国会議員の役割は…

去る1月14日、”衆議院選挙制度に関する調査会”の答申が大島議長に手渡された。答申では、議員定数について「国際比較からすると多いとは言えない」としつつ、「削減案を求められるとすれば、10人削減して465人とする。」と提案している。また、一票の較差については「2倍以上の較差が生じた場合は直ちに最小限の是正を行う、ただし、都道府県を超える見直しは10年ごとの大規模国勢調査に基づく」とされている。

今般の改革議論の発端は、平成24年11月14日の党首討論だ。当時の野田総理から「国民に消費増税の負担を求める以上、国会も身を削る必要がある。次期通常国会で定数削減と較差是正を行う“選挙制度改革”を約束するなら解散してもよい」との提案があり、安倍総裁がそれを受け入れ総選挙となった。この討論をもとに、自民党、民主党はもちろん、多くの政党が選挙制度改革を公約に掲げた。

本来ならば、もっと早く、25年度にも改革の成案を得ていなくてはならないはずだ。

しかし、各党間、議員同士の議論をいくら繰り返しても改革案の取りまとめには至らず、26年に議長の諮問機関を設置し、議論を有識者の手に委ねることとなった。そして、佐々木毅氏(元東大総長)を座長とする有識者会議による17回に及ぶ審議を経て今回の答申に至った。

自民党として、この答申への対応を決定する会議が、先週10日に開催された。細田選挙制度改革問題統括本部長が取りまとめた執行部原案は、①まず、較差是正については(答申のとおり)2倍以内となるように選挙区定数の見直しを行う、②定数削減については平成32年の大規模国勢調査の際に実現するというものだ。10議席の定数削減は「都道府県を超える見直し」に該当すると解釈し、先送りする内容である。

私は、「この案では、野党はおろか公明党からも問題先送りとのそしりを受け、法案成立の見通しが立つのか疑問である。法案が成立しなければ、較差是正も実現せず、次の総選挙は違憲状態ではなく違憲判決が出るかもしれない。国民の眼には改革に後ろ向きの自民党と映る。」と主張した。

会議では答申そのものに反対する声から、私と同じく答申に沿った制度改正を急ぐべきだという意見まで、様々な意見が表明されたが、最後は執行部一任となり細田原案のとおり取りまとめられた。

閉会後、細田本部長を訪ね再度意見交換を行った。ここでの議論は最後まで平行線であったが、細田氏に「平成22年の国勢調査を基に直ちに10名削減と較差2倍以内の改正を行うとすれば、全国13県で小選挙区の数を減らす必要がある。62の選挙区が関わり、比例復活組も含めると59名の議員に影響が及ぶ。彼らにとっては死活問題である。今日の会議でも言いたくても言わないでじっと我慢していた者もいる。その気持ちを暖かく包み込む、自民党は血の通った政党でなければならないと思う」と言われた時には、返す言葉がなかった。

細田氏の選挙区は島根県。参議院の話ではあるが、この夏の選挙から鳥取県と合区される。高知県と徳島県も一つの選挙区になる。この4県の方々は「故郷の声が国政に届かなくなるのではないか?」との不安をもたれている。衆議院の小選挙区も一票の較差を重視して区割り変更を重ねれば、郡部ではとてつもなく広い選挙区が生まれ、総体的に都市部への議席集中が生じる。(それを避けるためにも、東京一極集中是正、人口の地方分散を進める地方創生が必要なのだが…)

今回の議論を通じて、私は「答申を尊重すべき」との考えから、早期改革実行を主張してきた。一方で較差是正の課題については、国会議員は憲法43条に定めるように「全国民の代表者」のみであるべきだろうか。むしろ「地域の代表者」としての性質も有するべきではないか、との問題意識もある。

ただし、14条の「法の下の平等」への抵触を避け、地域代表としての国会議員を創設するためには、憲法43条を改正しなくてはならない。

ここにも憲法改正に於いて議論すべき論点がある。

 

※衆議院選挙制度に関する調査会答申全文は、
http://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_annai.nsf/html/statics/shiryo/senkyoseido_toshin.html
をご参照ください。