3年ぶりに行動制限のない新年を迎えてから早や半月、人々の間にも日常生活が戻りつつある。年末年始の人の移動によるコロナウイルスの感染拡大はピークを迎えた感もあるが、死亡者数は14日に過去最高の503人を記録した。病床もひっ迫しており、引き続き警戒が必要だ。感染力がより高まった派生型“XBB.1.5”の日本上陸も懸念材料である。
そんな中、23日に令和5年度通常国会召集される。当初、岸田総理のダボス会議(16~20日)出席をめざし、27日召集案も検討されたようだが、来年度予算の年度内成立を期すために早まったらしい。毎度の内政重視だが、G7議長国として岸田外交と経済政策の方針をダボスで披露しても良かったのではないだろうか?
当面の国会運営は、4月に統一地方選挙が待ち受けていることもあり、予算案の議論が最優先となるだろう。ただ、安全保障政策や原子力政策の見直しに基づく、中長期の事業計画など、議論すべき重要課題は山積している。
その一つが「少子化対策」である。
岸田総理は年頭の記者会見で「異次元の少子化対策に挑戦する」と言及した。また、東京都の小池知事も年頭挨拶で0~18歳の都民に月5千円を給付する方針を表明した。
言うまでもなく少子化と人口減少はここ十数年来の政策課題である。地方創生の名のもとに全国の自治体が人口ビジョンを策定し、様々な対策を実施してきた。にもかかわらず、首相と都知事が期せずして年頭にこの問題を取り上げた要因は、2022年の出生数が77万人台になるという衝撃的な発表だ。
我が国の出生数は第2次ベビーブームの1973年に209万人を記録して以降、ほぼ一貫して減少傾向にある。ただ、77万人台は政府の従来の予測より11年も早い。コロナ禍による影響もあろうが、ここにきて明らかに少子化は加速している。
これまでの政府の推計では、日本の人口は2053年に1億人を割り込むとされてきたが、実際にはもっと早まりそうだ。現在のペースで減少が進めば2060年に8000万人を割り込む可能性もある。1950年頃の人口規模に戻るということである。
英独仏などヨーロッパの主要国の人口は数千万人であり、少々の人口減は恐れる必要はないとの考え方もあるだろう。しかし、急速な減少は経済力の急減を招き、国民生活に様々な悪影響をもたらすことは確実である。
一刻も早く対策を講じなければならない。これは、誰の目にも明らかである。
ただ、人口を上昇傾向に転換させるのは容易ではない。人口を維持するだけでも合計特殊出生率(※)2.07が必要だ。G7先進国でこの値をクリアしている国はない。最も高いフランスでも1.82だ。我が国の現状は1.33である。
もちろん可能性ゼロではない。私が生まれた第一次ベビーブームのころ、4~5人の兄弟姉妹は珍しくなかった。将来の教育費の心配など、考えることもなかった時代だ。考えなくてもよいシステムを導入するのも一案だ。
フランスでは、家族が多い(子どもをたくさん産む)ほど税金が軽減される制度で、急速に出生数を改善させた。課税単位を「家族」に切り替えるだけで効果があるという例だ。
人口減少対策を急ぐのであれば、移民政策の見直しにも踏み込む必要がある。事実ヨーロッパの出生数改善に寄与したのは移民である。米国の人口拡大を支えているのも移民である。
政府は新たな会議を立上げ、3月末までに少子化対策のたたき台をまとめる方向だ。更に、6月に策定される「骨太方針2023」までに子ども予算倍増にむけた大枠を示す考えも表明している。党内においても、少子化対策調査会で、これまで以上に議論が活発になると予想される。
この種の議論は決して政争の材料にすべきではない。自民党内や与党内の議論に終始することなく、党派を超えた議論が行われるべきである。
国家存亡の危機にあって、党派を超えて議論し解決策を実現する。それが国民の代表として国政に席を持つ我々国会議員の「未来への責任」だ。
※一人の女性が一生の間に産む子どもの数