季節労働者

施政方針演説への衆参両院での代表質問に引き続き、先週木曜日(7日)から衆議院予算委員会で25年度当初予算案の審議が始まった。全閣僚が出席し、度々テレビ中継も入る予算委員会は、党首討論と並び国会審議の花形である。が、その委員は永田町では「季節労働者」と呼ばれている。予算審議中は、月曜日から金曜日まで終日国会に拘束されるが、予算が成立してしまえば全く暇になるからだ。科学技術・イノベーション推進特別委員長と同時に予算委員でもある私も、これからしばらくの間(例年なら約1ヶ月)、連日朝9時から夕方5時まで、一日中委員会に出席しなければならない日々が続く。

とは言っても、党本部での会議等のため、どうしても席を外さなければならないケースもある。そういったときには、代わりに席に座ってもらう代役を自ら調達するのが慣例だ。当初予算案という重要案件を空席のまま審議するのは、国民の皆様に対して不謹慎だし、代役を指名された者にとっても、予算審議への参画は名誉なことだからだ。
差し替え要員は、新人をはじめ若手議員にお願いすることが多い。私も若かりし日には、代理出席要員として出席し、国の舵取りを定める基本政策の論点、鋭く問いただす質問の技法、それを受け返す答弁の話法など、与野党の先輩の質疑から多くを学んだ。

8日の審議では、維新の会からTPPと道州制の是非を問う質問があった。総理はTPPについて「我々日本はルール作りを待つのでなく、作る側になって中心的な役割を担う」と力強く答え、道州制については「地域経済の活性化をめざして国のあり方を根底から見直す改革だ」と前向きに応じた。TPP交渉には民主党政権が浪費した2年の歳月を取り戻すためにも一日も早い決着が必要であり、道州制をはじめとする地方分権は霞ヶ関を解体する意気込みで取り組まなければならない。

総理は、みんなの党からの北朝鮮の南北不可侵合意破棄についての問いについて「官邸で内閣危機管理監のもとに対応する体制を組んだ」と、国民の安全を守る覚悟を示した。北朝鮮や中国の不穏な行動に対しては、我が国の国防体制を改めて構築するとともに、同盟国との絆も深める必要がある。

維新の会とみんなの党との質疑は、それなりに建設的な政策論が繰り広げられたと思う。それに対して少々物足りなかったのが、民主党とのやりとりだ。
7日の質疑での問いは、海江田代表が「公共事業重視は自民党の先祖帰り」「原発事故対策が進んでいない」「原発ゼロのエネルギー政策をなぜ撤回するか」を、細野幹事長が「選挙制度改革の遅れ」「消えた年金への責任」を批判するものだった。

いずれも、つい数ヶ月前まで与党であったことを忘れているかのような問いだ。デフレ下で公共事業を過剰に削減し有効需要不足に陥れ、原発事故対策では迷走を繰り返し、エネルギー政策では非現実的な原発ゼロを打ち出し諸外国の失笑を買ったのは民主党政府だ。衆議院選挙の違憲状態を1年半も放置したのも前政権だし、消えた年金に至っては(社会保障制度国民会議の議論が始まっているのに)今更何を言っているのか?と感じた。

以前にもこのブログで言及したが、野党がしっかりしないと与党も緩む。
だからこそ野党第一党であり、政権与党を経験した民主党には、しっかりと建設的な政策論議に参加してもらいたいのだ。確かに、3月末で期限切れが到来する税制関連法案について今月中の審議処理に合意するなど、かたくなに反対を繰り返す以前の民主党との違いは見られる。
もう一歩踏みだし、我が党と伍する責任野党を目指すのであれば、自民党に「先祖返り」と注文をつけるまえに、自らが政権批判を繰り返す「無責任野党に戻っていないか?」をまず問いただしてもらいたいものだ。

年末の政権交代という事情により、今年の予算審議は大幅に遅れている。もはや暫定予算は避けがたいが、予算委員会の一員として一日も早い本予算の成立に向けて尽力したい。それが震災復興の前進を心待ちにする東北の方々の支えとなり、デフレからの離陸を始めた日本経済を加速する力となるからだ。
野党の皆さんも思いは同じだろう。春季のうちに審議が終わるよう、共に建設的な審議を行いたいものだ。