今国会の会期も残すところ一ヵ月を切った。
しかし、現政権の目玉政策として閣議決定されたはずの多くの法案が、未だに成立の目処も立っていない。
普通の発想であれば、会期を延長し審議時間の確保を図るべきだが、政策より選挙を重視する政府与党は、早々と“会期延長せず”との方針を決めたようだ。
そのうえ6月16日までの会期中に少しでも多くの法案成立を図りたいのか、ここに来て与党の国会運営がかなり荒っぽい。
衆議院の内閣委員会では国家公務員法改正案、環境委員会では地球温暖化対策基本法案が、委員長判断による質疑打ち切りにより強行採決され、両案とも衆議院を通過した。
特に、2020年までに温暖化ガスを25%削減するという国際公約を盛り込んだ温暖化対策法案は日本の経済活動や国民生活に多大な影響を及ぼす。にもかかわらず、新エネルギーや原子力の活用、排出量取引、環境税などの具体策について何の議論もないまま、たった18時間の審議で力任せに押し切った形だ。
小沢幹事長が特定団体に成立を確約してしまった郵政改革法案(実質は郵政国有・肥大化法案)の方は、全野党が欠席の中、深夜に衆議院本会議で提案趣旨説明と質疑が強行された。
一方で、多くの国民が求めている〝政治と金〟についての首相と幹事長の説明責任の方は、全く無視されている。
かつて自民党政権も強行採決を行ったことは否定しない。しかし、それは万策が尽きた後のやむを得ざる選択であり、これほど自己中心的な国会運営は私の記憶にはない。
しかも、あれほど自民党の強行採決を批判していた民主党が、自民党幹部の政治資金問題を追求してきた鳩山首相が、ここまで豹変するとは信じがたい?
仮に参議院選挙の日程を7月25日とすれば、少なくとも2週間の会期延長は可能だ。それで十分かどうかはともかく、かなりの法案審議時間が確保できる。さらに言えば、北朝鮮を巡る安全保障問題や口蹄疫のまん延対策も、国会で審議すべき緊急課題ではないのか。
新聞報道では「論戦回避」「法案処理より追及回避」とのヘッドラインが踊る。参院選は小沢幹事長の2回目の検察審査会の議決前がよいとか、第三極の支持が広がる前にとか言われている。
確かに選挙は民主主義の原点ではあるが、それは議員を選ぶ手法にすぎないとも言える。国会審議よりも選挙準備を優先するという本末転倒はあってはならない。
それが自らの失政追及を恐れるが故の論戦回避であれば言語道断だ。