政府は、1都3県の緊急事態宣言を21日で解除することを決定。およそ2カ月半にわたった今回の宣言は、すべて解除されることになった。
一方、首都圏では新規感染者が横ばいから微増の傾向にあることや、来月にかけて歓送迎会や花見など人が集まる機会が増えることも想定されることなどから、リバウンドが懸念される。新型コロナウイルス感染症対策分科会・尾身茂会長は、今回のコロナ感染症の流行は1~2年続くとも言っている。
このため宣言を解除した後も、①飲食の感染防止や、②変異したウイルスの監視体制の強化、③感染拡大の予兆をつかむための戦略的な検査の実施、④ワクチン接種の着実な推進、
⑤医療提供体制の充実、の5つの対策を徹底し、感染の再拡大防止に全力を挙げる方針だ。
対策のうち②については、前回コラムの“官民連携ゲノム解析チーム”の構築を急ぎ、サーベイランス能力の向上を図らなくてはならない。その際、昨夏以来、自民党の行革推進本部や科学技術・イノベーション戦略調査会から出された政府への提言『(1)有事は国が司令塔となる、(2)「公衆衛生・疫学研究」と「地域医療・臨床研究」の一体化を行う、(3)感染症データは国が一元管理するとともに積極開示を行う』が原則となる。
イギリスの英国医師会雑誌とNature誌は、英国型変異ウイルスは従来型に比べて死亡率が50%位高いとする分析を掲載している。この変異株の比率が日本でも拡大する傾向にある。しかも英国型よりも強毒性で強感染力のウイルスへの変異がいつどこで起こらないとも限らない。しかし、それを発見する我が国のサーベイランス体制、能力は脆弱と言わざるを得ない。
19日の久元喜造神戸市長の記者会見によると、神戸市の3月5日~11日までの陽性検体における変異株率速報値は55.2%。2月以降一週間毎の推移は、4.6%→10.5%→15.2%→21.9%→38.8%→55.2%と増加の一途を辿っている。このような状況把握ができるのは、神戸市の環境保健研究所が独自の方針で昨夏からゲノム解析調査を充実、新規感染者の6割以上の検査を行ってきた成果だ。これに対して、国が地方の研究所に求めてきた変異株調査レベルは、感染者の5~15%の検査であり、この数値をクリアできない(検査能力が不足している)自治体も多い。
先日も触れたが、現在わが国の疫学調査は、保健所ごとに対象もレベルもバラバラで統制がとれていない。また、ゲノム解析は国立感染症研究所のみが担うことになっている。特に「公衆衛生・疫学研究」と「地域医療・臨床研究」の一体化については、所管省が厚労省と総務省や文科省に分かれていて、政治主導でないと解決しない課題である。ここは政治の出番、政治の責任とリーダーシップで改革を実行しなくてはならない。
真っ先に実施すべきは、変異株を漏れなく発見する仕掛けを立ち上げることだ。大学医学部や民間検査会社など、ゲノム解析能力を保有するあらゆる機関を連携させる必要があり、“官民連携ゲノム解析チーム”体制の構築は、緊急かつ必須の課題だ。
そこで自民党では政務調査会に、コロナ本部ガバナンス小委員会、データーヘルス特命委員会、科学技術・イノベーション戦略調査会の合同会議を設置し、精力的に議論を重ね、前述の内容を「変異株のモニタリング体制に関する緊急提言」として、西村康稔担当大臣と田村憲久厚生労働大臣に申し入れを行った。
ウイルスの変容を早期に捉え、感染拡大阻止や経済対策のエビデンスを整えるとともに、広範な調査と高精度のゲノム解析のスピーディーな体制づくりが非常に大切だ。
政府には党の緊急提言に沿って、ALL JAPANのモニタリング体制を構築することを強く求めたい。