今年のGW

新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、政府は東京、大阪、兵庫、京都の4

都府県を対象にした緊急事態宣言を発令、当該地域は4月25日から3回目の宣言期

間に入った。期間は5月11日までの17日間。過去2回の宣言では解除までに1か月

半から2か月を要した中、2週間余りの短期間に解除できる水準にまで感染を抑え

込めるかが焦点になる。が、宣言後の感染状況の推移を見る限り、かなり厳しい

ものがあると言わざるを得ない。



 このような状況下、感染拡大防止の切り札とも言えるのがワクチン接種である。

すでに先進国の多くで接種が進み、パンデミック状況が解消されつつある。最先

端のイスラエル(接種完了者数508万人、56.13人/100人あたり、以下同)をは

じめ、アメリカ(9,890万人、29.81人)、英国(1,373万人、20.41人)など、

徐々にコロナ以前の国民生活が戻り始めている。これらの国々に比べると我が国

のワクチン接種率は大きく後れを取っており(約100万人、0.79人)、OECD諸国

の中では最低レベルだ。

 この理由について、日本の薬事承認制度やワクチンに対する考え方、危機管理

の意識の違いとの指摘もあるが、本質は単に製薬業界のワクチン開発力が欧米諸

国よりも低いということだろう。政府がワクチン確保競争で出遅れた感も否めな

いが、今はまず全力を挙げて接種スピードを加速することが最優先である。



 ワクチン接種について当初政府は、集団接種を中心に計画を進めていた。これ

に対して、2月上旬、自民党のワクチン接種プロジェクトチームは、高齢者につ

いては身近な医療機関での個別接種を「中心的な接種ルート」の一つに位置付づ

けることを提言した。地方自治体が設ける専用会場での集団接種に加え、かかり

つけ医での個別接種も可能とすることで、接種機会を増やすのみでなく、基礎疾

患等のリスク把握も容易となると言うことだ。今はその方向で進められている。



 接種が始まった2月の時点では、メーカーの供給能力やEUの輸出規制の問題

で十分な量の確保が懸念されていたが、ここへきて供給の見通しが明るくなって

きた。連休明けからは毎週1,000万回分のファイザー社製のワクチンが届く予定

になっている。4月30日には河野太郎規制改革大臣は、すべての高齢者が2回接種

できるワクチンを6月末までに配分する市区町村別の計画を通知した。

 時を同じくして菅義偉総理は、高齢者の接種を7月末までに終える方針を示し

た。その実現のために、中川俊男日本医師会長と福井トシ子日本看護協会長に対

して、「(ワクチン接種の)最大の課題は接種体制の確保だ。平日の体制を思い

切って強化するとともに、休日や夜間にも接種を進めて欲しい」と協力を求めた。

 中川会長は「かかりつけ医などによる個別接種が最も強力な武器、戦力になる

と思うので、ワクチンを小分けで効率的に配送する努力や工夫を政府にお願いし

ご理解いただけたと思う。実際にワクチンが届き出せば全国の医師は使命感に燃

えているので、必ずちゃんとやってくれると確信している」と述べた。我々の市

町村ヒアリングでも配送システムが鍵との意見が多かった。宅急便の利用や医薬

品問屋の活用など、あらゆる手段を講じて必要な量のワクチンを接種現場に届け

なければならない。



 また政府は、東京都と大阪府に大規模な接種会場を開設することを決定した。

国直営の接種会場を開設し、1日1万人規模の接種を可能とする。接種人材につ

いては、自衛隊医官の活用や歯科医師の接種従事のための特例措置も講ずる。離

職中の医療従事者の募集・登録制度の創設も必要だ。



 オールジャパンでこの難局を克服するために、政治の果たす役割も非常に大き

いものがある。日々緊張感をもって責任を果たしていきたいと思う、今年のゴー

ルデンウイークである。