参院選が終って

第24回参議院議員通常選挙の結果は、ご承知のとおり、自公連立与党が改選議席の過半数61を大きく上回る70議席を得た。自民党は27年ぶりの単独過半数には僅かに1議席届かなかったが、勝利と言って良いだろう。
しかも、自公に加え、おおさか維新など改憲に前向きな勢力は、非改選組も合わせて2/3の議席を突破した。すでに衆議院は与党が2/3を確保しており、現行憲法の下で初めて改憲発議が現実味を帯びる歴史的な結果となった。

ただ3年前のような圧倒的な勝利ではない。鍵を握ると言われていた全国32の1人区では、すべての選挙区で野党協力(民進、共産、生活、社民の4党)が実現し、統一候補が擁立された。実質的には、自公VS民共の戦いであったが、与党21勝に対して野党11勝となった。3年前には自民が29勝2敗だったことを考えると、野党協力は一定の成果があがったと評価すべきであろう。

事実、福島と沖縄で現職閣僚が落選。東北6県では秋田以外は敗北。新潟、長野、山梨、大分も接戦を制することができなかった。岡田代表が「敗れたら次の代表選には立候補しない」と明言していた三重でも、民進党現職に屈した。
一方で、共産党との共闘が民進党の支持者離れを招いた側面も無かったとは言えない。いずれにしても、次の衆院選に向けて共闘が持続する可能性が高く、その行方を注視していく必要がある。

さて、実質的に発議が可能となった憲法改正をめぐる論議である。
選挙期間中、岡田代表は「改憲勢力が2/3になったら、安倍総理は必ず9条の改正をやる」と、憲法改正阻止を前面に出した。その結果、憲法96条が規定する改正発議の要件である両院の2/3の議席が勝敗ラインの一つになった。
私には改憲勢力が2/3になれば何故9条改正になるのか、全く理解できない。

改憲勢力といっても、各党それぞれ考え方に差がある。自衛隊の明確な位置づけに重きを置く党もあれば、環境権をはじめ新たな権利の追加を唱える党もある。地方自治を含む統治機構の改正に熱心な党もある。民進党のなかにも改憲に前向きな声もあるはずだ。

また岡田代表は、「安倍政権とは憲法に対する基本的なスタンスが違うから話をしてもしょうがない。安倍総理の元では改憲の議論はやらない」とも言っているが、これも全く理解できない。
憲法改正の発議権は、行政府ではなく立法府にあるのだ。誰が総理であろうと関係ない。そして最終的には国民投票により可否が決定する。

“日本国憲法”は、1946年(昭和21年)11月3日に公布、翌年の5月3日に施行されてから70年が経過した。この間、日本を取り巻く環境は内外共に大きな変化が生じている。にもかかわらず憲法が不変であることの方が異様と言えないだろうか。

そもそも法律は社会規範の集大成であり、憲法も法律の一つである。時代の変遷に即して改正すべき点は生じるし、現に時代に適合しない条文も少なくない。諸外国の憲法においても、少ないアメリカでも6回、最多のドイツに至っては58回も改正されている。日本の現状は国会の不作為を問われかねない状況とも言える。

その意味でも秋に予定されている臨時国会で、まず憲法の議論をスタートさせたいものだ。国会で議論を深めることによって、初めて課題や論点が明らかになる。
現憲法の「何が時代の変化に適応していないのか。どの様に変える必要があるのか」。国会では、党派を超えて真摯に議論することが求められている。