司令塔

年度末を迎えた国会では、予算委員会審議の合間を縫って日切れ法案(脚注1)の処理が行われている。また今国会は平成25年度予算の審議入りが遅れたため暫定予算が必要で、先週末には必要な社会保障費などを盛り込んだ50日分の予算も成立した。
私が委員長をしている科学技術・イノベーション推進特別委員会は、審議を急ぐべき法案は特にないものの、開催について野党民主党の筆頭理事との話し合いがつかず、未だに山本一太担当大臣の所信表明は済んでいない。

衆議院には常任委員会として文部科学委員会があるものの、科学技術創造立国を目指す我が国にあって、特に発明や研究開発の新機軸などに対して国として総合的な対策を樹立し強力に推し進める目的で、国権の最高機関である国会に平成23年9月に科学技術・イノベーション推進特別委員会が新たに設置された。
アベノミクスが提示している3本の矢の一つ新成長戦略は、科学技術を進展させイノベーション(脚注2)に開花させて、民間の成長を喚起しながら我が国の国民経済を活性化して行こうというもので、当委員会が依って立つべきところである。しかしながら、委員会が開かれず審議が行われないことは非常に残念だ。

その代わりではないが、安倍総裁の成長戦略構想を受けて自民党政務調査会内に“科学技術イノベーション戦略調査会”が設けられ、その傘下で私は政策の方向性を決定する「司令塔機能整備」小委員長として、1月末以来この2ヶ月間はほぼ週1回1時間の定例会と、毎日レクチャーを受け、取りまとめに励んだ。
講師として産業界からは第一線経営者、学会からは気鋭の学者を招き、我が国の科学技術イノベーション進展のあるべき姿を、またどのような提案をし、リードしていくべきか熱心な議論を基に、3月27日に中間報告ではあるが我が国の科学技術政策をリードするための“司令塔強化”提言を、党として政府に申し入れをおこなった。

以下に提言の骨子を記す。
①科学技術創造立国を国是としている我が国が科学技術イノベーションを強力に推進するために、司令塔機能強化を大きく分けて「官邸のリーダーシップを発揮するための機能強化」と、「総合科学技術会議の機能強化」の2つの視点で捉え、これらを確実に実
施できる体制・機能を措置することを最重要課題と位置づける。

②安保・外交、経済・財政・規制改革等の総合戦略として科学技術イノベーション政策を位置づけ、官邸のリーダーシップを発揮することが重要である。特に、福島第一原子力発電所事故対応の教訓を踏まえ、政治決定と科学的助言の機能強化を図る必要がある。

③総合科学技術会議の司令塔機能を強化するため、毎年度の予算編成時に科学技術イノベーションのための特別予算枠(仮称)(以下、「特別枠」という。)を設け、総合科学技術会議の課題設定に基づき、一元的に実施すべきである。
これらの提言を実現するためには更なる調整が必要となるが、政府内での動きと進捗状況を合わせる意味もあり、今回中間報告として方向性を示したものである。

アベノミクスの3本目の矢は新成長戦略。新成長戦略の柱は短期的には規制改革、中長期的には科学技術イノベーションが誤りのない政策といわれ、日本の未来がかかっている。今後もしっかりと党内議論を重ね、間違いのない針路を提言したい。
それこそが、いま私に与えられた「未来への責任」だと思うから。

脚注1)特定の期日までに成立しないと国民生活に影響を与える法律案で、年度終了とともに失効したり廃止となる時限立法などが相当する。
脚注2)イノベーションの概念は、技術的な革新に留まらず、世の中に普及する新しい概念全般を指す。古くはワットの蒸気機関や自動車、近年ではインターネットやカーナビ、携帯などのイメージ。

TPP

「寒さ暑さも彼岸まで」とはいうものの、東京では先週末から桜が開花しはじめたかと思えば、今日はお花見日和どころか、真冬の寒風が戻ってきた。
「彼岸」とは元々サンスクリット語のパーラミータ=「彼岸に至る」に由来し、悟りを開き浄土に至ることを指す仏教用語だ。しかし、仏教発祥の地であるインドや中国には、春分の日と秋分の日に彼岸の法要を行う習慣はない。年に二回、太陽が憧れの西方浄土である真西に沈むことから始まった日本独自の仏教文化らしい。

これは一例だが、日本は歴史的に世界から技術や文化を取り入れ、和流に加工し、熟成させて、我がものとするのが得意だ。日本語そのものが、ひらがな、カタカナ、ローマ字と、漢字やアルファベットを加工して使っている。主食であるコメづくりも、そもそもは揚子江下流域から伝来した水稲栽培にあり、永年の品種改良により耕作地を徐々に北上させていった。高度経済成長を牽引した自動車産業の隆盛は、米国から導入した流れ作業にカンバン方式という在庫管理システムを加え、Just In Timeの生産技術を実現したことによる。

日本という国は、世界とのつながりの中で発展し、繁栄してきた。決してガラパゴス島の生物群のように、孤立して独自の進化を遂げてきたわけではない。これからも日本は世界の国々との財、サービスの取引を活性化することにより、諸国とともに発展していく道を目指すべきだ。

先週金曜日、安倍総理はTPP交渉への参加を決断し、「国家百年の計、今がラストチャンス」「守るべきものは守り、攻めるべきものは攻める」と国民に決意を発信した。
以前から国際的な通商ルールづくりへの積極的な参画を主張してきた私としては、この判断を全面的に支持している。そして、民主党政権下で遅々として進まず、2年間も迷走してきた難題を、2ヶ月半で党内意見を集約し、決断まで持ってきたプロセスこそ、責任政党、プロの政治家集団である自民党の実力を示すものだ。

一方、先の総選挙で自民党は「“聖域なき関税撤廃”を前提にする限り、交渉参加に反対する」という公約を掲げた。私は公約を守ることを表明し、誓約書にサインしている。すべてを市場原理に委ねることにより、我が国の食料安全保障を損なったり、地域経済を崩壊させたりする自由化は避けるのが当然だ。だからこそ、我が政権は早々に米国と折衝し、首脳会談でセンシティブ品目の存在=TPPの関税にも聖域はあることを確認したのだ。
一部で懸念が表明されている国民皆保険や、遺伝子操作品目の表示なども守るのが当然であり、むしろ日本のルールを諸国に採用させる攻めの交渉が必要な分野だろう。TPPは関税のみを定めるのではない。知的財産の保護による海賊品の蔓延防止、途上国の政府調達の自由化による商機拡大など、攻めの交渉が必要な分野は数多い。

先日、日比谷野外音楽堂に集まった4000人の農家の方々を前に、我が党の石破茂幹事長は「米、小麦、乳製品、サトウキビ、牛肉・豚肉などの重要農産品目の関税は、必ず死守をしなければならない」と明言した。参加時期の大幅な遅れにより、日本には厳しい関税交渉が待ち受けているだろう。三桁の高税率を課している品目については、引き下げが必要な事態も予想される。ただ、死守すると言った限りは、守らなければないのが政治の責任だ。そして、何よりも世界の市場で勝負できる強い農業の育成を急がなくてはならない。国内人口が減少していくなかで、農業も輸出産業にしなくては成長できないのだから。

当然のことだが、国際交渉の内容は、交渉に参加し、当事者とならなくては見えてこない。「国益を損ねる場合は即時撤退」という意見もあるが、むしろ、交渉の主体として「国益を損ねるような結論をもたらさない」ことが政府の責務である。
アベノミクスによる円高の是正が、輸出産業の業績改善をもたらし、それが日本株全体の急上昇をはじめとする経済の回復につながっていることは、我が国にとって自由貿易体制がいかに重要かを示すものだ。

TPP交渉参加を契機に、我が国が主導権を担い、アジア太平洋諸国が共存共栄する経済連携の構築を加速する。それこそが日本の国益を叶える道筋である。そして我々にはその力がある。
秋の彼岸、APECまでには、新しい国際ルールのひな形が見えてくる。日本の成長、世界の繁栄をもたらす有意な交渉に全力を投入し、短期決戦に挑まなくてはならない。

季節労働者

施政方針演説への衆参両院での代表質問に引き続き、先週木曜日(7日)から衆議院予算委員会で25年度当初予算案の審議が始まった。全閣僚が出席し、度々テレビ中継も入る予算委員会は、党首討論と並び国会審議の花形である。が、その委員は永田町では「季節労働者」と呼ばれている。予算審議中は、月曜日から金曜日まで終日国会に拘束されるが、予算が成立してしまえば全く暇になるからだ。科学技術・イノベーション推進特別委員長と同時に予算委員でもある私も、これからしばらくの間(例年なら約1ヶ月)、連日朝9時から夕方5時まで、一日中委員会に出席しなければならない日々が続く。

とは言っても、党本部での会議等のため、どうしても席を外さなければならないケースもある。そういったときには、代わりに席に座ってもらう代役を自ら調達するのが慣例だ。当初予算案という重要案件を空席のまま審議するのは、国民の皆様に対して不謹慎だし、代役を指名された者にとっても、予算審議への参画は名誉なことだからだ。
差し替え要員は、新人をはじめ若手議員にお願いすることが多い。私も若かりし日には、代理出席要員として出席し、国の舵取りを定める基本政策の論点、鋭く問いただす質問の技法、それを受け返す答弁の話法など、与野党の先輩の質疑から多くを学んだ。

8日の審議では、維新の会からTPPと道州制の是非を問う質問があった。総理はTPPについて「我々日本はルール作りを待つのでなく、作る側になって中心的な役割を担う」と力強く答え、道州制については「地域経済の活性化をめざして国のあり方を根底から見直す改革だ」と前向きに応じた。TPP交渉には民主党政権が浪費した2年の歳月を取り戻すためにも一日も早い決着が必要であり、道州制をはじめとする地方分権は霞ヶ関を解体する意気込みで取り組まなければならない。

総理は、みんなの党からの北朝鮮の南北不可侵合意破棄についての問いについて「官邸で内閣危機管理監のもとに対応する体制を組んだ」と、国民の安全を守る覚悟を示した。北朝鮮や中国の不穏な行動に対しては、我が国の国防体制を改めて構築するとともに、同盟国との絆も深める必要がある。

維新の会とみんなの党との質疑は、それなりに建設的な政策論が繰り広げられたと思う。それに対して少々物足りなかったのが、民主党とのやりとりだ。
7日の質疑での問いは、海江田代表が「公共事業重視は自民党の先祖帰り」「原発事故対策が進んでいない」「原発ゼロのエネルギー政策をなぜ撤回するか」を、細野幹事長が「選挙制度改革の遅れ」「消えた年金への責任」を批判するものだった。

いずれも、つい数ヶ月前まで与党であったことを忘れているかのような問いだ。デフレ下で公共事業を過剰に削減し有効需要不足に陥れ、原発事故対策では迷走を繰り返し、エネルギー政策では非現実的な原発ゼロを打ち出し諸外国の失笑を買ったのは民主党政府だ。衆議院選挙の違憲状態を1年半も放置したのも前政権だし、消えた年金に至っては(社会保障制度国民会議の議論が始まっているのに)今更何を言っているのか?と感じた。

以前にもこのブログで言及したが、野党がしっかりしないと与党も緩む。
だからこそ野党第一党であり、政権与党を経験した民主党には、しっかりと建設的な政策論議に参加してもらいたいのだ。確かに、3月末で期限切れが到来する税制関連法案について今月中の審議処理に合意するなど、かたくなに反対を繰り返す以前の民主党との違いは見られる。
もう一歩踏みだし、我が党と伍する責任野党を目指すのであれば、自民党に「先祖返り」と注文をつけるまえに、自らが政権批判を繰り返す「無責任野党に戻っていないか?」をまず問いただしてもらいたいものだ。

年末の政権交代という事情により、今年の予算審議は大幅に遅れている。もはや暫定予算は避けがたいが、予算委員会の一員として一日も早い本予算の成立に向けて尽力したい。それが震災復興の前進を心待ちにする東北の方々の支えとなり、デフレからの離陸を始めた日本経済を加速する力となるからだ。
野党の皆さんも思いは同じだろう。春季のうちに審議が終わるよう、共に建設的な審議を行いたいものだ。

ネット選挙解禁

いよいよインターネット選挙の解禁が近づいてきた。現在公職選挙法では選挙期間中に配布できる「文書図画(とが)の数」(要するにチラシ、はがきの類い)を厳格に限定しているが、それをホームページやブログ、ツイッター、フェイスブック等のSNSにも拡大しようというものだ。昨年の総選挙直後から総理が解禁をめざす方針を宣言していたが、既に改正法案の与党内調整も概ね終わり、野党とも解禁への方向性では合意している。後は夏の参議院選挙からの施行に向けて法改正の国会審議を待つばかりとなっている。

スマートフォンの登場もあり、インターネットの利用はここ数年で飛躍的な拡大を遂げてきた。ネットも携帯も生活の一部として、もはや必要不可欠な存在となっている。新聞を取らず、テレビを持っていない若者でも、携帯は必ず身につけている。

そんな中での先の総選挙、既にネット選挙が解禁されているのかのような状態であったことは否めない。法規制の網をかいくぐりツイッターを駆使した候補者もいた。公正公平な選挙の執行という観点からも、この脱法状態(というか規制の空白状態)を何とかしなければならいとの社会的要請も高まっている。米国はもちろん韓国でもSNS選挙が常識化していることを考えると、むしろ、政府の対応が遅きに失したと言えるかもしれない。

そもそも公選法が「文書図画の数」を限定するのは、選挙の公平性を確保するため。仮に無制限であれば、多額の資金を有する候補ほど、多種大量の広報活動が可能となり、有利に選挙戦を進めることができる。要するにカネのかかる選挙の原因となるからだ。

コストという意味では、ホームページへの文書画像の掲載や電子メールの送信は、印刷や郵送よりもずっと安価であり、カネのかかる選挙の防止という意味では望ましい手法だ。しかもSNSは候補者の主張を一瞬にして大量の有権者に届け、そして意見を聞き取ることもできる。候補者と有権者の意見のキャッチボールは、一方通行の文書発送と比べ、飛躍的に政策の理解を深める。有権者の誤解を正し、主張を正確に伝えることができるだろう。それだけに、候補者側が何を発信するかが問われることになる。

その意味で避けなければならないのは、誹謗中傷等の怪文書の発信や、なりすましによる偽情報の発信といった悪用だ。電子媒体は匿名性が強いだけに、悪用の可能性も高まる。検討中の改正法では、これを避けるため、ネット選挙の発信主体は政党と候補者に限り解禁されることなりそうだ。

もう一つ、醜いネガティブキャンペーンも防止したいものだ。完全に自由なネット選挙が行われている米国では、先の大統領選挙でもすさまじいネガティブキャンペーンが繰り広げられた。“やられたらやりかえす”方式の誹謗中傷は確実に有権者の政治離れを招くだろう。この防止は発信者の良識、道徳観に頼らざるを得ない。

いずれにしてもネット選挙の解禁は若者の政治参加を促し、選挙の風景を大きく変えるだろう。しかし、ネットは媒体に過ぎないということも事実だ。何を伝えるか、コンテンツ(=政策)の質は我々政治家の手腕にかかっている。
「ネット選挙の解禁が、民主主義の充実に、政治文化の成熟に繋がった」と後世の国民に語られるよう我々、今を担う政治家がしっかりと政策形成能力、そして情報発信能力を磨かなくてはならない。

国際交渉

日本のお家芸とも言えるレスリングがピンチだ。2020年のオリンピック大会の競技種目から除外される可能性が高まったという。
昨夏のロンドンオリンピックでは、三連覇を果たした吉田沙保里選手をはじめ多くのメダリストを生み出した種目であり、来たるべき東京オリンピックをめざしてトレーニングに励む若者も多い。吉田選手ら関係者も「考えられない、信じられない」との言葉を連発しているが、どうやら遅きに失した状況のような感がある。

20世紀終盤からオリンピック大会といえども、運営収支を無視できなくなり、年々採算性に重きを置く傾向が高まっている。なかでも重視されるのは有力な収入源であるテレビ放映権であり、その大きな要素は世界的な視聴率である。これに伴い、世界での人気に着目した競技種目の入れ替えが頻繁に行われるようになった。我が国の得意種目であった野球・ソフトボールが除外されたのは記憶に新しい。

今回のIOC(国際オリンピック委員会)の選考基準は「人気、国際性、男女の選手の比率」にあるという。確かに世界的に見るとレスリングの競技人口は少なく、また勝敗の判定基準はわかりにくい。ただ、正直なところ、テコンドー等のライバル競技も五十歩百歩といったところである。実質的な判断基準は、IOCの理事の力関係、継続を願う競技団体のロビー活動(政治的な取引活動)の多寡にあったという説が真実に近いのではないだろうか。古代ギリシア時代からの歴史と伝統に頼っていても誰も守ってくれない。自らの発言と行動が必要だったということだろう。

国際的なルール作りには、積極的に交渉に参画し、自らの考えをアピールしなければ権利を勝ち取ることはできない。同じことが通商交渉でもいえる。
同じ加工貿易国家の隣国、韓国と比べて、日本の貿易自由化は大幅な後れをとっている。TPP参加を巡っても、入り口論で既に3年間も議論が停滞している状況だ。

経済再生を一丁目一番地の政策に据える安倍内閣にとって、経済成長の要となるこの課題への対応は正に内閣の命運を賭けるものである。我が国の通商戦略のポイントは2点。一つは巨大な経済力をもつ中国に普通の国際ルールを守れる国になってもらうこと。もう一つは米国の行き過ぎた市場原理主義に対抗できるアジアのルールをつくることだろう。

もう2年ほど前になるが、中国政府は尖閣問題への対抗措置としてレアアースを禁輸するという措置を執った。また、彼の国は未だにコピー商品天国である。このような横暴を許さないため、知的所有権を尊重する国になってもらうために、国際ルールの範を示し、受け入れを迫ることが必要だろう。そのためにはもう一つの経済大国である米国の力が不可欠であり、米国も世界三位の経済力をもつ日本にTPP参画を求めている。
一方で、日本には90年代の日米構造協議をはじめ、過去の二カ国交渉で米国に煮え湯を飲まされ続けてきた記憶がある。その轍を踏まないためには、多国間(マルチ)の交渉で米国に対する主張を貫き通す手法が有効だ。

レスリング協会はオリンピック競技の生き残りをかけて、アメリカ、イラン、ロシアと手を組み、ヨーロッパ諸国や韓国に対抗するという。
今、TPP交渉参加国の経済力を比較するとアメリカ一強の状況にある。この強敵に対抗するために、アジア諸国と手を組み日本の主張に沿ったルール作りを進めるべきだ。

最悪の事態は日本が何も言わないうちにアジア太平洋の取引ルールが決まってしまい、それを受任せざるを得ない状況となることだ。

21日から安倍総理が米国を訪問する。オバマ大統領との会談の議題は、北朝鮮を巡る北東アジアの安全保障、円ドル相場を含めた金融政策のあり方等々多岐にわたるだろうが、おそらくTPP交渉参加問題も議題の一つになるだろう。
まず交渉の席に着くこと。そして守るべき聖域を相互に容認する言質をとり、国益に沿ってしっかり交渉していくことが、いま求められていると思う。

論戦?

2月14日、緊急経済対策を盛り込んだ総額約13兆1000億円の平成24年度第2次補正予算案が衆院本会議で可決され、参院に送られた。予算は衆院の議決が優越するため、参院で否決されても成立はする。しかし、一刻も早く成立させ、執行に移すことが国会の任務だろう。衆参の権限が等しいため、国会同意人事をめぐり民主党の一部からまたしても反対のための反対をするような声が聞こえてくるが、野党の諸君にも国家利益を重んじた真摯な審議姿勢を求めたいものだ。

そんななかで、今回の補正予算採決で自民、公明両党に加えて日本維新の会が賛成に回った。安倍政権にとっては、政権運営の選択肢が広がったのではないだろうか。

6日から開かれた予算委員会は、安倍政権発足後初めての本格的な与野党の論戦だった。
2日間の総括質疑に加えて安倍政権の政治姿勢を質す集中審議が1日と、いずれもNHKテレビで全国放映。日頃、露出の少ない野党にとっては国民にアピールし、存在感を示す絶好の機会であったのだが…。予算委員の一人として3日間ほとんど席を離れることなく生の論戦を聴いていたが、極めて盛り上がりに欠けたと言うのが率直な印象だ。

まず、前原誠司、原口一博、長妻昭、辻元清美氏など、知名度の高い論客(?)を揃えてきた野党第一党の民主党だが、質問も質問者もとにかく元気がない。与党ボケとの評価もあるが、3年3ヶ月に及ぶ政権運営の後の総選挙で歴史的な大敗を受け、党が存続する可否すら話題になっている現状を考えると、「無理もない」と、分かるような気もする。

次に、予算案で賛成に回った日本維新の会。
“首長タイム”と銘打って中田宏・前横浜市長、山田宏・前杉並区長、そして真打登場は石原慎太郎・前東京都知事。「浦島太郎のように18年ぶりに国会に戻ってきた暴走老人です」と自己紹介した後、憲法改正などについてとうとうと持論を展開するばかりでほとんど質問することなく、論戦にはなっていない。
首長タイムに触発されたわけではないだろうが、民主党の2巡目はサバイバータイムと称して、政権交代選挙で当選した143人の新人議員から、今回再選を果たした5人の中の2人が質疑に立った。なにか茶番のように思えた。

予算委員会と言えば、各党のエース級の論客が火花を散らした花形委員会である。
そこでの論戦は、我が国の行く末が委ねられていると言っても過言ではなかった。国民の注目度は極めて高い。だからこそ、政治家はマスメディア、特にテレビ画面を通して国民に政策や心情をもっともっとアピールしなければならないと思うのだが、今回の予算委員会は国民の目にはどのように映ったことであろうか。

ライバルは切磋琢磨しながらお互いに技量を磨き、それぞれが向上していく。つまり、野党第一党の民主党が頑張らないと、自民党にとっても決してよい影響をあたえないし、延いては我が国の政界が活性化されないと思う。今週は野党が過半数を占める参議院での論戦が始まる。国民の注目が集まるような活発な議論が展開されることを期待したい。

代表質問に思う

1月28日の安倍総理の所信表明演説を受け、30日から各党の代表質問が始まった。いよいよ本格的な国会論戦のスタートだ。野党としての本会議経験が欠落している私にとっては、見慣れた光景に思われた。しかし、3年余りの間、議場の反対側に追いやられ、民主党の所信表明、施政方針を聞かされてきた同僚議員には感慨深いものがあったようだ。

自民党は結党以来、ほんのわずかの時期を除き常に衆議院本会議場の半分以上を占めてきた。野党となった細川連立内閣時代といえども、比較第一党の地位は維持していた。それが、この3年間だけは民主党の半数足らずとなり、自ずと存在感も薄れつつあった。政権奪還を何よりも実感できるのは、この本会議場での議席占有面積だろう。

“野次は議場の華”といわれるが、与党議員が圧倒的に多いためか、民主党議員が意気消沈しているためか、安倍総理の演説や答弁に対して痛烈な野次や怒声が浴びせられることは殆どなかった。与党からの盛大な拍手を除けば、議場が思いのほか静まりかえっていることには、いささか驚いた。議席の前半分を占めている新人議員たちも、まだ議場での声を上げるタイミングを計りかねているのか、それとも大人しい人格の持ち主が多いのか、とにかく今のところは礼儀正しく質疑を聞いているようだ。

26年前、私も本会議場の最前列に議席を与えられていた。あの時は、何も分からないまま座っていた我々新人議員に、国会対策委員長から次々と指示ペーパーが回ってきた。そこには「野次り倒せ!」等々の文字が書きなぐられていたものだ。今は静かに座っている新人議員にも、いずれ同じような指示が出されるのだろうか…。

私が初めて当選したのは1986年7月7日の衆参ダブル“七夕選挙”だ。同期生は47名。今日まで一度も落選することなく活動を続けている代議士は、自民党の石破茂幹事長、維新の園田博之氏など5名だけだ。今回、私と盟友の三原朝彦氏、そして中山成彬(維新)氏が返り咲いたが、現時点で現職として活動している議員は、参議院に転じた鴻池祥肇氏と前田武志(民主)氏を加えても10名のみとなった。

「新党さきがけ」で行動を共にした武村正義さんや井出正一さんはすでに政界を引退されているし、武部勤さんや笹川尭さん、大野功統さんらは今回の総選挙で退かれた。民主党でも鳩山由紀夫元総理が引退、元総務大臣の川端達夫氏は落選された。すでに鬼籍に入られた方も数多くおられる。

来し方を振り返ってみると、初当選同期組は与野党の壁を越えて繋がり、語り合える仲間たちだ。既にベテランの域に入った我々だが、これからも10名の縁をさらに深め、国家のために尽くさねばならない。

そう言えば新人の頃、今回引退されたある長老議員から教えられた。「本会議場は普段会えない先輩に、何かとお願いし、教えを請う絶好の機会だ」と。
今、立場が変わって、自分は新人からお願いされる、教えを請われるに足る先輩たり得るのだろうか? そう言われるように、しっかりと襟を正して本会議に臨まなくてはならないと、決意を新たにしている。

国会の開会にあたって

 

新春の日本を揺るがしたアルジェリア・イナメナスの天然ガス関連施設襲撃事件。数百名の人質の無事を祈る我々の願いも虚しく、アルジェリア政府の軍事制圧により事態は悲惨な結末を迎えた。最後まで安否確認がとれなかった大手プラントメーカー「日揮」最高顧問の新谷正法さんの遺体が帰国したのは26日のこと。日本人の犠牲者の数は10名となった。

 

事件勃発以来、現地の惨状と邦人犠牲者に関する情報が次々と伝えられたが、その内容は混乱し、政府として有効な一手が打てなかったのは事実だ。犠牲となった方々はいずれも日揮の社員や関係者。ふるさとを遠く離れた途上国で、政情の不安定さを厭わず、地域の発展と日本の繁栄のために黙々と働く“企業戦士たち”の尊い命が失われたことは極めて残念だ。

 

 

 

今回の一連の動きから、改めて、海外でのテロなどの緊急事態に際しての我が国の危機管理能力の不備が浮かび上がった。少なくとも今のままで良いと考える国民はいないだろう。邦人を保護、救出し安全に日本に輸送する術、その前提として、広範な情報を収集し、正確な評価、分析を行う力など、様々な能力を備え、新たな法制度と組織体制を構築しなくてはならない。

 

 

 

現在の自衛隊法では海外で活動する際は、「危険地帯を除き安全が確保されている」、「航空機および船舶の使用」、「武器使用時は正当防衛」といった制約が設けられている。今回のような内陸の事態では、まず、現地に足を踏み入れることができないし、戦闘現場に際しても隣で友軍が攻撃を受けても自分が撃たれるまで発砲できない。10名の尊い命を無駄にしないために、世界を舞台に活躍する企業戦士たちを支えるためにも、自衛隊法改正も含めた対応力の整備を急ぐ必要がある。

 

 

 

さて、第二次安倍内閣が発足してから1ヶ月余り。この間、内政においては、日銀と連携した金融緩和と24年度補正予算の編成を速やかに行い、円安と株高の基調を作った。ベトナム、タイ、インドネシアを歴訪する外交日程も精力的にこなし、ダボス会議では世界の賢者にアベノミクスの正当性を主張した。

 

総理が言うには、内政外交とも“ロケットスタート”を切ったことになるが、これからは、国会の論戦の場で力強い日本経済の再生を進める具体的な政策を打ち出し、国民に地道に訴え、理解を得ていくことが肝要だ。いよいよ第183回通常国会が始まる。28日には安倍晋三総理の所信表明がおこなわれ、論戦の火蓋が切られる。

 

 

 

私自身は、衆院の科学技術・イノベーション推進特別委員会委員長に加えて予算委員会にも所属することになった。自民党では、科学技術・イノベーション戦略調査会内に新たに設置される
“司令塔機能整備小委員会(仮称)”の委員長にも就任する。わが国は科学技術創造立国の早期実現を目指しているが、その国家戦略を遂行する党にあっての司令塔の役目を担いたいと考えている。

 

 

 

 

いま、わが国は政策を総動員して沈滞と閉塞感で覆われたデフレの20年から、全力をあげて抜け出そうとしている。そして、成長戦略の鍵を握るのが科学技術政策である。今後とも、そのスペシャリストを目指して、努力し研鑽を積んでいきたい。それこそが私の考える「未来への責任」を果たす最重要課題と確信している。

リハビリ?

新年会も成人の日までの3連休がピーク、今は松の内も明け、道を行き交う人々姿にも日常の営みが戻ってきた。
永田町の自民党本部では7日に仕事始めの会合が行われたが、今年は予算編成の仕切り直しが必要ということもあり、年始早々から連日熱心な議論が繰り広げられている。既に24年度補正予算は閣議決定し、今は25年度予算案や税制改正が主要テーマだ。

昨秋までは閑古鳥が鳴いていた党本部も、政権奪還により様変わりした。マスメデアの取材陣が激増し、政務調査会の各部会にも野党時代は全く姿を見せなかった各省庁の幹部が毎回出席するようになった。与党なのだから当然といえば当然だが、自民党本部にも活気が戻って来たと言えるのだろう。

ただ、私が党本部での議論に溶け込むには、暫しのリハビリ期間を要している。3年3カ月の月日はそれだけ長かったのだと、つくづく実感している。
むしろ、永田町の流れにすぐに馴染んでしまったのでは、充電期間の意義が薄れる気もする。私にとっての3年3カ月は、永田町という社会の外側に身を置き、改めてそのあり方を見つめ直す貴重な時間だった筈だ。
「永田町の論理」でなく「国民の目線」に立てというのは良く聞く常套句だが、現実に政界の渦中にあると、ついつい日々の仕事に忙殺され、理想が忘れられる嫌いがある。そうならないためにも、初心に返り、若葉マークを貼り直したつもりで議論に参加しようと思っている。

純粋な若葉マーク議員という意味では、我が党に119名の新人が国政デビューを果たした。私は彼等を自民党の財産だと思っている。部会で遠慮がちに挙手しながら、初々しい主張を発言する様からは、新しい自民党が見えてくるような気がする。
選挙の最中、私は「政治への信頼を取り戻すために、まず自民党が変わらなければならない」と、強く訴えた。既成概念に毒されていない新人議員の発想こそが、永田町に新鮮な風を吹き込み、自民党を変える原動力となる筈だ。

だからこそ彼等に「先輩議員に対する礼儀は必要だが、政策の議論では何ら遠慮することはない。政策議論に際しては全議員が対等であり、党内の全ての部会や調査会は基本的にオープンで、誰もが参加し自由に発言できる。それが自民党の伝統であり、我が党の優れたところだ。」とエールを送っている。

かつて私が初当選した時、中曽根康弘総裁は、我々新人に対して「政治家にとって最も重要な資質はしっかりとした歴史感・国家感を持っていることだ」と言われた。そして直後には「しかし、今の君達に最も大事な仕事は、次の選挙に勝つことだ。だからできる限り地元に帰って次の選挙に備えろ。」とも言われたのを、今も鮮明に覚えている。

今回の新人たちの中には将来の総理・総裁を担う人材が埋もれているかもしれない。しかし、その行く手には当選を重ねるという高いハードル群が待っている。初心を忘れず、試練を乗り越え、大きく育ってもらいたいものだ。

私もいつまでも新人のことにかまっている余裕はない、一日も早く政策立案と法案審議の仕事の感覚を取り戻し、リハビリ中のワッペンを剥がさなくてはならない。
月末には25年度予算案が固まり、通常国会も始まる。いよいよ論戦の始まりだ。

アベノミクス

政府は先週11日、事業規模で20兆円を超える緊急経済対策を取りまとめた。

大胆な金融政策、機動的な財政政策、民間投資を喚起する成長戦略の「三本の矢」を束ね、長引く円高・デフレ不況から一日も早く脱却し、日本経済が力強く再生する強い意志を示すものだ。

わが国の経済は1990年代初頭にバブルが崩壊して以来、長期のデフレ不況に陥り、15年間も所得が全く伸びていない。物価下落→売上減少→給与削減→所得減少→消費抑制→需要減少→物価下落が繰り返すデフレスパイラルの渦でもがき苦しみ、先進国中最悪の長期低成長に甘んじる姿は、人に例えれば瀕死の重症とも言える。

この深刻な症状に小出しの対策では二進も三進もいかない。あらゆる可能性を秘めた政策を機動的、弾力的に繰り出すことで経済再生を図ることが肝要だ。だからこそ安倍政権発足前から“アベノミクス”と名付けられた「金融政策と財政政策のパッケージ」を展開し、縮小均衡に向かうデフレの悪循環を断ち切り、成長と富の創出の好循環に切り替えようとしているのだ。

まず、金融政策では日銀に対して2%という明確な物価目標設定と、それが達成できるまで継続的な通貨供給の拡大を求め、そして物価の安定だけでなく雇用拡大をも日銀の責任の範疇とした。続いて、今回の大規模な財政出動で、復興の加速と防災・減災力の向上を軸に据えた公共事業を実施し、強靱な国土形成を進めるとともに巨額の有効需要を創出する。市場はこれらの日本政府の意志を好意的に受け止め、既に為替は円安トレンドに転換し、日経平均株価も1万円を上回る水準に回復した。

この流れを加速し、短期間でのデフレ脱却を目指すためにも、15日に閣議決定する24年度大型補正予算案を早期に成立させ、執行に移さなくてはならない。さらに、引き続き編成する25年度予算と合わせた「15カ月予算」で切れ目のない対策を実施し、景気の底割れを防ぎ、成長軌道を確かなものとする必要がある。

今回の補正では、成長による富の創出の一環として5700億円の科学技術予算が盛り込まれた。規模もさることながら特筆すべきは、研究開発プロジェクトへの長期安定資金が用意されたことだ。

行政の予算は単年度主義が原則であり、科学技術分野も例外ではない。故にノーベル賞を受賞した山中教授の京大iPS細胞研究所でさえ、職員の大半は短期契約の非正規雇用と言う状況である。これでは長い懐妊期間を要する基礎研究にそぐわない。今般の制度改善では、iPS細胞を中心とした再生医療研究には、今後10年で1100億円規模の長期的支援を行うことが決定された。この新たな資金提供の枠組みは、日本の科学技術施策にとって大きな一歩であることは間違いない。

さらに科学技術創造立国の早期実現に向けて、各省庁が所管する科学技術政策を横断的に調整し、国家戦略として組み上げる意思決定システム(司令塔を含む)の構築、さらには研究開発の進捗状況を正確にグリップし、予算と比較した効果測定を行う組織体制の整備も急がなければならない。

言うまでもないが「三本の矢」は毛利元就が三人の息子に対して、国を守るために兄弟の団結と協力を促した逸話に由来する。三本の矢がそろってこそ力は発揮されるのだ。

経済再生に向けた「三本の矢」のうち、一の矢である金融政策、そして二の矢である財政政策は既に出そろった。だが、もう一本の成長戦略はまだ未完成な状態だ。民間投資を生み出し自律的な経済成長を促すためには、大胆な規制改革やアジアとの経済連携も急がれる。

公共投資偏重のかつての自民党が戻ってきたとか、先祖帰りとか揶揄されないためにも、24年度補正予算と25年度当初予算の成立に引き続き、法人税制のさらなる見直しや各種の規制緩和、エネルギー戦略の立て直し、アジアの活力を取り込む経済連携といった政策を迅速に展開し、日本経済再生への道筋をしっかりと描かなければならない。

日本経済の再生を世界に示すために、生まれ変わった自民党を国民に示すために、三本目の矢である成長戦略の実行力こそが“アベノミクス”の成否を問う試金石となると私は思う。