国民はうんざりしている

小沢一郎氏の金脈を巡る陸山会事件で、検察官役の指定弁護士は9日、東京地裁の無罪判決を不服として控訴した。一審判決自体が「被告が収支報告の(虚偽)記載について元秘書から報告を受けて了承したことは間違いない。しかし、被告はその内容を違法と考えいなかった可能性が残る。故に疑わしきは罰せず。」という、いわゆる推定無罪の法理なので、控訴はある程度予想された判断ではある。

その前日の8日、民主党では小沢氏の党員資格停止処分の解除を決定した。
控訴されるか否かの結論を待たずに処分を解除することには党内でも異論があったようだが、こうなるとタイミングを見計らって党役員会を押し切った輿石幹事長のファインプレー?のようにも見える…。
ただ、党員資格を回復したとしても、今回の控訴により小沢氏の影響力は大きく削がれる。裁判は早くても一年かかると言われているから、9月の民主党代表選への出馬は考えられず、小沢グループの戦略は大きく方向転換せざるを得ないだろう。

控訴審の行方=有罪無罪はともかくとして、政治とカネにかかわる国民の不信を払拭するためには、一審でも認定された事案=政治資金管理団体である陸山会が4億円もする土地を購入した理由は何か?その原資をなぜ虚偽(粉飾)記載する必要があったのか?という点について、小沢氏自身がしっかりと説明することが求められる。

そもそも今回の裁判は、「検察審査会による強制起訴」という制度から始まったものだ。その目的は、検察官という法律のプロに独占されていた起訴権限の一部を国民から選ばれた審査会に委ね、国民目線のフィルターを取り入れること。
検察審査会が検察官の判断を覆して起訴相当とした理由の一つは、「小沢氏が土地購入代金の出所を明らかにしていない」点である。少なくとも一審の判断はこの疑問に答えていないのではないだろうか。

一方で小沢氏が会長を務める「新しい政策研究会」は、今回の控訴を政治的弾圧として抗議声明を発表している。しかし、本当にやましいところが無いのであれば、こんな形式論の抗議よりも、国会での証人喚問に応じて名誉回復を図るべきではないだろうか。

この数年間、民主党内では、反小沢か、親小沢かを巡る内ゲバが繰り広げられ、今や政党の体を為していない。党内で政策議論することは結構だが、閣議決定した法案について与党内から否定的な見解が出るなど、およそ考えられない、あってはならないことだ。
政権政党としての自覚があるのならば、代表が「政治生命を賭ける。命賭けでやる。」とまで言っている法案に反対するような輩は即刻除名すべきだろう。逆に政治家として信念をもって、党の方針に背き反対票を投じるのであれば、その前に離党するべきだ。

いずれにしても、国民はもうこの種の話にはうんざりしている。
小泉進次郎議員が、小沢氏の処分解除への感想を聞かれ、「興味がない。こんな政治から早く卒業しなければいけない」と答えていた。
全くそのとおりだ。永田町は、「政治は数」「数は力」「力はカネ」という前世紀の政治力学から早く脱皮しなくてはならない。