英語教育待ったなし

政府観光局(JNTO)によると、7月の訪日外国人旅行者数は232万600人となった。コロナ前の2019年の約8割まで回復したという。確かに東京駅のホームやコンコースは、いつも海外からの観光客と思われる方々で溢れている。

国別では、韓国62万6800人(2019年比11.6%増)、台湾42万2300人(同8.0%減)、中国31万3300人(同70.2%減)、香港21万6400人(同0.2%減)、米国19万8800人(同26.7%増)。中国の減少幅が大きいが、8月10日付で日本への団体旅行・パッケージツアーの販売禁止措置が撤廃されており、今後の急増が予想される。

 

一方で、「地球の歩き方」の調査によると、外国人旅行者が訪日中に不便に思うことの第1位は、「Wi-Fi環境」で31.5%。次いで「施設等のスタッフとのコミュニケーションがとれない」(20.2%)、3位「多言語表示の少なさ・わかりにくさ」(17.5%)、4位「公共交通の利用」、5位「ゴミ箱の少なさ」ということらしい。2位と3位は言葉に起因するものだ。

最近話題のチャットGPTに同じ質問をしてみると、1位「言語の問題」、2位「Wi-Fiアクセス」、3位「交通機関」、4位「現金主義」、5位「習慣やマナー」、6位「宿泊施設」、7位「食事」となった。やはり「言葉」が大きな課題となっている。

 

経済がグローバル化する中で、海外投資家から「日本は治安・秩序・インフラ等において圧倒的に優れているが、英語力不足で現地人材の雇用が困難」と指摘されている。世界の共通言語は英語であり、国際社会で議論をリードするためにも、科学技術イノベーション戦略の推進のためにも英語力は極めて重要である。

加えて、観光客からもこのような声がでている状況をみると、改めて「日本人の英語力向上」に向けて何らかの対策を講じなければなるまい。

英語教育の充実強化については、これまでも様々な試みが行われてきた。しかし、アジアにおける英語力ランキングでは、依然として韓国や中国に大幅に後れを取っている。今、英語教育のあり方が改めて問われている。

 

その方策をめぐって、過日、自民党「教育・人材力強化調査会」において、猪口邦子参議院議員からある提案が行われた。

「幼稚園保育園年齢からnative speakerによる一定の午後の時間を確保する。地域の国公立大学に在籍するnative speakerや教員や留学生が、幼保・小中高までの教育課程で、ボランティアやアルバイトとして、貢献し、協力しやすい環境を整備する」と言うものだ。幼児期からネイティブスピーカーの英語に触れる機会を十分に確保することによって、英語力の向上を図ろうとするものである。

 

2002年から2004年まで、軍縮会議日本政府代表部特命全権大使を務めた猪口議員の提案は、国際社会の現場を数多く見てきた経験に裏付けされたものである。今やDXの時代であり、幼児や生徒と会話するネイティブスピーカーは遠隔地にいても差し支えないだろう。ひょっとしたらAIでもその役割が果たせるかもしれない。これ以上の課題先送りは許されない。猪口提案を参考に何らかの形で、すべての子どもたちが活用できるシステムを構築したい。