【号外】国家主権

驚いたことに那覇地検は尖閣沖衝突事件で拘留中の中国人船長を釈放してしまった。

日本政府は、事件発生以来「国内法に基づき粛々と対応する」と言い続け、「東シナ海に領土問題は存在しない」との立場を堅持して来た。至極全うな主張であった。

一方、中国は日本の対応を激しく批難。次々と対抗措置をエスカレートさせ、日中関係が急速に冷え込みつつあったのも事実だ。

このような事態が続くことは日中双方にとって不幸を招くのみであり、一日も早い課題解決が迫られていたことも事実だろう。
だとしても、中国側の主張を丸呑みするかのような超法規的措置を、明らかに政治的判断による行為を、検察の独断であるかのような発表をされたのには理解に苦しむ。

次席検事は「日本国民への影響や今後の日中関係を考慮した」と理由を語った。そしてニューヨークでは菅総理が「検察が国内法に基づいて総合的に判断された。その対応を了とする」と発言されている。
しかし、「総合的な判断」とはいったい何なのか?
その中に政治的判断も含まれるとしたら、明らかに検察は本来の責務を逸脱している。

今回の醜態は、中国の脅しに屈した弱腰外交だ。いや、外交と言うにも足らない行為かもしれない。
各国のメディアも「日本は中国の圧力に屈した」と報じている。 

案の定、中国政府は図に乗ってさらなる強硬姿勢で、日本に謝罪と賠償を求めてきた。中国で拘束された4人の日本人は未だに釈放されていない。
これでは、日中関係をさらに悪化させるだけではないのか。

事は日本の主権に関わる問題だ。
菅総理は「検察判断」と責任転嫁するではなく、誰がどういう根拠で今回の判断を行ったのか、自らもっと分かりやすく説明をすべきだ。

それよりも、国連本部という格好の外交の舞台にいたのだから、同盟国の協力も得ながら、本当の外交交渉を繰り広げるべきではなかったのか。
外交が嫌いなのか不得手なのか知らないが、それが総理としての責務だろう。