先月の私の誕生日(2月11日)には、中国を中心に5万人足らずだった新型コロナウイルス感染者が一か月で世界中に拡散した。発生以来一貫して否定し続けてきたWHOだが、11日遂にパンデミック(世界的大流行)を認めた。今や発生地域は全世界の126か国・地域、感染者数は15万人を超え、拡大の中心はアジアからイタリアをはじめとするヨーロッパに移っている。
この間、各国の感染拡大のスピードや死者数の比率にはかなりバラつきが見られる。例えば感染者数と死亡者数、その比率を比べると、中国(80844人、3199人、4.0%)、韓国(8162、75、0.9)、日本(798、24、3.0)、イタリア(21157、1441、6.8)、スペイン(5753、136、2.4)フランス(4500、91、2.0)、ドイツ(3795、8、0.2)、アメリカ(2174、41、1.9)(データの時点は多少のずれがある)という状況である。
初発生からの経過期間、PCR検査の方針等も要因であろうが、各国政府の封じ込め対策の強弱、医療提供の体制水準により差異が生じていると思われる。感染急拡大が続くヨーロッパの状況と比べると、我が国の封じ込め対策は、まずまずの効果を上げていると言っても良いのではないだろうか。
また、4日に発表されたWHOと中国政府の調査結果によれば、2月時点の致死率は3.8%ということであるが、この数字は同類のコロナウイルス感染症であるSARS(約1割)、MERS(約3割)と比べればかなり低い。(これが感染力の高さにつながるのだが…)しかも医療体制が強化された2月以降は0.7%に抑えられたとのことである。また、80歳以上の致死率が21.9%で年齢とともに重症化のリスクが高まること、19歳以下の感染者はわずか2.4%ということも判明している。
我が国でも発症者の80%は軽症である。今後、症例の増加とともに病原体の詳細な性格も解明されてくる。新型感染症もワクチンが開発され治療方法が確立すれば、どこにでもある病気になる。10年前に大騒ぎした新型インフルエンザも今や季節性インフルの一種類である。13日に新型コロナウイルス対策の特別措置法が成立し、「緊急事態宣言」により、外出やイベント自粛などの私権制限の措置が可能となるが、現状ではその必要は認められない。国民の皆さんには、この病原体を過度に恐れることなく、しばらくの間、地域の状況に応じて不必要な外出、イベント自粛等の感染拡大防止にご協力いただきたい。
一方で、観光客をはじめとする人の動きの激減やサプライチェーンの途絶により、世界的な経済不安が拡大している。この数週間、日経平均をはじめ全世界の株価は歴史的な急落情勢にある。ただ、十数年前のリーマンショック時、どこに不良債権が隠れているのか皆目見当がつかなかった事態とは異なり、今般のコロナウイルス禍は原因が明確である。感染拡大対策による世界的な混乱が収まれば人と物の動きは回復するはずだ。
すでに世界の部品工場である中国では経済の正常化に向けた動きが始まっている。このなかで当面重要なのは短期的に縮小してしまった需要の喚起対策である。世界的な経済規模縮小の不安を払拭し、経済のブロック化を抑止するために、各国が協調して経済対策に本腰を入れなくてはならない。
まずは我が国がその模範となるように、早々に緊急大型の補正予算を編成すべきだ。内需拡大には従来型の公共事でなく、家電や自動車など製造業対策、観光をはじめとするサービス産業対策も必要だ。個人消費拡大のために期限付きの電子マネーなどの活用も有効だ。
今ここで思い切った経済対策を打たなければ、消費増税対策も含めこれまでの経済政策が無意味になってしまう。とにかく機動的で十分な規模としなければならない。
どちらかと言えば、財政再建派の私ではあるが、いま暫くは財政再建を忘れることにしたい。思い起こせば、リーマンショックの後、財政再建派の筆頭格であった与謝野馨(故人)さんが同じことを言っていた様な気がする。