穏やかな新年の幕開けから比較的温かい日が続いた今年の日本列島。
各地のスキー場では年末年始の稼ぎどきに雪がなく、関係者からは悲鳴があがっていた。
一方、はくさい、だいこんなどの野菜はすくすく育ち例年を上回る出荷量、その安値に台所には喜びの声、生産者からは嘆きの声が聞こえた。
そんな暖冬ムードを吹き飛ばしたのが先週24日からの大寒波の襲来。
沖縄本島で観測史上初、奄美大島では115年ぶりの降雪。長崎では観測史上最高の17センチの積雪を記録した。数十年に一度の寒気に覆われた日本列島各地で「記録的」「観測史上初めて」とかの言葉が飛び交った。
首都圏では降雪が交通網を遮断し、例によって通勤通学や物流が大混乱。めったに氷点下を記録しない西日本では水道管の凍結、破損、断水といった事態が数多く発生し、市民生活を脅かしている。私ごとで恐縮だが、高砂の自宅でも配管が2ケ所断裂した。
この大寒波の原因は、北半球を西から東へ吹く偏西風の大蛇行らしい。アジアではシベリアのツンドラから日本列島の南にまで寒気を運び、北米ではアラスカの吹雪を首都ワシントン一帯にまでもたらした。暖房器具が普及していない台湾で58名もの方が寒さで亡くなり、アメリカの東海岸一帯の諸州では大雪で非常事態が宣言され、政府機関が機能停止した。
地球規模の損害をもたらした偏西風の蛇行の遠因となっているのは、東太平洋の赤道付近の海水温上昇、いわゆるエルニーニョ現象といわれる。2015年のエルニーニョは史上二番目の高温を記録している。
大型化する台風、頻発するゲリラ豪雨。異常気象が頻発する列島だが、我が国だけの問題ではない。アメリカ南西部の干ばつ、欧州やオーストラリア、インドシナ半島の大洪水等々、地球規模の気候変動に伴う大規模自然災害が毎年発生している。これまでもこのコラムで何度か言及したが、「地球が悲鳴をあげているのではないか」との思いが、再び脳裏をかすめる。
気候変動の最大の要因は地球温暖化。産業革命以降の化石燃料の大量消費は大気中のCO2濃度を高め、地球の温度を徐々に上昇させている。その対策には世界各国の協力、地球規模での対応が求められる。
だが対応の具体化は簡単ではない。その最初の取組であるのCOP3(第3回気候変動枠組条約締結国会議、1997年)でとりまとめられた京都議定書は、日本とEU等で統一した削減率と目標期間を定めたものの、米中露の三大排出国が参画しない不完全なものとなった。以来20年近く、世界各国が地球温暖化対策の必要性を認めながら、COPは混迷を続けてきた。
その転機が訪れたのが昨年12月。COP21で合意した“パリ協定”は、ついに共通の目標=「共通だが差異のある責任」を定めることに成功した。「すべての国は状況に応じて目標を設定して温室効果ガス削減に取り組み、5年ごとに目標値を改定する」とされた協定は、先進国から発展途上国まで196ケ国と地域が温室効果ガス削減を推進する法的枠組みを定めた歴史的なものである。ただし、具体的な削減目標値は各加盟国が設定することになっており、効果のほどは今後の加盟国の取組に左右される。
今年の5月26、27日には第42回先進国首脳会議”伊勢志摩サミット”が開催される。
世界中に模範を示すためにも、各国首脳が気候変動問題についても、ハイレベルな議論を行う必要があるのではないか。
*エルニーニョ現象:太平洋東部赤道付近、ペルー沖から西へ、太平洋の中心部までの海域において海面水温が局所的に異常に上昇する現象。アジア諸国、北米太平洋沿岸、豪州南部に温かい空気が流れ込み気候が著しく変化する。
日本全体は暖かく湿った空気で包み込まれ、大雨被害が発生しやすいと言われる。