17日にスタートを切った自民党総裁選も、残すところ1日。メディア各社は 各候補の獲得票予想と解説に忙しい。永田町では派閥所属議員の投票行動予想を カラーで色分けした一覧表まで出回っている。今回は前回、前々回と違い、派閥 の締め付けがきつくないので、投票行動の予想が難しい。 現時点では国民の人気の高い河野太郎候補が4割強の党員票を獲得して、リー ドしている。しかし、一回目の投票で議員票と合わせて総得票数の過半数382 票を獲得するには至らず、1、2位による決選投票になることが確実視されてい る。決戦投票では地方票が47票に減るため、382票の議員票の行方が結果を 大きく左右することになる。 過去の総裁選では、最初の投票で1位だった候補が決戦投票で逆転されるケー スが2回あったが、今回は直後に衆議院総選挙が控えている。比較的国民世論と 近い傾向にある党員票の結果を永田町の論理で逆転することは、総選挙にマイナ スに働くことは間違いない。議員心理は自ずと党員票を尊重する方向に流される だろう。 私は5割の党員票獲得が判断基準の目安になると考えている。自民党員のみと は言え、全国100万人余りの民意を反映する票数である。その過半数を占める 支持を得た候補を382人の国会議員の意思で覆すのはいかがなものだろうか。 現に河野氏陣営では「党員票の多数を得た候補を決戦投票で逆転すれば、批判さ れて衆院選で痛い目に合う」とけん制する。これに対し閣僚経験者は「河野氏の 党員票が5割以上なら逆転は許されない雰囲気になるが、5割未満なら『反河 野』が半数以上いることになり、逆転は許される」と話す。 決戦投票では派閥の論理も強くなると言われているが、そんな自民党の体質が 問われていることを忘れてはいけない。当選3回以下の集まりで、派閥中心の総 裁選びに異議を唱える「党風一新の会」の動きに期待したい。 新しく選出された自由民主党総裁は、10月4日に召集される臨時国会で首班 指名を受け、第100代内閣総理大臣に就任し、組閣作業を経て新しい内閣が誕 生する。 その後本会議で新しい内閣の所信表明演説を行い、各党の代表質問を経て新政権 の基本姿勢が確認された後、衆議院は解散総選挙に突入する。 総選挙はコロナ対策が大きな争点となりそうだ。しかし、私はこの問題は選挙 で争うべきではないと考える。パンデミックと言う国家的危機に際しては、与党 も野党も関係ない。必要があれば総選挙を少々遅らせても、医療体制の整備や経 済支援策等、当面のコロナ対策について党派を超えて臨時国会で議論し、できる だけ多くの意見を集約して解決策を見出し克服すべきである。 そして来るべき総選挙では、残った問題のみを争点にすれば良い、それが今、 政治が果たすべき責任だ。