AI新時代

2022年11月に米国のOpenAI社が提供を開始したChatGPTは、全世界に大きな衝撃を与えた。誰でも簡易に高度な人工知能(AI)の恩恵を受けられる時代が到来したのだ。

その計り知れない影響について、「これまでのホワイトカラーの仕事のほぼすべてに影響が出る可能性が高い」「AIを使い倒しコンテンツが無限に生み出される時代に」「内燃機関、半導体、インターネットの発明に匹敵するようなことが爆発的な速度で起きている」など、数多くの意見が出されている。

 

日常生活やビジネスにおけるAIの使用場面は爆発的に増えている。年々進化を続けるAIにより、生産性が急速に向上し、働き方が劇的に変化し、言語の垣根が低くなるなど、様々な社会経済システムの前提条件が根本的に変わろうとしているのだ。

そして、数か月で世界を席巻したChatGPTの威力は、まさしく「AI新時代」の幕開けを示している。一昔前は、「単純な作業はコンピュータに任せ、人間は創造的な仕事に取り組もう」と唱えられていたが、今や「創造的な業務」もAIが代替してくれるようになろうとしている。文章の添削や要約をはじめ、アイディアの提案、科学論文の執筆、プログラミング、画像生成に至るまで、新しい使われ方が次々に生まれている。

 

一方、AIも万能ではない。データ等に起因する誤りやバイアスの問題に加えて、画像生成や音声合成などの技術進歩により、真贋の判別が困難な高度なフェイク情報の拡散など悪用のリスクも高まっていくことが危惧されている。AIを用いたプライバシー侵害サイバー攻撃や軍事利用の懸念なども深刻化している。

こうしたリスクはAIの進化と普及に伴って拡大しており、欧米諸国では、AIの開発促進と並行して規制論議も加速している。例えばEUでは、2019年頃より、AIによる人権や人の健康・安全等のリスクを4分類し、リスクの程度に応じて規制を行うべく法案作成が進められてきた。米国でも同様に、AIによる人権侵害や安全保障上のリスクを念頭に置いた規制法案の検討が行われている。

その過程で、EUと米国は連携・協力しながら、同じ価値観に基づき、相互乗り入れしやすい法制度を志向し始めた。AIの開発や利活用に国境はない。国際的な規制システムとの乖離は日本のAI市場の孤立を招く。我が国も早急にこの議論に加わるべきだ。

 

来る29、30日に群馬県高崎市で開かれる先進7カ国(G7)デジタル・技術相会合では、対話型人工知能(AI)「チャットGPT」などへの懸念を念頭に、文章や画像を自動でつくる生成AIの「潜在的な影響力の分析や研究の加速化」を提唱するとともに、「AIガバナンスの推進」を揚げ、適切な利用に向けた行動計画の策定も目指すといわれている。

適正なルールのもとでAIが更に進化することにより、人類に豊かな未来をもたらすことを期待し、G7の議論を見守っていきたい。