朝夕は冷気を肌に感じるほどに秋が深まった10月24日、第197回臨時国会が開幕した。
今国会では度重なった自然災害の復旧・復興と学校の緊急重点安全確保(ブロック塀対応等)をメインに組まれた平成30年度第1次補正予算案(9400億円)や、政府が来年4月に導入を目指す外国人労働者の受け入れ拡大にむけた出入国管理法改正など、合計13本の法案提出が予定されている。
更には安倍総理が、憲法審査会に政党としての具体的な憲法改正案を示し、国民の理解を深める努力を重ねていく考えを改めた表明したことで、大きな争点が生まれるかもしれない。
対して野党は、今国会においても“モリカケ”問題を追及する構えを崩していない。加えて、先の内閣改造で新任された閣僚の資質をターゲットに、その答弁能力や週刊誌などで報道されているスキャンダルについても追及する構えだ。いつもの事ながら、国会が政策議論よりスキャンダル追及の場になることは悩ましい限りである。
会期は12月10日までの48日間だが、安倍総理は11月中旬からシンガポールでのASEAN関連首脳会議を皮きりに訪豪の後、パプアニューギニアのAPEC、月末にはアルゼンチンでのG20と外交日程が立て込み、審議日程はかなりタイトなものにならざるを得ない。
24日の所信表明演説翌日には日中首脳会談に臨むため、総理は慌ただしく中国へ出発した。衆院本会議での代表質問は29日から3日間。本格的な論戦は11月1日からの予算委員会となるが、内外ともに課題が山積している中で是非実り多い国会議論となって欲しいものだ。
さて、総裁選後の一連の人事で、私は引き続き政務調査会の科学技術イノベーション戦略調査会長に再任された。科学技術政策は、これまでからライフワークとして取り組んできた分野だ。この四半世紀の間、日本の科学技術力は世界でも優位を保ち、我が国の発展に寄与してきたと自負している。しかし、ここ数年、国際競争力が低下する兆候を見せていることに強い危機感を覚えている。
一例を挙げれば、世界の研究者に影響を及ぼす被引用学術論文件数の世界シェアだ。20年前には4位(5.8%)だったのが、直近の2014~16年には9位(2.9%)とランクが下がり、イノベーションを生み出す基礎的な力が弱まっていると言わざるを得ない。
そこでこの度、日本の科学技術分野における諸課題について改めて現状分析をおこなうとともに、競争力回復の有効な処方箋を提案するために「基本問題小委員会」を設置することにした。小委員長には私と同じ危機感を持っておられ、自ら就任を買って出られた船田 元・衆議院議員にお願いすることになった。来年6月の骨太方針(経済財政運営と改革の基本方針)に向け提言を取りまとめる予定である。
現状を放置すれば、日本の科学技術分野における競争力が低下することは避けられない。私が懸念するのは研究成果の早期実用化を求める昨今の兆候だ。
この秋ノーベル生理学・医学賞を受賞された本庶先生が、がん免疫療法の原理を発見したのは1990年代初頭のこと、その成果が“オプジーボ”として製品化されたのは2014年である。このように研究成果が商品化されるまでには長い年月が必要となる。にもかかわらず、民間企業や政府(主に財務省)は短期の資金回収を求め、製品化が近い研究段階に力を注ぎがちだ。対して大学側は長期持続的な研究の必要性を主張されているが、それぞれ一方通行で言い放し、全く噛み合っていないのが実情である。
様々な意見や考えを俯瞰的に分析し、未来につながる正しい処方箋を見つけ出すのが我々政治の役割だ。今なら、まだ間に合う。単なる意見調整や利害調整に終わることなく、総合的な判断により日本の進むべき道標を提案する。それが、いま果たすべき“未来への責任”だと考えている。