骨太の方針

4月29日から始まった今年のゴールデンウィーク。コロナ禍で3年間見られなかった「日本民族大移動」の光景が新幹線の駅や空港に戻ってきた。近場指向と言われた今年だが、全国各地の繫華街や行楽地の人手が、コロナ前を上回る賑わいをみせていた。

激減していた海外からの旅行客も順調に復調している。姫路駅のホームも、世界遺産「国宝姫路城」を訪れた海外からの観光客が数多く見られた。新型コロナの感染症法「5類」移行を前に、国民生活は確実に平時に戻りつつあることが実感された黄金週間だった。

 

大型連休が終わると、永田町では6月に取りまとめられる骨太方針にむけて、来年度予算を含む今後の政策の方向性を決定する議論が本格化する。今年の主役は少子化対策だ。

すでに3月末に小倉將信少子化大臣によるたたき台が発表され、政府による基本的な方針は示されているものの、子ども手当の規模や所得制限など、提案されている政策の具体的な制度設計や行程表、財源についての議論はこれからだ。

政府は4月7日立ち上げた「こども未来戦略会議」のもとで議論を重ね、個別施策の内容や財源の大枠を示す考えだ。

 

ただ、たたき台に掲げられている児童手当の所得制限の撤廃をめぐっては、複数の委員から疑問の声があがっているほか、財源論についても多くの発言が飛び交っている。

政府・与党内で公的医療保険など社会保険料の引き上げ案が浮上している一方、経済界や労働団体は現役世代への負担集中を警戒し、消費税を含む幅広い税財源の検討を求めている。 他方、自民党「こども・若者」輝く未来創造本部長の茂木敏充幹事長は「増税や国債は想定せず、歳出削減の徹底や既存の保険料収入の活用でできる限り確保」と方針を示した。

 

加藤勝信厚労大臣は「社会保険料は医療、年金、介護といった、それぞれの目的に即して負担を定めており、例えば年金の財源を子ども政策に持っていく余地はない。社会保険料方式なのか税なのか、やるべき施策を含めてよく議論したい」と述べている。また小倉少子化相は、「首相は『消費税は当面触れない』と言っているが、それ以外は『慎重な検討を要する』とし、国債も含め、あらゆる財源の議論を排除しない」と言及した。

 

私は、国債は繋ぎ財源にすぎないし、経済が確実に成長軌道に乗るまでは社会保険料拡大や消費税増税も控えるべきだと考える。が、今後の日本の人口動態を考慮すれば、将来の税の在り方の議論は避けて通れないだろう。もちろん、少子化対策をはじめとする政策が功を奏し、経済成長をもたらすことによって、消費税、所得税等の税収が増大することが最も望ましいことは間違いない。

 

いずれにせよ、国民の理解と協力は欠かせない。「出生数はなぜ長期にわたって減少を続けているのか」をしっかり分析し、その改善に有効な対策を絞り込み(所得制限の要否も含め)、そのうえで政策実行に必要な財源を確保していかなくてはならない。時間は限られているが、日本の未来を見据えて、責任ある議論が求められている。