六甲おろし

今国会も終盤をむかえ、衆議院では政府提出法案の処理はほぼ終了した。先週の本会議も超党派による議員立法6本の採択と同意人事案件などで、木曜日だけの開催となった。
そのような状況下であるが、丸山穂高議員が、国後島ビザなし訪問参加中に発言した内容や不品行に対しする“糾弾決議案”の審議も同日行なわれた。
審議と言っても与野党調整済みなので淡々と採決するだけなのだが、この採決の際に我が党の小泉進次郎議員が欠席した。

私は採決終了後に自席に着席する小泉氏の姿を偶然目にして、「アレッ」と思ったのだが、その時は正直あまり気にも留めなかった。夜のニュースを観て、小泉氏が自身の考えに基づき棄権したことを知った。
彼の主張は、「議員の出処進退は一人ひとりが判断すべきことであり、本人が辞めないと言っている以上、決議に実効性もなく、茶番にすぎない。辞めなかった時にどうするかを判断するのは選挙であり、決議案を可決しても問題の決着とはならない」というもの。
これに対して一部議員からは「造反」との声もあがっているのだが、・・・。私は、今回のような案件は党議拘束になじむものではなく、「造反」は言いすぎだと思う。むしろ小泉氏の言動にはシンパシーさえ覚える。

話は変わるが、今シーズンの我が阪神タイガース、当初の予想を大きく裏切り?今のところ絶好調である!
シーズン初めこそ躓いたが、5月は15勝9敗1分と大きく勝ち越した。6月からはセパ交流戦が始まったが、日曜日の日ハム戦が終わった時点で32勝27敗2分の貯金が5。予想通り首位を走っている広島カープに3ゲーム差3位と健闘している。

こういう展開になると、毎試合の結果がとても気になるのが阪神ファン。私もこのところ日々野球中継を楽しんでいる。ここ数年、球場に足を運ぶのは多くてもせいぜい1~2回だったが、今年は、甲子園、神宮、東京ドームと、すでに3回も球場に足を運んだ。しかも、3試合とも勝利ゲームとなり、大いに“六甲おろし”を楽しませて頂いている。
“六甲おろし”はラッキーセブンと試合終了後だけだと思っていたが、最近は得点するたびに歌うようで、一試合のうちに何回も盛り上がる。
タイガース戦の観戦チケットは外野応援席から売り切れるそうだ。甲子園のライトスタンドはもとより、神宮でも東京ドームでもレフトスタンドはタイガースカラー黄色一色である。

試合が終わったスタンドでゴミ拾いをするファンの姿もお馴染みの光景となっている。
そう言えば、ワールドカップのサッカー日本代表試合でも同じような光景が全世界に報道され、世界中のサッカーファンを驚かせ話題になったのも記憶に新しい。案外、ゴミ拾いのルーツは阪神ファンクラブかもしれない

参議院選挙が終わったら時間を見つけて、もう一回はタイガースの応援に馳せ参じたいと考えている。いまの私にとっては野球観戦が最も有効なストレス解消の手段であり、加えてタイガースの勝利は何よりの良薬(負けが続き、返ってストレスが貯まることもあるのだが・・・)であることは間違いない。どうか、今の絶好調をシーズン終了まで維持して欲しい。

衆参同日選挙はあるのか?

このところ永田町で、衆院の解散総選挙を巡る様々な発言が続き物議をかもしている。以前にこのコラムでも言及したが、ことの発端は4月18日のインターネット番組での自民党幹事長代行・萩生田光一氏の消費増税に関しての発言だ。

萩生田氏は「景気が腰折れしたら何の為の増税か!この先危ないとなれば違う展開はあり得る」と述べ、景気動向次第では10月に予定されている消費増税を先送りする可能性を示唆し、さらに「消費増税を延期するとなれば、国民に信を問うことになる」と続けた。
翌日には自身の発言について「個人の見解であり、政府の方針に異議を唱えるつもりはない」と釈明したのだが…。

その後、北京訪問中の二階俊博幹事長が同行記者団から「衆参同日選」について問われ、「国民に信を問わなければならない差し迫ったテーマはいまのところない」と慎重な姿勢を示したが、「いつ選挙があってもおかしくないのが衆議院議員の宿命だ」とも述べた。

連休に入って解散風はやや納まったかにも見えたが、改元の前日30日に麻生副総理が安倍総理の私邸を訪ねて約2時間にわたって会談したことが、新たな憶測を呼ぶことになる。平成29年9月の衆院解散前にも会談があった。二人が長時間話をすると重要な決定が行われることが少なくない。
今回の話題は、表向きは「連休明けの国会対策や参院選の情勢」だったとされている。その一方で、麻生氏は「10月に消費税を10%に引き上げた後や、来年のオリンピック・パラリンピックの後は、景気が落ち込むと予想される。衆院選をやるなら今年の7月以外に無い」と進言したとの声も聞こえている。

それでも連休直後は、それほど強い風が吹いているとは思わなかったが、5月の半ば以降解散総選挙に関する発言がますます増えている。解散を煽っているのではないかとさえ思えるメディアの報道も相まって、風力が徐々に強まっているようにも思える。
13日には二階幹事長が「衆参同一選をやりたくてしょうがない訳ではないが、首相が判断すれば党として全面的にバックアップして対応していく用意はある」と発言。更に17日の記者会見で菅官房長官が、内閣不信任案の提出が衆院解散の大義になるかどうかを問われて「当然なるんじゃないでしょうか」と答えた。翌日には、甘利選対委員長が官房長官発言について「理屈の上では成り得るが、衆院解散の可能性は低いというのが真意だと思う」と火消しに動いてはいたが…。
20日には再び二階幹事長が「近頃、衆院解散の風が吹きかけているように思う」と語り、その後も与野党幹部の発言が相次いでいる。加えて先日トランプ大統領が発した「7月の選挙後(July elections)」という選挙を複数にしたツイートまでもが憶測を呼んでいる。

とかく解散の理由(大義)は何かが取りざたされているが、その根底となるのは政策の争点だ。これまでの経済政策や政権運営、外交政策、また今回は憲法改正なども争点にはなるが、一番取り上げられ易いのは消費増税の要否だ。すでに、我が党の中からも景気の弱含みを懸念して延期の声があがり始めている。

予てより私は消費増税を争点として選挙を行うべきではないと考えている。少子高齢社会に突入した我が国にあって、長期にわたり増大を続ける社会保障費を賄うには、広く浅く課税でき、安定した税収が得られる消費税に依存せざるを得ないからだ。法人税や所得税では年度間の変動が大きすぎるのだ。これ以上の消費増税の延期は、今を生きる我々の税負担を将来の子どもや孫たちに押し付けることになり、政治的選択としてやってはいけないことだ。

地元の会合でも有権者の皆さんの関心は、解散についての話題に集中している。
私は今のタイミングでの解散は無い(やるべきではない)と思っているが、問われれば「総理に聞いてください」と苦笑しながら応じている。ただ永田町界隈では、「このような生煮えの状況が続くなら、いっそ選挙になった方がよい」という声も出始めている。

客観的に見て、現時点での衆参ダブル選の可能性は5割に満たないだろうが、解散風は一度吹き出すと容易に止まらない傾向がある。6月26日の会期末までの一カ月は政局から目が離せない。
政界は一寸先闇。常在戦場は衆議院議員の宿命でもある。日々緊張感を持って臨みたい。

象徴天皇制

御代替りで10連休となった今年のゴールデンウィーク。
4月30日の「退位礼正殿の儀」で平成が静かに幕を閉じ、つづく5月1日、古式にのっとった「剣璽等承継の儀」により、徳仁皇太子殿下が第126代天皇に即位され令和が始まった。新天皇はその後「即位後朝見の儀」に臨まれ、即位後初めて三権の長ら国民の代表を前にお言葉を述べられた。

4日には皇居一般参賀が執り行われた。全国的に晴天に恵まれたこの日の日本列島、東京では日中25℃を超える夏日となったが、14万人以上の国民が参賀に訪れ、皇居周辺は祝賀のムードにあふれた。
9日の衆院本会議でも、即位に際し「天皇皇后両陛下のいよいよのご清祥と令和の御代の末永き弥栄(いやさか)」を祈念する内容の賀詞奉呈を、全会一致で議決した。

今回の一般参賀で私が最も注目したのは、若い世代の参列者が目立ったことだ。皇室への崇敬の念は年配者に多いものと思っていたが、必ずしもそうではないようである。
ある報道によると、先帝が即位された1989年の世論調査では、「皇室に親しみを持っている」とする回答は54%だったが、直近の調査では76%なっている。

上皇上皇后両陛下の平成の御代30年間にわたり国民に寄り添った活動や、いかなる時も国民と苦楽を共にされたお姿が、親しみを以って広く国民に届いた結果だと思う。
新天皇皇后両陛下がこの道を引き継ぎ、令和流の皇室像、新しい時代の象徴像を国民とともに作り上げられることが期待される。

その一方で、皇室は「皇族数が減少するなかで、いかにしてご公務の質と量を維持し、また、安定した皇位の継承を実現していくか」という大きな課題に直面している。

今回の皇位継承は、平成29年に成立した“陛下一代限りの退位を容認する”特例法によるもので、終身在位を定めた明治以降では初めて。約200年ぶりのご退位が実現した。
この結果、現時点で皇位継承権のある皇族は、53歳の秋篠宮さま、12歳の悠仁さま、83歳の常陸宮さまの3名である。未婚の女性皇族は6名いらっしゃるが、現行ルールではご結婚とともに皇族の身分を離れられることとなる。

今上陛下と皇位継承1位の「皇嗣」秋篠宮さまとの年齢差はわずか5歳。今回同様、陛下がご高齢で退位される事態が生じた場合、秋篠宮さまもすでにご高齢になっておられる。
皇室典範による男系男子による継承を貫こうとすれば、継承2位の悠仁さま、そしてそのお妃さまのご負担は非常に重くなるだろう。

今回の特例法を審議した衆参両院は、一連の皇位継承の儀式終了後に、安定的な皇位継承確保の在り方や皇族数の減少への対応について、政府に対して速やかな検討を求める付帯決議を行っている。
日本国民に浸透し、幅広く受け入れられている“象徴天皇制”を、より安定的に確固たるものにするためにも、国民的な議論を進めることは避けられない政治課題である。

平成から令和へ

今年の統一地方選挙の後半戦、全国218の首長選(市町村長、特別区長)と689の地方議会選(市町村議会、区議会)、あわせて907の投開票が4月21日に行なわれた。

平成28年4月の“女性活躍推進法”成立後はじめての統一地方選で、女性候補の進出が注目されていた。市長選でみると24人の女性候補が立候補し、無投票も含め過去最多の6人が当選した。兵庫県芦屋市では女性候補同士の熱い戦いも繰り広げられた。

前半戦の道府県議選で当選した女性候補は237人で、4年前の207人を超えて過去最多で割合も10.4%とこれまでで最も高い。また、市議選の当選者数においても過去最多の平成15年の1,233人をオーバーし、1,239人となっている。
列国議会同盟が発表した2018年レポート(一院制又は下院)によると、我が国の女性国会議員比率(衆院)は10.2%で、193カ国中165位。女性議員が増加傾向にあるものの、まだまだ道半ばと言えよう。

一方、同日に行なわれた大阪12区と沖縄3区の衆院補欠選挙では、メディアの事前予想では与党候補の苦戦が伝えられていたが、双方とも予想通りの結果に終わった。
大阪は府市統合をめぐる維新旋風、沖縄では基地問題という特有の事情があったとは言え、我が自民党にとっては痛い敗北である。特に大阪は、自民党議員の死去に伴う「弔い戦」であっただけに残念な結果となった。

野党第一党の立憲民主党・枝野幸男代表は、衆参ダブル選挙を想定し、参院のみならず、衆院の候補者についても野党統一候補の擁立を調整すると言及し、野党各党代表と協議をスタートさせた。また、26日には自由党が解党し、国民民主党に合流することが決定した。国政選挙にむけて野党の動きが一段と加速してきている。

先日、萩生田光一幹事長代行が10月の消費税引き上げとからめて、「(延期する場合は)国民の了解を得ないといけない。信を問うことになる」と発言をしたように、自民党の一部にもダブル選挙を主張する意見もあるようだ
しかし、すでに税率UPを前提に平成31年度予算が組まれ、様々な準備作業が進行している。「リーマンショック級の出来事が起こらない限り、消費税UPの延期はあり得ない」との政府見解は揺るがしてはいけない。

「解散は勝てると思う時にやるものだ。理由は後から考えればよい」と言われた元総理がいたが、あまりに党利党略で国民を馬鹿にした話だ。
加えて、中選挙区時代と違って小選挙区で行なわれる今の選挙制度の下では事情が全く違う。「政権交代。」のスローガンで闘った民主党に風が吹いて、自公連立政権が大敗を喫した平成21年の総選挙の悪夢を思い起こすべきだ。

いよいよ27日からゴールデンウィークが始まった。今年は天皇陛下の御代替わりもあり10日間の大型連休となる。テレビでも多くの特別番組が放映され奉祝ムードが盛り上がっている。ゴールデンウィーク恒例の民族大移動も今年は長期滞在型が多いようだ。

国会ではこの連休を利用して海外に出かける議員も多いが、今年は日本にとって時代が変わる節目の時期。私は国内にとどまり新しい時代に想いを馳せたいと思う。
「令和」が素晴らしい時代となりますように・・・。

野党再編は?

今年は12年に一度の統一地方選と参院選が重なる亥年の選挙イヤー。国会審議日程が非常にタイトとなるので政府は提出法案を絞り、加えて対決法案も避けた。その効果で国会は極めて平穏に推移していたが、ここにきて場外での失言に起因する閣僚の辞任、更迭騒ぎが続き、安倍政権は対応に追われている。
この状況に、統一地方選前半戦、大阪の維新以外はもう一つ振るわなかった野党各党が、にわかに勢いづいている。

閣僚の辞任ドミノとも言える光景は、ちょうど12年前の選挙イヤーでも見られた。
当時の第一次安倍政権は、相次ぐ閣僚の不祥事による辞任と消えた年金問題から弱体化、夏の参院選で自民党は歴史的大敗(改選64議席→37議席)を喫した。首相は続投を宣言したものの、自身の健康問題もあり最終的には退陣に追い込まれた。
参院の与野党勢力逆転(自83+公20VS民主109)により、以降の自公政権も苦しい国会運営を強いられ、平成21年(2009年)の政権交代へと繋がっていくことになる。

ただ、今年は前回の亥年と違い、野党勢力が分散しており、参院選に向けた選挙協力も進展がみられない。少々政権批判の声が高まっても、「安倍首相退陣、枝野内閣組閣」といった雰囲気には程遠い。(だからと言って、閣僚が失言を続けて良いというわけではない。)

野党の参院選候補者調整が難航している原因は、野党第一党の立憲民主党(以下、「立民」)と第二党の国民民主党(以下、「国民」)の再編にむけての主導権争いにある。両党とも選挙を意識して、一致点を見出すよりも、むしろ独自色を出そうとする傾向が強まっている。
統一地方選を見ても、両党の支持母体である連合が、官公労中心の旧総評系労組は主に「立民」を支援し、民間労組主体の旧同盟系労組は主に「国民」を支援するという、股裂き状態を強いられている。政策面での相違点は、憲法改正と原発政策だろう。

「国民」は憲法議論には積極的な態度を表明しているが、「立民」は安倍総理の下での憲法改正議論には一切応じないという。
原発に関しては、民主党政権時代にまとめた「2030年代原発ゼロ」の目標を維持して先の総選挙を闘った「立民」は、昨年3月に「原発ゼロ基本法」をいくつかの野党と国会に提案している。一方、電力総連の組織内候補を参院に擁立する「国民」は、「政治的スローガンとして既存原発ゼロを主張するだけでは無責任」と牽制する。

統一地方選前半終了直後、菅直人「立民」最高顧問がツイッターで「「国民」は政治理念が不明確なので解散し、参院選までに個々の議員の判断で「立民」との再結集に参加するのが望ましい」と投稿した。江田憲司氏も「「立民」がもっと積極的に候補者をぶつけていたら、「国民」は壊滅した」と投稿。いずれも統一地方選の結果を受けて、「立民」中心の野党再編成を主張したものだ。もちろん「国民」側はこれらの声に猛反発している。

これらの投稿には身内からも批判が噴出している。野田佳彦前首相は、「対自民党との決勝戦に勝つかどうかが大事なのに、準決勝のことしか考えていない」と苦言を呈した。
旧民主党から現在に至る経緯(民主党→民進党→希望の党→分裂)もあり、「立民」、「国民」両党の感情的なしこりは相当根深いものがある。
イギリスにおいてもブレグジット(EU離脱)をめぐって膠着状態が続き一向に出口が見えない。イギリス国民は「内輪もめと政治ゲーム」にうんざりしているようだ。

国会は経済や国民生活のために政策の方向を議論し、決定する場である。健全な議論のためには明確な政策の対立軸が必要であり、その主体として大きな主張の方向性に応じて結成されるのが政党であるべきだ。そして政党には、細かな意見の相違はあっても、党として一つの主張をまとめ上げる調整能力が求められる。

失言の追及ではなく、しっかりと噛み合った政策議論ができる与党と野党、政権交代可能な二大政党の時代は、いつ来るのだろうか?
とにかく「野党再編が進まない故に、政権与党内に気の緩みが生ずる」といったことがないよう、心を引き締めて選挙戦に臨まなくてはならない。

日本版NEC

 先月27日、平成31年度予算が参院本会議で自公などの賛成多数で政府案通り成立した。一般会計予算総額は過去最大の101兆4,571億円、当初予算で初めて100兆円を超えた。
29日には41道府県議選と17政令市議選がスタート。統一地方選の前半戦は、先に告示された11道府県知事選とあわせて7日に投開票される。政治は一斉に選挙モードに突入した。
政治日程が窮屈な中、先週は党本部で多くの会議が開催され、私にとっても会議室を梯子するほど、とても忙しい一週間だった。

 そんな中、私も所属するルール形成戦略議員連盟(甘利 明会長)で、戦略的外交・経済政策の司令塔となる「国家経済会議(日本版NEC)創設」の提言を急遽取りまとめた。従来、通商政策と安全保障政策は別個のものと捉えられて来たが、今や米中両国は経済力と安全保障を一体化して覇権争いを強めている。我が国もこういった情勢変化への対応を急がなくてはならない。

 デジタル帝国主義をめぐる争いとも呼ばれる米中新冷戦は、ハイテク摩擦、データ(デジタル)覇権争いを舞台に激化している。
 中国・通信機器最大手の華為(ファーウェイ)は、中国都市部を100%カバーするAI監視システム“天網”の基幹技術を担っている。一説には、僅か数秒で20億人の顔が判別できるシステムだと言われている。
この技術を展開すれば世界中の社会を管理(人々の動きを監視し、情報を入手)することも可能になる。中国は2017年に国内外の組織や個人に情報工作活動の協力を義務付けた「国家情報法」を制定しており、ファーウェイ社がこの法律の下に世界規模の諜報活動を行うことも否定できない。すでに同社は、80カ国・約200都市のプロジェクトに関わっており、世界中に“天網”システムが普及してしまう可能性もある。

 また、「一帯一路」(現代版シルクロード)経済圏構想では、AIIB(アジアインフラ投資銀行)によるインフラ投資への資金提供を切り口に、中国の政治的影響力を拡大している。
このような、経済的な外交術を操り安全保障上の国益を追求する経済外交策(エコノミック・ステイトクラフト)は、今後激しさを増していくだろう。

 米国は、英戦終結直後の1993年から国家経済会議(NEC)を設立しているが、中国のエコノミック・ステイトクラフトに対抗するために、NECを更に発展させなければならないと考え、現在、再構築に取り組み始めている。基本的には、国防権限法や安全保障上の最先端技術輸出規制強化や外国企業の対米投資の監視強化だ。

 また、米国はこういった政策の実効性を高めるため、自国のみならずUKUSA協定を締結しているファイブアイをはじめ、我が国および独仏にも同調を求めはじめている。
日本も米国等の要請に受動的に対応するのみでなく、自らの発想でエコノミック・ステイトクラフト政策を包括的に構想し、経済界とともに実行していく仕組みを早急に構築しなくてはならない。

 日本版NECのもとで、主体的に戦略的外交・経済政策を練りあげ、経済的パートナーシップと経済制裁、知的財産管理とデータ流通、国際標準やルール形成といった取組を主導していくこと。そして国際社会の安定と繁栄に積極的に貢献することが、平和を希求する経済大国“日本”の使命である。

*UKUSA協定=ウクサ協定。(United Kingdom-United States of America Agreement)
イギリス帝国の植民地を発祥とするアングロサクソン諸国の機関であること。ファイブアイとも呼ばれ、米、英、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドで構成している。

世界は今

15日、ニュージーランド(NZ)南部クライストチャーチ市のモスクで、男が礼拝中の信者に銃を乱射。地元警察によると、乱射は別のモスクでもあり死者は50人、負傷者は50人に及んでいるとのこと。犯行は「白人社会の再生」を掲げる白人至上主義者によるとのことだ。

NZは移民に寛容な政策をとっており、毎年6~7万人もの移民を受け入れている国だ。現在の人口は474万人だが、間もなく欧州系住民が7割を切るとも予想されているほど
だ。そのような多様性を尊重する安全な国だけに、今回の事件は想定外で、犯人は世界に与える効果を狙ったのではないかとも言われる。

近年、移民を巡る話題は、世界中で事欠かない。
トランプ大統領は、メキシコ以南の中米の国から不法移民を防ぐために国境に壁を建設することを公約に掲げ、その実現を巡って議会と対立している。その議論の最中にも、ホンジュラスなど、中米の国から移民の集団がアメリカを目指し大移動している。

欧州諸国では十年来、移民を巡るトラブルが絶えることがない。これらの国では徐々にナショナリズムが台頭し、政権を脅かす存在ともなっている。
英国ではブレグジット(EU離脱)を巡って、議会は出口が見えない混乱に陥っている。主な理由の一つは、人の移動の自由が保障されたアムステルダム条約による労働力の流動性、他国からの移民の急増により「移民に職を奪われた」とする労働市場の問題だった。

我が国も例外ではない。公式には移民受け入れ政策をとっていないものの、一部の産業分野では外国人労働力なしには成り立たない状況にある。これに対応し、昨年、出入国管理法を改正して外国人労働者の受け入れ拡大を決定した。年末には4月に創設される新在留資格「特定技能」に関する基本方針や分野別の運用方針、外国人全般に対する総合的対応策を閣議決定している。
一定の条件の下で長期滞在や家族同伴も可能となる。今後より多くの外国人が日本社会で生活する時代となることは確実である。

4月以降、基本方針に基づき実施状況を検証するとともに、更なる制度改革を行なう必要がある。これは労働政策だけの問題ではない。その基本は、文化や宗教、生活習慣の違う人々が互いを認めあい共生していくという理念の下に、教育から健康福祉に至る様々なシステムを整え、国民の一人ひとりが理解することだ。もし日本国民の中に排他的な考えが広まれば社会は不安定になり、外国人受け入れは破綻する。
世界各地で起きている様々な事件を対岸の火事と考えることなく、課題を解決することで日常の生活の中に外国人が普通に生活していける社会を実現しなければならない。

いま国会では、近年まれにみるスピードで審議が進んでおり、国内政治は比較的安定しているといえるが、米中経済交渉やブレグジットなど我が国経済に大きな影響が及ぶ問題や、米国とのTAG交渉、北朝鮮問題の新たな展開など我が国を取り巻く環境は大きく変化している。暫くは世界情勢から目が離せない。

*アムステルダム条約=EUの責務として、①自由、安全及び正義の地域を維持、発展させる②人の移動に自由が保障された地域とする③外部国境管理、肥後、移民、犯罪の予防と撲滅に関する適切な政策を融合させる、ことなど。

予算年度内成立

通常国会での最大の懸案は、4月からはじまる新年度の予算の早期成立である。

 

年度末3月31日までに成立しないと、4月分の国家公務員人件費をはじめとする新年度行政経費が執行できなくなる。憲法の規定で予算案は衆議院の議決が優先し、通過後30日で参議院の議決をまたずとも自然成立するので、この時期衆議院通過の日程をめぐり与野党の駆け引きが毎年のように繰り返される。

 

今年の通常国会は例年より遅く召集されたので、審議日程が非常にタイトになると予想されていた。加えて、“防災・減災、国土強靭化”などに資する平成30年度2次補正予算成立を優先したため、新年度予算は2月8日からの審議入りとなった。

 

前回のコラムでも言及したが、今国会の予算委員会での質疑の中心は厚労省の毎月勤労統計の不適切調査問題で、多くの時間が割かれてしまった。

 

野党は、①組織的な隠蔽行為があった、②首相秘書官の関与・官邸ぐるみ、③共通事業所の実質賃金「参考値」の公表など、同じ質問を繰り返している。つまり、アベノミクスの成果をねつ造するために賃金統計が操作されたのではないか?と印象づけたいのだ。

 

森友・加計問題では政権の支持率は大きくダウンしたが、今回の審議を経た後の最近の世論調査をみると、安倍内閣の支持率はメディア各社ともほぼ横ばいである。忖度という言葉でモリカケを連想させ、政権のイメージダウンを計ろうとする戦略が見て取れるが、今のところ功を奏しているとは言えない。

 

アベノミクスの評価や今後の経済政策、イノベーション戦略や人づくり政策、社会保障制度改革など、我が国の将来像について議論すべき重要課題が山積している。国際関係では日ロ外交交渉、日中関係、日韓関係、また米国とのTAG(物品貿易交渉)問題への対応も急がなくてはならない。米朝首脳会談の合意形成失敗により、朝鮮半島との外交戦略も再構築を迫られている。

 

しかし、国会では政局が優先され、大切な国民と国益のための政策議論がおろそかになっている。もう少し違った時間の使い方をすべきと考えているのは、私だけではあるまい。

 

今年の予算審議で一つ「おやっ」と感じたことがある。従来は野党第一党・立憲民主党の枝野幸男党首は対決型、第二党・国民民主党の玉木雄一郎党首は提案型であったのが、立ち位置が入れ替わったのだ。両党は参議院第一会派をめぐって激しい議員獲得競争を繰り広げている。おそらくこの争いも、従来の戦術を変化させているのだろう。さらには今年は4年ごとの統一地方選挙と3年周期の参議院選挙が重なる。少数野党にとっては存亡をかける選挙イヤーである。各党はこれからも春と夏の選挙を意識して独自性の発揮に腐心することになるのだろう。

 

新年度予算の年度内成立期限は3月2日の衆議院通過。激しい野党の論陣で審議がストップすれば暫定予算の編成が必要となるところであったが、幸い審議が空転することもほとんどなく、2日未明の衆議院本会議で予算案を可決し、とにもかくにも今年も年度内成立が確定した。

 

あと2カ月で平成の御代が終わる。平成の30年を総括するとともに、来るべき新しい時代に向け、政治の果たすべき役割について改めて考えなければならない。

 

TAG(Trade Agreement on goods)=複数国の間でモノにかかる関税引き下げや撤廃について定める協定。農産物や工業用品なども交渉対象。

通常国会開幕

平成最後となる通常国会が始まった。外交日程の都合もあり、例年より少し遅めの1月28日に召集され、総理の施政方針をはじめ政府4演説が行なわれた。

 

30日からの代表質問には野党各党とも党首クラスが質問に立った。

例年、内政、外交ほか多岐にわたる様々な質問がなされるが、今回は「毎月勤労統計」の不適切調査問題に最も多くの時間が割かれた。週明けの予算員会でも、この問題で紛糾するのは間違いないだろう。

 

毎月勤労統計は本来、従業員500人以上の大規模事業所については全数調査を行うこととされている。しかし、東京都などで長年にわたり3分の1程度の抽出調査しか実施されず、しかも、不適正調査を隠ぺいするようなデータ修正が行われていた。この影響で、調査データを用いて算定される雇用保険等で追加給付が必要となり、平成31年度予算の閣議決定をやり直すなど、異例の対応を強いられた。

 

この問題をより複雑にしたのは発覚以降の厚労省の対応のまずさだ。

客観性、中立性が求められる第三者委員会調査に、厚労省事務方の関与が明らかとなり、再調査を余儀なくされている。その後も続々と新しい事実が浮かび上がり、この問題の終息は一向に見えない。

 

この混乱を受けて総務省は、56の基幹統計について改めた調査した。その結果、23の統計で手続きなどの誤りが見つかったと発表。基幹統計は国の政策立案の根本となるもので、その信頼性を損なう行為は前代未聞だ。政府は233種類の一般統計についても総点検を行うことを決定した。

 

今年は4月の統一地方選、7月には参院選と選挙イヤーだ。野党各党は経済統計の信憑性への疑念から「アベノミクス偽装」「実質賃金隠し」と酷評し、加えて厚相の罷免を要求するなど、政府の失策やイメージダウンを狙って勢いづいてきている。

 

そのような中で代表質問に立った野田元総理が「不正が15年間も続いていたことは、民主党政権下でも見過ごしていたということだ。(民主党政権関係者も)猛省しなければならない」と言及したことは傾聴に値する。自民党は15年間の大半政権運営に関わっていたのだから、より責任は大きいと考えるべきだ。議院内閣制の我が国では、国の行政機関の長である大臣の大半は国会議員である。各省庁が法令を遵守して業務を執行しているか(当然のことではあるが)、政治主導でしっかりと監視していかなくてはならない。

 

この31日の衆院代表質問終了後、私は、昨年11月に亡くなられた熊本出身の園田博之氏の追悼演説を行った。

園田氏とは昭和61年(1986年)の総選挙で初当選した同期の仲間であり、平成5年(1993年)に自民党を離党し“新党さきがけ”を結成した同士でもある。

先代の園田直先生と父・元三郎も親交があり、親子2代にわたる間柄でもある。約32年間の長きにわたって政治行動を伴にし、親交を温めてきた。そんなこともあって、ご遺族が私を指名したと聞いた。

 

時間をかけて原稿を練り上げ準備して事に臨んだつもりだったが、演壇に登り遺族席の園田先生の遺影をみた瞬間、急に胸に込み上げてくるものがあり、不覚にも言葉が詰まってしまった。何とか立て直して演説を終えて事なきを得たが、思いもよらぬ出来事だった。

初当選同期は与野党あわせて67人(うち自民47人)だった。園田氏が亡くなり33年を経た現在も院に在籍しているのは、私も含めたった5人となった。

 

いまから思うと、いささか気恥かしいが、私の初出馬の公約は「最善を尽くす」のみであった。前号のコラムでも言及したが、私が政治活動をしてきた平成という時代の国民の評価は、政治に厳しいものだ。その時々に私なりに最善を尽くしてきたつもりではあるが、果たして私は何かをなし得たのだろうか?この機会に改めて自らの政治生活をふり返って考えてみたい。そして、これからも最善を尽くしていく。

平成という時代は

平成最後の新年が明けて、気が付けば早や3週間が過ぎた。「歳をとると時間が経つのが早くなる」と言われるが、まさにその言葉を実感している。

今年の年頭の挨拶では、昨年の一文字漢字“災”や、5月の改元に触れたものが多かったが、「平成」の時代が終わるにあたってこの30年間を総括する話題も数多く報道された。

 

昨秋NHKは、平成という時代に当てはまるイメージを8項目提示して調査を行った。

当てはまる割合が最も高かったのは、「戦争がなく平和」が79%、次いで「治安が良い」56%、以下は「男女が平等」48%、「民主主義が成熟」47%と続く。一方、「経済的に豊か」は40%と低く、更には「家族の絆が強い」が36%、以下「地域が助け合う」36%、最も低かったのは「社会的弱者に優しい」で30%にとどまった。

この調査結果からは、平成という時代は我が国にとって平和な時代であったが、経済成長は停滞して人間関係は希薄となり社会的弱者には厳しい時代であったと、考えている国民が多いといえる。

 

また同時に行なわれた別の調査では、10分野について平成時代に日本は良くなったと思うか、悪くなったと思うかを尋ねているが、良くなった答えた割合が高いのは、「情報通信環境」が88%、次いで「道路交通網」が82%、以下は」防災」75%、「医療・福祉体制」65%、「教育」55%と続く。一方、悪くなったと答えた割合が高いのは、「政治への信頼」で75%、ついで「日本を取り巻く国際情勢」が71%、「国の経済力」は70%となっている。

私が最も気になったのは「政治への信頼」で、悪くなった75%に対して良くなったと答えた割合は僅か22%でしかなかった。

 

私の初当選は昭和61年(1986年)7月。2年半後の昭和64年(1989年)1月7日に先帝が崩御され、昭和が幕を閉じ平成の時代が始まった。即ち、私のこれまでの政治人生のほとんどは平成の時代のものである。

その平成の時代に「政治への信頼」が悪くなったと考えている国民の割合が、良くなったと考えている割合の3倍以上もあるのだ。

 

「無信不立」を政治信条とし、事あるごとに政治への信頼回復を訴えてきた私にとって、この調査結果は非常に厳しいものである。加えて政治のみならず、このところの文科省天下り問題や財務省の公文書改ざん問題、厚労省の労働時間調査の不備など、政府内の相次ぐ不祥事で政府(官僚)への信頼も大きく揺らいでいる。

昨年末には、再び厚労省の「毎月勤労統計」調査ミスが発覚し、作成したばかりの平成31年度予算案を修正する事態に至り、政府への不信感は更に高まっている。

 

我が国ではかつて「官僚一流、政治家三流」と揶揄され、政治が少々おかしくなっても優秀な官僚がしっかりと国家を運営すると言われた時代もあった。政治主導と言われる昨今では、逆に政治がしっかりして高い能力を持った官僚組織を機能させる必要がある。

 

しかし、最新の共同通信の政党支持率世論調査では、自民(39→36%)、立民(12→9%)、公明(4→3%)など、各党とも軒並み前月から支持率が下がっている。

唯一支持率が上がった?のは、支持政党無しの無党派層で36%から44%と大きく増えている。国民の2人に1人が支持政党無しと言う時代だ。

 

先週日曜日に行なわれた赤穂市長選でも自民、立民、公明など、与野党相乗りの現職が一切の政党支持を受けない新人に負ける結果となった。

今年は4月に統一地方選挙、7月に参議院選挙が行われる選挙イヤーである。その主役であるはずの各政党は危機感を持って臨まなくてはならない。

まずは、信頼回復が政治の喫緊の最重要課題であることは論を俟たない。