挙国一致

東日本大震災の発生から早や10日が過ぎようとしている。
寒さと不安の中で避難生活を強いられている被災者の皆さんには、改めて心よりお見舞いを申し上げたい。

極限情態の中にあっても礼節を保ち、整然と行動する被災地の方々のモラルの高さと忍耐力に、海外からは多くの称賛の声が寄せられている。
日頃、失われたかに思える道徳心、日本人が古来受け継いできた仁義を重んじる心が、未曾有の困難を機に蘇ったかのようだ。

「悲しみを乗り越えて被災地は必ず復興する、日本は必ず蘇る」と私は確信した。

今から16年前、我々は阪神淡路大震災を体験した。
「この街は元通りに復興できるのか…?」
地震発生の翌日、政府与党調査団の一員として神戸に入った私は、
燻った臭いに覆われた瓦礫の山、まさに廃墟と化かした惨状に、言葉を失った。
しかし、全国からの支援と十数年の被災地の努力で、神戸の街並みは美しく蘇った。

今回の大地震の被害は、東北から関東までの数百㎞の広域に及ぶ、加えて、原発事故という二次災害も重なってしまった。
しかも、社会は本格的な人口減少時代を迎え、国家財政は先進国中最悪の累積赤字を抱えている。
復旧復興への道筋には、阪神淡路大震災と比べて、より大きな壁が待ち受けているだろう。

だからこそ、我々日本人は心を一つにして、この国難に立ち向かわなくてはならない。国民の英智と努力を結集し、その壁を乗り越えて行かなくてはならない。
我々日本人にはその力があるはずだ。第二次大戦後の焦土からの復興をはじめ、過去、数々の国難を克服してきたのだから。

被災地の皆さんは厳しい避難生活の中にあっても、他者への思いやりを忘れず必死に支え合いながら頑張っておられている。
子供達は自ら率先して何らかの役割を果たそうと懸命に頑張っている。
その頑張りを全国民の力で支えていきたい。

医師や看護師をはじめ、既に多くの方々が全国から駆けつけ支援活動を展開されている。苦労を厭わない奉仕精神に感謝したい。
福島原発では、自衛隊員、東京消防庁レスキュ―隊員、東電関係者の方々が、命を危機に曝しながら、懸命に戦われている。その勇気と使命感に心より敬意を表したい。

国民一人ひとりが、被災地のために何ができるか、何をしなければならないか、何をしてはならないか、良く考えて行動しなければならない。

ことさら、政治家の責任は重い。
政治主導が空回りする政府の対応に大いに不満もあるが、今は協力の手を差し伸べざるを得まい。
各党は対立路線を一時凍結し、与野党の総力を震災復興に傾注すべきだ。

そのためにも政府には、不毛の対立のタネである来年度予算案を棚上げし、数ヶ月の暫定予算の編成を求めたい(もちろん子ども手当て等は凍結せざるを得まい)。その可決後、直ちに本格的な復旧復興事業費を盛り込んだ新23年度予算を編成するのだ。

それが今、政治が果たすべき国家と国民への責任であり、「未来への責任」だと考える。
そして、それは幾多の国難を乗り越え先人たちが築いてきた日本の歴史への責任でもあるのだ。

「悲しみを乗り越えて被災地は必ず復興する、日本は必ず蘇る」