いま、一層の努力を

新型コロナウイルス感染拡大防止「緊急事態宣言」の効果を評価するための、専門者会議が開催された。発令後の2週間、都市部の人々の動きは感染拡大前と比べ大きく減少した。しかし、平日で6割程度減少という数字では、他人と接触機会を8割減らすという目標には不十分とのことである。

22日午後に開かれた政府の対策本部では、安倍総理が国民の協力に謝意を表明しつつも、より一層の努力が必要な状況だとして、改めて行動の見直しと更なる外出自粛への協力を呼び掛けた。特に例年のゴールデンウイークのような民族大移動を行うと都市から地方への感染拡大を招くことから、「オンライン帰省」を提案し、移動を限りなく縮減することを重ねて要請した。

4月に入ってから感染者は毎日百人単位で増加し、ほぼ全国に広がってしまった(感染者ゼロは岩手県のみ)。この量とエリア双方の急拡大に伴い医療崩壊の懸念がクローズアップされてきている。医療機関の受け入れ能力を超える患者が殺到し、病床はもとより医療スタッフ、器具が不足して、重篤者の治療に手が回らなくなる事態だ。

既に大都市圏の都道府県では、隔離治療が可能な病床の確保とともに軽症患者に宿泊施設で療養していただく対応が始まっている。幸いPCRで陽性反応があっても約8割の方々は軽症か無症状とのことなので、この手法も有効な選択肢である。更なる拡大のため民間ホテルの提供とともに、健康チェックに当たる管理スタッフの協力も欠かせない。

医療用マスクやガウン等の器具の不足も深刻だ。普段は注文すれば直ぐに手に入るものが世界的な品薄状況となり、まさに綱渡りの調達が続いている。

さらに心配なのは医師、看護師等の医療スタッフも含めた院内感染の増加だ。感染者とともに濃厚接触者も第一線から後退せざるを得なくなり、正常な病院の機能が果たせなくなる。すでに救急受け入れの停止に追い込まれている感染症指定病院もある。

専門家会議の提言では、「対策のフェーズが変わった」として、「医療崩壊防止と重症化防止により死亡者数の最小化を図っていくかに力点を置く」と強調されている。

具体的には、感染拡大で患者数が増加することに備えて地域医師会と協力し、かかりつけ医が患者から直接相談を受け必要に応じて地域医師会が運営する「コロナ検査センタ(PCRセンター)」に検査を依頼する。また、無症候者や軽症者は自宅療養、宿泊療養で対応する一方、都道府県は感染症指定病院への受入れを重症・中等症の患者に割り当てるなど、地域で医療崩壊を起こさせないような連携体制を構築することである。

感染リスクと背中合わせで新型ウイルスと闘っている医療従事者の皆さんに心より感謝するとともに、医療器具、検査試薬等の資材の安定確保に更なる努力を重ねていきたい。

一方で、心配なのが内閣支持率の低下だ。不評三点セット(布製マスク配布・減収世帯に30万円・総理の動画)の影響で大きく下がっている。「支持率に一喜一憂すべきでない」というのが模範的なメディア対応なのだが、今回はそうは言っていられない。

「接触機会の8割減」という目標は、国民の理解と協力なくしては絶対に達成できない。また、今回のような非常時下にあっては、時には超法規的な政治決断が求められる。その意味でも国民の信頼と支持が必須なのだ。

加えて、今回の経済対策の決定過程では、党と政府の関係にも亀裂が生じた。党の議論と提案が政策に反映されていないのだ。逆に30万の現金給付やマスクの配布について、政府から事前説明はなかった(党の幹部でさえ知らされて無かったようだ)。

もちろん、議院内閣制のもと政府の決定は我々与党にも責任はある。この難局を乗り越えるためにも、政府与党が一体となって信頼回復に勤めていかなければならない。

大型連休を前に特定警戒地域に指定された大都市圏では、市街地の賑わいが完全に休止している。全国をつなぐ交通機関も利用停止状況にある。このような経済停滞をいつまでも続けるわけにはいかない。しかし、経済活動は人々の健康な営みが前提だ。力強い経済再生、Ⅴ字回復のためにも、今は感染拡大の防止に全力を尽くさなければならない。

これまでの努力が水泡に帰すことが無いように、いま一度、国民の皆さんにGWの移動自粛をお願いしたい。

ONE TEAM 再び

政府は7日、新型コロナウイルスの感染拡大に備える改正特別措置法(新型コロナ特措法)に基づく緊急事態宣言を発令し、期間は5月6日までの1カ月とした。

前日に専門家で構成する基本的対処諮問委員会のアドバイスを総合的に判断して、期間と対象区域などの準備に入ると公表していたので、思った以上に混乱は起きてないように思う。このタイミングでの宣言には様々な意見があるが、世論の多くは支持しているようだ。

 

宣言では、東京、神奈川、千葉、埼玉、大阪、兵庫、福岡の7都府県が地域指定され、地元兵庫もその一つとなった。

安倍首相は当初、都内の1日当たりの感染者が200人以上となった時点で宣言発令を考えていたようだが、「都市部を中心に感染者が急増しており、病床数が限界に近づいている(医療崩壊)。もはや時間の猶予はない」と、指定区域などの根拠を説明した。このため、日本の人口の4割以上を占める地域が “非常事態”に突入した。さらに、愛知と京都も指定を求めている。

 

特措法では指定を受けた都道府県知事が、要請・指示など地域に見合った具体的な対処方針を定め、国や市町村などと連携協力して実行していくこととなる。兵庫県の井戸知事は、「県内一律に制限を求めるかどうか、規制内容がエリア内で違っても構わない」とし、感染度合や地域に応じてフレキシブルな対応をする旨示唆している。大阪と一体の生活圏を形成する阪神地域と感染者がいない但馬や西播磨地域とは規制の内容が異なって当然だろう。

 

ただ、非常事態と言っても欧米諸国のようにロックダウン(都市封鎖)という強力な移動制限を行うわけではない。特措法が定めているのは、罰則を伴わない要請と指示であり、その内容はイベントの制限、バーやカラオケ店の利用制限など感染可能性を高める密閉、密集、密接を避けるためのものだ。食料品等を販売する商店や病院は休業しないし、鉄道などの公共交通機関も運行を継続する。

日々の生活に最低限必要なインフラは維持するので、都市の繁華街への外出は少々我慢していただき、仕事もできるだけ在宅で行っていただきたい。また大都市から帰省も控えていただきたい。こういった地道な取り組みが感染拡大の最大の防御策となる。

 

宣言と同時に、“緊急経済対策”として補正予算案の概要を発表し、連休前の成立を目指している。この対策は「緊急支援フェーズ」と「V字回復フェーズ」に分かれ、段階的に実行に移していく。

まず、感染者が急増している現在の状態に対処するため、拡大防止策と医療提供体制の整備(5万病床確保やオンライン診療、検査機器等の整備)、さらには治療薬やワクチンの開発など、感染爆発の鎮静化、封じ込めを図る。加えて、生活困窮者や中小企業への現金給付など、社会のセーフティーネットを維持する。

次に感染終息後は迅速に、観光や飲食、イベントを後押しし内需の拡大を図るとともに、企業の国内回帰支援や中小企業のテレワーク機器導入支援なども進めていく。

 

事業費規模108兆円の経済対策はGDP規模2割で、リーマンショック後に実施した対策56.8兆円の約2倍ともなる。先月号でも触れたが、今は財政規律にこだわるべき時ではない。今回の補正予算に限らず、景気回復までは国、地方を通じて思い切った財政出動を継続していくべきである。

 

いずれにしても、危急存亡、緊急事態を脱出するには、何より国民の協力と理解が必要である。まずは、全国民が一丸となって感染拡大の終息を図ること。そして経済をV字回復させて、我が国の未来を切り拓いていくこと。

先の大戦以来の国難の時にあって政治の役割は限りなく重い。ワンチームでこの難局を乗り切っていきたい。

パンデミック

先月の私の誕生日(2月11日)には、中国を中心に5万人足らずだった新型コロナウイルス感染者が一か月で世界中に拡散した。発生以来一貫して否定し続けてきたWHOだが、11日遂にパンデミック(世界的大流行)を認めた。今や発生地域は全世界の126か国・地域、感染者数は15万人を超え、拡大の中心はアジアからイタリアをはじめとするヨーロッパに移っている。

 

この間、各国の感染拡大のスピードや死者数の比率にはかなりバラつきが見られる。例えば感染者数と死亡者数、その比率を比べると、中国(80844人、3199人、4.0%)、韓国(8162、75、0.9)、日本(798、24、3.0)、イタリア(21157、1441、6.8)、スペイン(5753、136、2.4)フランス(4500、91、2.0)、ドイツ(3795、8、0.2)、アメリカ(2174、41、1.9)(データの時点は多少のずれがある)という状況である。

 

初発生からの経過期間、PCR検査の方針等も要因であろうが、各国政府の封じ込め対策の強弱、医療提供の体制水準により差異が生じていると思われる。感染急拡大が続くヨーロッパの状況と比べると、我が国の封じ込め対策は、まずまずの効果を上げていると言っても良いのではないだろうか。

 

また、4日に発表されたWHOと中国政府の調査結果によれば、2月時点の致死率は3.8%ということであるが、この数字は同類のコロナウイルス感染症であるSARS(約1割)、MERS(約3割)と比べればかなり低い。(これが感染力の高さにつながるのだが…)しかも医療体制が強化された2月以降は0.7%に抑えられたとのことである。また、80歳以上の致死率が21.9%で年齢とともに重症化のリスクが高まること、19歳以下の感染者はわずか2.4%ということも判明している。

 

我が国でも発症者の80%は軽症である。今後、症例の増加とともに病原体の詳細な性格も解明されてくる。新型感染症もワクチンが開発され治療方法が確立すれば、どこにでもある病気になる。10年前に大騒ぎした新型インフルエンザも今や季節性インフルの一種類である。13日に新型コロナウイルス対策の特別措置法が成立し、「緊急事態宣言」により、外出やイベント自粛などの私権制限の措置が可能となるが、現状ではその必要は認められない。国民の皆さんには、この病原体を過度に恐れることなく、しばらくの間、地域の状況に応じて不必要な外出、イベント自粛等の感染拡大防止にご協力いただきたい。

 

一方で、観光客をはじめとする人の動きの激減やサプライチェーンの途絶により、世界的な経済不安が拡大している。この数週間、日経平均をはじめ全世界の株価は歴史的な急落情勢にある。ただ、十数年前のリーマンショック時、どこに不良債権が隠れているのか皆目見当がつかなかった事態とは異なり、今般のコロナウイルス禍は原因が明確である。感染拡大対策による世界的な混乱が収まれば人と物の動きは回復するはずだ。

すでに世界の部品工場である中国では経済の正常化に向けた動きが始まっている。このなかで当面重要なのは短期的に縮小してしまった需要の喚起対策である。世界的な経済規模縮小の不安を払拭し、経済のブロック化を抑止するために、各国が協調して経済対策に本腰を入れなくてはならない。

 

まずは我が国がその模範となるように、早々に緊急大型の補正予算を編成すべきだ。内需拡大には従来型の公共事でなく、家電や自動車など製造業対策、観光をはじめとするサービス産業対策も必要だ。個人消費拡大のために期限付きの電子マネーなどの活用も有効だ。

今ここで思い切った経済対策を打たなければ、消費増税対策も含めこれまでの経済政策が無意味になってしまう。とにかく機動的で十分な規模としなければならない。

 

どちらかと言えば、財政再建派の私ではあるが、いま暫くは財政再建を忘れることにしたい。思い起こせば、リーマンショックの後、財政再建派の筆頭格であった与謝野馨(故人)さんが同じことを言っていた様な気がする。

賛否両論

2月27日夕刻、首相官邸で新型コロナウイルス感染症対策本部会議が開かれた。その中で安倍総理は、「ここ1、2週間が感染拡大防止に極めて重要だ」と述べ、3月2日から全国すべての小中学校、高校と特別支援学校について、春休みに入るまで“一斉臨時休校”とするよう要請した。

 

そして総理は、入試や卒業式を実施する場合は感染防止のための万全の対応を取ることや、行政機関や民間企業などは休みを取りやすいよう保護者への配慮を行うことを求めた上で、こうした措置に伴って生じる課題は、政府が責任を持って対応する考えを示した。

この表明までにも、政府はイベント開催について必要性を検討するよう呼び掛けていた。こういった要請を受けて、全国各地で多くのイベントの中止や延期などの自粛措置が次々に発表された。私の地元でも行事予定のキャンセルが相次いでいる。要請の効果があったと言って良いのだろう。

 

一方で、今回の決断については、国民から賛否両面から様々な意見が噴出している。賛否はともかく表明が唐突(良く言えば「迅速」)だったのは事実だ。それが休校によって派生する問題への準備不足を招いてしまった。授業時間不足をどうやってカバーするか?共働きや一人親の子供の世話を誰が担うか?平日に学童保育を行うとすればその人員手当をどうするか?様々な対応が後手に回り、未だに解決しているとは言いがたい。

 

あくまで「要請」なので休校するかどうかの判断は自治体や教育委員会、学校に委ねられている。が、総理から要請されてしまうと、これに反する行動を選択するには相当の勇気と根拠が必要だ。故にほとんどの自治体が臨時休校に踏み切り、それが生み出した課題に悩んでいる。

また全国一律でなくてもよかったのではとの声も多い。私もそう考えた一人ではあるが、地域を限定する客観的な理屈も難しい。ウィルスの毒性が不明確な現時点では、少々過大措置であっても、封じ込めを第一に優先して考え、スピード優先の対処を採用することもやむを得ないだろう。

 

安倍総理は28日夕刻記者会見を開き、一斉臨時休校により生じる課題への対応策を発表するとともに、改めて国民の理解と協力を呼びかけた。

その中で保護者の負担軽減にむけて、臨時的な学童保育開所への支援や、親の休職に伴う所得減少を補う助成金制度の創設などの支援策を表明した。

さらに、直面する課題に対する総合的な経済対策についても2,700憶円を超える今年度予備費の一部を活用し、10日程度のうちに取りまとめると表明した。

 

今回の選択が正しかったか否かを判断するには、まずは、ここ2週間の結果を見なければならない。そして、最終的には経済動向も含めた歴史の審判を待つ必要がある。いまは様々な国民の不安を解消するために、より具体的な対策の取りまとめに最大限の努力をすることが、政治に求められている。

ONE TEAM で闘う

昨年暮れから湖北省武漢で発生した新型コロナウイルス、中国保健当局等は11日、国内感染者数が4万人を超え、死亡者数は2002年に中国南部で猛威を振るったSARS(重症急性呼吸器症候群)774人を抜いて1,000人以上を数えたと発表した。

 

6日の湖北省幹部会見では、全土から1万人以上の医師が支援に駆けつけている一方、呼吸器内科や重症患者の対応にあたる医療従事者が2,000人以上不足していることも明らかにした。加えて重体になっている人が6,000人以上いるとの情報もある。中国以外で感染が確認された国と地域は27にのぼり、わが国でも28名の感染(12日現在、クルーズ船の感染者を除く)が判明している。

 

昨年11月には武漢市内で原因不明のウイルス性肺炎が発生したことは報告されていたものの、中国当局の公表は12月30日。大晦日の日本での報道もベタ記事扱いだった。いち早く警鐘を鳴らした眼科医の李文亮医師は、不幸にも8日に感染死亡が公表された。また、武漢で重篤であった邦人一人が亡くなったとのこと、ご冥福をお祈り致したい。

 

当初は「ヒトからヒトへの感染はない!」と報じられ、WTOも初期には安心・安全宣言を発していた。状況が一変したのは1月24日から始まる旧正月・春節(24日~30日)前日23日に、武漢市と近隣市が封鎖されてからだ。

武漢市は中国のほぼ中央に位置し人口約1,100万人を擁する。160社を超える日本企業が進出し、700人近い邦人が居住していた。25日には周仙旺武漢市長が「春節と肺炎流行の影響により500万人が武漢を去り900万人が残っている。すぐに情報発信ができなかったのは、発表の権限がない」と市内の惨状とあわせて心情を訴えた。

 

感染患者が首都北京でも確認され、2月に入って感染者が5日連続で3,000人を超えるなど、ほぼ中国全土で感染者数が急増していった。

2月3日、中国最高指導部は「新型肺炎に関する会議を開き、感染症対応に誤りがあり初動対応が遅れたこと」を認める異例の声明を出した。しかしながら新型肺炎が発症してから既に2カ月が経過している。初期段階での情報統制がこの状況を招来したことは明らかで、中国当局は18年前のSARSパンデミック(集団感染)から何も学んでいないことになる。

 

わが国では武漢に居住している邦人救出が喫緊の課題となった。政府は4次にわたりチャーター便を手配し、湖北省に滞在する大部分の邦人帰国(763人)を実現した。立上げ時はいささか時間を要したが、諸外国に比してスピーディで適切な対応だった。

 

また、クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス号」の乗客乗員約3,700人の船内感染が明らかになった。様々な意見があるが、横浜港に停泊させ客室待機などを含め水際対策としてまずはこの方法しかなかったと思う。

 

厚生労働省は12日、新たに乗客39人と検疫官1人の感染が確認されたと発表、これでクルーズ船内での感染が確認されたのは175人となった。11日午前から、感染が確認された乗客などを救急車で順次医療機関に搬送しているが、時間の経過とともに乗船者の不安やストレスも高まっており、新たな対応が求められる局面に入った。

 

自民党では新型コロナウイルスの感染拡大を受け対策本部を設置。政府からの報告を受けるとともに、連日議論を重ねて提言をまとめ安倍総理に手渡した。その内容は、水際対策の徹底、医療体制の整備、簡易検査キットの開発を含む検査体制の整備、大打撃を受けている観光業等への資金繰り対策など10項目に及ぶ。また、友党である公明党も、政府に国民や地方自治体に迅速な情報提供や相談窓口の体制拡充などを総理に提言した。

 

これらを受けて安倍総理は、「政府として、国民の命や健康を守ることを最優先に、やるべきことをやらなければならない。予備費の活用も視野に必要な対策を行っていきたい」と、万全の対策を期す考えを強調し、政府として週明けにも緊急対策をまとめる考えを示した。

 

日本国内は言うまでもなく、全世界が情報を共有してコロナウイルスと闘わなければならない。様々な対立を乗り越え人類が「ONE TEAM」とならなければならない。今はそんな時だと私は思う。

未来への責任

1月20日に通常国会が開幕、22日からは代表質問が始まった。前号で私は「政府には国民の疑問に対して丁寧な説明を!野党には活発な政策の議論を期待したいものだ」と、言及したのだが・・・?

 

質問のトップバッターは野党統一会派を代表して立憲民主党の枝野幸男代表。冒頭から “桜を見る会”“IR汚職”“政治とカネ“の政局ネタ三点セットの話が続いた。これらの問題が重要ではないとは言わないが、延々と3分の1もの時間を割く価値があったのか。

 

質問後半で政策課題についても触れてはいたが、「支え合う安心」「豊かさの分かち合い」「責任ある充実した政府」といった抽象的な言葉の羅列にとどまり、それらを実現するための具体的な政策、裏付けはほとんど語られない。政権運営の基本となる施政方針演説に対しての代表質問としては、些か物足りない内容だった。

 

同じく統一会派の代表として登壇した国民民主党の玉木雄一郎代表は、最初にIR汚職にについて少し触れた後は、女性や子供・若者に関する問題への具体的な提案を訴えた。両者の差異は、従来から「対決よりも提案」を重視してきた国民民主党と、「反政権主張」を存在意義としてきた立憲民主党とのスタンスの違いにあるのだろう。

 

野党としての最大の目標は安倍政権打倒かもしれないが、打倒した後には自らが政権を担い、持続可能な政策を実行する責務がある。「政権交代。」「コンクリートから人へ」「政治主導」といったスローガンのみで政権を奪取した、民主党の失政の轍を踏んではならない。

 

立民はリベラルの政治集団として、国民は中道から穏健保守を標榜して活動しながら、昨年来合流に向けた協議を続けている。もし、両党が「一つの大きなかたまり」を目指すのであれば、個別の政策調整以前に、その目的は「責任政党の形成」にあるのか?それとも「批判勢力の拡大」にあるのか?をまず明確にしなければなるまい。27日からは予算委員会で補正予算審議が始まる。両党の所属議員がどのような立ち位置で質疑に臨むかに注目したい。

 

他方、総理をはじめ政府側からも、種々の疑念を払拭するに足りる説明はなされていない。このことは世論調査でも明らかである。より多くの国民の理解を得るべく、更なる努力が求められる。

 

国会の開会日は世界経済フォーラム年次総会(通称:ダボス会議)が開幕した日でもあった。今年のテーマは「ステークホルダーがつくる持続可能で結束した世界」。自国優先主義への歯止め、公益重視の資本主義への転換といった様々な意見表明がなされたが、議論が集中したのは気候変動対策の在り方だ。

 

昨年の会議で「私達の家が燃えている(Our house is on fire)」と訴えたグレタ・トゥンベリさん(17歳)は、今年も「環境問題の対応は全く不十分だ」として、世界に具体的な行動を求めた。インドネシア・バリ島でプラスチックごみを無くすNGOを成功させたメラチィ・ワイゼンさん(19歳)は、「世界の指導者はどこまでやるのか、変化をどう実行するのか見たい」と訴えた。

 

今年のダボスでは、こういった10代の活動家たちのメッセージが注目を集めたが、残念ながらそこに日本の若者の姿は無かった。(政治家もいなかったが…)

ドイツの宰相ビスマルクは「その国の未来を知りたければ、その国の青年を見よ!」と言ったといわれる。このコラムで何度も言及してきたが、改めて我が国の未来が些か気がかりに思える。

 

しかしその前に、この国の活力を維持した姿で次の世代に引き継げるか否かが我々に問われている。強い日本経済の実現や持続可能な全世代型社会保障など、課題は山積している。日本の目指すべき将来像について活発な政策議論が臨まれる。それこそが今、政治に求められている「未来への責任」だ。

国会論戦に望む

 「令和になって初めてのお正月」と言う言葉が、今年の年始挨拶でのキーワードではなかっただろうか。時には寒風が吹きすさぶ日もあったが、年末年始の9連休は総じて穏やかな天候に恵まれた。スキー場の雪不足を除けば、国内的には、まずまずの新時代の幕開けだったと言えるだろう。

 半面、海外からはスパイ映画のような驚きのニュースが次々と飛び込んできた。まずは年末の31日。日産自動車の元会長、カルロス・ゴーン被告が「私はいまレバノンにいる」との声明を発表した。保釈の条件であった海外渡航禁止を無視して、日本を出国したことを明らかにしたのだ。一説によると楽器のケースに入って、プライベートジェットにより旅立ったという。15億円の保釈金の多寡はともかく、我が国の司法制度がコケにされた形だ。国家として毅然とした対応が必要だろう。

 続いて1月3日には、イラン革命防衛隊の精鋭部隊「コッズ部隊」のトップ、カセム・ソレイマニ司令官がイラクのラク・バグダッドで米軍のドローンMQ9リーパーによる空爆で暗殺された。

 トランプ大統領は「イラク革命軍によるテロ計画の防止のための措置」と主張したが、とにかくこの攻撃で中東情勢は一触即発の危機に陥った。今のところイランの報復は抑制的で限定的な??米軍基地への弾道ミサイル攻撃に留まり、当面の危機は回避されている。ただ、この事案の巻き添えのような形でウクライナの旅客機がイラン軍の対空ミサイルにより撃墜されたようだ。今年の世界平和と経済は、ただでさえ不安定なこの地域の動向に左右されるだろう。

 このような中、政府は日本関係船舶の航行安全を確保するため、海上自衛隊の護衛艦と哨戒機のアラビア海への派遣を命令した。紛争地域となりかねない中東への自衛隊派遣を巡っては野党が再検討を強くて主張している。しかし、このような事態であるからこそ、自衛隊の派遣が必要なのではないだろうか。

 我が国は主要なエネルギーである石油の85%、LNGの23%を中東地域に依存している。この物流ルートの途絶は、国家存亡の危機を招きかねない。ゴーン氏への対応以上に毅然とした姿勢が求められる。

 20日から始まる通常国会で野党は、この中東問題よりも「桜を見る会」や「IR疑惑」に重点を置き、政府を徹底追求すると言っているようだ。

 しかし、私の知る限り、新年会などで耳にした国民の世論は少し違うようである。国内経済の成長をいかにして導き出すか? そして世界の繁栄にどのように貢献するか? 少子高齢社会の展望をいかにして示すか? それが今、政府に問われており、国会で議論すべき課題であると感じた。

 政府には国民の疑問に対してより丁寧な説明を、野党には活発な政策議論を期待したいものだ。

年頭所感2020

明けましておめでとうございます。

ゴールデンスポーツイヤーズの中心となる2020年が幕を開けました。昨年のラグビーワールドカップは、“ワンチーム”を掲げた日本代表の躍進が大きな感動を与えてくれました。

今夏の東京オリンピック・パラリンピックも日本選手の大活躍で、何度も君が代のメロディが流れることを期待しています。

海外から多くの観戦者が来日するオリパラの期間は、日本文化を世界に発信する好機でもあります。文化オリンピアードを全国で展開し、日本ファンの拡大を図りたいものです。

天皇陛下は即位礼正殿の儀で、「国際社会の友好と平和、人類の福祉と繁栄に寄与する」と誓われました。令和の時代も我が国の外交は、世界各国との平和と協調を基にしなければなりません。温暖化対策をはじめ、地球環境に対する貢献も我々が果たすべき責務でしょう。

一方、国内では人口減少が加速しています。昨年の出生数は統計史上初の90万人割れで、政府が予測したよりも2年早いスピードで少子化が進んだことになります。

少子化に歯止めをかけるには、教育費等の経済支援とともに、子育てが楽しいと感じられる社会をつくることが大切だと考えます。しかし、その実現は簡単ではありません。今後数十年にわたり日本の人口減少が続くことは避けられないでしょう。

そのなかで社会の活力を維持するために、AI、IoT、ロボットといった新技術の力で、生産性を高め社会課題を解決する“Society5.0”の創出が求められています。

このイノベーションを推進するのは、ICTを駆使する人材です。昨年末の経済対策で打ち出した「全小中学校でのWi-Fi環境整備と全児童生徒へのPC配備」は、未来を担う人材育成の礎となるはずです。

私の初当選は1986年の衆参同日選。早や34年の時が経ちましたが、初登院時の感慨と志を忘れず、“未来への責任”を果たすべく、今年も努力を重ねていく所存です。

引き続き格別のご指導とご鞭撻をお願い致します。

2019、今年もあと僅か

京都・清水寺の森 清範貫主が揮毫した、世相を漢字一字で表す「今年の漢字」は“令“。2位以下に大差をつけての圧倒的な1位であった。

新元号「令和」に新たな次代の希望を感じた一年ということなのか、“令”という漢字が持つ意味に明るい時代を願う国民の思いが集約された結果なのだろう。

 

2位は“新“。理由には「新」元号、「新」しい時代やオリンピックに伴う「新」国立競技場の完成など、様々な分野で「新」制度が導入され「新」たな時代の到来を感じられたことによるものと分析されている。

3位から10位までは「和」、「変」、「災」、「嵐」、「水」、「風」、「天」、「税」の順となっている。「災」「嵐」「水」「風」などの一文字漢字は、多くの自然災害に見舞われた一年を象徴するものであろう。

 

同じく年末の風物詩として話題になるのは、“新語・流行語大賞”だ。今年のトップ10は、次のとおり。

計画運休、軽減税率、スマイリングシンデレラ、タピる、#KuToo、○○ペイ、免許返納、闇営業、令和、ONE TEAM。この中にも令和があるし、軽減税率、○○ペイなどは新制度によるもの、計画運休は災害に関係するなど、一文字漢字との共通点も多いようだ。

 

そんな今年の流行語大賞となったのは“ONE TEAM”。確かに今年最も輝いていた出来事はラグビー日本代表(ブレイブ・ブロッサムズ)の活躍だ。

流行語大賞にノミネートされたベスト30にも「ジャッカル」「にわかファン」「4年に一度じゃない、一生に一度だ」「笑わない男」など、大賞とあわせて五つも入っている。

桜のジャージをまとった勇士たちはワールドカップが終わってからも、テレビ番組に引っ張りだこだ。どうやら紅白歌合戦にも特別ゲストとして出演するらしい。

過酷な練習の日々に耐え、国民を熱狂の渦に巻き込み大きな感動を届けた選手たちは、間違いなく今年のヒーローだろう。

 

年が明ければ2020年はオリンピックイヤー、世界中のアスリートが日本に結集する。その中で日本の選手たちがどんな感動を届けてくれるのか、桜の勇士に負けない活躍を期待しているのは私だけではないだろう。

 

世界に目を転じると、2019年という年は世界各地で抗議デモや集会が相次ぎ、社会の不安定化が広がった一年だったと思う。

中でも私が注目しているのは、民主化を求める香港の学生たちと、気候変動の阻止を訴えて立ちあがった世界中の若者たちだ。前者は民主主義を守ろうというもの、後者は地球を守ろうというもの。目的や手段は違っていても、この2つのデモの共通点は未来を担う若い世代が活動の中心であるということだ。

社会の現状に対して危機感を共有した彼らから、目の前の利害に囚われ未来への責任を果たそうとしない政治家、大人たちへの警告と受け止めなければならない。そう考えると、日本の若者たちの現状肯定的な傾向が些か気になるこの頃である。

 

そんなことをあれこれと考えているうちに時は過ぎ、令和元年もあと僅かで終わる。

今年もまた「科学技術・イノベーション」「人材育成(教育)」に注力した一年だった。その一つの成果として、先日決定された経済対策で、令和5年度までに小中学生に1人1台のパソコンやタブレットの配備を目指す“GIGAスクール”が実現する運びとなった。

振り返れば様々な思いが脳裏をかすめる一年だったが、最後に大きな成果を上げることができ、満足感をもって今年も幕を下ろせそうだ。

 

この一年間、何かとお世話になり本当にありがとうございました。来年も引き続きのご支援ご指導を、よろしくお願い致します。

来るべき年が皆様にとって輝かしい年でありますように祈念いたします。

新しい経済対策(15カ月予算)

5日夕、政府は事業規模が総額26兆円程度となる、3つの柱で構成された新たな経済対策を閣議決定した。3年前の28兆円に匹敵する規模になる。

 

①   一連の災害からの復旧・復興と安全・安心を確保するためのインフラ整備。

河川の堤防強化やハザードマップの作製、被災した人々の生活再建のための方策など、ハード・ソフトの両面で対応策。

 

②   経済の下振れリスクへの備え。

米中貿易紛争など海外景気の減速懸念への配慮。デジタル化など生産性向上に向けた中小企業や小規模事業者を対象としたキメ細かな施策。

 

③   東京オリンピック・パラリンピック後を見据えた景気の持続、活性化策。

デジタル化時代に対応する人材育成のために、2013年度までに全ての小中学生に1人1台のパソコンやタブレットを配備。高速・大容量通信規格、 “ポスト5G”の開発支援や、若手研究者の長期支援する基金の創設。米国の月探査計画への参画や次世代スパコン“富岳”の開発の促進。

など、これら3つの柱には、200を超える施策が盛り込まれている。

 

経済対策は、2019年度補正予算と2020年度当初予算の15カ月予算として編成される。

政府与党からは「赤字国債の発行もやむを得ない、大型の経済対策を」と声高に叫ばれたが、巨額の財政赤字を抱える国家財政のもと、補正の規模をめぐって政府与党と財務省のせめぎ合いの中、最終的に赤字国債を税収減の範囲に留めるなど、省をあげて財政規律を守ろうとした。正にワンチームの対応。要求側であった私ではあるが、心から敬意を表したい。

 

“2013年の骨太方針”に盛り込んで以来の懸案事項だった学校のICT化は、デジタル時代を担う人材を育成する“未来への投資”として位置づけられた。

一人ひとりが専用の端末を持つほかに、学校の各教室に高速大容量の通信ネットワーク環境(校内LAN)を整備する。国として事業を実施する地方公共団体に対して4年にわたり継続的に財源を確保する。あわせて教育人材の確保や教育内容といったソフト面でも支援していく。大満足とまではいかなかったが、何とか道筋をつけられた思う。しかし問題はこれからだ。

 

政府は文科省を中心に「GIGAスクール実現推進本部」の設置を予定している。

学校のICT化とインターネット接続事業者を活用して、先端技術・教育ビッグデータとの融合により、誰一人取り残さない教育、特異な力をもつすべての子供に公正にチャンスを提供する教育を確立していく構想で、推進本部は関係省庁が参加した政府を挙げての強力な布陣を敷かなければならない。

 

先般、OECD(経済協力開発機構)が発表した2018年の学習到達度調査(PISA)の結果では、日本の15歳の「読解力」は前回調査の8位から大きく後退して15位。

調査と同時に実施したアンケートでは、日本の生徒は1週間の授業で「デジタル機器を使用しない」と答えたのは、国語83%、数学89%、理科が75.9%だった。利用率はOECD

加盟国中最下位だった。

 

文科省は、生徒がデジタル機器の操作に慣れていないことが影響した可能性があると指摘しているが、読解力低下の原因の一つがIT環境の未整備にあるとの分析もある。日本の子供たちに一日も早くタブレットを届けたいと思う。

今年の流行語大賞は“ワンチーム”。年末の「ゆく年」の話題NO1は、「サクラジャパン」で決まり!

桜は日本の春爛漫を彩るが、永田町では秋から冬にかけても季節外れのサクラがいまだに満開だ。政府の説明責任が充分果たされているとは言えないと私も思う。しかし、年末恒例の地元の忘年会に参加すると、「いつまでやってんだ!真面目に政策の議論をしろ」との声も多くなってきている。そろそろ国民もうんざりしているのでは?

来る年、2020年は政策議論が盛んな国会になって欲しいものだと心から願っている。

 

 

 

*GIGA=Global and Innovation Gateway for ALL の略。