マニフェストより大切なことは

 衆議院予算委員会の審議で民主党のマニフェスト違反が焦点になっている。

 私は、現実の政策立案、予算編成に当たっては、必ずしもマニフェストを厳守する必要はないと考えている。ガソリン税等の暫定税率維持などはマニュフェスト違反であっても、厳しい財源不足に対応した正しい選択と考える。

 ただし、国民と約束した以上、それを変更せざるを得なくなった場合は、理由を明確に説明し、国民の理解を求めなければならないのは当然である。内容の重要性によっては、改めて信を問うことも必要だろう。

 22年度政府予算には、子ども手当、農家の戸別所得補償、高校授業料の無償化、高速道路の無料化(社会実験)など新規政策が盛り込まれた。

 これらの個々の政策の是非についてはここでは言及しないが、制度導入にあたって財政規律が無視されていることが最も大きな問題ではないか。国民は、「子ども手当や高速無料化のためなら、いくら借金をしても良い」とは言っていない。

 昨年の夏、我々自民党が民主党の諸施策の財源手当について問い質した際、彼等は「無駄をなくして予算を組み換えれば財源はある」と断言したはずではなかったか。マニュフェストの工程表でも、初年度である平成22年予算では、7.1兆円の新規財源を捻出できると明示していた。

 しかし、ムダの掘り起こしのため盛大に行われた事業仕分けにおいても、発掘された金額は1兆円に満たない。百歩譲って時間が限られているから仕方なかったとの言い訳を認めるとしても、財源の見通しなしに制度改正を行うことはあまりにも無責任ではないか。

 「無駄づかいをなくすことで借金を減らし、未来の子供達に負担を残さない」と言っていた主張とは明らかに矛盾する。

 昨年の夏、「皆さん、財源はあるんです」と街頭で絶叫していた鳩山総理のあの演説は何だったのか…と、腹立たしく思う。

 自民党政権時にも確かに多額の国債を発行していたが、一方で経済財政諮問会議による財政再建目標も維持していた。

 今や財政立て直しの指標を失った日本。6月に策定予定の中期財政計画には、借金削減の明確な数値目標が盛り込まれ、これ以上わが国の信用力失墜を食い止められることを願う。