終盤国会

6月7日、「経済財政運営と改革の基本方針2022(骨太方針2022)」が閣議決定された。

骨太方針2022では、日本のマクロ経済運営について、2段階のアプローチを提示。まず第1段階で、総合緊急対策により厳しい状況にある人々を全力で支援、そして第2段階で、新しい資本主義に向けたグランドデザイン・実行計画をスタートさせるための総合的な方策を実行していくとしている。

岸田総理は、新しい資本主義について「市場や競争任せにせず、資本主義が本来もたらす便益を最大化、最適配置する」と基本方針を示し、「気候変動問題やSDGs(持続可能な開発目標)など、社会的課題をエネルギー源と捉え、新たな成長を図る」とも述べている。

 

具体的な政策としては、①人への投資と分配、②科学技術・イノベーションへの投資、③新ビジネスや市場開拓をおこなうスタートアップへの投資、④グリーントラスストインフォメーションとデジタルトランスインフォメーションの4分野に重点を置くとした。

 

人への投資については、2024年度までの3年間で、一般から募集したアイデアを踏まえた4000億円規模の施策パッケージを講じる。労働者が自らの意志でスキルアップし、ITなどの成長分野で働けるよう支援することなどが盛り込まれた。

 

また、グリーントラストインフォメーションについては、2050年の脱炭素社会実現に向けた経済・社会、産業構造変革への道筋の大枠を示したロードマップを年内に取りまとめる。

 

今年度の骨太方針の特色は、昨今の国際環境の変化に対応すべく、防衛力の抜本的強化が明示されたことだろう。その内容については、党政調会での議論の段階で、予算額や期限について、多くの議員が発言、長時間に及ぶ会議を経ても決着がつかず高市早苗政調会長預かりとなった。最終的にはNATO=北大西洋条約機構の加盟国がGDP=国内総生産の2%以上目標としていることを例示したうえで、防衛力を抜本的に強化する期限を「5年以内」とすることで決着した。

 

防衛力強化以上に激しい党内論戦が交わされたのが、歳出改革に関する表現方法についてだ。積極財政派から「政府原案の「骨太方針2021に基づき」という文言を削除すべきだ」(=2025年度という財政健全化目標時期を先送りせよ)という多くの主張が行われ、会議が紛糾、一時は怒号が飛び交う状況となり、取りまとめが難航した。“積極財政派”と“財政再建派”の全面対決は、岸田総理も巻き込んだ調整の結果、「骨太方針2021に基づき」との表現は維持する一方、「重要な政策の選択肢をせばめることがあってはならない」という一文を追加する玉虫色の表現で決着した。参議院選挙を目前にして党内の分裂を避けなけなければという求心力が働いたもの、野党の現状とは正反対だ。

 

骨太方針決定の二日後、9日には会期末恒例の内閣不信任案が出されたが、野党の足並みの乱れもあり圧倒的多数で否決。15日には今国会も閉幕となり、22日からは参議院選挙がスタートする。岸田内閣として評価が問われる初めての国政選挙だ。現状では与党に有利と報道はされているが、選挙は一瞬にして風向きが変わることがある。勝利が確定するときまで、気を緩めることなく臨まなければならない。今年も暑い夏になりそうだ。