スポーツの持つ力

23日、関西の野球熱が最高潮に達した。阪神タイガースとオリックス・バファローズが、それぞれリーグ優勝を果たしたことを祝して、神戸市の三宮と大阪市の御堂筋で盛大な優勝記念パレードを開催されたのだ。

セ・リーグとパ・リーグの球団が同時に優勝パレードを開催するのは史上初の出来事。日本シリーズで激突した両チームの選手たちを一堂に見ることができ、ファンにとっては「関西シリーズ」の興奮が再び呼び起こされた瞬間だった。

この共同開催は、兵庫県の齋藤元彦知事と大阪府の吉村洋文知事が提案したもので、これに経済界が協力して実現させた。9月の記者会見時には、2025年大阪・関西万博の公式キャラクター「ミャクミャク」と共に登場し、万博を盛り上げるとの表明もあったが…。

開催費用5億円を目指したクラウドファンディングが予想に反して低調だった一因には、この万博との無理な関連付けが挙げられる。

SNSでは、パレードの万博PR利用に反対する声が多く上がり、大阪府には「政治利用を避けるべき」との批判が数多く寄せられていた。批判を受けた吉村知事はトーンダウン。万博PRについては、「パレードとは別に扱う」と方針を転換した。当日のあいさつでも「万博」の言葉は意図的に避けられていた。

私もファンの一人として阪神優勝を政治に利用すべきではないと思っていた。状況に応じて適切に方針を変えたことは、正しい判断だ。

パレードはタイガースが三宮で、オリックスが御堂筋で11時にスタート。午後2時からは入れ替わり、タイガースは大阪、オリックスは三宮でパレードを続けた。オープンカー型バス3台が用意され、選手たちは車上からファンに手を振り、声援に応えた。

主催者によると、午前中の神戸会場には30万人、大阪会場には20万人が来場。大阪と神戸の2会場をはしごするファンの姿も多くみられた。午前と午後をあわせると、大阪では55万人、神戸では45万人が集い、のべ100万人もの方々が沿道で声援を送ったことになる。

阪神電気鉄道は、混雑を予想し、神戸から大阪への直通臨時列車を運行。この列車には岡田監督と選手11人がラッピングされた車両を使用し、38年ぶりの日本一に輝いたことを受けて、ファンに感謝を伝えるポスターが吊るされていた。

パレードが始まり、バスから選手たちが手を振ると、沿道は大歓声に包まれた。御堂筋は歩道の端まで来場者で埋め尽くされた。御堂筋に交わる交差点では、さらに奥の道路までファンが詰め掛けている様子が伺えた。選手たちの姿を見たファンの中には、涙を浮かべる人もいた。

プロ野球の優勝パレードに沸いた2日間後、25日の神戸ノエビアスタジアム。ファンの歓喜の渦の中に今季Jリーグを制覇したヴィッセル神戸の選手たちの姿があった。

創立29年にして、初めてJリーグのトップに至った選手たちの目にも、押しみない声援を送るファンの顔にも光るものがあった。野球とサッカーの違いはあっても、ファンが選手たちに贈ったのは、いずれも「ありがとう」と言う感謝の言葉であった。

内外とも明るい話題の少ない中で、「阪神タイガースの38年ぶりの日本一」と「ヴィッセル神戸のJリーグ初制覇」という二つの話題に、“スポーツの持つ力”を改めて感じている今日この頃である。