「半導体戦略」ジャパン・アズ・ナンバー・ワン・アゲイン

先週末21日、自民党は日本の半導体産業のあり方を議論する議員連盟を立ち上

げた。“産業のコメ”と言われる半導体は昨年の秋ごろから世界的に深刻な供給

不足に陥っている。コロナ不況に対応した減産規模が大きすぎたため、景気の急

回復に対応できない状況だ。

 しかも、現在の半導体の生産状況は、台湾積体電路製造(TSMC)など半導

体の受託生産は特定国の一部企業に集中している。4月の日米首脳会議の共同声

明には「台湾海峡の平和と安定の重要性」との文言が明記された。仮に台湾有事

が起きれば半導体の供給が一層滞り、自動車などの主要産業に甚大な影響を及ぼ

す恐れがあるからだ。



 議連は半導体を確保するサプライチェーン(供給網)構築が、自動車をはじめ

とする国内関連企業の競争力強化に不可欠と考えている。わが国およびわが国産

業界の生き残るための戦略的課題と言えよう。

 議連の会長に就任したのは、党で経済安全保障の議論を主導する甘利 明衆議

院議員。安倍晋三前総理や麻生太郎副総理・財務相の首相経験者二人が最高顧問

に名を連ね、私も顧問に就任することとなった。



 設立総会では、AAA(甘利、安倍、麻生)が、ひな壇に勢ぞろい。

安倍政権の主役3人の揃い踏みに、普段はこの手の議連には寄り付きもしない記

者が、ところ狭ましと多数出席していたのは、政局絡みとみたのであろうか?

もちろん、議連は政局とは一切関係ないのだが、金曜午後3時開始と言う時間帯

にも関わらず出席議員も100名を超えた。会費室は異例の満タン状態で、コロナ

下の会議の持ち方としては反省しなければならない。



 甘利会長は代表発起人としての挨拶で、「半導体を制するものが世界を制す

る」と指摘した上で「日本はこんなものじゃあない!『ジャパン・アズ・ナン

バー・ワン・アゲイン』を目指して先陣を切っていきたい」と力強く言い放った。

安倍氏は自らがダボス会議で提案したDFFT(data free flow with trust)

を念頭に、「同士国・地域と手を結びながら、実力を大いに強化しなければなら

ない」と強調した。



 サプライチェーン強靭化のため、国家として整備すべき重要半導体の種類を見

定めたうえで、必要な半導体工場の新設・改修を国家事業として主体的に進める

ことが必須である。具体的には、先端半導体を国内で開発・製造できるよう、先

端ファウンドリ(半導体チップ組立生産工場)の国内立地や、総合的な半導体開

発に不可欠な4分野(メモリー(記憶回路)、ロジック(演算回路)、アナログ

(信号処理)、パワー(省エネ化))それぞれの研究力強化等について、政府と

して他国に匹敵する規模の支援措置を早急に講ずるべきである。



 1980年代には世界の半導体市場で50%超のシェアを占めていた日本企業であっ

たが、日米半導体摩擦の影響や韓国勢などの台頭を受け、工場は陳腐化・老朽化

し存在感は低下していった。一方、デジタル化が進展し米中の覇権争いが激化す

る中、半導体の戦略的重要性は益々高まっている。



 議連は設立趣意書で半導体を「日本の経済安全保障上、不可欠」と位置づけ、

米国や台湾、韓国などを念頭に生産を後押しする強固な供給網づくりを進めてい

く。同時に、研究開発や人材育成にむけた基金の創設や米国企業との資本連携と

いった対策も検討課題に据える。日本企業は半導体の材料や製造に必要な装置で

は高いシェアをもつ企業が多いものの、製品としての組立出荷は台湾や韓国など

他国の後塵を拝している。



 甘利会長は新国際秩序創造戦略本部で経済安保政策の立案を担う立場にもある。

戦略本部では近々「経済財政運営と改革の基本方針2021」にむけた提言をまとめ

る予定だが、その中でも半導体は「戦略的自立性」「戦略的不可欠性」の両面に

おいて最重要技術に位置づけられている。



 バブル崩壊以降のわが国経済の停滞は、海外への技術移転に伴う国内産業の競

争力低下が主な原因だ。半導体市場の戦略的な再構築の過程においては、経済効

率性だけでなく、価値観をともにする国々と連携し、バランスのとれた国際市場

の形成にわが国が積極的に関わっていかなければならない。

 いまがラストチャンス!今後精力的に議論を重ね、日本の存在感を高めていき

たい。「ジャパン・アズ・ナンバー・ワン・アゲイン」を目指して。