民主党代表選 2

鳩山前総理による挙党一致に向けての調整は不調に終わり、民主党代表選は、菅総理・小沢前幹事長の全面対決となった。
1日の共同記者会見、2日の日本記者クラブ主催の討論会を通じて、両者の主張の違いがかなりはっきり見えてきた。

マニフェストの扱い、消費税、普天間基地移設問題、政治と金、国会運営などが主な争点である。

これまで何度も言及したが、民主党の衆議院マニフェストの破綻はこの1年間の政権運営で明白である。
故に私は、菅総理が現実に即した修正に言及されていることを評価する。「社会保障のあり方と財源問題を一体で議論をする中で消費税も含めた議論をする」という方向も的を射ている。

小沢氏の方は相変わらず「マニフェストは国民との約束だから実現しなければならない」「補助金の一括交付金化、国有財産の証券化で財源は捻出できる」と言われる。
にわかに信じがたいが、百歩譲って10兆円単位の財源が見つかったとしても、「約束だから」という理由で「子ども手当て」や「高速無料化」に充当して良いのだろうか? 今はマニフェストに掲げたバラマキ政策がなぜ必要なのかを改めて、しっかりと説明すべき時だろう。

もう一つ、二人の主張が激しくぶつかり合ったのは互いの政治手法だ。

小沢氏は菅総理の政権運営を「政治主導になってない」と指摘、概算要求基準のシーリング一律10%カットに言及し、「自民党時代と同じ」と批判した。
この指摘が正しいか否かについては見方の分かれるところだが、自らの政治手法こそが政治主導と自負してきた菅総理には、受け入れがたい発言だったと思う。

一方、小沢氏のめざす政治主導というのは、幹事長時代の密室、独裁システムのことだろうか? 昨年の予算編成過程では、地方自治体や各種団体の声は、すべて党幹事長室が窓口となって取り仕切り、行政への要望陳情は禁止された。
これを政治主導と呼ぶのも違和感がある。

政治主導とは非官僚主導という意味だろうが、それを実現するのは形式ではなく個々の政治家の資質だ。100人の国会議員を政府に送り込んだとしても、能力がなければ行政の現場を混乱させるだけだろう。逆に一人の大臣でも、政策の方向性をしっかり示し、必要な施策を選択する判断力があれば政治主導の行政運営ができる。

どちらが総理になられようと、官邸と党の妥協策の立案を官僚に求めると言った愚を廃し、本来の政治主導を貫いて頂きたいと思う。

政治とカネをめぐっては、菅総理が「小沢さんの政治手法はカネと数をあまりにも重視する古い政治」と言及、「クリーンでオープンな政治を目指したい」と指摘した。
これぞ民主党の実情を示す発言。パーティ内で党首を選ぶ議論とは思えない泥仕合の様相を呈している。

自民党も長年に亘る権力坑争の歴史を持つ。総裁選では多額の資金が多数派工作で使われたと言われる時代もあった。
しかし政策の違いや党運営をめぐる論争はあっても、公開の席での党内の同志への中傷ともいえるこの様な発言はなかった。
だから戦いが終った後は、挙党一致体制で長年に亘り政権運営を続けてこられたのだ。

まるで野党が政府を攻撃するがごとき菅総理の発言は、聞いていて違和感を覚えた。
「選挙が終った後はノーサイドで、挙党一致で」と言われているが‥‥本当に挙党体制が礎けるのだろうかと、他党のことながら気掛かりだ。

民主党の代表選は日本のリーダーを選ぶ選挙。両候補には政争ではなく、しっかりとした政策論争を、この国の将来像を論ずる骨太の選挙戦を展開してほしいものだ。