先月の27日(月)、過去最大規模となる97兆4,500億円の平成29年度予算が参院本会議で可決成立し、あわせて同日、地方税改正などのいわゆる予算関連法も成立した。年度末の31日には、私が昨秋に与党の座長として取りまとめた給付型奨学金創設法(日本学生支援機構法の一部改正)も成立した。
国会はいよいよ後半戦へ突入するが、今後審議すべき重要法案は、テロ等準備罪を新設する組織的犯罪処罰法改正、衆院小選挙区の区割りを見直す公職選挙法改正、今上天皇のご退位を可能にする新法などである。
そのような中、30日(水曜日)には、前半国会で森友学園問題とともに、多大な審議時間が費やされた「文科省の再就職あっせん問題」に関する内部調査最終報告書が公表された。新たに35件のあっせん行為を国家公務員法違反と認定し、37名を処分した。最終的な違法天下り行為は合計62件、処分を受けた幹部は43人にのぼる。調査の全容については、新聞紙上などで詳しく報じられているので言及しないが、処分者には将来の次官候補と目されていた人物も含まれている。
今回の不祥事についてはいささかの弁解の余地もないが、多くの有能な人材がその能力を発揮する場を失うことになるのも事実。我が国の未来を左右する、教育政策の立案と推進に影響が出なければよいのだが、と案じている。
その教育政策について、格差是正、生産性向上、少子化対策などの視点から、「あるべき教育の姿」を改めて示すべく、党内で広範な議論が進められている。その中で、最もホットな話題が、「教育の無償化」である。無償化の対象は、もちろん義務教育以外の分野。一つは幼稚園や保育所における幼児教育、もう一つは大学、専門学校などの高等教育である。
文科省の一つの試算によると、幼児教育で7000億円、大学で3.1兆円もの年間予算が必要となる。さらに経済的理由で進学を断念している者を加えると、総額では5兆円規模の財源が必要となるのではないだろうか。
この巨額の財源確保の手法を巡る議論が党内で活発化している。例えば、①さらなる消費増税での対応、②使い道を教育に限定した「教育国債」の発行、③年金保険料に上乗せした「こども保険」の導入、などである。①と②は、最終的に全国民の税で賄うという点では違いはない。現在の納税者が薄く広く負担するのが①で、将来の納税者が償還金を負担するのが②である。①については高齢者対策経費との棲み分けが課題となり、②の場合は、全国民で奨学金を借り入れるようなイメージ(=負担の先送り)となる。③も①と同じく現役世代が負担することになるが、そもそも将来リスクに備える保険という概念が子育て経費の一環である教育財源になじむか否か?企業の理解が得られるか?という問題がある。いずれも一長一短で検討課題も多い。
安倍首相は今国会の施政方針演説で「誰もが希望すれば、高校にも専修学校、大学にも進学できる環境を整えなければなりません。」と教育無償化への大方針を示している。一方で、我が国の財政が極めて厳しい状況にあることは間違いない。財源確保への理論武装、新たな発想が必要なこの時期に、教育政策のシンクタンクであるべき文科省がその機能を低下させているのは残念ではある。
それだけに、我々政治家に課せられた責任が重くなっているともいえる。知恵を振り絞り、国民的議論を経て、「未来への投資」である人材育成政策の大きな柱となる教育無償化を前進させていきたい。政治には強いリーダーシップが求められている。