岸田文雄総理は28日夕刻記者会見を開き、総合経済対策の裏付けとなる2022年度第2次補正予算を発表した。一般会計の予算規模は29兆円、地方の歳出や財政投融資も加えた財政支出の規模は39兆円程度となる。
経済対策は4本柱で構成され、▽電気代などの負担軽減や企業の賃上げの後押し12.2兆円程度、▽円安を生かした観光振興や企業の輸出拡大に4.8兆円程度、▽学び直しなど人への投資や少子化対策、脱酸素など新しい資本主義の加速に6.7兆円程度、▽防災や公共事業、経済・食料安保に10.6兆円程度、▽今後の備えに4.7兆円程度、となっている。
今回の補正予算の編成過程では、当初25兆円台であった政府案が、一夜にして4兆円増額された点が物議をかもしている。自民党内から「総額を30兆円規模とすべき」との声が数多く出ていたため、「ウクライナ情勢経済緊急対応予備費(仮称)」を創設するなどして金額を積み増したものだ。
そもそも、補正予算の編成は、「予算作成後に生じた事由に基づき特に緊要となった経費の支出」(財政法第29条)等を行う場合に限り認められている。本来は予算編成後に発生した突発的な災害や事故への対応を想定したものだろう。
しかし実際の運用では、経済対策としての需要拡大=予算規模拡大の手法として、恒例行事のように毎年補正予算編成が行われている。もちろん経済の需給ギャップを埋めるための緊急的な財政出動を否定するものではないが、多額の補正予算編成が常態化することは、財政規律上いささか問題であろう。
ただ、現実として、当初予算要求時に課せられる厳しい概算要求基準(シーリング)の枠内では、大胆な新規政策の展開は難しいことも事実である。このため、多額の予算が必要な新政策については、補正予算で打ち出すことが多くなっている。私が担当している科学技術・イノベーション政策についても、大学ファンドや博士課程支援などの資金は何れも補正予算で確保している。
今回の補正予算でも、▽地域中核特色ある研究大学総合振興、▽大学の文理バランス、▽スタートアップ支援、▽創薬ベンチャーエコシステムの拡充強化など、多くの新しい政策を実現することができた。ちょっと複雑な思いもあるが、いまは補正予算無しでは科学技術政策は成り立たない、と言っても過言ではない。
これらの科学技術予算は中長期の成長戦略の中心となるものだが、岸田内閣の目玉政策である「新しい資本主義」に通じる“人への投資”に資するものでもある。今後さらに詳細の検討を進め、この国の未来を切り拓く原動力になるよう、施状況を逐一チェックしフォローアップしていきたい。そして、これらの新規政策が、ここ数年の国際社会における日本の競争力の低下に歯止めをかけ、反転攻勢に繋がることを期待したい。