。政権移行チームにも共和党主流派からの登用が報じられている。新政権が発足するまで2ヶ月余り、現実的な政策の立案には十分な時間がある。

 

安倍総理は、各国首脳の先陣を切って、17日にトランプ氏と会談する。日米の不安、世界の不安を払拭するため、この会談の意義は大きい。

アジア太平洋の未来に向けて、世界の繁栄に向けて、今こそ日本のリーダーシップが問われている。地球を俯瞰する安倍外交の出番だ。

2016年、残り2か月

播磨地方一円の秋祭りが終わり、先週末には西日本に木枯らし1号が観測された。季節はいよいよ秋から冬へと向かう。今年もあと2ヶ月を残すのみ、臨時国会も折り返しを過ぎた。

衆院では10月14日から、TPP(環太平洋経済連携協定)を巡って特別委員会で審議が行われている。この協定の承認が臨時国会の最重要案件である。
政府与党は11月30日の会期内の成立を目指して、週末の28日(金曜)の衆院通過を目論んでいた。ところが、与党理事や関係閣僚の委員会強行採決に関する不穏当な発言で審議が度々ストップするなどして、採決は週明けにずれ込んだ。

衆院を通過した条約案は30日以内に参院で議決されない場合は自然承認となる。この「30日ルール」適用で会期末までに承認されるタイムリミットは、11月1日(火曜)である。
政府与党は1日の衆院通過をまだ諦めていないが、慎重審議を求める野党の反発は必至だ。成立を確実にするために会期延長も視野に入れているが、週明け以降の国会は緊迫した展開になると予想される。

世界のどの国よりも、人口減少のスピードが速い日本。この国にとって、世界各国との経済連携なくしては、将来の経済発展はあり得ない。TPPはその先駆けとなる協定だ。今後、EUとのEPA、東アジア全域のRCEP、環太平洋全体のFTAAPのひな形ともなるのがTPPである。痛みを伴う分野もあるだろうが、国家全体の利益を求めて、2010年の民主党政権時代から交渉に参加し、5年間の困難な協議を経てたどり着いたのが今の条約案である。

野党は慎重審議を主張するなら、審議拒否(退席)などせず、出席して堂々と論戦すれば良い。もちろん、強行採決発言は不穏当なものであるが、「強行採決しないと約束しないなら審議に応じない」という野党の主張も、如何なものかと思う。私にはスケジュール闘争にしか思えない。

“国会劇場”と揶揄される、あいも変わらない与野党の駆け引きを国民はどの様に受け止めているのだろうか?
おそらく「どっちもどっち」というのが大方の受け止め方だろう。
11月1日に採決をするにしても会期を延長するにしても、どこかの局面で緊迫した場面は避けられない。

27日、昭和天皇の末弟で今上陛下の叔父にあたる三笠宮崇仁親王殿下が、入院中の都内の病院で薨去(こうきょ)された。百歳。
戦前は旧日本陸軍参謀として大陸で従軍。戦後は一転、東大文学部研究生として「古代オリエント史」を専攻し、歴史学者として大学の教壇にも立たれられるなど、学問、スポーツといった幅広い分野で国民と親しく接せられ、国民の福祉向上のために貢献してこられた。
特に、戦火をくぐり抜けられたご体験からか、一貫して平和の尊さを訴えられた宮様であられたことは国民が広く知るところである。心からご冥福をお祈り致したい。

今年もあと2ヶ月。季節の変わり目で寒暖の変化が激しい今日この頃、皆様もくれぐれも体調管理に気をつけて頂きたい。

ふるさとの宝

数度に亘る台風の来襲や集中豪雨など天候不順に見舞われ、猛暑にも悩まされた今年の夏。
10月に入ってからはやっと秋らしくなり、このところは「朝夕はめっきり涼しくなり、日に日に寒くなって来る・・・」などの言葉が様々な挨拶の冒頭で使われるようになってきた。

そんな中、13・14日には我がふるさとの一年で最大のイベント、曽根天満宮秋季例大祭が挙行された。
今年は2日とも絶好の祭り日和に恵まれ、町中が老若男女問わず大いに盛り上がった。我が曽根をはじめ播州地方(特に浜手)の一年は“祭り”を中心に廻っていると言っても過言ではない。祭りが終わった次の日から来年の祭りにむけて、新しい暦が始まるのだ。10月末には各町で打ち上げや反省会が行われ、来年の祭りに向けての思いを熱心に語り合う。それほどに生活の中で“祭り”は重要な地位を占めている。

曽根天満宮では正月の初詣に、振る舞い酒とカレンダーの無償配布が恒例となっているが、カレンダーを飾るのはもちろん各町の屋台の雄姿だ。これは大人気の品で、手に入れるには、紅白が終わる前から行列していただかなくてはならない。この氏子青年会によるカレンダー配布が始まってから、初詣のお客さんが爆発的に増えたという。
ちなみに正月の本殿には真新しい大しめ縄が飾られているが、それは氏子青年会が梅雨明けの頃から天日干しした藁で年末に編み上げたものである。

秋祭りの本格的な準備は、お盆が明ける頃からそれぞれの町内でスタートする。8月中は下準備の会合が頻繁に行われる。9月になると、各町持ち回りの“一ツ物”(*印)当人が決まり、あちこちの屋台蔵からは太鼓の音が聞こえてくる。

9月末からは屋台の飾り付けがはじまり、主な通りには祭り提灯と屋台のシンボルカラー紙垂棒が飾られ、徐々に祭りモードが町内の隅々まで浸透していくのだ。
このころから神戸新聞の播磨版では、どこそこの町の屋台が新調されたとか、どこそこでは太鼓合わせの稽古を始めたとか、秋祭りの話題が毎日のように紙面をにぎわすようになる。

10月10日過ぎになると、まちに若者が増えてくる。東京や大阪に出て行った者が祭りのために帰ってくるのだ。お盆や正月に帰省しなくとも、秋祭りには必ずふるさとに帰り、締め込みをしめて屋台を担ぐ。それが曽根で生まれ育った若者の責務だ。
13・14日の本番を迎えると、近隣から多くの見物客も訪れ、人々があふれる境内での屋台練りが始まると祭りは最高潮に達する。

古来より“鎮守の森”と称される神社は、地域を見守ってきたシンボルであり、街づくりの中心でもあり地域の人々の心の拠りどころであった。
今、人口減少による地方の衰退が大きな課題となっている。大都市圏の力に依存せず、地方から元気をつくっていくためには、住民一人ひとりのふるさとへの思いが一番大切だ。
各地域の神社で執り行われる“祭り”への参画は、ふるさとへの意識醸成に大きな力となるのではないだろうか。

我がふるさと曽根の祭りは、数百年の歴史(神社は平安時代の創建)を有する。今の様な祭りは氏子である住民が長年にわたり作り育て上げてきた行事で、地域の宝であり、誇りである。故に遠方へ巣立っていった若者も祭りの季節を忘れない。だから、彼らは決して“ふるさと”を忘れることはない。
地域創生のためにも、歴史あるふるさとの宝を次の世代にしっかりと引き継ぎ、さらに繁栄させたいものだ。

*一ツ物:祭りの期間中に一ツ物当人(6~7歳以下の男子児童)に神が宿り、その所作や言葉で神の意志を見ようとする最も大事な祭りの神事。

蓮舫新代表

民進党の新党首選びは、15日の選挙の結果、大方の予想通り圧倒的多数の支持で蓮舫氏が代表に選出された。岡田前代表、野田前首相、細野元環境相など、幅広い支持を取り付けて出馬したこと、党勢の低迷が続く中、ルックスや弁舌も含め次期衆院選の顔として党員の期待を集めたことが勝因のようだ。東京都知事選の切り札としての出馬打診を「国政でのガラスの天井を破りたい」と一蹴した甲斐があったということか。

他党の内部手続きにあまり言及したくもないが、今回の民進党代表選、「政権交代を目指す野党第一党の代表を決める選挙」という意味では、政策論争がもの足りず、国民的な盛り上がりにも欠けた感がある。中国でのG20開催、北朝鮮による核実験やミサイル発射など、世界が注目する事象が間近にあったにもかかわらず、世界経済や安全保障に関する言及が乏しかったことが一因かもしれない。

北東アジアの外交・安全保障に緊張感が高まっていることは、国民の知るところである。にもかかわらず、民主党代表選においては、ほとんど争点にならなかった。沖縄基地問題や安保法制についての言及はあっても、目の前で繰り返される暴挙への対応案は聞こえてこない。
国政に携わる者の第一の責務は、国民の生命と財産を守ることである。寄り合い所帯の多様性の故か、党内で基本政策をまとめ切れず、刻々と変化する課題に的確に対応できない様子。旧民主党政権を崩壊させた党内事情が依然として残存しているようで残念だ。

そもそも民進党は勤労者の代表である連合を支持基盤としているはずだ。それにもかかわらず、雇用改善に大きく寄与したアベノミクスをなぜ批判するのか?また、なぜ財政収支の早期均衡達成にこだわり消費税増税を急ごうとするのか?理解しがたい面がある。かつての労働者政党なら、政府支出の増大による仕事量の確保を訴えていたのではないだろうか?
世界的に見て、リベラル政党の中心的政策は雇用確保対策であるはずだが、安倍政権への対立軸を強調するあまり、党の政策理念を忘れ去っているようにも見える。

選挙途中からは蓮舫氏の“二重国籍者”疑惑も浮上した。各所からの指摘に対して説明が二転三転したあげく、結局、事実の弁明は、党員、サポーター、地方議員票の投票が完了した後の13日となって、今も自身の台湾籍が残っていることを明らかにし、謝罪した。つまり、蓮舫氏は1985年に日本国籍を取得した後も台湾籍を有し、国会議員となってからも二つの国籍を維持し続けていたことになる。

(万が一?)総選挙で勝利すれば、新政権を率いる総理の大役を担うのが野党第一党の党首である。違法かどうかはともかくとして、道義的に、外国籍を有するまま代表戦に立候補するというのは余りにも自覚がない、軽率ではないだろうか。外野からの指摘がなければ、台湾籍の日本国総理大臣誕生という可能性もあり得たのだから。
遅すぎる釈明と謝罪も含め、他党のことながら代表選の正当性に疑義が生じ、今後の党運営に影響しないかと心配する。

安倍総理は26日から始まる臨時国会で「党首同士で正々堂々の議論をさせてほしい」と語ったが、民進党内からは早くも人事を巡って不協和音が聞こえてくる。ベテラン議員の一人は、「新たな船出だがタイタニックかもしれない」と言及したらしい。

新代表の船出は必ずしも順風満帆とはいかないようだが、民進党にしっかりしてもらわないと国会での政策論議も活性化しない。個人的見解に依存した意見・主張のやりとりはもう必要ない。野党第一党として、政権交代可能な「影の内閣」を準備し、組織としての統一政策をとりまとめてもらいたい。そのためには、まず党内ガバナンスの強化が必要だろう。
民進党の積極的な政策提言により、緊張感のある政治状況が生まれることが、今この国の政治に求められている。政党間の競争が無くては、我が国の政治の進歩もままならない。
その意味で蓮舫新代表が、秘めたる経営手腕を発揮されることを期待する。

対中外交

今日4日から中国浙江省杭州市でG20が開催される。内政外交とも行き詰まり感のあるホスト国・中国政府にとって、世界経済の成長を中心課題に据えてG20を成功に導くことが必須である。 このためか、安倍首相の先遣として訪中した谷内正太郎国家安全保障局長に対して、李克国首相が自ら対応するなど、なりふり構わぬ“対日重視”外交活動が見受けられる。

先月末の日中韓外相会談では、王毅外相が「海空連絡メカニズム」(偶発的な衝突を防ぐホットライン)の設置に関して、これまで難色を示してきた姿勢を一転させる発言が注目を集めた。

我が国外交の懸案の一つが、東シナ海、南シナ海における平和の確立、すなわち中国の領土的野心とそれに基づく実行行為に歯止めをかけること。安倍首相はG20の場で、東・南シナ海で展開される中国の暴挙に対して、国際法に則った毅然とした対応を望む姿勢だ。
中国政府が対日重視の姿勢を強めているのなら、今が日本の主張を認めさせる好機ではある。だが、中国はしたたかだ。王毅外相は、「客はホストの意向に沿ってその勤めを果たせ」という上から目線の発言など、国内向けの自己主張も忘れてはいなかった。

安倍首相は5月のG7伊勢志摩サミットでも「南シナ海問題」を取り上げ、「南シナ海の軍事拠点化に対して“重大警告”」を明記した首脳宣言の採択を導いた。
これを受けた形で、ハーグの仲裁裁判所は、7月、フィリピンの提訴に対して南シナ海における「中国の領有権は無効」とする判決を下している。中国は「1枚の紙切れにすぎない」と拒否し、軍事力を背景に実行支配を継続中だが、一連の強行姿勢は中国を国際法と秩序を守らない国と印象づけ、国際的孤立を招来している。

このような状況の中で、8月はじめから東シナ海の“尖閣諸島”周辺領海に中国公船が侵入する案件が頻発している。我が国の連日の強い抗議にもかかわらず、盆前には中国公船20隻以上とともに400隻以上の中国漁船が押し寄せたこともあった。日本とフィリピンの連携により不利な状況に陥った南シナ海問題への報復、G20での対応への威嚇と受け取れないこともない。

世論調査では、中国に対する外交姿勢は対話より「もっと強い姿勢で臨むべきだ」という選択肢が、無党派層にまで浸透し全体で55%も占めているものもある。尖閣周辺の領海に連続侵入するという挑発行為が、国民感情に影響を与えていることは否定できない。
興味深い数字であるが、両国のナショナリズムの高揚があらぬ方向に暴走しないよう、政府には冷静な対応が求められる。

一方、8月11日に尖閣沖で中国漁船がギリシャ貨物船と衝突し、沈没するという事態が発生した。わが海上保安庁の巡視船は当然のことながら中国漁民6名を救助し、捜索活動にも協力した。この行動については、中国政府からの「協力と人道主義の精神を称賛する」との謝意はもちろん、中国国民の間でも「中国公船は何をしていたのか?」との声が上がったという。

かつてエルトゥールル号の海難救助が、日本とトルコ国民との100年を超える友情を作り上げた。粛々と正当な行為を行い、堂々と正当な主張を行えば、必ず理解しあうことができる。世界中がネットでつながる時代。我が国の情報を全世界の人々に伝える発信力を磨くことも重要だ。それが政府間の外交交渉にも力を与えてくれる。

YOU ARE ALL HEROS

4年に一度のスポーツと平和の祭典“第31回夏季五輪リオデジャネイロ大会”は、21日(日本時間22日)に17日間の闘いの幕を閉じた。
開会前は、会場施設建設の遅れや選手村の設備の不具合、さらには警察官のストライキまで、懸念材料が山積していたが、始まってみれば大過なく全ての競技が進行した。
そして日本選手の大活躍とメダルラッシュが、日本中を盛り上げてくれた。

地球の裏側にあるブラジルと日本との時差は12時間。昼と夜が逆転するためライブ映像は深夜から早朝、昼前に及ぶ。おそらく日本列島は寝不足症候群に覆われていたことと思う。
私たち国会議員にとっては幸いなことに、今回のオリンピックはお盆を挟んだ国会の夏休み期間の開催。盆踊りや初盆廻りなど地元の比較的時間調整の可能なスケジュールのおかげで、思う存分日本選手の活躍に声援を送り、楽しむことができた。

女子48kg級の近藤亜美選手の銅メダルから始まったお家芸“柔道”の復活劇。柔道だけで金3、銀1、銅8の12個を獲得し、世界に柔道の母国“ニッポン”の力を示した。なかでも男子は7階級すべてでメダル獲得という偉業を成し遂げ、ロンドンの無念を晴らした。

体操男子の団体総合では、アテネ大会以来3大会ぶりに “悲願の金”。引き続き行われた個人総合では、内村航平選手の華麗な舞いに日本中が酔った。5種目を終えた時点での点差からロンドンに続く連覇は難しいと思われたが、最終種目“鉄棒”でピタリと着地を決め、大逆転勝利をものにした。競泳も400m個人メドレー萩野公介選手、200m平泳ぎ金藤理絵選手の金2つを含む、メダル7個の成果。

女子レスリングでは、48kg級登坂絵莉選手、58kg級伊調馨選手、69kg級土性沙羅選手が17日に3連続金メダル。三人とも決勝で終盤までリードを許していたが、ハラハラドキドキした中でいずれも終了間際の逆転による優勝だ。伊調選手に至っては前人未踏の五輪4連覇も達成した。翌日の53kg級でエース吉田沙保里選手が五輪4連覇を阻まれたものの、63kg級の川井梨沙子選手が金メダルに輝くなど、レスリングも男女合わせて7個のメダルを獲得した。

卓球は男女とも大会前から大きな期待を集めていたが、そのプレッシャーの中で結果を出していった。その活躍には心から拍手を送りたい。また、バドミントンで日本勢初の金メダルを獲得した女子ダブルス高橋礼華・松友美佐紀ペアは、最終セット16対19とリードされてから5連続ポイントを奪取して優勝。勝利への執念は鬼気迫るものがあった。

カヌー競技や50km競歩で日本勢として初めて銅メダルを獲得したことも印象に残った。
極めつけは陸上男子400mリレー、ボルト率いるジャマイカには敗れたものの銀メダルを獲得!アジア新記録であのアメリカに勝利したことは、われわれ世代には考えられない。真に快挙である。

最終的には国別メダル獲得数で日本は7位。金12個、銀8個、銅21個の計41個で、ロンドン五輪の38個を上回る過去最多のメダル数となった。4年後の東京五輪に向けて、期待を膨らませる成果をあげたと言えよう。

勝利して感極まって流す涙もあれば、敗れて流す口惜し涙もあったが、表彰台の上に立った選手たちの姿は最高に美しく輝いていた。しかし、輝いたのはメダルリストだけではない。勝者も敗者もすべて世界トップレベルのアスリート達(HEROS)なのだ。
NHKのリオ五輪テーマソングは「HERO」だったが、「HEROS」にした方が良かったのではないかと思う。

リオ五輪閉幕とともに五輪旗は東京に引き継がれた。
2020年の東京オリンピック。開催国として更なるアスリートの競技力向上を図ることはもちろん、“スポーツと平和の祭典”にふさわしく、多文化が共生する日本文明を世界に発信する文化プログラムの充実も図り、世界の人々に更なる感動をもたらすオリンピックにしたいものだ。

今年のタイガース

金本新監督のもとに“超変革”のスローガンを掲げ、シーズンのスタートを切った今年の阪神タイガース。
開幕から交流戦が始まるまでの成績は25勝25敗3分、5割をキープするまずまずの成績を残した。新監督の采配はスローガン通りで、ドラフト1位の髙山をはじめ板山、原口など、実績に捕らわれずに次々と新しい戦力を積極的に投入し、「今年のタイガースは一味違う」新鮮さとともに大きな期待をファンに運んでくれた。

だがそれは5月までの話、セ・パ交流戦で7勝11敗と躓きを見せると、その後、参院選が始まったためペナントレースから目を離している隙にも黒星を重ね、気がついたらいつの間にか15年ぶりに最下位に転落していた。

オールスター後の巨人戦に3連敗、つづく広島に2連敗し今季最大借金15となり「今年はもう終わった」と、テレビを観る気にもならない日々が続き諦めかけていたが、その後突然の4連勝、1敗を挟んで3連勝と浮上しかけている。8月7日現在、46勝56敗3分け勝率0.451。広島、2位巨人には届かないものの3位DeNAとは5ゲーム差であるが、一時の不振を脱しつつある藤浪投手の出来次第では、昨年同様クライマックスシリーズ進出も期待がもてる、今日この頃である。

”超変革”のスローガンのもと、若手登用により選手の顔ぶれは変わったが、ファンに期待と失望を交互にプレゼントする伝統は変わっていないようだ。シーズン当初には「今年は大丈夫、優勝だ!」と盛り上がったファンの声援に応えることなく、今シーズンも秋風が吹く季節を迎えることになるのか、それとも…。

ただ、アニキ人気が牽引するのか主催試合観客動員数は、7月末に200万人を超えた。1試合平均42,000人超の数字は、いつも優勝争いを演じた岡田タイガース時に迫る勢いだ。ことほど左様に甲子園のスタンドは熱いのだが・・・。

7日からは夏の高校野球も始まりタイガースはしばらく甲子園を離れる。昔は「死のロード」と言われたが、今は京セラドームでのホームゲームもあるし、交通事情も大きく改善された。
この次タイガースが甲子園に帰って来るのは8月27日のヤクルト戦から。その頃にはクラ
イマックスシリーズを睨んで虎キチの後押しが球場を黄色一色に染めるのか、あるいはストーブリーグの話題がチラホラ囁かれるのか、前者であって欲しいものだ。

地球の裏側ではリオのオリンピックが始まった。時差は12時間、日本とは昼と夜が正反対である。寝不足にならないよう、気をつけながらアスリート達の活躍にもエールを送りたい。