今国会の最重要課題であった“安全保障関連法案”(平和安全法制整備法と国際平和支援法)が、19日(土)未明に成立した。
5月26日に審議が始まって以来、衆院116時間30分、参院103時間32分、合計220時間もの時を費やした。しかし残念ながら審議内容は深まらず、合憲違憲の入り口論に終始し、平和憲法の下での集団的自衛権行使の限界、国際平和協力の在り方といった本質議論には至らなかった。そして終局はご承知のとおり、3昼夜を要した参院の攻防の末に、ようやく成立に至った。
16日の地方公聴会以降の委員会審議は、民主党を中心とした野党のなりふり構わぬ行為をきっかけに混迷を呈した。まずは、鴻池委員長を閉じ込めるために理事会室前をピケ占拠。17日には理事会の開催場所をめぐる紛糾、委員長不信任動議の提出、その否決直後の質疑打ち切りの動議、と続き、総括審議が行われないまま法案の採決が行われた。怒号と揉み合いで騒然となった委員会室の情況は、報道のとおりである。
法案に反対する野党の一連の徹底抗戦に対して、高村副総裁は「野党の行き過ぎた抵抗」等と言及されていたが、同感である。
問責決議の連発、ピケ、フィリバスター(長広舌)等々、野党は様々な手段で法案成立阻止を試みたが、採決時の乱闘シーンは見るに堪えないもの、首絞め、委員長席へのダイビングなど、とても子どもには見せられるものではなかった。海外メディアにも「先進国で、民主主義国家の日本」の乱闘騒ぎと紹介された。恥ずかしい限りである。どうにかならないものか。
1951年の講和条約締結、60年の日米安保改定、そして今回の安保法制の整備は、戦後の我が国の安全保障政策にとって大きな転換点となる。
私のこの問題についてのスタンスは7月の衆院通過時のコラムでも言及したが、「憲法改正が望ましいが、極めてハードルが高く時間がかかりすぎる。我が国を取り巻く状況や国際情勢を見極めた時、国民の生命や生活の安全を保持するためには、憲法解釈変更によって限定的に集団的自衛権を容認し、抑止力を高めることが現実的な選択だ」とするもの。
中国の一途な海洋拡張路線や北朝鮮による大都市ミサイル攻撃の恫喝は、40年前の北東アジアには存在しなかった。9月3日の天安門での軍事パレードを観て、軍事バランスが大きく変化しつつあると懸念される。一方で日本が安全保障を依存してきた米国は、もはや世界の警察としての役割和果たす国力を失っている。
この現実に対応するための選択が、現行憲法下で行使しうる集団的自衛権等を定める安保法制の整備である。
ただ、法案審議の過程で、憲法論争があおられ、戦争法案、徴兵制導入説といった暴論が主張されたこともあり、多くの世論調査が示しているとおり新法制の趣旨が国民に理解されているとは言いがたい。
第189国会はまもなく幕を閉じるが、与党の議員は地元に帰ってからも一人でも多くの有権者に対して説明責任を果たし、理解者を得る努力をしていく責務がある。