2019年頭所感

明けましておめでとうございます。

昨年は、衆議院永年在職表彰の栄誉を賜りました。身に余る光栄です。これもひとえに長きにわたりご支援いただいた、ふるさと東播磨の皆さまの支えがあったればこそと、改めて感謝申しあげます。

さて、平成を締めくくる年が始まりました。4月には天皇陛下のご譲位に伴い新しい時代の幕が開きます。日本の新時代は、「挑戦の時代」となるでしょう。先の見通せない数々の課題を乗り越え、未来を切り開かなくてはなりません。

これからの数十年、国内では世界が経験したことのない急速な人口減少が進みます。そのなかで、豊かさを持続するためには、IoTや人工知能といった技術革新で生産性を高めるとともに、さらなるイノベーションの創出が必要です。昨年末に成立させた“研究開発力強化法改正法”は、その動きを加速する装置となってくれるはずです。

そして、日本の針路を開くのは、何よりも人材が持つ力です。世界をリードする「価値創造型人材」を育成する教育システムを確立すれば、国内のみならず、各国から人材が集積するでしょう。

一方、世界各地での自国優先主義の台頭が、国際秩序を揺るがしています。平和の礎の上に経済発展を遂げてきた我が国は、今こそ世界協調の要とならなくてはなりません。今夏のG20大阪サミットは公平公正で互いを思いやる新ルールづくりに向けた、試金石となるはずです。

今年も内外ともに課題は山積しています。

新しい国創りの転換点に際し、国家の未来を切り拓いていくためには、国民の政治への信頼が大切です。信頼がなければ、政治はメッセージを正しく伝えることができません。

我々政治家は国民の代表として、その意思を汲み上げ、議論を重ねて国民の皆様にしっかりと説明し、責任をもって政策を実行していきます。

最後になりましたが、引き続き格別のご指導とご鞭撻の程、宜しくお願いします。

2018 年の瀬

平成30年も残すところ一週間。21日には、平成30年度第2次補正予算と平成31年度予算が閣議決定された。来年10月の消費税10%へのスムーズな移行対策(約2兆円)の上乗せにより、当初予算は史上初めて100兆円を超えて101兆4,564億円となった。その中でも国土強靭化対策は色濃く反映され、補正、本予算あわせて約6兆3,900億円が計上されたが、災害列島とされる我が国にあっては当を得たものだと思う。

大阪北部地震に始まり、7月豪雨、台風20号・21号、北海道胆振東部地震、さらには記録的猛暑など、多くの自然災害に見舞われた平成30年。恒例の世相を表す漢字一字は「災(わざわい)」が選ばれた。

政治家も年末にこの一年を表す漢字一字をと、記者から質問を受ける。

安倍総理は「転」。日ロ関係の大きな転機と羽生選手など新しい若い世代への転換を意味。菅官房長官は「成」。働き方改革など、様々な改革を成し遂げたため。何かと話題の多かった片山さつき地方創生相は、一生懸命に「堪」える。桜田五輪担当相は、東京五輪・パラリンピック大会との出「会」い。野党では立憲民主党の福山幹事長と長妻代表代行がそろって「偽」り。共産党の小池書記局長は「破」。といったところだ。

改めて世界のこの一年を振り返ってみると、最も多くの話題を提供したのはやはりアメリカのトランプ大統領か?

米朝首脳会談、鉄鋼とアルミニュウム製品の輸入制限から追加関税を発動。更に在イスラエル米大使館のエルサレム移転、イラン核合意離脱表明、中距離核戦力全廃条約の一方的破棄や、シリアからの米軍撤収等々、通商、外交、軍事にわたって唐突ともいえる政策決定が世界を揺るがせた。

欧州ではメルケル独首相が州議会での連続大敗の責任を取り、2021年任期満了をもって与党党首を退くことを表明。抜群の安定感でEUの重石となってきた「メルケル」時代に幕が下りようとしている。ドイツと共にEUをリードしてきたフランスでも燃料税増税をめぐる不満から、11月にパリで始まった“イエローベスト”デモは、フランス全土に広がっている。マクロン大統領の支持率は23%まで低下している。

イギリスではメイ首相が、EU離脱合意案の議会承認のメドがたたず窮地に陥っている。

拡大を続けてきたEUも転機を迎え、混沌とした状況に陥っている。

アジアに目を向けると、6月に史上初の米朝首脳会談が行われた。その後の進展は一向に見通せないものの、ともかくこの一年間、核やミサイル発射実験はなかった。

中国では習近平主席が独裁体制の強化を図るとともに、南シナ海人工島のミサイル配備、欧州諸国までを取り込む“一帯一路”の推進など、世界にその影響力拡大している。最先端技術の不法なパクリも含め、世界のひんしゅくをかっている。

トランプ大統領の対中貿易赤字(昨年約40兆円)をターゲットにした追加関税と、それに対抗する習主席の報復関税は米中貿易戦争を巻き起こしている。“米中新冷戦”の様相を呈するこの事態は、行方次第で世界経済や国際秩序に大きな影響を与える。

この様な不安定な世界情勢の中で、我が国の政治状況は比較的安定していると言ってよいだろう。秋の自民党総裁選で勝利した安倍総理は、不測の事態起きなければ2021年9月まで政権運営の時間を得た。来年は大阪でG20が開催されるが、議長として世界に対して大いにリーダーシップを発揮して欲しいものだ。

私は、今年も、党政務調査会の科学技術・イノベーション戦略調査会長として、ライフワークである科学技術政策に取り組んできた。臨時国会の会期末12月8日には懸案だった“研究開発力強化法案改正法案”が成立した。

調査会で検討を始めてから約1年半を要したが、我が国の科学技術の未来を切り拓く法案であると確信している。だから私は昨年に続き“拓”を今年の漢字一字に選びたい。

振り返れば様々な思いが脳裏をかすめる年であったが、最後に大きな成果をあげることができ、満足感をもって一年を終われそうだ。

この1年間、何かとお世話になり本当に有難うございました。

来年は新天皇陛下の即位により年号も変わります。新たな時代も、引き続きご指導のほど、宜しくお願い致します。

それでは、来るべき年が皆様にとって輝かしい年でありますように祈念致します。

ムーンショット

前号でも言及したが、通常国会からの懸案だった“研究開発力強化法改正法案”(改称:科学技術・イノベーション創出の活性化に関する法律)。一時は今国会での成立も危ぶまれたが、国対や文部科学委員会、参院の文教科学委員会関係者の尽力もあり、会期末の8日(土)未明にようやく成立した。

 

振り返れば、私が会長を勤めている党政務調査会の科学技術・イノベーション戦略調査会に小委員会を設置し、議論をスタートさせたのは昨年の6月だった。有識者ヒアリングや議論を経て、議員立法として改正案をまとめたのが今年の2月。その後、法案の与党内調整を経て、野党各会派とも協議を重ねて概ね合意を取り付け、通常国会で法案提出一歩手前まで漕ぎつけていた。しかし、会期末の政局優先の与野党の政治的駆け引きにより、審議日程のメドが立たなくなり、今国会まで提案がずれ込んでいた。

 

我が国の科学技術の目覚ましい進歩は、豊かで便利な生活と長寿をもたらしてきた。多くのノーベル賞受賞者も輩出してきた。しかし、近年、日本の科学技術・イノベーション力は明らかに低下しつつある。世界ランキングで見ると2012年5位が2016年には8位に後退。大学ランキングでは2014年までは200位以内が5大学だったが、2015年以降は東大・京大の2校のみとなっている。

 

我が国が激化する一方の国際競争に勝ち抜き、持続的な発展を維持するためには、「イノベーション」の創出・活性化に更に重点を置いた制度改革を急ぎ、産業競争力の低下を食い止めなくてはならない。

 

改正案のポイントは知識・人材・資金の好循環を実現することを目的に、①組織的な産学官連携とベンチャー創出力・成長力の強化、②社会ニーズに的確かつ迅速に応えられる研究開発法人および大学等の体制整備と経営能力の強化、③若手研究者の育成・活躍の促進(研究環境整備や雇用安定)、④日本学術振興会や科学技術振興機構などの5つの研究開発法人への基金創設(個別の法改正によらず資金の柔軟な執行と多様化)、⑤個性豊かで活力に満ちた地方創生などである。

 

この法案の成立によって、政府与党が現在調整中の平成30年度第2次補正予算で、④の公募型基金の設置を促すことができる。基金から事業者への迅速かつ柔軟な資金配分は、新たな政策ニーズに対応した研究開発プログラムの立ち上げや、ハイリスク・ハイインパクトの破壊的イノベーションを目指した研究をもたらすだろう。

 

基金事業で想定しているのは、「何ができるか?」ではなく、「こんなことができたらいいな」という、人類の夢を現実のものとする研究への支援だ。アイデアを幅広く募集して、基礎研究から実現まで、研究段階で可能性を確認しながら絞り込んでいく研究手法(ステージゲート方式)を採用する予定である。失敗するリスクが高く、通常民間では行わないような研究開発を政府が予算措置を講ずることで、イノベーションに繋げていくことができると考えている。

 

このような研究開発の手法を“ムーンショット”と呼ぶ。

ケネディ大統領が「1960年代が終わる前に月面に人類を送り、無事に帰還させる」という目標を、未来から逆算して立てた言葉に由来する。斬新で困難だが実現すれば大きなインパクトをもたらす「壮大な課題、挑戦」を意味する。

今回の法案成立と1月提出予定の補正予算によって、我が国でも“ムーンショット”の形が整うだろう。会期内に改正法案を成立させることができて、胸をなでおろしている。

 

今国会の最重要法案だった“出入国管理法改正案”も同じく8日の朝方に成立し、予定通り本日10日に臨時国会の幕を閉じる。今年も残すところ、あと3週間。間もなく新しい年がやって来る。1年が過ぎるのが本当に早いと感じる今日この頃である。

政局より政策を!

10月24日に召集された第197回臨時国会もすでに会期の2/3が経過し、残りは2週間余となった。

しかし、災害対策費を中心とする補正予算こそ全会一致で成立したものの、最重要法案と位置づけられている外国人労働者の受け入れ拡大に伴い、新しい資格を設ける“出入国管理法改正案”の審議は難航している。

法務省が提示した「失踪した外国人実習生に関する調査結果」において、当初は失踪理由の約87%が「より高い賃金をもとめて」としていたが、実際はそのような質問項目はなく、最多の理由は「低賃金のため」の67%であることが判明するといった政府の対応の不備も響いている。

 

新たな外国人材の受け入れ制度については、「労働力確保のために必要」という観点から、各種世論調査でも概ね賛成意見が多い。半面、「家族を含めた社会保険の取り扱い」など議論すべき課題があり、必ずしも今国会で成立させる必要はないとの意見も多い。

そんな世論を意識してか野党は徹底抗戦する構えで、立憲民主党は16日に「野党欠席のまま一般質疑を進めた強引な委員会運営」と称して、葉梨康弘法務委員長の解任決議案を早々と提出した。

 

私はこのような時間を浪費するのみの決議案提出には疑問を持っている。現在の与野党の議席数からすれば成立しないのは明白で、19日の本会議であっさり否決された。この結果、一時不再議の原則により、葉梨委員長は今国会で再度解任を問われることはない。

 

法務委員長は早速、定例日以外の22日にも職権で審議を開会、参考人質疑は行なわれたが、審議は野党が欠席したまま空回りであった。また、週明けの26日も審議を行う予定だが、おそらく野党は出席しないのではと予想されている。

十分な審議時間が必要だと主張している一方で審議を拒否する野党の対応には、いささか違和感を覚えざるを得ない。が、この間の政府側の説明も充分とは言えない。欧州や米国で移民排斥的な運動が起こるなか、外国人の受入については国民の間にも不安点は多いと思われる。政府はより緻密な制度設計を急ぎ、丁寧な説明を心がけてもらいたい。

 

改正法案を12月10日までの会期内で成立させるためには、総理がブエノスアイレスでのG20首脳会議に出発する前の28日には、参院本会議で総理出席の質疑を行なう必要がある。参院での質疑を始めるには、それまでに衆院本会議で成立させなくてはならない。一方の野党は、それを阻止すべく山下貴司法務大臣の不信任案決議案の提出なども視野に入れて徹底抗戦する構えだ。

 

こういった国会情勢は、他の法案や条約承認議案の審議に悪影響を及ぼしている。私が会長を勤める党の科学技術・イノベーション戦略調査会が中心になってまとめた“研究開発力強化法改正法案”もその一つだ。想定していた今国会での成立が危機に瀕している。

 

この法案は日本をイノベーションに適した国にするために必要かつ緊急性の高い法案であり、これまで各党各会派に充分な説明を行ない賛同も得ていた。文部科学委員会の審議日程もほぼ合意されていたが、出入国管理法改正法案審議のあおりで、野党の態度が一転したらしい。共産党を除く全会派が提案者に加わることに同意しているにもかかわらず、委員会での審議の目途が立たない。

 

オープンな政策論議よりも政局を優先する。正に「国対政治」。全く理解に苦しむ。

このような旧態依然とした国会に対して、小泉進次郎議員をはじめ若手議員中心に改革議論が盛んに行われている。私もかつて、政治改革のために同志とともに決起した日があったが、今は若手の思い切った改革案に期待している。

アメリカ国民の選択

先週火曜日に行なわれたアメリカ中間選挙、下院で野党民主党が8年ぶりに過半数を獲得した。共和党が終盤になって追い上げたが、開票の結果は当初の予想通りとなった。

上院では、改選議席数が少なかった(3分の1の35議席が改選)こともあって共和党が過半数を維持したので、米国連邦議会は上下両院で多数派が異なる“ねじれ議会”となった。

詳細な分析は時間の経過とともに明らかになるだろうが、ある意味、本音の「アメリカファースト」と建前の「グローバリズム」、分断か融和かの選択選挙であったのかもしれない。

民主党健闘の原動力になったのは、トランプ大統領の不寛容で強引な政治手法に対して、ピンクウエーヴと称される女性と若者が投票行動を起こしたこと。民主党女性候補の躍進が目立ったのも今回の選挙の特徴だ。

ただ、オバマ前大統領時の中間選挙で民主党が60程度の議席を失ったように、中間選挙は与党にとって常に厳しい戦いを余儀なくされる。その中で議席減が限定的であったということは、コアなトランプ支持者も多いということだろう。マスメディアと民主党の執拗な攻撃のなか善戦したとの評価もある。

民主党が多数となった下院では、今後、あらゆる議会調査権を発動してトランプ大統領の疑惑追及が予想される。大統領罷免につながる弾劾手続きの発議も可能だ。

我が国のような党議拘束はなく、激しいロビー活動が行なわれることもあり、議員数と投票結果が常に一致するわけではないが、ねじれ国会がトランプ氏の公約実現に必要な法案成立の支障となることは間違いない。特に予算関連法案は野党の厳しい反発が予想される。

2019年会計年度(2018年10月~2019年9月)連邦予算の一部はまだ手当できておらず、歳出法案が可決されなければ政府機関の一部が閉鎖に追い込まれる。また、不法移民対策の「メキシコ国境の壁」や、医療保険制度改革法(オバマケア)の改廃、中間所得層向け減税などの実現も見通せなくなった。

一方、あまり論じられていないが、中間選挙と同時に行なわれた州知事選では、改選36州のうち18州で勝利し、非改選州をあわせると民主党を上回っている。内政面で広範な権限を有する州知事の過半を押さえたことは、大統領再選に向けて有利な要因となるだろう。

こういった要素も踏まえると、トランプ大統領にとっては今回の選挙結果は想定内で、2年後の再選に向けての政権運営も、引き続き強硬姿勢で臨むのではないかと思う。

日本との関係も特に大きな変化はないと考えられる。

年明けにはTAG(物品貿易協定)交渉が始まる。米国側は厳しい主張を繰り返すだろうが、自動車・農業分野でTPPの交渉範囲を逸脱して我が国が譲歩することはあり得ない。日本はこれまで通り原則を貫いて交渉に当たる必要がある。

我が国の国会では平成30年度補正予算も成立し、いよいよ最大の焦点である「入国管理法改正」の審議がスタートする。就労人口減少に伴う深刻な人手不足の解消は喫緊の課題。社会ニーズに応えるために、政治が一歩を踏み出さなければならない分野である。

これまで「単純労働者としての外国人は受け入れない」との方針を一部修正して、限定的ではあるが農業や建設業といった14業種の受け入れが検討されている。在留資格に応じて、滞在期間や家族同伴などに差も設けられている。滞在期間の延長は永住権の取得につながり、不安要素として治安、文化摩擦、応分の財政負担(就学・教育、社会保険)なども課題となってくる。

山下貴司法務大臣には、検察官を経験した法曹専門家として抜擢された期待に応え、国民の疑問や不安の解消に全力を尽くして欲しい。

TGA:Trade  Agreement  on  goods(複数国の間でモノの輸出入にかかる関税の引き下げや撤廃について定める協定)

未来への責任

朝夕は冷気を肌に感じるほどに秋が深まった10月24日、第197回臨時国会が開幕した。

今国会では度重なった自然災害の復旧・復興と学校の緊急重点安全確保(ブロック塀対応等)をメインに組まれた平成30年度第1次補正予算案(9400億円)や、政府が来年4月に導入を目指す外国人労働者の受け入れ拡大にむけた出入国管理法改正など、合計13本の法案提出が予定されている。

更には安倍総理が、憲法審査会に政党としての具体的な憲法改正案を示し、国民の理解を深める努力を重ねていく考えを改めた表明したことで、大きな争点が生まれるかもしれない。

 

対して野党は、今国会においても“モリカケ”問題を追及する構えを崩していない。加えて、先の内閣改造で新任された閣僚の資質をターゲットに、その答弁能力や週刊誌などで報道されているスキャンダルについても追及する構えだ。いつもの事ながら、国会が政策議論よりスキャンダル追及の場になることは悩ましい限りである。

 

会期は12月10日までの48日間だが、安倍総理は11月中旬からシンガポールでのASEAN関連首脳会議を皮きりに訪豪の後、パプアニューギニアのAPEC、月末にはアルゼンチンでのG20と外交日程が立て込み、審議日程はかなりタイトなものにならざるを得ない。

24日の所信表明演説翌日には日中首脳会談に臨むため、総理は慌ただしく中国へ出発した。衆院本会議での代表質問は29日から3日間。本格的な論戦は11月1日からの予算委員会となるが、内外ともに課題が山積している中で是非実り多い国会議論となって欲しいものだ。

 

さて、総裁選後の一連の人事で、私は引き続き政務調査会の科学技術イノベーション戦略調査会長に再任された。科学技術政策は、これまでからライフワークとして取り組んできた分野だ。この四半世紀の間、日本の科学技術力は世界でも優位を保ち、我が国の発展に寄与してきたと自負している。しかし、ここ数年、国際競争力が低下する兆候を見せていることに強い危機感を覚えている。

 

一例を挙げれば、世界の研究者に影響を及ぼす被引用学術論文件数の世界シェアだ。20年前には4位(5.8%)だったのが、直近の2014~16年には9位(2.9%)とランクが下がり、イノベーションを生み出す基礎的な力が弱まっていると言わざるを得ない。

 

そこでこの度、日本の科学技術分野における諸課題について改めて現状分析をおこなうとともに、競争力回復の有効な処方箋を提案するために「基本問題小委員会」を設置することにした。小委員長には私と同じ危機感を持っておられ、自ら就任を買って出られた船田 元・衆議院議員にお願いすることになった。来年6月の骨太方針(経済財政運営と改革の基本方針)に向け提言を取りまとめる予定である。

 

現状を放置すれば、日本の科学技術分野における競争力が低下することは避けられない。私が懸念するのは研究成果の早期実用化を求める昨今の兆候だ。

この秋ノーベル生理学・医学賞を受賞された本庶先生が、がん免疫療法の原理を発見したのは1990年代初頭のこと、その成果が“オプジーボ”として製品化されたのは2014年である。このように研究成果が商品化されるまでには長い年月が必要となる。にもかかわらず、民間企業や政府(主に財務省)は短期の資金回収を求め、製品化が近い研究段階に力を注ぎがちだ。対して大学側は長期持続的な研究の必要性を主張されているが、それぞれ一方通行で言い放し、全く噛み合っていないのが実情である。

 

様々な意見や考えを俯瞰的に分析し、未来につながる正しい処方箋を見つけ出すのが我々政治の役割だ。今なら、まだ間に合う。単なる意見調整や利害調整に終わることなく、総合的な判断により日本の進むべき道標を提案する。それが、いま果たすべき“未来への責任”だと考えている。

地域の絆

数度にわたる台風の襲来や地震、集中豪雨といった自然災害の夏、そして猛暑の夏を経て、今年もまた播州路に秋が訪れた。秋祭りは数多の障害を乗り越えて無事収穫に至った感謝と奉納、そして苦しい労働の一区切りへの喜びとして行われる。ふるさと播磨地方の秋は、鎮守のお社ごとに壮麗な神輿屋台を繰り出して、町中が老若男女を問わず大いに盛り上がる。

 

最近の秋祭りは土日に催される地域が多くなってきているが、我がふるさと曽根天満宮の秋季大祭は菅原道真公が当地に来訪された10月13、14日に行うものと決まっている。

その13、14日が今年は土曜、日曜で、しかも素晴らしい天気に恵まれた。このため両日の境内は人で溢れ、「ヨ―イヤサー」の掛け声とともに各屋台が勇壮に練り合わされ、祭りは最高潮に達した。

 

総裁選が終わり、第4次安倍改造内閣が発足して早や2週間。

総理は、東京一極集中の是正や人口、雇用減に歯止めをかけるべく5年目に入る地方創生の旗を、内閣として引き続き更に高く揚げていくと宣言した。

 

地方の活性化、地方人口増大の第一条件は、若者の地方定住である。そのために、都市から地方への移住促進が重要であることは論を俟たないが、その実現は一筋縄では行かない。第一に高卒時に大学進学のために都市圏に向かう。第二は大学卒業後に故郷へ帰ろうとしても雇用が不安定、第三には生活環境が都市に比べて見劣る。ITを活用したリモート勤務が可能となったとしても、商業や医療、教育といった生活基盤に不安が残りふるさとに帰ることをためらうことが多々あるようだ。

 

選挙区の秋祭りをハシゴ?して改めて実感したことは、「秋祭り」が“地域の絆の要”であり“ふるさと意識の原点”であるということ。私の地元である曽根天満宮も平安の頃から数百年の歴史を有する。今のような祭りの形態は氏子である住民が長年にわたり育て上げてきたもので、地域の宝であり誇りでもある。

 

私が屋台を担いでいた今から40~50年前には秋祭りも下火で、宮入りする屋台は6台しかなかった。夜になると提灯に火を灯し屋台を仄かに浮かび上がらせて先導する、今のようなイルミネーションで飾られた煌びやかさもなかった。それが現在では大人屋台が11台を数え、そのままスケールダウンした子供屋台も4台ある。

 

播州の他の地域のいろいろな秋祭りを見ても年々盛んになっているようだ。遠方に巣立った若者たちもこの季節になると、ふるさとの秋祭り参加するために帰省する。これらの秋祭りが続いていく限り、歴史や伝統が親から子、子から孫へと連綿と引き継がれ、地域の絆は守られていくことだろう。

 

地域創生のためにも、歴史あるふるさとの宝“秋祭り”を次の世代にしっかりと引き継ぎ、さらに繁栄させていきたいものだと改めて実感した、今年の秋祭りだった。

 

闘い済んで

自民党総裁選は20日の投開票で、安倍晋三総裁が3選を果たした。

今回の総裁選は、竹下派を除く派閥(細田、麻生、岸田、二階、石原)が首相支持を表明していたため、国会議員票の趨勢は選挙前から決まっていた。だから、総裁選の関心はもっぱら安倍、石破両候補がどれだけ党員票(約104万票)を獲得するかに焦点が絞られていた。

 

フタを開けてみると、安倍候補が329票の議員票と党員票224票(55.3%)で計553票(69.3%)を獲得し、石破候補はそれぞれ73票と181票(44.6%)で計254票(31.5%)の得票だった。

現職の総理に挑戦する石破氏の前評判は、議員票(50票)と党員票(150票)合計で200票以上獲れれば上出来と言われ、そのラインが政治家として今後の展望が開けるかの分岐点とも言われていた。石破氏が獲得した254票は、善戦どころか“大健闘”だ。

 

私はこの大健闘の背景には二つの要因があると思う。

一つは、一国一城の主と言われる国会議員に対して“安倍支持”の誓約書の提出を求めるなど、過剰なまでの締め付け。いま一つは、永田町の論理と(国民世論に近い)地方党員の意識とのズレだ。私も神戸、銀座、最終日の渋谷と、石破氏の街頭遊説に同行したが、国民に向けた思いを込めた石破候補の演説に、道行く人々の多くが足を止め熱心に聴き入る姿にいささか驚いた。

 

合計票の数字だけを見れば安倍候補がダブルスコアで、前回以上の大勝を飾ったようにも見えるが、中身を考えると必ずしも圧勝とは言えないだろう。安倍総裁には党員票(政治不信≒安倍不信)に表れた民意を重く受け止めていただき、選挙中に言及されていた言葉どおり「謙虚で丁寧な政権運営」を心掛けて欲しい。

 

一方、石破氏にとってはこれからの活動が重要である。

選挙後の打ち上げ会で締めの挨拶を求められたので、「石破さんをはじめとする水月会の皆さんのこれからの政治行動が大変重要である。特に、総裁選討論会で主張された政策の方向性に関する、より具体的な方策を派内で議論し、政策集団としての存在感を高めて欲しいと思う」と、改めての期待を込めて直言しておいた。

 

さらに私見だが、石破陣営は二度続けて国会議員票での大差が勝敗の決め手となったことに留意する必要がある。議員票の総数は前回より大幅に増加(198→405票)している。にもかかわらず、前回決戦投票で石破氏が獲得した議員票89票に対して、73票という結果はいただけない。各派閥の締め付けがあったとは言え、議員への支持拡大が叶わなかったことは、いわゆる「石破アレルギー」といわれる感情が一部の議員に根付いていることも要因だろう。

 

今は、まず当面の人事において問われたこと以上の余計な主張をしないこと。それよりも、自分の政策の具体性をより高め、幅広く党内の議員に呼びかけて志を同じくする仲間(必ずしも派閥の拡大ということではない)を増やす努力をしなければならない

 

大きな事変がなければ、これからの3年間は安倍政権が続くことになる。しかし、政界は「一寸先は闇」である。盟友石破氏には、いつでも次の挑戦に臨めるよう、志を新たに目標に向かって突き進んで欲しい。

 

 

 

この秋3度目の大型台風の襲来となった。

進路にお住いの方々は早めの避難を心がけていただきたい。

 

 

 

 

国民の声は?

7日から始まった自民党総裁選は、直前に発生した北海道胆振地震の被災地に配慮して安倍晋三、石破茂両陣営とも3日間運動を自粛。実質的に選挙戦がスタートしたのは、10日に党本部ホールで行われた所見発表演説会と共同記者会見からとなった。

 

安倍候補は、政権奪還後に自身が取り組んだ“アベノミクス”の成果を強調し、その継続性とともに、昨年の総選挙で掲げた政策の完遂に全力を尽くすと訴えた。また外交・安全保障政策では拉致問題解決への強い決意を表明するとともに、憲法改正については自衛隊の明記を改めて呼び掛けた。

 

一方、石破候補は“経済再生”と“社会保障改革”を成し遂げると訴えた。経済再生については、地方創生が核になり、地方の成長力を引き出すための司令塔を政府内に設置するとし、すべての人が安心して暮らせる社会保障づくりにも強い意欲を示した。また、大規模自然災害に対して平時から万全の対策を講じるための「防災省」の設置も提案した。

 

ただこの会見の直後、安倍総理は東方経済フォーラム出席のためウラジオストックに向け出発。両候補による本格的な論戦再開は、総理帰国後の14日に行われた日本記者クラブ主催の討論会と自民党青年局・女性局主催の公開討論会を待つことになった。

 

結局、総裁選恒例の地方演説会は15日以降となり、しかも京都市(近畿ブロック)、佐賀市(九州ブロック)、津市(東海ブロック)、仙台市(東北ブロック)の4カ所のみとなった。

前回の総裁選では全国17カ所、前々回は18カ所で候補者が街頭に立った。今回の4カ所のみというのは極めて少ない。当初8日に予定されていた東京での演説会も最終的に見送られ、過去に例を見ない論戦の少ない総裁選となった。

 

既にこのコラムでも言及したように、私は石破候補を支援し推薦人にも名を連ねている。石破陣営は首都圏での合同演説会が中止されたため、連休最後の祝日となった17日(月)に銀座三越前で単独の街頭演説会を執り行った。中央通りが歩行者天国となる休日の銀座で、多くの方々が石破候補の訴えに足を止め、耳を傾けていただけた。

 

自民党の総裁選は日本国の総理に直結する選挙である。総裁選を通じて多くの国民に直接訴えることは、政治への関心を高める上で大いに意味がある。国政選挙における政権公約と同じく、総裁選での主張は選挙後の政権運営に直結するものであり、各候補の訴えは我が国の将来を左右する、すなわち国民生活に大きな影響を与えるものである。

 

総裁選を揶揄して、「永田町の論理」とか「コップの中の嵐」とか言われることがある。もちろん、総裁選の投票権は党所属国会議員と党員にしかない。国会議員票は確かに「永田町の論理」で決するのかもしれない。しかし、党員票に国民の声がより反映されると言っても良いのではないだろうか。

 

私は平成26年に党・政治制度改革実行本部長として総裁公選規程を改定し、国会議員票と地方の党員票を同数にした。この改革には総裁選に国民の声がより反映されるようにという、願いが込められている。

だからこそ総裁選では、広く国民に呼びかける機会を十分に確保する必要があると考えていた。今回の街頭演説会の減少は非常に残念だが、数少ない機会を利用した両候補の訴えが、しっかりと国民に届き、政治不信の解消に繋がることを心から期待している。

 

いづれにしても結果は明日、判明する。

総裁選の争点は

このところ世界各地から地球規模の異常気象が報告されている。我が国でも猛暑による熱中症被害が後を絶たず、また、西日本を襲った7月豪雨をはじめ、毎週のようにゲリラ豪雨による水害が報じられる。

台風の数も異常だ。8月の発生数は平年の5割増しの9個となった。23日に私の地元を直撃した20号に続き、4日頃には21号が列島を縦断しそうだ。このような日本の亜熱帯化は、今後も続きそうな気配である。

 

いにしえの世から治山・治水は国家の最重要事項である。

先週出そろった各省庁の概算要求の中でも国土交通省は、水害対策(5,273億円)、土砂災害対策(958億円)、輸送ルート維持(4,156億円)など、防災にかかわる予算の大幅な増額を要求している。また、自治体による防災の取り組みなどを支援する防災・安全交付金も21%増の1兆3,431億円を要求した。

 

6年ぶりに行なわれる自民党総裁選でも、防災に関する政策は重要な争点になりそうだ。

すでに立候補を表明している石破茂元幹事長は、政策の柱の一つとして政府の司令塔機能充実を図る“防災省創設”を掲げ、防災立国で国民の生命・財産を守ると主張している。

これに対して安倍普三総理がどの様に受けて立つのか?選挙戦での議論に注目したい。

 

もう一人、初の女性総理を志し、「最後まで諦めずに努力する!」と言っていた野田聖子総務相がついに総裁選出馬を断念。今回の選挙は安倍普三VS石破茂の一騎打ちとなることが確定した。

 

日程は9月7日告示、20日投開票と決定しているが、両陣営とも選対本部を発足させ選挙戦は実質的に火蓋が切られたと言ってよい状況だ。選挙期間中のスケジュールは、総理のロシア訪問に配慮して10日~14日を除いて、街頭演説会は8,15,16日。日本記者クラブ主催の討論会に加えて青年局などが主催する討論会も9日に設定されている。

 

前号で言及したように、今回の総裁選は国会議員票405票と党員党友の投票結果をドント式で割り振った405票の合計票で争われるが、今回は候補者が二人なので一回目の投票で当選者が決定する。

 

すでに報道されているように、党内各派閥の支持動向は確定し国会議員票の大勢は決した。となると選挙の関心は党員票の行方である。両陣営とも党員票獲得のために地方における様々な活動に時間を割いている。

石破候補は政策スローガンの中心に地方創生戦略を据えてポストアベノミクスを地方から展開すると主張している。安倍総理も地方を意識して鹿児島を立候補表明の地に選んだ。

 

4年前、国民政党としての自民党再生を意図して総裁選規程改正をおこなったが、今回の選挙で狙いどおりの成果が確認できるだろう。国民に開かれた自民党への理解が、より一層深まるような政策議論が展開されることを強く願っている。