いま、一層の努力を

新型コロナウイルス感染拡大防止「緊急事態宣言」の効果を評価するための、専門者会議が開催された。発令後の2週間、都市部の人々の動きは感染拡大前と比べ大きく減少した。しかし、平日で6割程度減少という数字では、他人と接触機会を8割減らすという目標には不十分とのことである。

22日午後に開かれた政府の対策本部では、安倍総理が国民の協力に謝意を表明しつつも、より一層の努力が必要な状況だとして、改めて行動の見直しと更なる外出自粛への協力を呼び掛けた。特に例年のゴールデンウイークのような民族大移動を行うと都市から地方への感染拡大を招くことから、「オンライン帰省」を提案し、移動を限りなく縮減することを重ねて要請した。

4月に入ってから感染者は毎日百人単位で増加し、ほぼ全国に広がってしまった(感染者ゼロは岩手県のみ)。この量とエリア双方の急拡大に伴い医療崩壊の懸念がクローズアップされてきている。医療機関の受け入れ能力を超える患者が殺到し、病床はもとより医療スタッフ、器具が不足して、重篤者の治療に手が回らなくなる事態だ。

既に大都市圏の都道府県では、隔離治療が可能な病床の確保とともに軽症患者に宿泊施設で療養していただく対応が始まっている。幸いPCRで陽性反応があっても約8割の方々は軽症か無症状とのことなので、この手法も有効な選択肢である。更なる拡大のため民間ホテルの提供とともに、健康チェックに当たる管理スタッフの協力も欠かせない。

医療用マスクやガウン等の器具の不足も深刻だ。普段は注文すれば直ぐに手に入るものが世界的な品薄状況となり、まさに綱渡りの調達が続いている。

さらに心配なのは医師、看護師等の医療スタッフも含めた院内感染の増加だ。感染者とともに濃厚接触者も第一線から後退せざるを得なくなり、正常な病院の機能が果たせなくなる。すでに救急受け入れの停止に追い込まれている感染症指定病院もある。

専門家会議の提言では、「対策のフェーズが変わった」として、「医療崩壊防止と重症化防止により死亡者数の最小化を図っていくかに力点を置く」と強調されている。

具体的には、感染拡大で患者数が増加することに備えて地域医師会と協力し、かかりつけ医が患者から直接相談を受け必要に応じて地域医師会が運営する「コロナ検査センタ(PCRセンター)」に検査を依頼する。また、無症候者や軽症者は自宅療養、宿泊療養で対応する一方、都道府県は感染症指定病院への受入れを重症・中等症の患者に割り当てるなど、地域で医療崩壊を起こさせないような連携体制を構築することである。

感染リスクと背中合わせで新型ウイルスと闘っている医療従事者の皆さんに心より感謝するとともに、医療器具、検査試薬等の資材の安定確保に更なる努力を重ねていきたい。

一方で、心配なのが内閣支持率の低下だ。不評三点セット(布製マスク配布・減収世帯に30万円・総理の動画)の影響で大きく下がっている。「支持率に一喜一憂すべきでない」というのが模範的なメディア対応なのだが、今回はそうは言っていられない。

「接触機会の8割減」という目標は、国民の理解と協力なくしては絶対に達成できない。また、今回のような非常時下にあっては、時には超法規的な政治決断が求められる。その意味でも国民の信頼と支持が必須なのだ。

加えて、今回の経済対策の決定過程では、党と政府の関係にも亀裂が生じた。党の議論と提案が政策に反映されていないのだ。逆に30万の現金給付やマスクの配布について、政府から事前説明はなかった(党の幹部でさえ知らされて無かったようだ)。

もちろん、議院内閣制のもと政府の決定は我々与党にも責任はある。この難局を乗り越えるためにも、政府与党が一体となって信頼回復に勤めていかなければならない。

大型連休を前に特定警戒地域に指定された大都市圏では、市街地の賑わいが完全に休止している。全国をつなぐ交通機関も利用停止状況にある。このような経済停滞をいつまでも続けるわけにはいかない。しかし、経済活動は人々の健康な営みが前提だ。力強い経済再生、Ⅴ字回復のためにも、今は感染拡大の防止に全力を尽くさなければならない。

これまでの努力が水泡に帰すことが無いように、いま一度、国民の皆さんにGWの移動自粛をお願いしたい。