国会論戦に望む

 「令和になって初めてのお正月」と言う言葉が、今年の年始挨拶でのキーワードではなかっただろうか。時には寒風が吹きすさぶ日もあったが、年末年始の9連休は総じて穏やかな天候に恵まれた。スキー場の雪不足を除けば、国内的には、まずまずの新時代の幕開けだったと言えるだろう。

 半面、海外からはスパイ映画のような驚きのニュースが次々と飛び込んできた。まずは年末の31日。日産自動車の元会長、カルロス・ゴーン被告が「私はいまレバノンにいる」との声明を発表した。保釈の条件であった海外渡航禁止を無視して、日本を出国したことを明らかにしたのだ。一説によると楽器のケースに入って、プライベートジェットにより旅立ったという。15億円の保釈金の多寡はともかく、我が国の司法制度がコケにされた形だ。国家として毅然とした対応が必要だろう。

 続いて1月3日には、イラン革命防衛隊の精鋭部隊「コッズ部隊」のトップ、カセム・ソレイマニ司令官がイラクのラク・バグダッドで米軍のドローンMQ9リーパーによる空爆で暗殺された。

 トランプ大統領は「イラク革命軍によるテロ計画の防止のための措置」と主張したが、とにかくこの攻撃で中東情勢は一触即発の危機に陥った。今のところイランの報復は抑制的で限定的な??米軍基地への弾道ミサイル攻撃に留まり、当面の危機は回避されている。ただ、この事案の巻き添えのような形でウクライナの旅客機がイラン軍の対空ミサイルにより撃墜されたようだ。今年の世界平和と経済は、ただでさえ不安定なこの地域の動向に左右されるだろう。

 このような中、政府は日本関係船舶の航行安全を確保するため、海上自衛隊の護衛艦と哨戒機のアラビア海への派遣を命令した。紛争地域となりかねない中東への自衛隊派遣を巡っては野党が再検討を強くて主張している。しかし、このような事態であるからこそ、自衛隊の派遣が必要なのではないだろうか。

 我が国は主要なエネルギーである石油の85%、LNGの23%を中東地域に依存している。この物流ルートの途絶は、国家存亡の危機を招きかねない。ゴーン氏への対応以上に毅然とした姿勢が求められる。

 20日から始まる通常国会で野党は、この中東問題よりも「桜を見る会」や「IR疑惑」に重点を置き、政府を徹底追求すると言っているようだ。

 しかし、私の知る限り、新年会などで耳にした国民の世論は少し違うようである。国内経済の成長をいかにして導き出すか? そして世界の繁栄にどのように貢献するか? 少子高齢社会の展望をいかにして示すか? それが今、政府に問われており、国会で議論すべき課題であると感じた。

 政府には国民の疑問に対してより丁寧な説明を、野党には活発な政策議論を期待したいものだ。