先週、第2次菅内閣が発足した。
報道では「脱小沢」路線を貫いた人事ということだが、もう政局ネタはほどほどにしてもらいたい。脱小沢でも親小沢でも、国民生活には関係ないことだ。
新閣僚の皆さんには国家の繁栄と国民の幸せのための政策実行に全力を尽くして欲しいと、国民の一人として思っている。
新内閣の現下の最大の課題は経済対策だろう。
菅総理は代表選の公開討論会の冒頭発言で「今一番重要な課題は、一に雇用、二に雇用、三に雇用」と自らの考えを述べた。
そして、代表選中に閣議決定した「3段構えの経済対策」では、第1段階の緊急的な対応として予備費を使った需要・雇用の創出。第2段階は補正予算の編成と、6月に決めた新成長戦略の推進。第3段階として税制改正や規制・制度改革を掲げている。
成長分野としては、介護・医療・環境・エネルギーなどが示されているが、そのなかで、介護や医療といった社会保障分野=官製市場分野を果たして成長分野と言うのだろうか?
需要はあるのだから「雇用に結びつけることが出来れば、消費にも結びつくし、税収も増加する」と言う説だが、話はそう簡単ではない。
確かに、超高齢社会に突入し、介護や医療分野の需要は年々大きくなっている。ただし、それは社会保障制度が整っているからだ。
介護や医療の市場は、単純な受益と負担の関係ではなく、社会全体で負担する保険料と税の投入で成り立っている。(受益者が受益額の0~3割しか負担する必要がない仕組みだ。)
これを成長させるとすれば、①官製市場の規模拡大=保険料・税負担の引き上げや、受益者負担の引き上げ、又は、②民間市場の創造=混合診療等のような保険外サービスを幅広く認める規制緩和、という選択が必要だ。
ただ、保険料・税負担にしても、受益者負担にしても、既に国民には負担感が強く、今以上の負担増を求めるのは容易ではない。
「増税しても使い方を間違えなければ成長に繋がる」と総理は言うが‥‥それは、20世紀に破綻した社会主義の計画経済システムの発想ではないか?
雇用環境を改善するには、やはり経済の自律的成長を促す戦略が必要である。
企業の活力を引き出し、国際競争力を高めるには、まず、国内市場の規制改革、EPAの促進による国際市場の統合が急がれる。
6月に閣議決定した新成長戦略の方向は間違っていない(自民党政権時代の戦略の焼き直しだから当然だが…)が、総理のこれまでの発言からは実現に向けての強いメッセージが伝わって来ない。
そんな事を考えていたら、友人の経営者から一通のメールが届いた。
「うさんくささ、マニフェストに固執など、いただけない点があるものの、現状打破してくれそうな剛腕小沢氏の勝利を期待(菅氏よりは という私の中での相対優位故に)していましたが‥‥、いずれがなっても経済政策面では頼りになりそうになく、企業は自助努力しかありません。生き残るために海外シフトを加速します。」
民主党の経済政策に不安を感じているのはどうやら私だけではないようだ。
余談になるが、英国のトニーブレア元首相は96年10月の労働党大会の党首演説で、
「政府の最優先課題を三つ挙げろと聞いてほしい。私はこう答える。教育、教育、教育だ」と言った
かつての「第三の道」という表現もそうだが、相変わらず菅総理はブレア元首相が大好きな様だ。