自民党総裁選

9月17日告示、29日投開票の日程が正式に決まった自民党総裁選挙。昨年

9月の総裁選は、安倍晋三総理の突然の辞任に伴い実施されたため簡易型となっ

たが、今回は党員・党友投票も行われる“フルスペック”の総裁選である。全国

の自民党員・党友の意見が反映される地方票が加わることで、より国民世論が反

映される結果となることが予想される。



 この総裁選をめぐっては、「コロナの感染拡大の最中で、総裁選はやるべきで

ない」とか、「菅義偉総理では選挙に勝てないから顔を変えると言うのはおかし

い。国民の理解は得られない」と言う意見も出ていた。

 しかし、これらの主張は違っているのではないかと私は思う。今回の総裁選は

任期満了に伴うもので、いわゆる「菅降ろし」が目的ではない。むしろ実施しな

ければ、党員・党友の権利を奪うこととなるだ。内閣支持率は危険水域にまで下

がり、若手議員を中心に執行部への不満が拡がりつつあり、菅総裁に対する求心

力も著しく低下してきている。総裁選は総理にとっても党員・党友への説明責任

を果たせる絶好の機会となる筈だ。

 なので私は、終始「予定どおり総裁選を行うべし」と主張し続けてきた。コロ

ナ禍で行われる今回の総裁選、全国規模の遊説や候補者支援の集会等の実施は難

しいだろう。それでもソーシャルメディアを通じての討論会など、候補者の考え

方や人となりについての情報発信は可能である。



 そして、党員・党友の総意で総裁を選ぶためにも、国会議員の派閥力学や数合

わせで勝敗が決まってしまう総裁選にしてはならない。昨年の菅総裁選出時にみ

られたように、自ら所属する政策集団(派閥)の中からの候補者が出ないのに、

派閥が一致結束して特定の候補支援を決め、選挙前から結果が明らかになるとい

った事態は絶対に避けるべきだ。そんなことを繰り返せば、国会議員と地方との

分断が進み、国政への不信を招くだけだ。

 今回の総裁選は国民政党の選挙戦として、透明性の高い開かれた論戦により次

代のリーダーを選ばなければならない。そして、デジタル時代に相応しい手法で

候補者の主張を分かりやすく展開し、国民に自民党政治家の層の厚さを訴えなく

てはならない。



 一方、衆議院の任期満了(10月21日)が近づく中、野党は臨時国会の早期

開催を要求している。内閣支持率が低迷する中で、少しでも有利な状況下で解散

に追い込もうとする意図があるのだろうが、私はこの挑戦から逃げることなく、

受けて立ったらよいのではと思う。



 総裁選を国会審議と同時並行で行うことも可能だろう。国民はコロナ対策に関

する対策の充実を求めている。国難の時にあって、政治休戦してコロナ問題に特

化した議論をすればよい。本会議や委員会での議論はコロナに限り、それ以外の

政治的主張については党首討論の機会を設けてみてはどうだろうか。菅首相に

とって、コロナ対策に関する国民の不信感を取り除く絶好のチャンスとなり、国

民にとっても与野党トップの論戦は、来るべき衆院選に向けて、分かりやすい論

点整理の機会になるのではないか。



 総裁選は現時点で菅総裁と岸田文雄前政務調査会長の出馬が確定しているよう

だが、最終的にどのような顔ぶれになるのかは、今後の党内情勢次第である。私

自身の選択については、候補者が出揃い、それぞれの主張が明確に示されてから、

判断するつもりだ。

 政治不信が蔓延し、無党派層と言われる国民が増えつつあるのが現下の政治情

勢である。総裁選が政治への信頼回復に繋がるような形で行われるよう、志を共

有できる仲間に呼びかけていきたい。



※フルスペック総裁選とは
党所属国会議員(383人)と党員・党友による国会議員票と同数の地方票(3
83票)の合計(766票)で争われる。地方票はドント方式を採用し、各候候
補に割り当てられる。1回目の投票で有効票が過半数に達しない場合、上位2人
の決戦投票(議員票と各都道府県1票)となる。
 党・政治制度改革実行本部長として私が2013年秋に取り纏め、翌1月の党
大会で承認された。