タイガース優勝に思う!

我らが阪神タイガースが、優勝マジック29を点灯させたのは8月16日のこと。残り37試合で2位広島に8ゲーム差をつけていた。その後、一時はマジックが消滅し不安が頭をよぎったこともあったが、9月1日に再点灯してからは破竹の11連勝。14日に2005年以来18年ぶりのセ・リーグ優勝!を決め、岡田彰布監督が6回宙に舞った。

 

タイガースが永年の悲願を達成できた伏線には、2015年の球団運営方針の“大転換”があると言われている。

前回優勝した後、06年からの10年間でタイガースは7回、Aクラス(リーグ3位以内)に入っている。この間、メジャーから移籍した福留孝介選手ら「FA組」はチームを精神的に支え、外国人選手は度々タイトルを獲得している。14年にはメッセンジャーが最多勝と最多奪三振、呉昇恒はセーブ王、マートンは首位打者と、助っ人は大活躍している。近年ではスアレスが記憶に新しい。

このように補強面で失敗したとは言えないのに、ペナントには手が届かなかった。2015年には、9月上旬に首位に立ちながら最終的には3位に終わった。

 

その年、当時の坂井信也オーナーから大号令がかかった。

「チームを壊して一から出直しや。地道に、ドラフトで素材の良い選手を取り、育てて、自前の骨太なチームにしよう」

オーナーの決断により組織の方向性が明確になり、資金の確保、新人選手の獲得、ベテランと若手の良好な関係構築など、多方面にわたる新戦略・新戦術が展開されていった。

 

当時の球団社長であった南信男氏(私と同郷の高砂市曽根町出身)は、坂井オーナーのビジョンを具体的な行動に移す役割を担い、組織の日々の運営において中心的な存在だった。特に、選手育成やスカウティングの強化、ファンエンゲージメントの向上、そしてマネジメント層とのコミュニケーションを効率化するなど、多くの面で貢献したと言われている。

 

新方針実現に向けて、球団は強いリーダー「アニキ、金本知憲監督」を熱望した。

南さんは「大転換だった。3年でも5年でもかけてやろう、となった。手始めの仕事は金本さんを口説くこと。承諾が得られるまで何度でも足を運ぶとの思いだった」と、当時を振り返る。

そして、金本新監督は“超変革”を唱え、ドラフト戦略を投手重視から野手重視に転換。16年以降のドラフト1位指名は、大山悠輔、近本光司、佐藤輝明、森下翔太選手らである。これら生え抜きの若トラが、今のチームの主力となっている。

 

私がこのドラマを知ったのはごく最近のことである。タイガース躍進の背景に、オーナーの決断と関係者のたゆまぬ努力があったことを知り、大いに考えさせられるところがある。

 

明確なビジョンを打ち出し、そのビジョンに基づいて具体的な戦略を立て、その実現に向けた種々の戦術を実行する。政治においても同じことが言える。心地よい響きだけのスローガンや誰からも不平の出ない人事を繰り返していては、世界をリードし、社会の変革をもたらすような大成果は得られない。

 

日本をどんな国にしようとしているのか明確なビジョンを打ち出し、そのビジョンに基づいたゆるぎない長期政策を立て、具体的なロードマップを作成し着実に事業を実行する。それが政治のあるべき姿ではないだろうか。

国際卓越研究大学

永岡桂子文部科学大臣は、1日、“国際卓越研究大学”について、「東北大学を初の認定候補に選んだ」と発表した。国際卓越大に選定されると、10兆円規模の大学ファンドから年間数百億円規模の支援を最長25年間受けられる。世界のトップ水準の研究力を目指すための新しい仕組みだ。

東北大の他に東大、京大、筑波大、東京科学大(東京工業大と東京医科歯科大が統合予定)、東京理科大、早稲田大、名古屋大、大阪大、九州大の計10大学が応募した。その選考に際し、国内外10人からなる有識者会議を設置して、書類審査やヒアリングを実施、6月には第一次選考候補を東京大、京都大、東北大の3校に絞っていた。

審査のポイントは、まずは国際的に注目される研究論文数などこれまでの研究実績、それに加えて「大学の目指す未来像」、すなわち3%程度の事業成長など、意欲的な事業・財務戦力や、大学運営の体制づくりの視点が重要とされていた。

東北大は、次世代型放射光施設「ナノテラス」などを運用して最先端研究を進めるとともに、日本語と英語の公用語化を導入し、外国人研究者と留学生の比率をそれぞれ30%に増やすことなどの意欲的な戦略提案が評価された。
ただし、東北大が掲げた▽民間起業家らの研究資金額10倍▽海外研究者の受け入れなどは課題が残るとして認定に留保をつけ、認定候補として同会議が来年度の計画認可まで伴走支援するとした。

そもそも「10兆円規模の大学ファンド」は、2020年6月に私が会長を務める自由民主党の科学技術・イノベーション戦略調査会から提言したものである。提言案をもとに財務省との厳しい折衝を経て、経済財政運営と改革の基本方針2020(骨太の方針)に「世界に伍する規模のファンドの創設」と明記され、2020年と2021年の補正予算で運用資金の拠出が実現したものである。

それだけに私は、今回の審査結果を期待を込めて注視してきた。様々な意見が寄せられる中、非常に厳しい審査であったと推察される。ここに至るまで有識者会議のメンバー各位のご努力に心より敬意を表したい。今後1年間伴走支援ということだが、さらなるご尽力をお願いしたい。

英語教育待ったなし

政府観光局(JNTO)によると、7月の訪日外国人旅行者数は232万600人となった。コロナ前の2019年の約8割まで回復したという。確かに東京駅のホームやコンコースは、いつも海外からの観光客と思われる方々で溢れている。

国別では、韓国62万6800人(2019年比11.6%増)、台湾42万2300人(同8.0%減)、中国31万3300人(同70.2%減)、香港21万6400人(同0.2%減)、米国19万8800人(同26.7%増)。中国の減少幅が大きいが、8月10日付で日本への団体旅行・パッケージツアーの販売禁止措置が撤廃されており、今後の急増が予想される。

 

一方で、「地球の歩き方」の調査によると、外国人旅行者が訪日中に不便に思うことの第1位は、「Wi-Fi環境」で31.5%。次いで「施設等のスタッフとのコミュニケーションがとれない」(20.2%)、3位「多言語表示の少なさ・わかりにくさ」(17.5%)、4位「公共交通の利用」、5位「ゴミ箱の少なさ」ということらしい。2位と3位は言葉に起因するものだ。

最近話題のチャットGPTに同じ質問をしてみると、1位「言語の問題」、2位「Wi-Fiアクセス」、3位「交通機関」、4位「現金主義」、5位「習慣やマナー」、6位「宿泊施設」、7位「食事」となった。やはり「言葉」が大きな課題となっている。

 

経済がグローバル化する中で、海外投資家から「日本は治安・秩序・インフラ等において圧倒的に優れているが、英語力不足で現地人材の雇用が困難」と指摘されている。世界の共通言語は英語であり、国際社会で議論をリードするためにも、科学技術イノベーション戦略の推進のためにも英語力は極めて重要である。

加えて、観光客からもこのような声がでている状況をみると、改めて「日本人の英語力向上」に向けて何らかの対策を講じなければなるまい。

英語教育の充実強化については、これまでも様々な試みが行われてきた。しかし、アジアにおける英語力ランキングでは、依然として韓国や中国に大幅に後れを取っている。今、英語教育のあり方が改めて問われている。

 

その方策をめぐって、過日、自民党「教育・人材力強化調査会」において、猪口邦子参議院議員からある提案が行われた。

「幼稚園保育園年齢からnative speakerによる一定の午後の時間を確保する。地域の国公立大学に在籍するnative speakerや教員や留学生が、幼保・小中高までの教育課程で、ボランティアやアルバイトとして、貢献し、協力しやすい環境を整備する」と言うものだ。幼児期からネイティブスピーカーの英語に触れる機会を十分に確保することによって、英語力の向上を図ろうとするものである。

 

2002年から2004年まで、軍縮会議日本政府代表部特命全権大使を務めた猪口議員の提案は、国際社会の現場を数多く見てきた経験に裏付けされたものである。今やDXの時代であり、幼児や生徒と会話するネイティブスピーカーは遠隔地にいても差し支えないだろう。ひょっとしたらAIでもその役割が果たせるかもしれない。これ以上の課題先送りは許されない。猪口提案を参考に何らかの形で、すべての子どもたちが活用できるシステムを構築したい。

今年の夏

7月27日、世界気象機関(WMO)と欧州連合の気象情報機関コペルニクス気候変動サービス(C3S)は、今年7月は観測史上最も暑い月となる公算が「きわめて大きい」と発表。これを受け、国連のグレテス事務総長は「地球温暖化の時代は終わり、地球沸騰化の時代が到来した」と警鐘を鳴らし、各国の指導者に気候変動対策を強化するよう訴えた。

 

日本でも記録破りの猛暑日が続いているが、灼熱の太陽のもと高校野球の聖地甲子園では、今年も球児たちの熱い戦いが繰り広げられている。

その甲子園を本拠地とする我らが阪神タイガースは、全国高校野球選手権大会期間中は、長期ロードを強いられることになる。

 

新幹線もなかった昭和30年代には、夜行列車を利用し、宿泊は大部屋で雑魚寝ということもあったようで、選手の肉体的負担も大きかったことから“死のロード”と言われていた。

今では新幹線のグリーン車や航空機で移動し、シティホテルの個室に宿泊となり、負担はずいぶん軽くなっている。冷房が行き届いたドーム球場での試合が続く場合もあり、「甲子園での連戦よりも楽」との声もあるようだ。

今年のロードは8月1日から始まった。甲子園に帰ってくるのは約1ケ月後の29日のDeNA三連戦になる。

 

15年ぶりに岡田彰布氏を監督に迎えたタイガース。開幕ダッシュに成功したものの、4月はその上をいく猛ダッシュのDeNAに及ばず二位。しかし、5月にそのDeNAとの甲子園直接対決で3連勝し首位に立った。その後、7月に一度だけ広島カープに首位の座を譲ったが一日で奪還、現在まで首位を走り続けている。

節目の100試合を消化した10日までの戦績は、58勝38敗4分の勝率は6割4厘で貯金は20。二位の広島カープとは4.5ゲーム差となっている。

 

ペナントレースも残すところ43試合。このままシーズンを走り続け、岡田監督口癖の「アレ」を! 是非とも18年ぶりの栄冠を勝ち得て欲しいと、心から願っている。

 

本拠地甲子園はもとより、日本中どこの球場に行っても黄色いユニフォームを着たタイガースファンの見事に揃った応援には頭が下がる思いである。

得点が入るたびに、応援席から湧き上がる「六甲おろし」が球場全体に広がっていくのを聞くとき、タイガースファンは最高に幸せな気持ちになる。私も時間を見つけて球場へ足を運び、そんな幸せな気分を味わいたいものだ。

 

3年半のコロナ禍から解放された今年は、各地で夏祭りやイベントも復活し、久しぶりに地元で忙しい日々を送っている。

15日の終戦記念日には上京して、今年も日本武道館での全国戦没者追悼式に出席する。国のために命をささげられた方々、戦渦の犠牲になられた方々に哀悼の意を表することはもちろんであるが、この機に改めて平和の持続に感謝し、永久の不戦を誓いたい。

 

戦後78年が経とうとしている。私の人生とほぼ同じ歩みである。この国の戦後の歩みについて改めて振り返り、未来に思いを馳せると同時に、自らの人生を振り返り今後の行く末を考える。そんな終戦記念日にできれば幸いである。

高校授業料の無償化

少子化の議論の中心的課題である教育費の負担軽減について、大阪府が打ち出した「高校授業料の全面無償化」の計画案をめぐり、教育現場に波紋が広がっている。

大阪府では「高校間の競争と淘汰」を揚げた橋下徹府知事(当時)のもと、2010年度から無償制度を進め対象を徐々に広げてきた。その結果、府内では22年度の私立高校入学者は10年度比で6%増え、2割超減った公立とは対照的な姿をみせている。

 

今回の府の案は、対象世帯の所得制限を段階的に廃止し、2026年度に全生徒の授業料を実質無償にする内容だ。

統一地方選挙の目玉政策として打ち出したが、定員割れの相次ぐ公立高のみならず、私立高やその保護者も反発。不満が噴出している。無償化の進展とともに、恩恵を受けたはずの私立高にも反発が広がるのはなぜなのか。

 

その最大の理由は、私学の経営権に制限を加えるような制度設計にある。府の補助対象は私立高校授業料の平均から算出した「1人あたり年間60万円」を上限とし、超過分は学校側が負担する仕組みとなっている。従来の一般的な制度では、公費補助の超過分は家庭が負担するのものだが、今回の案では学校に負担を求めるという異例の形式だ。

大阪維新の歴代知事と同じく、負担を家計に回せば「無償化が形骸化する」との考えにこだわってきた経緯がある。

 

府内の私立高のうち、授業料が60万円以下なのは約6割にとどまる。今回の案を受け入れれば、残りの4割の学校で「持ち出し」=学校側の負担増が発生することになる。その額は全体で年間8億円に及び、学校経営が圧迫されることは避けられない。

授業料を無理に60万円以下に収めようとすれば、教職員の削減、校舎等の設備更新の先送りなどの経費抑制が必要となり、それは教育環境の質の低下を招くことになる。保護者が憂慮するのはまさにその点だ。

無償化に不参加という道を選べば、生徒募集で不利を被ることとなり、これも結果的に経営体力が奪われることにつながる。

このように教育を提供する側にも、受ける側にも不合理な結果が予想される案には、疑問を呈さざるを得ない。

 

大阪府の無償化案は、兵庫県をはじめ近隣府県の私立高校にも大きな影響を与える。大阪府から通学する生徒を受け入れる場合には、府内の私学と同様に超過負担を求める仕組みとなっているためだ。

6月19日、大阪市内で近畿2府4県の私学団体による意見交換会があった。

出席した灘高参与で前校長の和田孫博さんは、府の完全無償化を「兵庫の生徒にも不公平になる」と批判。ほかの参加者からも反対や懸念の声が相次いだ。

 

全国屈指の進学校である灘高では、約660人の生徒の3割が大阪府から通学している。200人分として年間約1600万円の学校負担が生じる、つまり収入が減少するという。

和田さんは「完全無償化は理念としては賛成だが、大阪府の施策によって兵庫県を含めた生徒たちの教育の質が下がるのは本末転倒だ」と話す。

兵庫県私立中学高等学校連合会によると、授業料平均は約45万円だが、施設整備などその他の費用は学校によって様々であるため、現時点では参加高校の見通しは不透明だとする。

 

大阪府は「賛同してもらえる学校だけに参加してもらう形を想定している」とし、近く同連合会に素案を説明。8月をめどに制度案をまとめるとのこと。

「全面無償化」と言う言葉にこだわり、学校経営の自由度を束縛し、教育の質の低下を招くことのないよう、ましてや周辺府県の学校運営に悪影響を与えないよう再考を求めたい。

安倍元総理一周忌に思う

安倍晋三元総理大臣が奈良市での街頭応援演説中に銃撃され、凶弾に倒れてから1年。8日には、東京・港区の増上寺で一周忌法要が営まれた。午前中の法要は、安倍昭恵夫人や親族のほか、岸田文雄総理をはじめ歴代総理、親交のあった政界・経済界の関係者のみで執り行われた。午後には我々国会議員にも焼香の機会が設けられたので、遺影にこうべを垂れ、手を合わせてきた。

 

境内に設けられた一般向けの献花台では、訪れた方々が次々と花を手向け、周囲に設置された安倍氏の生前のパネルの前で写真撮影をされる方も多かった。また、惨劇があった奈良市の近鉄西大寺前駅にも献花台が設けられ、朝から多くの方々が弔意を示したとも報じられている。

増上寺には約5,000人、奈良の現場には約4,000人の献花者が訪れたという。改めて安倍元総理の国民的人気の高さが偲ばれる。

 

私が初めて安倍さんに会ったのは1986年のこと。

当時自民党総務会長であった父君の安倍晋太郎先生が、タイのアジア工科大学院名誉工学博士の授与式に外遊された際に、当選したての新人議員として同僚とともに同行した時だった。

安倍さんは晋太郎先生の秘書として随行されていたが、当時はどちらかと言うと控えめな青年で、後の“闘う政治家”との印象は全くなかったと記憶している。

 

その後、晋太郎先生の死去に伴い後継者として衆院選に初当選されたのが1993年。私はその時の総選挙では、自民党を離党して「新党さきがけ」に所属していたので、接点はあまりなかったのだが…。

復党後の2005年のいわゆる郵政解散選挙で、若手のリーダーと言われメキメキ頭角を現していた安倍さんには、党幹部として加古川に応援に駆けつけていただいた。安倍さんはサラリーマン時代の初任地が神戸製鋼所加古川製鉄所だったので、街頭応援演説で駅前の焼鳥屋の話題などを懐かしそうにスピーチされたのを今も鮮明に記憶している。

 

仕事上での安倍さんとの思い出といえば、2018年の「公立小中学校等のクーラー設置」と2019年の「GIGAスクールの推進」の二つが思い起こされる。

これらのプロジェクトは時代の要請に応えたものなので、いずれは実現したであろうが、総理としての決断と指導力がなければ、ゆっくりとしか進まなかっただろう。

中でもGIGAスクールの推進は財務省の抵抗が強く、総理の強力な後押しがなければ、あのタイミングでの実現は難しかったと思う。結果論ではあるが、後のコロナ感染拡大による学校閉鎖などを考えると、本当にやっておいて良かったと思っている。

 

メディアでも報じられているが、安倍さんと生前に関係のあった人々をはじめ、多くの国民が様々な思いを馳せた7月8日であった。

一周忌にあわせて有志によって開かれた都内での集会で岸田総理は、1993年の初当選以来およそ30年にわたって親交を深めた思い出を語り、安倍さんの遺志を受け継ぎ我が国が直面するさまざまな課題の解決に全力を挙げる考えを強調された。

 

現政権が抱える政策課題には、憲法改正や拉致問題、防衛力の強化や自由で開かれたインド太平洋構想の推進など、安倍イズムを継承した案件が数多い。

一方で岸田総理は、自らが提唱する新しい資本主義の具体化やアベノミクスからの出口戦略など、そろそろ自らのカラーを前面に押し出した政策推進に力点を置いても良いのではないかと、私は思っている。

 

 

公立小中学校等のクーラー設置=近年、気候変動の影響により学校管理下において熱中症が多発。2018年度には全国で7,000件を超えた。2017年のクーラー設置状況は普通教室52.2%、特別教室(音楽室等)36.6%。それが2018年度補正で抜本的な設置加速を打ち出してから急速に改善。2022年9月現在、それぞれ95.7%と63.3%となっている。

 

GIGAスクール=全国の児童・生徒に1人1台のパソコンと、コミュニケーションツールとして高速大容量の通信ネットワークを一体的に活用整備する構想。2019年から導入され、コロナ禍でオンライン化の可能性が再確認された。教育現場が劇的に変貌しつつあり、海外からも「日本に倣え」と注目を集めている。

解散の大義

先週16日の衆議院本会議で、立憲民主党が提出した岸田文雄内閣不信任決議案の採決が行われた。泉健太代表による提案趣旨弁明は、防衛政策の戦略性欠如や防衛費大幅増額、子育て支援策の財源問題、マイナンバーカードを巡るトラブル等々、国民の不安を顧みない岸田政権の政治姿勢は政権を担当する資格がない、とするものであった。

採決では与党の自民・公明両党のほか、日本維新の会と国民民主党などの圧倒的反対多数で否決された。

 

内閣不信任決議案が提出されると他の審議はすべてストップし、その採決が最優先となる。憲法第69条は衆院で決議案が可決された場合、内閣は10日以内に衆院を解散しない限り、総辞職しなければならないと定めている。

かつて可決されたのは4回。1948年と53年の吉田茂内閣、80年の大平正芳内閣、93年の宮沢喜一内閣だ。いずれもドラマチックな展開で解散総選挙に至っている。

 

80年は野党が提出した決議案の採決に、党内反主流の福田派や三木派が欠席したため可決。憲政史上初の衆参同日選が行われ、そのさなかに大平総理が急死されたが、選挙結果は両院とも自民党が大勝した。

父・元三郎にとっては10回目の衆院選であったが、当時、肝臓を患い病床に伏していた。そのため、選挙が大嫌いだった私が父に代わって最前線で戦うことを強いられたのだった。ハプニング解散と名付けられたあの選挙がなかったら、その後の私の政治人生は無かったかもしれない。

 

93年は、政治資金や選挙制度改革を巡る自民党内の対立を受け、小沢一郎氏らが造反して賛成に回り不信任案が可決された。多数の離党者を出した自民党は総選挙で過半数を確保できず、非自民8党派による細川護熙連立政権が誕生。自社二大政党による55年体制に終止符が打たれた。

当時私は、仲間とともに秋に新党を結成すべく準備を水面下で進めていたが、急遽自民党を離党し、「新党さきがけ」の結党に参加して総選挙に臨んだ。あの時、不信任案可決という展開がなければ、その後の政局も大きく変わっていたかもしれない。

 

これらのケースのようにハプニングで不信任案が可決された場合はともかく、与党が議席の過半数を有する場合は粛々と否決すれば良いのであり、解散の必要はない。仮に解散を行うとすれば、それは憲法第7条に基づく天皇の国事行為ということだ。当然、それに値する大義が必要となる。大義とは国政を左右する政策転換に際して国民の信を問うということであり、不信任案提出自体は大義とは言えないだろう。メディア各社の調査でも、現時点での総選挙に肯定的な国民世論は高くない。強行していれば党利党略との批判は免れなかっただろう。

 

このコラムでも言及したが、私は現時点での解散には反対なので、今回の総理の判断は妥当だと考えている。

解散がなければ2年先の参議院選挙まで大型の国政選挙は行われない。国民から与えられた議席の重みを大切にして、この間に山積するこの国の課題解決に最大限の努力を行うべきである。岸田総理には政権延命に捉われることなく、この国の未来への責任を果たすべく、リーダーシップを発揮してほしい。

異次元の少子化対策

1日に開催された“こども未来戦略会議”で、政府は少子化対策の基本理念と今後3年間の集中的な取組「加速化プラン」の案を有識者会議に示した。プランの柱となる児童手当については、所得制限を撤廃した上で対象を高校生まで拡大し、0歳から3歳未満は1人あたり月額1万5000円、3歳から高校生までは1万円を支給するとし、第3子以降は高校生まで年齢にかかわらず月額3万円に増額する方針だ。そのほか、保育所の入所要件の緩和、出産支援の強化や育児休業給付の充実なども明記されている。

 

一方で必要となる財源については、▽社会保障の歳出改革に加え、社会全体で負担する新たな支援金制度の創設などで2028年度までに確保するとし、▽制度が整うまでに不足する分は一時的に「こども特例公債」を発行して賄うとしている。徹底した歳出改革などを通じ、国民に実質的に追加負担が生じないようにするとのことだが、果たして、そんなことが可能なのだろうか!?いささか疑問である。

 

政府案を受けて、党本部で少子化対策を議論する合同会議が開催された。多くの議員の出席で一番大きい会議室が満杯となり、この問題への関心の高さが窺われた。

会議では「社会保障費の削減はすでに限界であり、国民生活に影響が出る恐れがある」「国民負担を極力避けるために新たな国債を発行すべきだ」「財源は必ず明らかにしなければならず、社会保険料をどうするかなど一定の議論の方向性を発表すべきだ」「将来的な増税の要否を議論すべきだ」等々の意見が出されたが、最終的に今後の対応は茂木敏充幹事長や萩生田光一政調会長らに一任することとなった。

 

以前にもコラムで言及したが、今回の政府案は育児期の経済支援に重点が置かれており、教育対策が全く不十分であると考えている。党内からの提言では、「教育費負担の軽減」と「公教育の再生」の2つの柱を提案したが、加速化 プランではほんの一部が記載されたのみである。

「公教育の再生」については、理念部分で「質の高い公教育を再生することが、基礎的な教育に関わる子育て、家庭の負担減にもつながる。このため、公教育の再生にむけた取り組みを着実に進めていくことが必要である」と言及されているものの、具体的な対策は記述されていない。

「教育費の負担軽減」も奨学金や授業料免除の拡充策は示されているものの、大学授業料後払い制度(仮称)の対象が修士段階に限定されている。これでは全く不十分であり、本命ともいえる学部段階への導入にも明確にコミットしなければ、異次元の対策にはほど遠い。

 

教育投資は、岸田総理が掲げる新しい資本主義の柱の一つ “人への投資”そのものだ。有能な人材の活躍が、将来の経済発展や所得増大をもたらし、ひいては税収増につながる。そういう長期的視点に立って、戦略的に政策を立案し、推進していくべきだはないだろうか。

 

コロナの影響があったとは言え、このままでは2030年に入ると我が国の若年人口は現在の倍速で急減を始め、少子化はもはや歯止めの効かない状況になる。これからの6~7年が、少子化傾向を反転できるかどうかのラストチャンスである。

国民の理解と協力がなければ、この危機は乗り越えられない。そのためにも与野党の垣根を越えて議論し、解決策を提案していかなければならない。

それが国民から負託を受けて国政に参加する我々政治家に課せられた「未来への責任」だ。

 

G7広島サミット

19日から広島で開催された今年のG7サミット。激戦が続くウクライナから大統領が来日したことにより、例年以上に世界の脚光を浴びた。「広島から核廃絶と世界平和を呼びかける」との岸田文雄総理の思いは、ゼレンスキー大統領の出席で、より力強いメッセージとなり発信された。

 

国際秩序に混乱をもたらしているロシア、中国に対してG7諸国が結束して対抗していくことは従来からの方針であるが、今回の会合でF16のウクライナへの供与をはじめ、一歩踏み込んだ合意形成が図られた。

それ以上に重要なのは、招待国として参画していたグローバルサウスの指導者たちとゼレンスキー大統領の個別対話により、ウクライナ問題について中立的な立場をとってきた新興国・途上国の理解が深まったことである。

 

なかでも注目されたのはインドの対応だ。インドとロシアは経済面でも軍事面でも深い関係にあり、3月の国連総会でのロシア非難決議も棄権した。そんなインドとウクライナがトップ会談を行うことは極めて難しい状況であったが、G7サミットという場があったからこそ可能となった。モディ首相は「ウクライナで続いている戦争は世界全体にとって大きな問題だ。経済や政治にとどまらず、人道的な問題だと私はとらえている」と述べたうえで、「インド、特に私は個人レベルで解決のためにできることは何でもする」と、ゼレンスキー大統領に伝えとされている。

 

19日にはG7メンバーが平和記念公園の原爆資料館を視察し、その後、原爆慰霊碑にそろって献花し、犠牲者に祈りをささげた。21日には、インドや韓国、ブラジルなど招待国の首脳ら、そしてゼレンスキー大統領も同様に祈りをささげた。その姿に深い感銘を覚えたのは私だけではないだろう。

各国首脳が核爆弾の使用が如何なる惨禍を引き起こすかを広島の地で共有し、世界にその不使用を発信することは、核兵器使用に対する大きな抑止力となるにちがいない。

 

この他にも、G7広島サミットでは、気候変動への対応、食料安全保障の確立、感染症危機への枠組み創設、信頼できるAIへの目標設定など、数多くの政策方針に関する合意が得られた。

様々な成果があった首脳会合だが、共同声明が実現されなくては何の意味もない。参加各国、とりわけ議長国である日本には大きな責任がある。岸田総理のリーダーシップのもと、しっかりと声明の具体化を図り、それを実行していかなくてはならない。

 

話は変わるが、サミットが終わった直後から、メディアの紙面で「解散」の文字が躍っている。

総理は「今、重要な政策課題に結果を出すことを最優先で取り組んでいる。解散・総選挙については考えていない」と答えているが、これだけはその時になってみないとわからない。

私は現時点では解散総選挙は行うべきでないと考えている。今はまだやるべきことが山積している。

骨太の方針

4月29日から始まった今年のゴールデンウィーク。コロナ禍で3年間見られなかった「日本民族大移動」の光景が新幹線の駅や空港に戻ってきた。近場指向と言われた今年だが、全国各地の繫華街や行楽地の人手が、コロナ前を上回る賑わいをみせていた。

激減していた海外からの旅行客も順調に復調している。姫路駅のホームも、世界遺産「国宝姫路城」を訪れた海外からの観光客が数多く見られた。新型コロナの感染症法「5類」移行を前に、国民生活は確実に平時に戻りつつあることが実感された黄金週間だった。

 

大型連休が終わると、永田町では6月に取りまとめられる骨太方針にむけて、来年度予算を含む今後の政策の方向性を決定する議論が本格化する。今年の主役は少子化対策だ。

すでに3月末に小倉將信少子化大臣によるたたき台が発表され、政府による基本的な方針は示されているものの、子ども手当の規模や所得制限など、提案されている政策の具体的な制度設計や行程表、財源についての議論はこれからだ。

政府は4月7日立ち上げた「こども未来戦略会議」のもとで議論を重ね、個別施策の内容や財源の大枠を示す考えだ。

 

ただ、たたき台に掲げられている児童手当の所得制限の撤廃をめぐっては、複数の委員から疑問の声があがっているほか、財源論についても多くの発言が飛び交っている。

政府・与党内で公的医療保険など社会保険料の引き上げ案が浮上している一方、経済界や労働団体は現役世代への負担集中を警戒し、消費税を含む幅広い税財源の検討を求めている。 他方、自民党「こども・若者」輝く未来創造本部長の茂木敏充幹事長は「増税や国債は想定せず、歳出削減の徹底や既存の保険料収入の活用でできる限り確保」と方針を示した。

 

加藤勝信厚労大臣は「社会保険料は医療、年金、介護といった、それぞれの目的に即して負担を定めており、例えば年金の財源を子ども政策に持っていく余地はない。社会保険料方式なのか税なのか、やるべき施策を含めてよく議論したい」と述べている。また小倉少子化相は、「首相は『消費税は当面触れない』と言っているが、それ以外は『慎重な検討を要する』とし、国債も含め、あらゆる財源の議論を排除しない」と言及した。

 

私は、国債は繋ぎ財源にすぎないし、経済が確実に成長軌道に乗るまでは社会保険料拡大や消費税増税も控えるべきだと考える。が、今後の日本の人口動態を考慮すれば、将来の税の在り方の議論は避けて通れないだろう。もちろん、少子化対策をはじめとする政策が功を奏し、経済成長をもたらすことによって、消費税、所得税等の税収が増大することが最も望ましいことは間違いない。

 

いずれにせよ、国民の理解と協力は欠かせない。「出生数はなぜ長期にわたって減少を続けているのか」をしっかり分析し、その改善に有効な対策を絞り込み(所得制限の要否も含め)、そのうえで政策実行に必要な財源を確保していかなくてはならない。時間は限られているが、日本の未来を見据えて、責任ある議論が求められている。