異次元の少子化対策

1日に開催された“こども未来戦略会議”で、政府は少子化対策の基本理念と今後3年間の集中的な取組「加速化プラン」の案を有識者会議に示した。プランの柱となる児童手当については、所得制限を撤廃した上で対象を高校生まで拡大し、0歳から3歳未満は1人あたり月額1万5000円、3歳から高校生までは1万円を支給するとし、第3子以降は高校生まで年齢にかかわらず月額3万円に増額する方針だ。そのほか、保育所の入所要件の緩和、出産支援の強化や育児休業給付の充実なども明記されている。

 

一方で必要となる財源については、▽社会保障の歳出改革に加え、社会全体で負担する新たな支援金制度の創設などで2028年度までに確保するとし、▽制度が整うまでに不足する分は一時的に「こども特例公債」を発行して賄うとしている。徹底した歳出改革などを通じ、国民に実質的に追加負担が生じないようにするとのことだが、果たして、そんなことが可能なのだろうか!?いささか疑問である。

 

政府案を受けて、党本部で少子化対策を議論する合同会議が開催された。多くの議員の出席で一番大きい会議室が満杯となり、この問題への関心の高さが窺われた。

会議では「社会保障費の削減はすでに限界であり、国民生活に影響が出る恐れがある」「国民負担を極力避けるために新たな国債を発行すべきだ」「財源は必ず明らかにしなければならず、社会保険料をどうするかなど一定の議論の方向性を発表すべきだ」「将来的な増税の要否を議論すべきだ」等々の意見が出されたが、最終的に今後の対応は茂木敏充幹事長や萩生田光一政調会長らに一任することとなった。

 

以前にもコラムで言及したが、今回の政府案は育児期の経済支援に重点が置かれており、教育対策が全く不十分であると考えている。党内からの提言では、「教育費負担の軽減」と「公教育の再生」の2つの柱を提案したが、加速化 プランではほんの一部が記載されたのみである。

「公教育の再生」については、理念部分で「質の高い公教育を再生することが、基礎的な教育に関わる子育て、家庭の負担減にもつながる。このため、公教育の再生にむけた取り組みを着実に進めていくことが必要である」と言及されているものの、具体的な対策は記述されていない。

「教育費の負担軽減」も奨学金や授業料免除の拡充策は示されているものの、大学授業料後払い制度(仮称)の対象が修士段階に限定されている。これでは全く不十分であり、本命ともいえる学部段階への導入にも明確にコミットしなければ、異次元の対策にはほど遠い。

 

教育投資は、岸田総理が掲げる新しい資本主義の柱の一つ “人への投資”そのものだ。有能な人材の活躍が、将来の経済発展や所得増大をもたらし、ひいては税収増につながる。そういう長期的視点に立って、戦略的に政策を立案し、推進していくべきだはないだろうか。

 

コロナの影響があったとは言え、このままでは2030年に入ると我が国の若年人口は現在の倍速で急減を始め、少子化はもはや歯止めの効かない状況になる。これからの6~7年が、少子化傾向を反転できるかどうかのラストチャンスである。

国民の理解と協力がなければ、この危機は乗り越えられない。そのためにも与野党の垣根を越えて議論し、解決策を提案していかなければならない。

それが国民から負託を受けて国政に参加する我々政治家に課せられた「未来への責任」だ。