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中国漁船衝突を巡る映像流出事件は、10日になって神戸海上保安部の主任航海士による投稿ということが明らかになった。

捜査は東京と沖縄を中心に行なわれていたから、「神戸」という報道に驚かれた方も多いだろう。

取り調べが進むなかで、映像の入手ルートなどが次第に明らかになっているが、どうやら事件発生当初は海上保安庁の多くの職員が容易に情報にアクセスできたようだ。情報が瞬時に広がるIT時代の課題が現れた事件とも言える。

だが、今回の問題の本質は、情報管理責任よりも、映像情報の内容が秘密とすべきものか否かという点だろう。

もちろん、形式的には政府が「機密扱い」と決めた情報を公務員が公開することはもってのほかだ。

しかし、投稿された映像を見る限り、ビデオは中国漁船が衝突してくる様子を淡々と映しているのみで、何が機密情報に値するのか判然としない。

政府は映像情報を「機密扱い」とした理由をもっと丁寧に説明する必要があるだろう。

仙石官房長官は、刑事訴訟法の手続き論で「ビデオ非公開」の説明をされてもいる。

だが、処分保留とはいえ船長は既に釈放されているし、仮に船長を起訴したとしても公判は事実上不可能な状況だから、もはや証拠資料としては意味がない。

(もっとも、これまでの政府の弱腰対応からすれば、今さら起訴することもあり得ないだろうが…)

「一般論としては」と言われても、どう考えても官房長官の説明には違和感がある。

そもそも勾留期限をわざわざ延長しながら、その期限を残して急に船長を釈放し、その理由を語らず、「あくまで地検の判断」とした点が全く理解できない。

疑問の残る釈放の経緯、意味のない映像の非公開措置など、一連の対応のまずさが今回の映像流出事件を引き起こしたと言われても不思議ではないだろう。

官房長官は、「(情報流出に係る処分について)寛大な措置を求める声も多いが?」と記者会見で聞かれて、

「国民の中の可半数がそう思っているとは私は全く思っていません」と答えておられたが、世論調査でも「ビデオは公開すべき」と考えている国民は圧倒的多数だ。

それどころか、参議院予算委員会(前田武志委員長=民主党)は、理事会の全会一致で政府に一般公開を申し入れ、民主党の輿石東参院議員会長も公開すべきだと主張している。

これ以上の混乱を避けるためにも、国民の「知る権利」に応えるためにも、政府はビデオを一般公開すべきであろう。

そもそも外交問題として処理すべき今回の漁船衝突事件を、刑事訴訟法の狭い枠内で説明で済ませるのは、どう見ても無理がある。

尖閣事件の処理責任を那覇地検にすべて負わせる形にしたのも、法律家である長官の判断とも言われている。情報流出の責任論について「政治職と行政職は違う」との主張も、自らの責任回避に過ぎないのではないか。

「仙石さん。貴方はもう只の弁護士ではないのだ。貴方に今求められているのは政治判断と政治責任である。法律論は行政職に任せて政治家として事にあたって欲しい。」