先週金曜日のエネルギー・環境会議(関係閣僚会議)で、今夏の電力需給見通しと節電対策がとりまとめられた。原発の再稼働が無いという前提で、関西電力管内は15%の節電が必要となり、計画停電の準備も進めるというものだ。
そして土曜日には、急遽、細野原発事故担当大臣が関西広域連合の知事・市長会議に出席し、大飯原発再稼働への同意を求めた。民主党得意のパフォーマンス戦法といったところか…。しかし、説明の中身は4月に公表済みの安全基準の繰り返しのみ。このような場当たり的な説明で同意が得られるはずもなく、各知事・市長から手厳しい批判を浴びたのみで、議論は平行線に終わった。
わざわざ細野大臣に説明してもらわなくても、3項目の安全基準くらいは読めばわかる。大臣が出席し、頭を下げれば納得してもらえると考えるのは大きな間違いだ。
そもそも、関西広域連合の首長たちは政府の安全基準そのものを否定している訳ではない。疑問点は、この基準のみで十分なのか?そして、大飯原発が基準に適合していることを誰がどう判断したのか?ということだ。
4大臣会合で判断したと言われるが、失礼ながら野田首相、枝野経産相、細野原発担当相、藤村官房長官の4閣僚の方々=素人集団の判断では、誰も納得しないのではないだろうか?
本来、こういった手続きは新設される「原子力規制庁」が担うはずだった。しかし現時点でできていないものは仕方がない。それなら暫定的な措置として、現存する専門家集団として原子力安全委員会とか原子力安全・保安院の人材を活用すべきだろう。
誰も計画停電を体験したい訳ではない。原発を動かせるなら動かしてもらいたい。
だが、安全の確保はその大前提である。電力が不足するから原発を早く再稼働させたいというのは本末転倒の論理であり、安全確認と電力需給対策とは、きっちり分けて議論すべき課題だ。
だいたい菅直人前総理が、なぜ危険かという判断基準を設けず、やみくもに浜岡原発を止めてしまったこと、定期点検前まで何の問題もなく動いていた原発を点検に入ったとたんに不良品扱いする取り扱いをしてしまったことが問題なのだ。
4月に示された安全基準程度の内容は、官僚の間ではとっくの昔にできあがっていたはずである。それをせめて半年前に示していれば今日のような混乱は招かなかったであろう…
電力問題は今年だけの課題ではない。早く来年以降の需給計画=エネルギー戦略を立案しなくては、一年後も停電の夏を迎えることになる。
中長期の需要はどうなるのか? 原子力をどの程度利用するのか? 火力(天然ガスコンパインド方式)発電所をどれくらい新設するのか? 天然ガスの調達はどうするのか? 等々をしっかり議論することが大切だ。