国政停滞

今年の冬は強烈な寒波が何度も押し寄せ、山陰・北陸・北海道地方は観測史上最高となる豪雪に襲われ、各地から豪雪被害が届いた。

そんな日本列島にも先週半ばからの気温の上昇により、15日(木)には高知から桜開花の一報が入った。全国から「桜開花」の知らせが届く日も近いだろう。あと数週間で、一年の内でも最も晴れやかな季節となる筈だ。

その一方で、このところの永田町や霞ヶ関周辺には暗雲が立ち込めている。

 

発端は3月2日の朝日新聞朝刊。“森友文書、財務省が書き換えか「特例」など文字消える”の見出しが躍った。森友学園との国有地取引をめぐり、財務省近畿財務局の契約時の決裁文書と、その後に国会に開示された文書内容が違っているとのスクープだった。

以後、参議院の予算委員会はこの問題一色となり、新聞や週刊誌、ワイドショーの主役として、連日連夜報道された。

 

これらの動きを受けて、野党6党は佐川元理財局長や安倍昭恵総理夫人の証人喚問を求めて、6日以降、完全に審議拒否状態に入った。

そして、9日の佐川国税庁長官辞任と12日の書き換え文書の国会報告により、スクープの通り、国会での佐川氏の答弁とは異なる内容の存在が明らかになった。

 

自民党の二階幹事長と立憲民主党の福山幹事長の話し合いで、19日から参議院予算委員会で集中審議を行うことが決定したが、その行く手は藪の中である。

 

虚偽の答弁を行ったということは、国会を、ひいては国民を冒涜するもので、言語道断である。また、公文書の書き換えなどという、常識はずれの行いに及んだ財務省の責任は非常に重い。

答弁を正当化するために公文書の書き換えが行われたのか? それとも、偽りの答弁を行うために書き換えが行われたのか? なぜ、偽りの答弁を行う必要があったのか? 裏に誰かの指示があったのか? 単なる役所の忖度なのか?

 

謎は深まるばかりだが、役所の中の役所である財務省の官僚が、自らこのような暴挙に至ることは、私には想像しにくい。今は真相究明が最優先課題であるが、その責任が政権与党にも及ぶことは避けられないだろう。第2次安倍内閣発足以来、最大の危機であることは間違いない。

 

日本の政界が森友問題で時間を費やしている間に、朝鮮半島では南北対話が予定され、米朝対話も実現にむけて動き出した。欧州では英露の緊張も高まっている。

トランプ大統領が“国家安全保障上の脅威になる”として、米通商拡大方232条に基づき鉄鋼とアルミニウムに関税を課す輸入制限を36年ぶりに署名、自由貿易体制に揺るぎも生じている。

 

いつまでも国会の機能を停止させていては、日本は世界から取り残される。

内政においても生産性革命や人づくり革命など、国会で議論し、解決しなければならない課題は山積している。

国会が本来の機能を取り戻すために、国家の未来、国民の生活に関する議論を展開するために、一日も早く真相を解明し、政治不信を払拭しなければならない。

祭りとそのあと

2月25日(日)に閉幕した平昌オリンピック。

前半戦は有力選手の活躍も、金メダルには及ばなかったが、折り返しとなった男子フィギアの羽生結弦選手と小野昌麿選手によるワンツーフィニッシュから、後半戦はメダルラッシュとなり大いに盛り上がった。

 

18日には、女子スピードスケートで事前の予想どおり小平奈緒選手が五輪レコードで金メダル!その後も、チームパシュートとマススタートで髙木菜那選手らが金メダルを獲得した。

閉会式前日には女子カーリングが五輪史上初めての銅メダルに輝き、列島が歓喜に沸いた。

終わってみれば、日本のメダル獲得数は金4、銀5、銅4、の計13個。冬季大会では過去最高の長野大会の10個を上回り、大会目標の10個も超える結果となった。

 

右足首のけがを乗り越え、66年ぶりの五輪連覇を達成した羽生選手。

前回のソチ大会での敗北の悔しさをバネにオランダ留学を始め、この4年間に極限の努力を重ねて実力を養い、ついに金メダルを獲得した小平奈緒選手。レース後に国旗を背負いライバル選手とお互いの健闘を讃えあった姿は、世界中に感動を届けてくれた。

 

また、スーパー中学生として15歳でバンクーバー大会に出場し、ソチでは代表落ちという屈辱を味わい、それをエネルギーに変えて再び日本のエースに返り咲いた髙木美帆選手。

年300日の合宿を通じて一糸乱れぬ隊列走法で、メダリストを揃えたスピードスケート王国オランダに勝利し、金メダルに輝いたチームパシュートの選手たち。

苦しい戦況下にあっても常に笑顔で励ましあう姿で、日本中を笑顔にしてくれたカーリング娘たち。

 

オリンピック報道では、それぞれの選手たちの表彰台に辿りつくまでの数々のストーリーも放映された。自らを極限まで追いつめ努力を重ねてきた選手たちの感動のドラマに涙した人も数多かったと思う。(私もその一人だったが)

加えて、競技後のインタビューでの選手たちの言葉には、必ず支えてくれた人達への「感謝」の言葉があったことも指摘しておきたい。

 

今回のメダルラッシュは選手たちの努力のたまものであるが、国を挙げてのサポート体制の充実・強化が実を結んできたものでもある。

政府は2001年に定めた「スポーツ振興法」に基づいて、競技ごとの専用練習場や宿泊施設などを備え、集中的・継続的にトレーニングをおこなえる“ナショナルトレーニングセンター”の整備や充実を図ってきた。

 

さらに、トップレベル競技者の強化、優れた素質をもつジュニア競技者の発掘、一貫指導システムによる育成など、国際競技力の向上にむけた組織的・計画的な取り組みをスポーツ科学・医学・情報の側面から支援することを目的とする“国立スポーツ科学センター”を設立して効果的なトレーニング方法の開発も行っている。

これらの下支えが我が国のメダル獲得に大きく貢献している。

 

日本中が熱狂に包まれた今回の平昌オリンピックは、スポーツの力を改めて証明してくれた。

2年後は自国開催である東京オリンピックだ。ナショナルチームの更なる競技力向上を大いに期待したい。その為にも国民の熱が冷めないうちに、更なる支援策を講じる必要があると考える。その前に、9日(金)から始まるパラリンピックの選手たちにもエールを送らなくてはならないが。

メダルラッシュ!

10日から12日までの3連休、“第2回日韓議会未来対話”に参加する目的で韓国を訪問した。この会議は衆議院と大韓民国国会との公式な議会間交流で、政府とは立場の違う議会人同士が直接対話を行うことで、両国間の相互理解を深める目的で立ち上げられたものだ。最初の会議は、平成28年5月に東京で開催されている。今回の会議は本来、昨年11月にソウルで開催予定であったが、解散総選挙により今年にずれ込んだ。

 

日本側出席メンバーは、大島理森衆院議長をはじめとする超党派の8名(自民4名、立民、希望、公明、共産各1名)。韓国側も丁世均(チョン・セギュン)国会議長をはじめ超党派の議員が出席した。今回のテーマは、①北朝鮮による核・ミサイル挑発が続く中での朝鮮半島の平和構築に向けた日韓協力、②文化・観光などの日韓人的交流の活性化であった。

 

お互いの立場を主張する建前の話し合いではなく、本音をぶつけ合うという会議の主旨から非公開となっているため、対話の内容についての言及はここでは控えたい。

国民の代表として選挙で選ばれた立法府の議員という立場で率直な意見交換が行われ、大いに相互理解を深めることができ、ギクシャクする日韓関係にとりとても有意義だったと思う。

 

折しも平昌冬季オリンピックが開催中で、幸運にも(と言うより、オリンピックにあわせてスケジュールを決めたらしいが?)、女子アイスホッケー(スウェーデン戦)とフィギア団体戦を観戦することができた。どちらの競技も初めての観戦だったが、実際に現地で観る臨場感は体験してみないと分からない興奮と感激があると改めて知った。

開会式に出席された安倍総理も女子アイスホッケーの応援に駆け付けられた。残念ながら勝利することはできなかったが、1対0とリードを許していた日本が同点に追いついた時には大いに盛り上がった。

 

現地の寒さが非常に厳しいと聞き、万全の防寒準備をして渡韓したのだが、我々が訪れた当日は比較的穏やかな天候で、覚悟が空回り(?)した感もあった。それでも前日の夜の開会式に参加した議員仲間の話では、3時間に及んだ式典の最後の方では体感温度はマイナス10℃位で、爪先の感覚がなくなりそうだったと言う。

 

日本選手団の大会前半の成績は、金メダルが有力視されていたスノーボード・ハーフパイプ、ノルディック複合、女子スピードスケートなどの種目が銀メダルに終わり、列島全体に軽いフラストレーションが貯まりかけていたのではないかと思う。

 

そのモヤモヤを払拭してくれたのが、男子フィギアの羽生結弦選手と宇野昌麿選手。羽生選手は右足首の負傷から3カ月、ぶっつけで本番大会に臨み見事に連覇を達成! また、ショートプログラム3位から滑走した宇野選手も銀メダルを獲得した。日本勢のワンツーフィニッシュは、大きな感動を届けてくれた。

 

前日の興奮も冷めやらぬ日曜日のスピードスケート女子500mでは、ワールドカップ15連勝の小平奈緒選手が期待通りの実力を発揮。ただ一人36秒台(平地での世界最高記録)のタイムをマークして、悲願の金メダルを獲得した。これで日本の獲得メダル数は10個となり、これまで最高の長野大会と並んだ。

 

期待されながらメダルを逃し悔し涙を流した選手、メダルを獲得し歓喜の涙を流す選手、涙の種類は違っても全力を尽くした選手たちの姿は最高に輝いている。残された日程はあと一週間となったが、まだまだメダルの期待が予想される種目も残っている。国民の期待を一身に背負って戦いに挑んだ選手たちに、心から拍手を送りたい。

憲法改正

1月22日に開会した第196回通常国会、29日からは予算委員会で平成29年度補正予算の審議が行なわれた。
一方的に質問し一方的に答弁する本会議の代表質問と違って、予算委員会での質疑は一問一答形式。同じテーマについて角度を変えて繰り返し質問することができるので、より議論を深めることが可能だ。

問題はその議論の内容である。予算委員会は内閣が提出する予算案について、その適否を審議することが本来の役割。しかし、実際の審議では政府の様々な施策をめぐって論戦が展開される。予算は政策実行の重要な手法であり、関連する政策課題について審議が及ぶことは許されるだろう。しかし、予算案と全く無関係の話題に時間が割かれるのはいかがなものか。

ニュース番組の映像も政策論争よりスキャンダルの追及が多くを占めている。いくら国民の関心が強いと言っても、政策議論への時間配分に、もう少し配慮があってもよいのではないだろうか。

ところで安倍総理が召集日の党両院議員総会で強い意欲を示した“憲法改正”問題。
31日の参院での答弁でも、「最終的には国民投票に帰するもので、国民投票を実現する為に国会で真摯な議論を深める必要があり、私たち(議員)にはその義務がある」と強調し、「党利党略ではなく、前向きに取り組み良い案が出ることを期待したい」と憲法改正議論の前進を要請した。

現憲法は昭和21年(1946年)11月3日に公布され、71年が経過した。
「平和憲法」として国民に親しまれ、我が国の平和と繁栄の礎になったことは率直に評価するが、これだけの時が経過すれば法の成立基盤である社会情勢も変化する。とりわけ、激動する北東アジアの情勢を踏まえれば、祖国を防衛する自衛隊の明確な位置づけは喫緊の課題ではないだろうか。さらには、南海トラフ地震のような危機管理に備える緊急事態条項の追加、成熟の時代にふさわしい地方自治権限の明確化など、対応すべき課題は数多い。

私も前号のコラムで言及したが、今後は各党が党内議論を深め、それぞれの党案を国会の憲法調査会に提案し、国民に情報を提供し国民的議論が深まるようにしなければならない。

そうでなければ憲法についての国民の理解も深まらない。

自民党は昨年の総選挙で、公約の柱の一つに憲法改正4項目「1.9条に自衛隊根拠規定の追加 2.緊急事態条項の創設 3.高等教育無償化 4.参院選挙区『合区』解消」を掲げ、戦った。

4つ項目のうちすでに、緊急事態条項は国会議員の任期延長論で、合区解消は都道府県1名以上とするなど、概ね意見集約を得ている。高等教育の無償化については、政策パッケージに明記されるなど環境整備も進んでおり、あとは文言調整を残すのみとなった。

最大の課題は9条への自衛隊明記の方法だ。昨年末の中間報告では「①戦力不保持を定めた9条2項(注1)を維持し、自衛隊の根拠規定を追加する『加憲』と、②2項を削除し、自衛隊の目的・性格を明確化する」案の両論併記となっている。

一筋縄ではいかないと思うが、3月25日の党大会までに党内議論を重ね改憲原案の意見集約を図りたい。

多くの野党は、自衛隊の権限を変えずに根拠規定を追加する9条改憲に反対している。

立憲民主党は「憲法観が違うから議論すらしない」と明言しているが、まったく理解に苦しむ。60年安保以来、護憲のみを党是して万年野党に甘んじた旧社会党への先祖帰りと言えなくもない。

自衛隊は日本国にとって欠かかすことのできない組織であり、その活動には国民からも高い信頼を寄せられている。しかし、一方で、憲法の表記のあいまいさ故に、未だに多くの憲法学者から違憲の疑いをもたれている。

私は平和主義を堅持しつつ法治主義の観点からもこの疑義を払拭したい。理論的にベストでなくとも実現可能な案で、今こそ自衛隊の合憲性についての“神学論争”に終止符を打つべきだと思っている。

(注1)      前項の目的を達成するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。

新年のご挨拶・2018年

明けましておめでとうございます。

昨秋の総選挙において九度目の栄冠を勝ち得ました。ひとえに皆様のご支援の賜物と御礼申しあげます。

今、我が国の行く手には内外に大きな壁がそびえています。一つは急速に進む少子高齢化による人口減少、もう一つは北東アジアの安全保障バランスの揺らぎです。この二つの国難を打開して明日を切り拓く覚悟、決断と実行力が政治に求められています。

まず、人口減少対策のカギは、生産性向上と人材育成でしょう。人口が激減するなかでも安定した経済成長力を維持するために、ロボット、AI等のイノベーションと労働規制の緩和で「生産性革命」を推進します。とりわけ私のライフワークである科学技術政策の充実はイノベーションを産み出す“未来への先行投資”です。これまで以上に資金と人材を投入する必要があります。

その人材を育成するのが「人づくり革命」です。幼児教育の無償化は子どもたちの社会性を育み、授業料免除や給付型奨学金拡充などによる高等教育の機会均等は、世界で活躍する頭脳を輩出するでしょう。これらの政策の具体化を急がなくてはなりません。

もう一つの壁である安全保障は、近隣諸国との対話と協調を礎に築き上げるべきことは言うまでもありません。しかし、外交交渉を優位に進めるためにも、有事の際に国民の安全を守るためにも、一定の力は必要です。米国をはじめとする同盟国との連携強化、そして弾道ミサイル迎撃や離島防衛に必要な装備の充実も進めます。

もちろん私の原点である“播磨“の地域振興にも、全力で取り組みます。今年から播磨地方を東西に貫く四本目の高速道路となる“播磨臨海地域道路”の都市計画に向けた手続きが始まります。この幹線道路は西日本の物流効率化に大きく寄与することは間違いありません。

これらの政策を実行する基盤は政治への信頼です。これからも「無信不立」を肝に銘じ、責任をもって実行に移します。

今年も格別のご指導とご鞭撻をお願いします。

年の瀬・2017年

漢字の日にあたる12日、京都の清水寺で森 清範(もり せいはん)貫主が特大の和紙に一気に「北」の一字を書き上げた。2017年の世相を表す“今年の漢字”だ。

“今年の漢字”は日本漢字能力検定協会のキャンペーンとして、毎年一般公募で選ばれる。今年は「北」が7,104票を集めた。朝鮮の数次にわたるミサイルや核実験の強行。九州部豪雨、海道のじゃがいも不作、海道日本ハムの大谷翔平や清宮幸太郎選手の露出。極め付きは、島三郎さんの愛馬キタサンブラック号の大活躍などが選ばれた理由として挙げられている。

 

二番手以降の漢字を見ると順に「政」→「不」→「核」→「新」→「選」→「乱」→「変」→「倫」→「暴」であった。これらの字を見ていると、どうも今年はネガティブな年だった印象だ。

 

ちなみに政界の面々が掲げる“一字”は以下のとおり。

安倍晋三総理大臣:「挑」 国難に挑むために総選挙に挑んだ年。

小池百合子都知事:「改」 改革の改。改めていろいろ挑戦していきたいし、改めて都政に

しっかり取り組んでいく。

枝野幸男立民党代表:「立」 立憲民主党の『立』だし、多くの皆さんから『枝野立て』

と背中を押していただいたということ。

小池晃共産党書紀局長:「偽」 偽りの答弁、偽りの行政、偽りの外交。そうしたことが続いた一年。

 

改めて一年を振り返ってみると、やはり今年の顔はトランプ大統領か?1月の登場から始まり、内政に外交にその発言が世の中を揺り動かし続けた。

欧州では、フランスで若き大統領の誕生という明るい話題があったものの、英国のEU離脱手続き開始に、スペインのカタルーニャ地方独立運動、そしてドイツでも連邦議員選挙でメルケル首相率いる与党が勝利したものの、連立政権の立ち上げが難航している状況で、不安を感じさせる出来事が続いている。一方のアジアは、北朝鮮の暴挙の裏で、10月に中国の習主席が盤石の新指導部を発足させ、周辺諸国への影響力を強めた。

中東に目を転じれば、サウジとイランの対立など混迷の度合いを増しつつある。

 

このような世界情勢の変化にもかかわらず、我が国の国会での議論はいわゆる「もりかけ」問題に終始してしまい、立法府の貴重な時間が浪費されたのが惜しまれる。

そんな中、安倍総理は「国難に立ち向かう」として、10月に衆議院を解散、総選挙が実施された。総選挙の直前に野党の再編が一気に加速し、一時は政権交代も起こり得るかもしれないという雰囲気が列島を覆ったが、結果は野党の混乱と自壊により自民党が大勝、自公連立による安定した政権運営が続くことになった。

 

しかし、今回の選挙を経て自民党内では明らかに変化が起きていると、私は考えている。

例えば私も所属する総務会の議論の質が変わった。この最高意思決定機関での発言が活発化し、しかも政府の方針に対する批判や党の方針に対する厳しい意見も飛び交っている。政策立案の主導権を官邸から政党に引き戻すため、正に国政の重責を担う議論が展開されている。

 

最後に、私の”今年の漢字”は「拓」。日本の未来を切り拓く「科学技術・イノベーション」「人材育成(教育)」に注力した一年だった。選挙で国民の皆様にお約束したとおり、今後とも党内外で政策議論を積極的に展開し、政党政治の一翼を担っていきたいと思っている。

 

今年も余すところ2週間。1年間いろいろとお世話になり、本当に有難うございました。平成30年も引き続きご指導の程、宜しくお願いいたします。

来るべき年が皆様にとって輝かしい年でありますよう祈念いたします。

 

 

大相撲

先月末から連日連夜ワイドショーを賑わしてきた元横綱日馬富士の暴行事件。未だに被害者である貴ノ岩の生の声は聞かれていないが、関係者の証言により事件の全容がほぼ見えてきた。秋巡業中の“モンゴル会”の酒席で、先輩の大横綱白鵬が話している最中にスマホをイジった貴ノ岩の態度に日馬富士が激高し、暴行。頭部に9針も縫う大ケガを負わせた。日馬富士は、横綱として責任を執るとして11月29日に引退を表明した。

 

2011年には力士の携帯メールから発覚した八百長事件などで、一時は存続の危機とまで騒がれた大相撲だったが、その後琴奨菊や豪栄道など日本人力士の活躍で、徐々に人気が回復。今年の正月場所後には稀勢の里が横綱昇進し、19年ぶりの日本人横綱が誕生した。「スー女」と呼ばれる若い女性の相撲ファンも急増するなど、国技としての地位を取り戻したかに思えた大相撲だったが、今回の事件で組織とガバナンスの在り方が再び厳しく問われることとなった。

 

思えば10年前の2007年、稽古中の暴力行為により時津風部屋の17歳新弟子・時太山(ときたいざん)が死亡、そして親方らが逮捕された事件があった。当時、文部科学大臣の任にあった私は、所管する公益法人である相撲協会が引き起こした不祥事に対処する立場にあった。

ただ、事件直後の金曜日の定例記者会見で質問を受けた私は、「熱心なタイガースファンで野球のことは詳しいが、相撲はそれ程詳しくない」と正直に答えてしまい、記者たちの間に不穏な空気が漂ったと記憶している。

 

会見が終わるとすぐに、詳細なレクチャーを受けるべく担当部局を呼んだが、週明けの月曜日に伊勢ノ海親方から経緯を聞くとのことだった。瞬時に土日を挟んでは不味いと判断し、「今日中に責任のある立場の人に来てもらうように」と指示。その結果、北の湖理事長の来訪を受けることとなった。

 

理事長が大臣室の扉から現れた時、私としては普通にお辞儀をして迎えたのだが、理事長はお腹がつっかえてお辞儀ができない。結果、私が謝っている様なシーンがテレビのニュースに流れ、多くの方々から「もっと堂々としていろ」とお叱りを受けることになった。

 

週刊誌には「北の湖の態度が大きい」との非難もあったが、当の理事長は事件の経緯を丁寧に説明するとともに協会の管理不備を認め、「この度は申し訳ありませんでした」と何度も繰り返しておられた。今は亡き氏の名誉の為に記しておきたい。

 

私はこの面談で、「外部の識者を協会の理事に迎え、相撲ファンの声が届くような体制にするように」と強く指導した。当時の相撲協会の理事会メンバーは約10名、理事長以下すべて力士出身者で占められ、閉鎖性が強かった。

翌年には親方以外から理事2名と監事1名が決定、選任されて体制は刷新されたかに思えたが…、今回、またしても暴行事件が起きてしまった。

 

相撲協会は、警察の取り調べ終了後に、貴ノ岩からの事情聴取を行うようだ。このような事件を招いた原因を究明し、新たな再発防止策を講じるべきことは言うまでもないが、問題はその本気度だ。

社会の規範や倫理とずれている言われる協会の体質を刷新するために、過半の理事を外部から招くくらいの意気込みで、さらなる改革が行われることを望みたい。

教育無償化とは

10月の総選挙から早や1カ月。投票日前も変化の大きい一ヵ月であったが、政界では選挙後も様々な動きが生じている。

過半数越えの235人の候補者を擁立したにもかかわらず、野党第一党を立憲民主党に譲った希望の党は、玉木雄一郎氏が共同代表に就任。その後、党執行部人事を決定する両院議員総会で小池百合子東京都知事が「創業者の責任として代表でスタートしたが、党の方向性は決まっているので、代表の座を降りさせていただく」と党代表辞任の弁を述べた。

昨年7月の都知事選から始まり、都議会選挙、東京五輪の会場施設問題、豊洲市場移転問題、そして今回の希望の党の立ち上げによる衆議院選挙と、連日の様にワイドショーを賑わせていた小池劇場はここに幕を閉じることになった。
また、野党再編の一連の動きのなかで、当初は解党して希望の党に合流すると言われていた参院民進党では、合流を白紙に戻し大塚耕平氏が代表に就任、新体制をスタートさせた。
結局、総選挙を経て民進党は立憲民主党、希望の党、参院民進党、無所属の4つの勢力に分かれることとなった。
現在の選挙制度を考慮すると、次の国政選挙前までには野党の再々編は避けられないと思うが、当面はこの形で何らかの協力関係が模索されるのだろう。
一方、自民党では、総選挙の公約「保育・教育の無償化」についての議論が佳境を迎えている。“政権公約2017”(注1)では、年末までに「人づくり改革に関する2兆円規模の新たな政策パッケージを取りまとめます」と約束しており、党・人生100年時代戦略本部で具体策の詰めを急がなくてはならない。
幼児教育については、社会保障の一環と考えるのか、それとも義務教育の拡大と発想するのかによって、所得制限についての対応が変わってくる。
社会保障なら所得制限を設けるべきだろうし、義務教育に繋がる就学前教育と考えるなら所得制限はなじまない。故に双方の間をとって、3才~5才はすべての子どもが無償となり、0才~2才は所得制限を設けるという案が有力になるのだが。
高等教育については、「真に支援が必要な所得の低い家庭の子どもたちに限って高等教育の無償化を図ります」となっているが、“無償化”の意味については党内でも見解が分かれている。政府内の検討では低所得者層に限って授業料免除(渡し切り)や給付型奨学金の拡充を考えているようだが、それでは対象者が限定されすぎるのではないだろうか?
高等教育をすべての国民に開かれたものにする(教育の機会均等)という本来の趣旨からすれば、“無償化”の意味は「在学中無償化」と捉え、進学を希望する者すべてが恩恵を受ける制度設計を目指すべきと私は主張している。
選挙公約を各候補がどの様に訴え、国民がそれをどの様に受け止めているか?決して一律ではなく、いくらかの差異が生じているだろう。また、公約を政策化する際には、一定の解釈の幅が生じるのも事実だ。しかし、我々には政権与党として、公約の実現を全国民に納得していただく説明責任がある。
閣議決定までのスケジュールを考えると、意見集約までに残された時間はそれ程多くない。しっかりと議論を尽くし、政策を練り上げ、皆様にお示ししたい。

 

 

(注1)  自由民主党「政権公約2017」(抄)

〇幼児教育無償化を一気に加速します。2020年までに、3歳から5歳までのすべての子供たちの幼稚園や保育園の費用を無償化します。0歳から2歳児についても、所得の低い世帯に対して無償化します。
〇真に支援が必要な所得の低い家庭の子供たちに限って、高等教育の無償化を図ります。このため、必要な生活費をまかなう給付型奨学金や授業料目減免措置を大幅に増やします。

総選挙を終えて

大型台風21号が列島を駆け抜けた22日、嵐の中で行われた第48回総選挙は、多くのメディアの事前予想どおり自民党の大勝に終わった。あれから1週間、列島は再び台風22号が来襲し、その後には冬の到来を告げる木枯らしが吹き荒れている。

 

それにしてもこの一カ月は、目まぐるしく政局が変化した。

9月25日に安倍総理が衆院解散・総選挙を表明すると同時に、小池都知事が「希望の党」を設立。28日の解散直後には民進党が両院議員総会で、できたての「希望の党」への合流を全会一致で決定し、政権交代可能な二大政党成立かと思われた。が、その直後、合流を巡って小池氏の排除発言で流れは一転。合流を拒否された民進残党による「立憲民主党」が設立され「希望の党」を凌ぐ人気を博した。勝ち馬を探る野党陣営の離合集散劇の中、全く政策論議に盛り上がりがないまま行われたのが今回の総選挙であった。

 

我が自民党としては野党の混乱に乗じて有利に選挙戦を展開、結果として解散前から6議席を減らしたものの、単独で過半数を大きく上回る284議席を獲得した。連立を組む公明党29議席を合わせると、獲得議席数は313。公示前より減らしたものの、議員定数が10減しているため、与党で2/3を上回る勢力を確保した。

野党第一党となったのは立憲民主党で、55議席を獲得。一方、政権の受け皿となるべく過半数を超える235人を擁立した希望の党は、公示前の57議席にも届かない50議席にとどまった。

 

この結果をどの様に分析するべきか?

自民党の大勝は強く支持されたのではなく、野党の混乱による「漁夫の利」を得た形だ。加えて、得票率と獲得議席数が乖離する小選挙区制度の特性が出た結果でもある。事実、小選挙区で自民党は48%の得票で75%の議席を獲得している。

因みに比例区での得票率は、自民33%で66議席。立憲民主党は20%で37議席、希望の党は17%で32議席となっている。

 

今回に限った話ではないが、絶対多数の議席数=国民の絶対的な支持ではない。むしろ多数の議席を得た今こそ、数におごらず国民の声に耳を傾ける、より慎重な政権運営が求められる。総理をはじめ、閣僚からも「謙虚に」とか「真摯」とかの発言が出ているが、今後も“安倍一強”などと揶揄されることがないよう、与党全体として、責任をもって政権運営を担わなくてはならない。

 

政策に目を移すと、選挙で私が最も力点を置き、訴えたのは「教育の無償化」だ。このコラムでも何度か言及してきたが、幼児教育と高等教育の無償化の手法について選挙中も政府で検討が進んでいる。年末までには“全世代型社会保障”への第一歩として政策方針をまとめなくてはならない。

 

財政の悪化を危惧する財政審議会からは、「高等教育の無償化について対象範囲を絞り込むべき」との意見が出ているが、私は、未来を切り拓く子供たちへの投資は財政再建以上に重要と考えている。

 

もちろん、無償化が大学の経営支援策となることは許されないし、すべての国民が大学へ進学する必要もない。進学を望む者には誰にも門戸を開くべきということだ。その受け皿として、優れた教育を提供できる大学のみが生き残るシステムも必要だろう。早急に説得力ある制度設計を提案しなければならない。

 

選挙が終わって少しはゆっくりしたいと思わない訳ではないが、取りまとめまでに残された時間に余裕はない。有権者の皆さんへの約束を守るためにも、戦闘モードからスイッチ切り替えて公約実現に向けてフル稼働しなければならない。

 

 

 

第48回総選挙にあたり、皆様方の熱い支持のお陰で議席を守り抜くことができました。
厚く御礼申し上げます。
選挙戦で訴えてきた公約の実現にむけ、引き続き邁進してまいります。

解散を受けて

安倍総理は28日召集の臨時国会冒頭で、衆院を解散した。

総選挙は10月10日の公示で、22日に投開票される。

 

総理が国民に「信を問う」主要な項目は、①2019年10月に消費税率10%にした際、国の借金返済分に予定されていた4兆円規模の財源の一部を、子育て支援や教育無償化など「全世代型」社会保障制度に使う使途の変更と、②挑発を強める北朝鮮の安保上の危機対応、「圧力強化路線」について、国民に投げかける2点である。

 

前回のコラムでも言及したが、この時期の解散には多くの疑問が出されており、私もいささか疑問を覚える。

が、解散は総理の専権事項。「国の重要政策を強力に進めるうえで、国民の信任を得たい」と総理が解散を決断した以上、受け入れるしかない。

 

首相が解散を表明した25日には、若狭 勝、細野豪志の両代議士が立ち上げようとしていた新党をめぐって、去就が注目されていた小池東京都知事が、これまでの動きを「リセット」して“希望の党”を立ち上げると発表、自らが代表に就任すると宣言した。

都知事選、都議選に続いて、またまた「小池劇場」の幕が上がったといえる。

 

また、野党第一党の民進党は春先から離党者が出ていたが、代表選が終了してからは離党ドミノが加速し離党者が相次いだ。

このままでは総選挙を戦えないと判断したのか、前原誠司代表は27日、衆院選の党公認候補約200人について公認を取り消し、希望の党に立候補者の公認を申請することを提案した。提案は28日午後の両院議員総会で了承され、野党第一党・民進党は事実上、希望の党に合流することになった。選挙戦の構図は一気に激変した。

 

このほか、日本維新の会は都内での候補者擁立を見送る見返りに、大阪府内での維新の意向を尊重するよう、希望の党との調整に入る見込みと言われている。また、野党4党合意を放棄された共産党の志位和夫委員長は、「希望の党との連携や共闘はしない」と言明し、民進党との協力関係を見直す方針を示した。

 

総選挙を前にしたこれらの一連の野党の離合集散が、国民の目にどの様に受け止められるかは今後経過を見守る必要があるが、いずれにしても、われわれ与党にとって厳しい戦いになることは間違いないだろう。

 

総理が今回の総選挙での最重要政策とした、幼児教育の無償化や高等教育の機会均等・負担軽減は、この2年間、私が最も力を注いできたテーマである。何としてもこの仕事をやり遂げたい。

そのためにも、来るべき戦いに勝ち抜いて、これまでの議論を具体的な政策として実現したいと強く願っている。

「勝利を目指して全力で戦い抜いていく!」。その決意を今新たにしている。