大学改革待ったなし!

我が国は戦後の四半世紀で、世界に類をみない経済発展を成し遂げたが、その時代に社会が求めた人材は、「秩序に素直で」「協調性を持ち」「集団に奉仕する精神を持つ」「勤勉な」人物であった。

しかし、高度経済成長を可能にした構造的要因(人口増加、旺盛な内需、安い労働力)は遠い過去のものとなった。現在の成熟化、多様化した時代には「既存の発想にとらわれず」「チャレンジ精神を持ち」「新しい価値を社会に生んでいく」人材、いわば「価値創造力」と呼ぶべき資質が求められている。

 

また、AI(人口知能)やロボットの進化等に伴い、「子供たちの65%は大学卒業後、今は存在しない職業に就く」「今後10~20年ほどで、約47%の仕事が自動化される可能性が高い」といった将来予測もなされており、「時代の変化に対応できる柔軟な人材」の育成を急がなくてはならない。

 

一方で、未来を拓くリーダーを養成すべき大学は、①社会ニーズとの乖離や学修時間の不十分さなどの教育面での課題、②論文数のシェア低下による研究面での課題、更には③脆弱な財政面での課題などに直面している。少子化の進展による若年人口の急減も考えると、設置形態を越えた連携や統廃合は最早避けられない状況である。全ての大学関係者が危機感を持って対応策を講じなければならない。

 

そのような背景のもと、昨今、政府でも自民党内でも“大学改革”の議論が盛んにおこなわれている。私が所属(高等教育改革部会主査を担当)する党教育再生実行本部でも、昨年から大学改革の議論を重ね、先日、以下の項目を安倍総理に提言した。

1.優れた学長を選び、社会に開かれた大学づくりを進めるためのガバナンス改革

2.学業成果を含む徹底的な情報公開、評価の充実を通じた教育研究の質の向上

3.大学が財政基盤を確立し、教育研究を充実させるための経営力の強化

4.大学の機能を強化するための再編統合・連携の促進

 

この4つの対応策を早急に断行することで、社会ニーズに応えた国際競争力のある大学を構築しなければならない。その際、大学の自主性や学問の自由が尊重されることは当然であるが、政府は自主的改善の努力による教育・研究の質の向上を促すとともに、改革が進まない大学には撤退などを求めていくという強い姿勢で臨むべきとも、提案している。

 

世界が“知”の大競争時代に突入するなか、国を挙げて高度な人材の育成、確保に早急に取り組む必要がある。“知”の源泉として、イノベーションの核となるべき存在である大学の競争力低下は、単に大学の危機ではなく、日本の未来の危機でもある。

 

科学技術の進歩とともに、社会の変化は益々速度を高めている。残された時間はほとんど無い。「日本を世界で最もイノベーションに適した国に造り変える」という、安倍政権の政策目標実現のためにも、“大学改革は待ったなし”である。